【2章】知る
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わざわざ言うほどのことではないと思ってた。
でもあまりにも皆が私を気にかけるから・・・。
正直に相澤さんに打ち明けた。
「色々作ってもらっても私は味が分からない。食感は分かるけど。だから何を食べても同じ」
「そうだったのか」
「ごめんね。色々考えてくれたのに」
「いや」
「だから私のご飯は何でもいいの。ドッグフードでも一緒」
冗談を言ったつもりだったのだが、相澤さんは反応してくれなかった。
「あ、でも・・・」
私は今日の夕食を思い出した。
「お鍋は楽しかった。たとえそれが私から情報を聞き出す手段だったとしても」
ピクリと眉を動かした相澤さんを、気付いてないとでも思った?と私は小突いた。
相澤さんは小さく息を吐いた。
「確かに、名前のガードを緩めるために企画したことは認める。だが、あの時間が楽しかったと感じているのは俺達も同じだ」
決して偽物の時間ではなかったと相澤さんは言った。
それは私も感じている。
あの時間の皆の笑顔は本物だったと。
「・・・"美味しい"ってさ、"また食べたい"って思うこと?」
私の問いかけに相澤さんは軽く頷いた。
「そうだな」
「じゃあ・・・・・・・・お鍋は"美味しかった"」
*******************
蓋を開けてみれば名前は舌が肥えている訳でも何でもなく、ただ味が分からないという事実だった。
この事実が今後何に影響するかと聞かれれば、特に重要なことではないかもしれないが、ただ彼女をまた一つ知れたこと、そして彼女自身が自分の事を話そうとする姿勢を持ってくれたことは前進と呼べる。
そして何よりも「お鍋美味しかった」と言ったときの彼女は、戸惑いや嬉しさが入り混じっている表情をしていた。
その顔は我々人間と何ら変わりない、至って普通の女性だ。
世界が違っても食卓を囲むという行為は人の心を絆す作用があるらしい。
かくいう俺自身にも心情の変化はあった。
「やってみるか・・・」
自室へ戻ると俺はそのまま眠りにはつかず、パソコンを立ち上げた。
********
「正気か!イレイザー!!」
「ええ、そこに書いてある通りです」
反応は想定していた通りだ。
この日の会議は荒れに荒れた。
名前の情報を共有する会議を半月に一度設けることになったのだが、それが今日だった。
「初めて対面した時を思い出してみて下さい。彼女はこの世界のことをまるで知らなかった。マイクの攻撃が通ったのはその無知故にすぎず、最後拘束できたのも校長に驚いたからです。我々は環境によるアドバンテージを持っていた」
「そのアドバンテージは日を追うごとに無くなっていく。彼女はもう個性のことを把握しています。本気になればすぐにでも逃げ出せるでしょう。そしてそうなった彼女を捕まえるのは容易ではない」
「だが、しかし。彼女はまだこの世界で重要な存在に触れていません」
俺は自分が作成した書類を手に持ち掲げた。
「敵(ヴィラン)です」
「しかし敵の存在を知るタイミングはいずれやってくる。想定できる最悪の事態は彼女が敵になることです」
「そうなる前に我々にできることは・・・」
俺は自身に降り注いでいる視線一つ一つに目を向けた。
「彼女をヒーローにすることです」
でもあまりにも皆が私を気にかけるから・・・。
正直に相澤さんに打ち明けた。
「色々作ってもらっても私は味が分からない。食感は分かるけど。だから何を食べても同じ」
「そうだったのか」
「ごめんね。色々考えてくれたのに」
「いや」
「だから私のご飯は何でもいいの。ドッグフードでも一緒」
冗談を言ったつもりだったのだが、相澤さんは反応してくれなかった。
「あ、でも・・・」
私は今日の夕食を思い出した。
「お鍋は楽しかった。たとえそれが私から情報を聞き出す手段だったとしても」
ピクリと眉を動かした相澤さんを、気付いてないとでも思った?と私は小突いた。
相澤さんは小さく息を吐いた。
「確かに、名前のガードを緩めるために企画したことは認める。だが、あの時間が楽しかったと感じているのは俺達も同じだ」
決して偽物の時間ではなかったと相澤さんは言った。
それは私も感じている。
あの時間の皆の笑顔は本物だったと。
「・・・"美味しい"ってさ、"また食べたい"って思うこと?」
私の問いかけに相澤さんは軽く頷いた。
「そうだな」
「じゃあ・・・・・・・・お鍋は"美味しかった"」
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蓋を開けてみれば名前は舌が肥えている訳でも何でもなく、ただ味が分からないという事実だった。
この事実が今後何に影響するかと聞かれれば、特に重要なことではないかもしれないが、ただ彼女をまた一つ知れたこと、そして彼女自身が自分の事を話そうとする姿勢を持ってくれたことは前進と呼べる。
そして何よりも「お鍋美味しかった」と言ったときの彼女は、戸惑いや嬉しさが入り混じっている表情をしていた。
その顔は我々人間と何ら変わりない、至って普通の女性だ。
世界が違っても食卓を囲むという行為は人の心を絆す作用があるらしい。
かくいう俺自身にも心情の変化はあった。
「やってみるか・・・」
自室へ戻ると俺はそのまま眠りにはつかず、パソコンを立ち上げた。
********
「正気か!イレイザー!!」
「ええ、そこに書いてある通りです」
反応は想定していた通りだ。
この日の会議は荒れに荒れた。
名前の情報を共有する会議を半月に一度設けることになったのだが、それが今日だった。
「初めて対面した時を思い出してみて下さい。彼女はこの世界のことをまるで知らなかった。マイクの攻撃が通ったのはその無知故にすぎず、最後拘束できたのも校長に驚いたからです。我々は環境によるアドバンテージを持っていた」
「そのアドバンテージは日を追うごとに無くなっていく。彼女はもう個性のことを把握しています。本気になればすぐにでも逃げ出せるでしょう。そしてそうなった彼女を捕まえるのは容易ではない」
「だが、しかし。彼女はまだこの世界で重要な存在に触れていません」
俺は自分が作成した書類を手に持ち掲げた。
「敵(ヴィラン)です」
「しかし敵の存在を知るタイミングはいずれやってくる。想定できる最悪の事態は彼女が敵になることです」
「そうなる前に我々にできることは・・・」
俺は自身に降り注いでいる視線一つ一つに目を向けた。
「彼女をヒーローにすることです」