【17章】脱走
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監視されているストレスと、このままでいいのかという不安感は私の精神を蝕んでいった。
図書室からクラスへ戻る途中、会議室の前を通り過ぎた。
「・・・!」
「!!」
普通の人だったら分厚い扉の中での会話の内容なんて聞こえない。
しかし私は別だ。
漏れ聞こえた声が相澤さんだということに気付いた。
「(何か怒ってる・・・?)」
「こんな状態いつまで続けるんですか」
「少しでも不安が残る限りは続けるしかないだろう」
「監視カメラは期限を作るべきです」
「甘すぎるぞイレイザー」
私のことだ。
周囲に生徒がいないことを確認して耳をそばだてた。
相澤さんは私のために他の教員に立ち向かってくれているのだ。
じわりと目頭が熱くなった。
「逆に名字ばかりに気を取られて、他に内通者がいたらそれこそノーガード状態だ。名字だけでなくもっと他にも目を向けるべきです」
「相澤くんの言うことも正しい」
その後、議論は10分程続いたが、結局現状維持の結論となっていた。
会議が終わってガタガタと椅子から立ち上がる音が聞こえた。
私はサッと柱の影に隠れた。
「消太、あまり肩入れし過ぎる発言すると立場悪くなるぞ」
「分かってる。今回のは当然の主張だと思うが」
「優しいね~」
気配を消した私の存在に誰も気づくことはなかった。
私は借りてきた本を胸の前でギュッと抱えた。
「(私のせいで相澤さんの立場が悪くなる・・・)」
私は踵を返して、教室ではなく別の場所へと向かった。
***********
「相澤さん、今日そっち行ってもいい?」
電話越しに聞こえた声は不安気だった。
入寮してからはいらぬ心配を掛けぬようにするためか、部屋に誘うのは俺からの方が多かった。
「分かった、待ってる」
元々散らかってはないが、出ていた物を棚に仕舞った。
あいつは鼻がいいからな。
適当に消臭剤を振っておく。
コンコンとドアがノックされる音が聞こえた。
「こんばんは」
開けると名前が周囲を気にした様子で中へ入った。
飲み物をテーブルの上に置いた。
名前のために用意したレモンティー。
俺1人だと全く減らない。
「ありがとう」
世間話もそこそこに名前は本題を切り出した。
「今日の会議・・・聞いちゃったんだ」
俺は目を見開いた。
「ごめんなさい」
「いや・・・あそこ扉分厚いだろ」
「耳もいいからね」
「ハァ・・・」
最悪だ。
監視カメラをどう言い訳するか考えた。
「あ、監視カメラのことはね!前から気付いてたから大丈夫」
「は?」
これまた二重の驚きだ。
まさかすでに気付いていたとは。
「正直、ここまで信用されてないんだって悲しかったけど・・・」
「すまない」
「でも!相澤さんは私のこと庇ってくれてたよね。それは本当に嬉しかった」
「だが、どうあれあれはやりすぎだ」
「ありがとう」
礼を言われることなんて何一つしていない。
「でも・・・私は敵じゃない」
名前は俺の目をまっすぐ見てそう言った。
「ああ、分かってる」
「相澤さんも言ってたでしょ?私不安なの・・・私じゃないってことは他にいる可能性がある」
「そうだな」
「いつまた襲われるか分からない。皆が傷つくんじゃないか、爆豪くんがまた誘拐されるんじゃないかって思ったら不安なの」
この世界にやってきたばかりの名前からは想像もつかない発言だった。
ずっと自分自身を守ることだけをしてきた彼女が他人の心配をしている。
きっかけはUSJ事件だったな。
これまでの軌跡を考えると名前が敵である方が辻褄が合わなくなる。
もし名前が敵であるならUSJ事件の際、瀕死の俺を助ける理由なんてない。
「寮の周りには監視ロボットだっているし、教員も常駐している」
だから、安心しろ。と名前の不安を少しでも和らげようとしたが、彼女はとんでもない提案をした。
「私、死柄木を捕まえたい」
図書室からクラスへ戻る途中、会議室の前を通り過ぎた。
「・・・!」
「!!」
普通の人だったら分厚い扉の中での会話の内容なんて聞こえない。
しかし私は別だ。
漏れ聞こえた声が相澤さんだということに気付いた。
「(何か怒ってる・・・?)」
「こんな状態いつまで続けるんですか」
「少しでも不安が残る限りは続けるしかないだろう」
「監視カメラは期限を作るべきです」
「甘すぎるぞイレイザー」
私のことだ。
周囲に生徒がいないことを確認して耳をそばだてた。
相澤さんは私のために他の教員に立ち向かってくれているのだ。
じわりと目頭が熱くなった。
「逆に名字ばかりに気を取られて、他に内通者がいたらそれこそノーガード状態だ。名字だけでなくもっと他にも目を向けるべきです」
「相澤くんの言うことも正しい」
その後、議論は10分程続いたが、結局現状維持の結論となっていた。
会議が終わってガタガタと椅子から立ち上がる音が聞こえた。
私はサッと柱の影に隠れた。
「消太、あまり肩入れし過ぎる発言すると立場悪くなるぞ」
「分かってる。今回のは当然の主張だと思うが」
「優しいね~」
気配を消した私の存在に誰も気づくことはなかった。
私は借りてきた本を胸の前でギュッと抱えた。
「(私のせいで相澤さんの立場が悪くなる・・・)」
私は踵を返して、教室ではなく別の場所へと向かった。
***********
「相澤さん、今日そっち行ってもいい?」
電話越しに聞こえた声は不安気だった。
入寮してからはいらぬ心配を掛けぬようにするためか、部屋に誘うのは俺からの方が多かった。
「分かった、待ってる」
元々散らかってはないが、出ていた物を棚に仕舞った。
あいつは鼻がいいからな。
適当に消臭剤を振っておく。
コンコンとドアがノックされる音が聞こえた。
「こんばんは」
開けると名前が周囲を気にした様子で中へ入った。
飲み物をテーブルの上に置いた。
名前のために用意したレモンティー。
俺1人だと全く減らない。
「ありがとう」
世間話もそこそこに名前は本題を切り出した。
「今日の会議・・・聞いちゃったんだ」
俺は目を見開いた。
「ごめんなさい」
「いや・・・あそこ扉分厚いだろ」
「耳もいいからね」
「ハァ・・・」
最悪だ。
監視カメラをどう言い訳するか考えた。
「あ、監視カメラのことはね!前から気付いてたから大丈夫」
「は?」
これまた二重の驚きだ。
まさかすでに気付いていたとは。
「正直、ここまで信用されてないんだって悲しかったけど・・・」
「すまない」
「でも!相澤さんは私のこと庇ってくれてたよね。それは本当に嬉しかった」
「だが、どうあれあれはやりすぎだ」
「ありがとう」
礼を言われることなんて何一つしていない。
「でも・・・私は敵じゃない」
名前は俺の目をまっすぐ見てそう言った。
「ああ、分かってる」
「相澤さんも言ってたでしょ?私不安なの・・・私じゃないってことは他にいる可能性がある」
「そうだな」
「いつまた襲われるか分からない。皆が傷つくんじゃないか、爆豪くんがまた誘拐されるんじゃないかって思ったら不安なの」
この世界にやってきたばかりの名前からは想像もつかない発言だった。
ずっと自分自身を守ることだけをしてきた彼女が他人の心配をしている。
きっかけはUSJ事件だったな。
これまでの軌跡を考えると名前が敵である方が辻褄が合わなくなる。
もし名前が敵であるならUSJ事件の際、瀕死の俺を助ける理由なんてない。
「寮の周りには監視ロボットだっているし、教員も常駐している」
だから、安心しろ。と名前の不安を少しでも和らげようとしたが、彼女はとんでもない提案をした。
「私、死柄木を捕まえたい」
