【22章】変化
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鍋パーティーをするから一緒にどうかとの誘いを受けた。
業務がおしていたため、少し遅れての参加。
寮の扉を開けると、鍋の湯気が目に入った。
「どうした、お前ら」
ポカーンとどうみても鍋を楽しんでいる様子ではない生徒達に俺は声を掛けた。
「今・・・名字くんが急に立ち上がってトイレの方に」
「何か口元押さえてたから吐きに行ったっぽい・・・?」
「この鍋なんか間違って変なもん入れたか?」
轟が名前が使っていた箸で取り皿の中を確認したが、首を振った。
「野菜と豆腐しか入ってねぇ」
「私、様子見てきますわ!」
八百万が立ち上がって、トイレに向かおうとしたところを制した。
「いやいい。俺が行ってくる」
「えっ、でも・・・」
「お前らは気にせずに続けてろ」
生徒達は気になっているようだが、鍋を再開した。
「・・・って、相澤先生女子トイレ入んの?」
上鳴の声は聞こえないフリをした。
********
「名前、大丈夫か?」
外からノックして、声を掛けた。
「相澤さん・・・?」
ガチャリと片手で開け放たれたドアの中を覗くと洗面台に突っ伏していた。
「どうした、大丈夫か!」
地面に座り込んだ名前に合わせて俺もしゃがんだ。
「相澤さん、どうしよう・・・」
名前の目は戸惑いに揺れていた。
「味がする・・・」
*******************
口に鍋のスープを運んだ瞬間、思わずそのまま吐き出してしまいそうになった。
いつものように無味ではなかったから。
それが"味"だと分かったのはトイレでスープを吐き出した後だった。
口をゆすぎながら、冷静になった頭で考えた。
決して不味かったわけではない。
ただただ驚いた。
騒ぎを聞きつけた相澤さんがトイレに来てくれた。
「相澤さん・・・味が分かる」
「え?」
相澤さんは一瞬ピタリと動きを止めたが、私の言葉を理解するとガシッと両肩を掴んだ。
「本当か」
私はこくりと頷いた。
「驚いて吐き出しちゃったけど、多分・・・。あれは味だと思う」
「もう一度試そう」
相澤さんに言われて私は自室へと戻った。
********
「名字は少し熱があるから部屋で休ませる。食欲はあるみたいだから持っていく」
俺は何食わぬ顔で鍋パーティーの中へ戻ると、大きめの器を用意し鍋をよそった。
「相澤先生、俺もう食べ終わったんで俺が」
「轟!ここは相澤先生に任せようよ」
芦戸が代行を買って出た轟を引き留めた。
その顔が何やら意味あり気だが、適当に流した。
「何かあったら言って下さい」
八百万が個性で氷枕を作り、渡してくれた。
「ああ。こっちのことは気にするな」
「先生いってらっしゃーい」
「?」
俺はエレベーターに乗り込み2階のボタンを押した。
*******************
「はい」
相澤さんだということは分かっていたので、ノックの返事と同時に扉を開けた。
「ありがとう」
中へ招き入れると、相澤さんはお盆をガラステーブルの上に置いた。
レンゲとお箸が添えてあったので、先ほどと同じようにまずはレンゲでスープを掬った。
ゆっくり口に近づけた時、相澤さんがまじまじと見ていることに気付いて手を止めた。
「・・・・・・そんなに見られてると食べにくい」
「・・・すまん」
たかが食事をするだけなのに、何この緊張感。
ふーふーと熱を冷まし、意を決してスープを飲んだ。
「うん、やっぱり味がする」
先ほどは驚いて吐き出してしまったが、今度はちゃんと喉を通った。
「これがお鍋の味かぁ・・・」
優しい味。
私は白菜を掴んで食べた。
次はお肉。
いつも同じ無味な食材は、それぞれちゃんと違いがあった。
「どうだ、美味いか?」
「うん。おいしい。相澤さんも一緒に食べよう?」
相澤さんは私のことしか考えていなかったのか、自分の分を持ってきていなかった。
だから私は自分のお箸で具材を掴むと、横に座る相澤さんの口元に持って行った。
ぱくりと食べて咀嚼する相澤さんを見て嬉しくなった。
同じ味を共有している。
相澤さんが感じている味を私も感じている。
それがただただ嬉しかった。
「・・・あれ?何かさっきと味が違う」
「"しょっぱい"んじゃないのか?」
「しょっぱい?」
「器に涙が入ってるぞ」
ああ、これが"しょっぱい"なんだ。
業務がおしていたため、少し遅れての参加。
寮の扉を開けると、鍋の湯気が目に入った。
「どうした、お前ら」
ポカーンとどうみても鍋を楽しんでいる様子ではない生徒達に俺は声を掛けた。
「今・・・名字くんが急に立ち上がってトイレの方に」
「何か口元押さえてたから吐きに行ったっぽい・・・?」
「この鍋なんか間違って変なもん入れたか?」
轟が名前が使っていた箸で取り皿の中を確認したが、首を振った。
「野菜と豆腐しか入ってねぇ」
「私、様子見てきますわ!」
八百万が立ち上がって、トイレに向かおうとしたところを制した。
「いやいい。俺が行ってくる」
「えっ、でも・・・」
「お前らは気にせずに続けてろ」
生徒達は気になっているようだが、鍋を再開した。
「・・・って、相澤先生女子トイレ入んの?」
上鳴の声は聞こえないフリをした。
********
「名前、大丈夫か?」
外からノックして、声を掛けた。
「相澤さん・・・?」
ガチャリと片手で開け放たれたドアの中を覗くと洗面台に突っ伏していた。
「どうした、大丈夫か!」
地面に座り込んだ名前に合わせて俺もしゃがんだ。
「相澤さん、どうしよう・・・」
名前の目は戸惑いに揺れていた。
「味がする・・・」
*******************
口に鍋のスープを運んだ瞬間、思わずそのまま吐き出してしまいそうになった。
いつものように無味ではなかったから。
それが"味"だと分かったのはトイレでスープを吐き出した後だった。
口をゆすぎながら、冷静になった頭で考えた。
決して不味かったわけではない。
ただただ驚いた。
騒ぎを聞きつけた相澤さんがトイレに来てくれた。
「相澤さん・・・味が分かる」
「え?」
相澤さんは一瞬ピタリと動きを止めたが、私の言葉を理解するとガシッと両肩を掴んだ。
「本当か」
私はこくりと頷いた。
「驚いて吐き出しちゃったけど、多分・・・。あれは味だと思う」
「もう一度試そう」
相澤さんに言われて私は自室へと戻った。
********
「名字は少し熱があるから部屋で休ませる。食欲はあるみたいだから持っていく」
俺は何食わぬ顔で鍋パーティーの中へ戻ると、大きめの器を用意し鍋をよそった。
「相澤先生、俺もう食べ終わったんで俺が」
「轟!ここは相澤先生に任せようよ」
芦戸が代行を買って出た轟を引き留めた。
その顔が何やら意味あり気だが、適当に流した。
「何かあったら言って下さい」
八百万が個性で氷枕を作り、渡してくれた。
「ああ。こっちのことは気にするな」
「先生いってらっしゃーい」
「?」
俺はエレベーターに乗り込み2階のボタンを押した。
*******************
「はい」
相澤さんだということは分かっていたので、ノックの返事と同時に扉を開けた。
「ありがとう」
中へ招き入れると、相澤さんはお盆をガラステーブルの上に置いた。
レンゲとお箸が添えてあったので、先ほどと同じようにまずはレンゲでスープを掬った。
ゆっくり口に近づけた時、相澤さんがまじまじと見ていることに気付いて手を止めた。
「・・・・・・そんなに見られてると食べにくい」
「・・・すまん」
たかが食事をするだけなのに、何この緊張感。
ふーふーと熱を冷まし、意を決してスープを飲んだ。
「うん、やっぱり味がする」
先ほどは驚いて吐き出してしまったが、今度はちゃんと喉を通った。
「これがお鍋の味かぁ・・・」
優しい味。
私は白菜を掴んで食べた。
次はお肉。
いつも同じ無味な食材は、それぞれちゃんと違いがあった。
「どうだ、美味いか?」
「うん。おいしい。相澤さんも一緒に食べよう?」
相澤さんは私のことしか考えていなかったのか、自分の分を持ってきていなかった。
だから私は自分のお箸で具材を掴むと、横に座る相澤さんの口元に持って行った。
ぱくりと食べて咀嚼する相澤さんを見て嬉しくなった。
同じ味を共有している。
相澤さんが感じている味を私も感じている。
それがただただ嬉しかった。
「・・・あれ?何かさっきと味が違う」
「"しょっぱい"んじゃないのか?」
「しょっぱい?」
「器に涙が入ってるぞ」
ああ、これが"しょっぱい"なんだ。
