【19章】敵
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生徒が寝静まった夜、私は身支度を整えて寮を出た。
ヒーロースーツを身に着け、誰かに見つからないよう細心の注意を払った。
「行くか」
相澤さんをはじめ、ハウンドドック先生、マイク先生、ミッドナイト先生が揃っていた。
「うん」
1件目と2件目の被害現場は近い。
まずは現場付近まで移動した。
さすがに大通りで堂々と人を捕食する喰種はいない。
裏路地を中心にあらかじめ徘徊しそうなルートに予想をつけ、手あたり次第に歩いた。
黒翼は闇夜に溶けて見えにくいが、同じ種族ならすぐに見つけられるはずだ。
「(どこにいるの・・・?)」
相澤さん達は距離を置いて私のことを見守ってくれている。
今日は接触してもすぐに捕獲することはせずに、状況を把握し、万全な準備を整える。
これ以上被害を出さないためにも最低限接触するまではこなしておきたい。
黒翼を揺らした。
あえて少し目立つように、翼を動かし塀の上に降り立つ。
バサリと羽が音を立てた。
するとその音におびき寄せられるかのように1人の人間が私に近寄ってきた。
「よう」
塀の下から声を掛けられた。
「あんた・・・!」
私は目を見開いた。
ニヒルな笑みを浮かべながら立っていたその男は、この世界にやってくる前に戦闘し、私を殺した男だった。
***************
「接触したみたいだな」
喰種は鼻が利くため、俺達は豆粒ほどにしか見えない距離から動向を伺っていた。
まさか1日目で接触できるとは。
被害者が出ているので逸る気持ちが生まれるが、焦りは禁物だ。
スコープで名前が誰かと話している姿を捉えた。
「すっげぇ心配なんですけど」
「そんなのみんな同じ気持ちよ」
マイクが落ち着かない様子でひげを触る。
いくら個性社会で様々なタイプの敵と接触してきたといえども、こんなことは前代未聞だ。
正直、できれば名前に頼りたくはなかった。
こうやって一番危険な前線に出ることになる。
いくら仮免を取得しているからといって快く送り出せるはずがない。
・・・・・恋人として。
だが、ヒーローという道を選ぶ限り危険はつきまとう。
むしろ今回は目の届く範囲での行動だからまだ良かったのか・・・。
ヒーローになれと言ったのは自分だ。
しかし、こうして実際に名前が身の危険に晒される姿を見ると後悔の念も湧いてくる。
「お、サイン出してる」
マイクがスコープを覗きながら呟いた。
「あれは・・・問題ないから大丈夫ってことだな」
あらかじめ決めていたサイン。
後ろにこっそり回された手は、ひとまず安全を示すものだった。
耳につけた通信器から名前と男の声が聞こえた。
『よぉ』
『・・・あんた!』
『まさかお前が生きてるなんてな』
『あの時はドーモ』
俺達は顔を見合わせた。
「知り合いなの?」
「みたいだな」
しかし、仲が良いといったわけではなさそうだ。
『ここはどこなんだ』
『あー・・・、何か異世界に飛ばされたっぽいよ。私達』
『やっぱそうか!どうりで変だと思ったぜ!』
『・・・私にしたこと忘れてないよね?』
『まぁまぁ!昨日の敵は今日の友って言うだろ?お互い似た境遇なんだ。仲良くしようぜ?』
『こっちの世界に来たのはつい最近?』
『ああ!学校みてぇなところに落ちてそっから街に移動した』
『・・・最近ご飯食べた?』
『やっぱ肉は女に限るよな!ああ、お前は食べないんだっけ?』
『そのことなんだけど、あまり派手に動かれると困る。私の身も危険に晒されるでしょ?仲間がいるからそこに招待する。それまで人を襲わないで』
『他にも喰種がいるのか?』
『まぁ、そんなところ』
『じゃあ今すぐに案内しろ』
『それは無理。向こうの意向も聞かないと』
『お前、忘れてんのか?お前も食べたい女リストの1人なんだ。あの日は食べられなかったからなぁ・・・。ちょうど今晩の飯を探してたところなんだ』
まずい。
会話に不穏な空気が流れた。
「名前、すぐに代わりの食事を用意する。それを交渉材料にしてくれ」
俺はすぐに通信で名前に伝えた。
ミッドナイトさんの方を見るとすでに電話を掛けてくれていた。
「2時間で用意できるそうよ」
俺は頷いてそのまま名前に伝えた。
『・・・食べられるのはごめんだからね。代わりの食事を2時間後に持ってくる。もう一度落ち合いましょう。詳細はその時に』
『いいだろう。仲間に入れてもらうんだからな。お互い"譲り合わない"と』
交渉は成立した。
この会話ではっきりした。
一連のクマ騒動の犯人はこいつで、同じ喰種でも名前とは全く性質の異なるタイプであるということを。
ヒーロースーツを身に着け、誰かに見つからないよう細心の注意を払った。
「行くか」
相澤さんをはじめ、ハウンドドック先生、マイク先生、ミッドナイト先生が揃っていた。
「うん」
1件目と2件目の被害現場は近い。
まずは現場付近まで移動した。
さすがに大通りで堂々と人を捕食する喰種はいない。
裏路地を中心にあらかじめ徘徊しそうなルートに予想をつけ、手あたり次第に歩いた。
黒翼は闇夜に溶けて見えにくいが、同じ種族ならすぐに見つけられるはずだ。
「(どこにいるの・・・?)」
相澤さん達は距離を置いて私のことを見守ってくれている。
今日は接触してもすぐに捕獲することはせずに、状況を把握し、万全な準備を整える。
これ以上被害を出さないためにも最低限接触するまではこなしておきたい。
黒翼を揺らした。
あえて少し目立つように、翼を動かし塀の上に降り立つ。
バサリと羽が音を立てた。
するとその音におびき寄せられるかのように1人の人間が私に近寄ってきた。
「よう」
塀の下から声を掛けられた。
「あんた・・・!」
私は目を見開いた。
ニヒルな笑みを浮かべながら立っていたその男は、この世界にやってくる前に戦闘し、私を殺した男だった。
***************
「接触したみたいだな」
喰種は鼻が利くため、俺達は豆粒ほどにしか見えない距離から動向を伺っていた。
まさか1日目で接触できるとは。
被害者が出ているので逸る気持ちが生まれるが、焦りは禁物だ。
スコープで名前が誰かと話している姿を捉えた。
「すっげぇ心配なんですけど」
「そんなのみんな同じ気持ちよ」
マイクが落ち着かない様子でひげを触る。
いくら個性社会で様々なタイプの敵と接触してきたといえども、こんなことは前代未聞だ。
正直、できれば名前に頼りたくはなかった。
こうやって一番危険な前線に出ることになる。
いくら仮免を取得しているからといって快く送り出せるはずがない。
・・・・・恋人として。
だが、ヒーローという道を選ぶ限り危険はつきまとう。
むしろ今回は目の届く範囲での行動だからまだ良かったのか・・・。
ヒーローになれと言ったのは自分だ。
しかし、こうして実際に名前が身の危険に晒される姿を見ると後悔の念も湧いてくる。
「お、サイン出してる」
マイクがスコープを覗きながら呟いた。
「あれは・・・問題ないから大丈夫ってことだな」
あらかじめ決めていたサイン。
後ろにこっそり回された手は、ひとまず安全を示すものだった。
耳につけた通信器から名前と男の声が聞こえた。
『よぉ』
『・・・あんた!』
『まさかお前が生きてるなんてな』
『あの時はドーモ』
俺達は顔を見合わせた。
「知り合いなの?」
「みたいだな」
しかし、仲が良いといったわけではなさそうだ。
『ここはどこなんだ』
『あー・・・、何か異世界に飛ばされたっぽいよ。私達』
『やっぱそうか!どうりで変だと思ったぜ!』
『・・・私にしたこと忘れてないよね?』
『まぁまぁ!昨日の敵は今日の友って言うだろ?お互い似た境遇なんだ。仲良くしようぜ?』
『こっちの世界に来たのはつい最近?』
『ああ!学校みてぇなところに落ちてそっから街に移動した』
『・・・最近ご飯食べた?』
『やっぱ肉は女に限るよな!ああ、お前は食べないんだっけ?』
『そのことなんだけど、あまり派手に動かれると困る。私の身も危険に晒されるでしょ?仲間がいるからそこに招待する。それまで人を襲わないで』
『他にも喰種がいるのか?』
『まぁ、そんなところ』
『じゃあ今すぐに案内しろ』
『それは無理。向こうの意向も聞かないと』
『お前、忘れてんのか?お前も食べたい女リストの1人なんだ。あの日は食べられなかったからなぁ・・・。ちょうど今晩の飯を探してたところなんだ』
まずい。
会話に不穏な空気が流れた。
「名前、すぐに代わりの食事を用意する。それを交渉材料にしてくれ」
俺はすぐに通信で名前に伝えた。
ミッドナイトさんの方を見るとすでに電話を掛けてくれていた。
「2時間で用意できるそうよ」
俺は頷いてそのまま名前に伝えた。
『・・・食べられるのはごめんだからね。代わりの食事を2時間後に持ってくる。もう一度落ち合いましょう。詳細はその時に』
『いいだろう。仲間に入れてもらうんだからな。お互い"譲り合わない"と』
交渉は成立した。
この会話ではっきりした。
一連のクマ騒動の犯人はこいつで、同じ喰種でも名前とは全く性質の異なるタイプであるということを。
