似たもの同士/轟
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焦凍くんは体育祭以降、どこか変わったと思う。
なんというか・・・ツン度が減った?
私達がお付き合いを始めたのは体育祭後。
幼馴染の彼から告白されたときは驚きの余り椅子から転げ落ちそうだった。
"・・・名前は俺のことどう思ってる?"
"どうって?"
"・・・"
"・・・?"
"俺は付き合いたいって思ってる"
"え!?えっと・・・それはその、男女交際的な意味で?"
こくりと頷く彼の表情は相変わらず感情が読み取りづらくて。
告白してくれてるんだよね?
もう少し顔を赤らめるとかそういうのあっても良くない?
"えっ、何で私?"
"好きだから・・・以外に答えあるか?”
馬鹿な私からは大変失礼な質問が飛び出したのだけれど、ストレートパンチを食らい見事ノックアウト。
こてんと首を傾げる焦凍くんは可愛かった。
そもそも、私が彼の告白を断る理由などないのだ。
私も彼のことが好きだったのだから。
こうして始まったお付き合い。
幼馴染から恋人へとステップアップしたのだが、そもそも幼馴染といえども彼のことを理解できているかといえば正直怪しい。
皆と大して変わらない気がする。
私は今、食堂で前に座って蕎麦を啜っている焦凍くんに目を向けた。
「・・・何だ?」
「・・・今何考えてる?」
「特に何も。蕎麦うめぇな・・・ぐらい」
「そっか」
ならもう少し美味しそうな表情すればいいのに!
相変わらず涼し気な目元で黙々と箸を動かしている。
「・・・名前は?」
「え?」
「名前は何考えてるんだ?」
「えっ、なんだろ」
聞き返されて思わず詰まってしまった。
焦凍くんのことぐらいしか考えてなかった。
「俺に聞いといてなんだそれ」
フッと笑いを漏らす焦凍くんに胸が高鳴った。
美人は三日で飽きるとか言った奴嘘つきだ。
私は長年見てるけど未だに飽きない。
「もうそろそろ行くか」
食堂は混んでいるので、食べ終わったら席を空けた方がいい。
まだ昼休みは残っているが、私達は立ち上がって食堂を出た。
「すみません」
残り時間を中庭で一緒に過ごそうと思い、移動している最中一人の女子生徒に声を掛けられた。
「轟君、少し時間いいですか?」
私はすぐに察知した。
「(告白だ・・・)」
焦凍くんが困った表情で私を見た。
「あ、私教室戻るね」
「ああ、悪いな」
実は体育祭以後こういったケースが良くある。
ツン度が減って喋りかけやすくなったことで、アプローチしてくる女子が増えたのだ。
漠然とした不安感はある。
焦凍くんのこと信じてるけど、彼だってお年頃なのだから私より美人で好みの女性が現れたら靡いてしまうのではないか・・・とか。
そして意外なのは、彼が律儀にも呼び出しに応じていることだ。
中学生の頃も呼び出しは多々あったが、あの頃は「悪いが無理だ」と一蹴していた。
それはそれで目の前で私はオロオロしてしまっていたのだが。
結局の所、焦凍くんが応じようが応じまいがモヤモヤしてしまうのだ。
「ふう・・・」
小さく息を吐いて、私は自身のクラスである普通科へと戻った。
****************
『今日、家来れるか?』
そう連絡が入ったのはつい先ほど。
特に予定もないので了承のスタンプを返した。
ヒーロー科の授業が終わるのを待ち、一緒に帰路についた。
「お邪魔します」
「誰もいないみたいだな・・・」
誰もいない彼氏の家って普通はもっと緊張するものなのだろうか。
小さい頃から通い慣れたこの家は第二の我が家と言っても過言ではない。
特に冬美さんが可愛がってくれるので、彼女は姉のような存在だ。
そう思えば、私達の肩書は確かに幼馴染から恋人へ変わったが、実質は何も変わっていないように思える。
焦凍くんの部屋で鞄を下ろして、いつもの定位置に座る。
「ねぇねぇ。今日のあれってやっぱり告白だった?」
ちゃんと断ってると分かってはいても、どうしても確認したくなる。
確認したからといってこの漠然とした不安感が消えるかといえば否だが、断ったと焦凍くんから聞ければ少しは気持ちが楽になるのだ。
「ああ」
「断った・・・よね?」
「・・・?当たり前だろ」
「良かった」
ホッと胸を撫で下ろす私とは対称的に彼は口を尖らせた。
「どうしたの?」
「・・・何で」
小さく呟く声を私は耳を寄せて拾った。
「何でそんなこといちいち聞くんだ?」
焦凍くんの問いかけに私はマズイと思った。
いちいち詮索するようなことを言ってしまうのは彼女としてマナー違反だった。
慌てて謝った。
「ご、ごめんね。嫌だったよね。プライバシーだし」
肩を落とす私の前で焦凍くんは首を横に振った。
「そうじゃねぇ。・・・ただ」
言葉を選ぼうとする彼を待った。
「最近、呼び出し食らうたびに名前がそう聞いてくることが疑問だった。名前がいるから断らないわけないのに」
私は思わず下を向いてしまった。
「なんか・・・名前が何考えてんのかたまに分からない時がある」
「ええっ!?」
私そんなに分かりにくいかな!?
どっちかというと分かりやすい方だと思っていた。
「名前に好きって言われたこともねぇし」
パッと顔を上げると焦凍くんと目が合った。
いつものクールな目ではなく、その瞳の奥には少し不安さが見え隠れしていた。
思い返せば、確かに私はあの時告白に対して首を縦に振っただけで、私も好きとは言わなかった気がする。
私の中で焦凍くんが好きなんて当たり前のことすぎて。
そっか、私も言葉足らずだったんだ。
「好きだよ、私は焦凍くんが一番好き」
面と向かって言うのは照れくさいけれど、ちゃんと言わなきゃって思った。
だって彼の瞳は私と同じだったから。
「ん。俺も」
そっと握られた手は温かかった。
「あのね」
そして、私も不安な事があるならちゃんと口にしなければ。
「最近、律儀に毎回呼び出しに応じてるのは何で?」
昔は呼び出し無視してたよね?
そう言えば彼はきょとんとした顔で私を見つめ、「ああ」と頷いた。
「名前のこと好きになって、告白したとき思った。今までの女子もこんな気持ちだったのかって。想いには応えられねぇけど、向き合うことぐらいはしようと思った」
そう言う焦凍くんは格好良くて、彼を変えたのが自分への想いだと思うと照れくさかった。
「これからは、思ったことちゃんとお互い口にしないとね」
「ん」
これにて一件落着。
そう思っていたら焦凍くんは私に向き直った。
「・・・キスしてぇ」
「え!?」
「思ったこと口にしただけだ」
「えっと・・・」
「ダメか?」
「・・・ダメじゃないです」
なんというか・・・ツン度が減った?
私達がお付き合いを始めたのは体育祭後。
幼馴染の彼から告白されたときは驚きの余り椅子から転げ落ちそうだった。
"・・・名前は俺のことどう思ってる?"
"どうって?"
"・・・"
"・・・?"
"俺は付き合いたいって思ってる"
"え!?えっと・・・それはその、男女交際的な意味で?"
こくりと頷く彼の表情は相変わらず感情が読み取りづらくて。
告白してくれてるんだよね?
もう少し顔を赤らめるとかそういうのあっても良くない?
"えっ、何で私?"
"好きだから・・・以外に答えあるか?”
馬鹿な私からは大変失礼な質問が飛び出したのだけれど、ストレートパンチを食らい見事ノックアウト。
こてんと首を傾げる焦凍くんは可愛かった。
そもそも、私が彼の告白を断る理由などないのだ。
私も彼のことが好きだったのだから。
こうして始まったお付き合い。
幼馴染から恋人へとステップアップしたのだが、そもそも幼馴染といえども彼のことを理解できているかといえば正直怪しい。
皆と大して変わらない気がする。
私は今、食堂で前に座って蕎麦を啜っている焦凍くんに目を向けた。
「・・・何だ?」
「・・・今何考えてる?」
「特に何も。蕎麦うめぇな・・・ぐらい」
「そっか」
ならもう少し美味しそうな表情すればいいのに!
相変わらず涼し気な目元で黙々と箸を動かしている。
「・・・名前は?」
「え?」
「名前は何考えてるんだ?」
「えっ、なんだろ」
聞き返されて思わず詰まってしまった。
焦凍くんのことぐらいしか考えてなかった。
「俺に聞いといてなんだそれ」
フッと笑いを漏らす焦凍くんに胸が高鳴った。
美人は三日で飽きるとか言った奴嘘つきだ。
私は長年見てるけど未だに飽きない。
「もうそろそろ行くか」
食堂は混んでいるので、食べ終わったら席を空けた方がいい。
まだ昼休みは残っているが、私達は立ち上がって食堂を出た。
「すみません」
残り時間を中庭で一緒に過ごそうと思い、移動している最中一人の女子生徒に声を掛けられた。
「轟君、少し時間いいですか?」
私はすぐに察知した。
「(告白だ・・・)」
焦凍くんが困った表情で私を見た。
「あ、私教室戻るね」
「ああ、悪いな」
実は体育祭以後こういったケースが良くある。
ツン度が減って喋りかけやすくなったことで、アプローチしてくる女子が増えたのだ。
漠然とした不安感はある。
焦凍くんのこと信じてるけど、彼だってお年頃なのだから私より美人で好みの女性が現れたら靡いてしまうのではないか・・・とか。
そして意外なのは、彼が律儀にも呼び出しに応じていることだ。
中学生の頃も呼び出しは多々あったが、あの頃は「悪いが無理だ」と一蹴していた。
それはそれで目の前で私はオロオロしてしまっていたのだが。
結局の所、焦凍くんが応じようが応じまいがモヤモヤしてしまうのだ。
「ふう・・・」
小さく息を吐いて、私は自身のクラスである普通科へと戻った。
****************
『今日、家来れるか?』
そう連絡が入ったのはつい先ほど。
特に予定もないので了承のスタンプを返した。
ヒーロー科の授業が終わるのを待ち、一緒に帰路についた。
「お邪魔します」
「誰もいないみたいだな・・・」
誰もいない彼氏の家って普通はもっと緊張するものなのだろうか。
小さい頃から通い慣れたこの家は第二の我が家と言っても過言ではない。
特に冬美さんが可愛がってくれるので、彼女は姉のような存在だ。
そう思えば、私達の肩書は確かに幼馴染から恋人へ変わったが、実質は何も変わっていないように思える。
焦凍くんの部屋で鞄を下ろして、いつもの定位置に座る。
「ねぇねぇ。今日のあれってやっぱり告白だった?」
ちゃんと断ってると分かってはいても、どうしても確認したくなる。
確認したからといってこの漠然とした不安感が消えるかといえば否だが、断ったと焦凍くんから聞ければ少しは気持ちが楽になるのだ。
「ああ」
「断った・・・よね?」
「・・・?当たり前だろ」
「良かった」
ホッと胸を撫で下ろす私とは対称的に彼は口を尖らせた。
「どうしたの?」
「・・・何で」
小さく呟く声を私は耳を寄せて拾った。
「何でそんなこといちいち聞くんだ?」
焦凍くんの問いかけに私はマズイと思った。
いちいち詮索するようなことを言ってしまうのは彼女としてマナー違反だった。
慌てて謝った。
「ご、ごめんね。嫌だったよね。プライバシーだし」
肩を落とす私の前で焦凍くんは首を横に振った。
「そうじゃねぇ。・・・ただ」
言葉を選ぼうとする彼を待った。
「最近、呼び出し食らうたびに名前がそう聞いてくることが疑問だった。名前がいるから断らないわけないのに」
私は思わず下を向いてしまった。
「なんか・・・名前が何考えてんのかたまに分からない時がある」
「ええっ!?」
私そんなに分かりにくいかな!?
どっちかというと分かりやすい方だと思っていた。
「名前に好きって言われたこともねぇし」
パッと顔を上げると焦凍くんと目が合った。
いつものクールな目ではなく、その瞳の奥には少し不安さが見え隠れしていた。
思い返せば、確かに私はあの時告白に対して首を縦に振っただけで、私も好きとは言わなかった気がする。
私の中で焦凍くんが好きなんて当たり前のことすぎて。
そっか、私も言葉足らずだったんだ。
「好きだよ、私は焦凍くんが一番好き」
面と向かって言うのは照れくさいけれど、ちゃんと言わなきゃって思った。
だって彼の瞳は私と同じだったから。
「ん。俺も」
そっと握られた手は温かかった。
「あのね」
そして、私も不安な事があるならちゃんと口にしなければ。
「最近、律儀に毎回呼び出しに応じてるのは何で?」
昔は呼び出し無視してたよね?
そう言えば彼はきょとんとした顔で私を見つめ、「ああ」と頷いた。
「名前のこと好きになって、告白したとき思った。今までの女子もこんな気持ちだったのかって。想いには応えられねぇけど、向き合うことぐらいはしようと思った」
そう言う焦凍くんは格好良くて、彼を変えたのが自分への想いだと思うと照れくさかった。
「これからは、思ったことちゃんとお互い口にしないとね」
「ん」
これにて一件落着。
そう思っていたら焦凍くんは私に向き直った。
「・・・キスしてぇ」
「え!?」
「思ったこと口にしただけだ」
「えっと・・・」
「ダメか?」
「・・・ダメじゃないです」
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