【16章】夏祭り
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「お祭り?」
「うん!雄英高校の近くでやるんだって。相澤先生にはもう外出許可取ってあるよ」
透ちゃんがピョンピョン飛び跳ねながら、私の服を引っ張った。
「名前ちゃんも一緒に行こうよ!」
「女性陣の浴衣は私にお任せください」
百ちゃんは浴衣を作る気満々だ。
「名前さんは、落ち着いた大人の色がお似合いなので紫ベースで挿し色に赤の華を入れてみましたわ!」
「あ、もう作ってくれてるんだね」
でも、私外出していいのかな・・・。
スマホを取り出して相澤さんに確認取ろうとした時、寮の入り口が開いた。
「相澤先生!」
「お前ら、夏祭りに行くにあたって注意事項がある。必ず複数人行動すること。単独行動した奴は謹慎な」
はーい!と元気な返事は、年相応だ。
私はクスリと笑いながら、女子が浴衣できゃっきゃしている隙を見て相澤さんに近寄った。
「相澤さん、私はやっぱり行ったらダメだよね?」
「俺が監視することを条件に許可を貰ってきた」
「いいの?」
「ああ。それ・・・八百万に作ってもらったのか?」
「うん。器用だよね」
「行きたくないのか?」
「え?」
「あまり浮かない顔をしてる」
「そうかな?そんなことないよ!」
私は逃げるようにして、女子の輪に戻った。
********
「なんっつーか、名字ってそうやって見たら大人のおねーさんって感じだよな!」
上鳴くんの言葉にドキリとした。
「それは、どういう意味かな?老けてるってこと?」
軽く小突くと、違う違う!褒めてるって!と焦っていた。
「名字、浴衣似合ってるな」
「ありがとう、轟くん。ほら、上鳴くんはモテるためにはこういうこと言わないと」
「イケメン滅べ」
百ちゃんは作るだけでなく、着付けまでできるから脱帽してしまう。
女子全員着付けが完了し、男子の元へ戻った。
反応は上々で、突進してくる峰田くんを安定の耳郎ちゃんがイヤホンジャックでぶっさした。
もうそろそろ学べばいいのに。
そして冒頭のやり取りである。
やっぱり制服マジックがないと高校生は厳しいか。
私は内心焦りながら、極力目立たないように端っこに寄った。
「それじゃあ行こうぜ!!」
切島くんの合図で、私達は寮を出た。
慣れない下駄を履いて、最後尾を歩いた。
「相澤先生も来るの?」
「万が一のためだ。俺のことは気にするな」
本当は私の監視だけどね。
せっかくの休みなのに申し訳なく思った。
「花火もやるらしいよ!良い場所見つけようよ」
「よっしゃ!場所取ったら買い出し組と別れるか!」
「私金魚すくいやりたーい!」
「飼うの?」
「口田の部屋とか?」
ワイワイと盛り上がりながら、会場へと向かった。
徐々に近づいてくるお祭りの音。
ドンドンと太鼓の音が聞こえ、出店の明かりが見える。
「・・・」
「どうした?」
少し歩くペースが落ちてしまった私を気遣って相澤さんも歩幅を狭めた。
「ちょっと・・・でも大丈夫」
「お前の大丈夫は信用ならん」
乾いた笑いが漏れた。
「緑谷」
相澤さんは私達の少し前を歩いていた緑谷くんを呼び止めた。
「名字を少し休ませてから後で合流する」
「え、大丈夫?名字さん」
「うん。ちょっと慣れない下駄に苦戦してるだけ」
「騒がれると面倒だから他の奴には気づくまで言うな。分かってると思うが複数行動守れよ」
「分かりました」
緑谷くんは戸惑いながらも皆の列に戻っていった。
「抜けるぞ」
相澤さんに手を引かれて横道に逸れた。
「手・・・見られたらやばくない?」
「皆祭りに夢中だ」
それもそうか。
ぼちぼち道沿いに出てきた屋台に皆目を引かれている。
喧騒から外れ、私は相澤さんに導かれるまま足を進めた。
********
川のせせらぎを聞きながら、橋の欄干に手を掛けた。
「ふぅ・・・」
名前は大きく深呼吸をした。
「・・・思い出したのか」
初めから乗り気ではなさそうだった。
嫌なら断ればいいものの、変なところで協調性を発揮しようとする。
今日ついてきたのも、表向きは監視だが名前のことが心配だった。
やはりメンタルに不安定さが残る。
辛い過去を背負い過ぎているのだ。
ついてきて正解だった。
会場に近づけば近づくほど、徐々に隣を歩く彼女の呼吸が乱れていくのが分かった。
青白い顔で「大丈夫」と言われても何の説得力もない。
名前は俺の問いかけに小さく頷いた。
「もう、20年ぐらい前の話なのにね」
長い睫毛が震えた。
「急に昨日の事の様に思い出しちゃった」
「ここには喰種捜査官なんて者はいない」
「うん・・・」
「名前を傷つける者はいない」
「・・・どうして彼は誰にも言わないって言ったのに私のこと売ったのかな」
「まだ小学生だったんだろ?仕方ないさ」
「そうだよね」
「ごちゃごちゃ考えたところで、俺達は本人じゃないから分からない。せっかく八百万が作ってくれた浴衣が勿体ない。楽しまないと損だろ」
「・・・お祭りって何があるの?」
「食べ物や、射的みたいな遊戯もある」
「へ~・・・」
「ほら、あいつら探さないと合流できなくなるぞ」
呼吸が整って、精神的にも落ち着きを取り戻してきたところで無理矢理会場へと足を向けさせた。
「言うの遅くなったが・・・浴衣、似合ってる」
柄に合わないことを言ったが、一瞬目を丸くした名前が嬉しそうに笑った。
前の世界でのことは話を聞くことはできても、本当の意味で理解することはできない。
根本が違い過ぎる。
だから俺にできることは、少しでも忘れさせてやれる楽しい時間を作る努力ぐらいだ。
「うん!雄英高校の近くでやるんだって。相澤先生にはもう外出許可取ってあるよ」
透ちゃんがピョンピョン飛び跳ねながら、私の服を引っ張った。
「名前ちゃんも一緒に行こうよ!」
「女性陣の浴衣は私にお任せください」
百ちゃんは浴衣を作る気満々だ。
「名前さんは、落ち着いた大人の色がお似合いなので紫ベースで挿し色に赤の華を入れてみましたわ!」
「あ、もう作ってくれてるんだね」
でも、私外出していいのかな・・・。
スマホを取り出して相澤さんに確認取ろうとした時、寮の入り口が開いた。
「相澤先生!」
「お前ら、夏祭りに行くにあたって注意事項がある。必ず複数人行動すること。単独行動した奴は謹慎な」
はーい!と元気な返事は、年相応だ。
私はクスリと笑いながら、女子が浴衣できゃっきゃしている隙を見て相澤さんに近寄った。
「相澤さん、私はやっぱり行ったらダメだよね?」
「俺が監視することを条件に許可を貰ってきた」
「いいの?」
「ああ。それ・・・八百万に作ってもらったのか?」
「うん。器用だよね」
「行きたくないのか?」
「え?」
「あまり浮かない顔をしてる」
「そうかな?そんなことないよ!」
私は逃げるようにして、女子の輪に戻った。
********
「なんっつーか、名字ってそうやって見たら大人のおねーさんって感じだよな!」
上鳴くんの言葉にドキリとした。
「それは、どういう意味かな?老けてるってこと?」
軽く小突くと、違う違う!褒めてるって!と焦っていた。
「名字、浴衣似合ってるな」
「ありがとう、轟くん。ほら、上鳴くんはモテるためにはこういうこと言わないと」
「イケメン滅べ」
百ちゃんは作るだけでなく、着付けまでできるから脱帽してしまう。
女子全員着付けが完了し、男子の元へ戻った。
反応は上々で、突進してくる峰田くんを安定の耳郎ちゃんがイヤホンジャックでぶっさした。
もうそろそろ学べばいいのに。
そして冒頭のやり取りである。
やっぱり制服マジックがないと高校生は厳しいか。
私は内心焦りながら、極力目立たないように端っこに寄った。
「それじゃあ行こうぜ!!」
切島くんの合図で、私達は寮を出た。
慣れない下駄を履いて、最後尾を歩いた。
「相澤先生も来るの?」
「万が一のためだ。俺のことは気にするな」
本当は私の監視だけどね。
せっかくの休みなのに申し訳なく思った。
「花火もやるらしいよ!良い場所見つけようよ」
「よっしゃ!場所取ったら買い出し組と別れるか!」
「私金魚すくいやりたーい!」
「飼うの?」
「口田の部屋とか?」
ワイワイと盛り上がりながら、会場へと向かった。
徐々に近づいてくるお祭りの音。
ドンドンと太鼓の音が聞こえ、出店の明かりが見える。
「・・・」
「どうした?」
少し歩くペースが落ちてしまった私を気遣って相澤さんも歩幅を狭めた。
「ちょっと・・・でも大丈夫」
「お前の大丈夫は信用ならん」
乾いた笑いが漏れた。
「緑谷」
相澤さんは私達の少し前を歩いていた緑谷くんを呼び止めた。
「名字を少し休ませてから後で合流する」
「え、大丈夫?名字さん」
「うん。ちょっと慣れない下駄に苦戦してるだけ」
「騒がれると面倒だから他の奴には気づくまで言うな。分かってると思うが複数行動守れよ」
「分かりました」
緑谷くんは戸惑いながらも皆の列に戻っていった。
「抜けるぞ」
相澤さんに手を引かれて横道に逸れた。
「手・・・見られたらやばくない?」
「皆祭りに夢中だ」
それもそうか。
ぼちぼち道沿いに出てきた屋台に皆目を引かれている。
喧騒から外れ、私は相澤さんに導かれるまま足を進めた。
********
川のせせらぎを聞きながら、橋の欄干に手を掛けた。
「ふぅ・・・」
名前は大きく深呼吸をした。
「・・・思い出したのか」
初めから乗り気ではなさそうだった。
嫌なら断ればいいものの、変なところで協調性を発揮しようとする。
今日ついてきたのも、表向きは監視だが名前のことが心配だった。
やはりメンタルに不安定さが残る。
辛い過去を背負い過ぎているのだ。
ついてきて正解だった。
会場に近づけば近づくほど、徐々に隣を歩く彼女の呼吸が乱れていくのが分かった。
青白い顔で「大丈夫」と言われても何の説得力もない。
名前は俺の問いかけに小さく頷いた。
「もう、20年ぐらい前の話なのにね」
長い睫毛が震えた。
「急に昨日の事の様に思い出しちゃった」
「ここには喰種捜査官なんて者はいない」
「うん・・・」
「名前を傷つける者はいない」
「・・・どうして彼は誰にも言わないって言ったのに私のこと売ったのかな」
「まだ小学生だったんだろ?仕方ないさ」
「そうだよね」
「ごちゃごちゃ考えたところで、俺達は本人じゃないから分からない。せっかく八百万が作ってくれた浴衣が勿体ない。楽しまないと損だろ」
「・・・お祭りって何があるの?」
「食べ物や、射的みたいな遊戯もある」
「へ~・・・」
「ほら、あいつら探さないと合流できなくなるぞ」
呼吸が整って、精神的にも落ち着きを取り戻してきたところで無理矢理会場へと足を向けさせた。
「言うの遅くなったが・・・浴衣、似合ってる」
柄に合わないことを言ったが、一瞬目を丸くした名前が嬉しそうに笑った。
前の世界でのことは話を聞くことはできても、本当の意味で理解することはできない。
根本が違い過ぎる。
だから俺にできることは、少しでも忘れさせてやれる楽しい時間を作る努力ぐらいだ。
