【2章】ようこそ、煙ファミリーへ
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「来たか。遅かったな」
目的の部屋に案内されると、そこには犬を抱えた男性がすでに座っていた。
「ちょっと色々あってな。名前はオレの隣来いよ」
喋り方こそ男性っぽいが、こういう気が利くところは面倒見のいい姉御で女性味を感じた。
私は言われた通り能井さんの隣に腰を下ろした。
「こんばんは。すみません。私まで頂いてしまって・・・」
「煙 だ」
「よろしくお願いします。私は名前です」
煙、ということはこの人がファミリーのボス・・・。
私は重力に逆らっている赤い髪の毛が気になってしまった。
「(どうやってセットしてるんだろう・・・)」
全員席について間もなく食事が運ばれてきた。
ファミリーの中にポツンと入り込んでいる私。
場違い感半端ない。
「わ、このきのこ美味しい」
「分かるか、この良さが」
「はい。色々な種類が入っていていいですね」
「そうだろう」
煙さんはうんうんと頷いた。
きのこ好きなのかな?
こう、もっとステーキとかそういうの好きそうに見えるので、意外だし可愛らしいと思ってしまった。
「きのこにはもう飽きたぜ」
隣の能井さんはぶすりと文句を垂れた。
「そう言うな。だから普段の食事は別だろう」
私はきのこスープを飲みながら首を傾げた。
「この二人は従兄妹だ」
左側に座った心さんが耳打ちして教えてくれた。
「あ、だから・・・」
能井さんの煙さんに対する態度がファミリーのボスに向けるものにしては雑だと感じたが、そういうことなのか。
・・・全然似てないな。
まあ従兄妹はそんなに似ないか。
「ところで・・・」
煙さんはきのこのパイ包みにナイフを差し込みながら、私に目線をやった。
「うちに入りたいらしいな。魔法は治癒だったか・・・」
「ごほっ・・・」
私は思わず咽てしまった。
「えっ・・・?」
入りたいなんて全然思ってないんだけど、え、どういうこと・・・?
能井さんが言ってた"特別"ってまさか・・・。
私がオロオロしていると、斜め向かいに座っていた藤田さんが慌てて口を挟んだ。
「すみません!まだ彼女には話してなくて・・・」
「どういうことだ、藤田」
「正確には彼女をファミリーに推薦したいんです」
「ほう、偉くなったじゃねぇか、藤田」
「そ、そういうつもりじゃなくてっ」
からかう心さんに、藤田さんは慌てて反論し、私の方を見た。
「彼女の魔法は希少です。治癒系で、魔法の使用も問題なく行えています。能井さんは前線に出るから、肝心な時に行動不能状態になっていることも多いので、後方支援員に治癒系のファミリーがもう一人いてもいいんじゃないかなぁって・・・」
「藤田さん・・・」
私はカラトリーを置いて席を立った。
「ごちそうさまでした」
早歩きで出口の方に向かった。
「待って!」
「ひどい。私の魔法は話さない、悪用しないって約束したのに」
「聞いて!これは名前ちゃんのためでもあるんだ」
「私のため?」
ファミリーのためでしょ?
せっかく藤田さんと仲良くなれたと思ったのに。
彼は私に打算で近づいていたのだと思い、悲しくなった。
「離して・・・。家に帰りたい」
捕まれた手首を引っ張って剥がそうとした。
「せっかくお友達ができたと思ったのに・・・」
堪えきれなかった涙がポロポロと頬を伝った。
「名前ちゃん・・・」
藤田さんが表情を歪ませた。
もう一度「帰りたい」と告げ、空いている手を扉に掛けた、その時。
藤田さんと私の上に黒い影が落ちた。
「藤田の言っていることは本当だ」
心さんが私達を見下ろしていた。
「アンタが住んでいるあの辺は十字目のアジトだった」
「十字目・・・?」
「魔法が使えない魔法使いだ。あいつらは組織的に上級魔法使いを何人も殺してる」
「それって・・・」
「俺らは十字目のボスを探してる。あそこに下っ端のやつらが溜まってた」
結局下っ端すぎて収穫なしだったがな、と。
つまり、あの時黒い袋に入れられてた人が十字目・・・。
「アンタは俺を助けてる。あの場に居た奴らは全員殺したが、もっと別の場所から見られていたら・・・」
私は言われていることを理解した。
つまり、十字目の人にあの場を見られていたら煙ファミリーの一員だと思われてしまっている可能性があって、戻ったら殺される・・・。
「そうでなくてもアンタの魔法は希少だ。今回の件がなくても、あんな治安の悪い場所に住んでいたら拉致されてひどい目に遭ってもなんら不思議じゃない」
どこで、誰が見ているかなんて分からない。
それこそ"他人の魔法が知れる魔法"なんてものを持っている人が居るかもしれない。
今まで無事で居られたことが奇跡のように感じた。
「本当にっ、誓ってっ、悪用するつもりはなくて・・・。ここで働けばお給料だって出るし、部屋も貸してもらえる。あそこに住んで職を探すよりいいと思うんだ」
心さんがワンクッション入れてくれたおかげで、今度は藤田さんの言葉が私の中にスッと入ってきた。
「私に・・・できるかな」
怖がりだし、肝心な時に気絶しちゃいそう。
「俺の魔法ってさ、ケムリを弾丸のように飛ばす魔法なんだ・・・」
ケムリを弾丸のように飛ばす・・・?
「銃・・・みたいな?」
「そんないいもんじゃないよ。何その魔法?って感じでしょ。本当そのまま何の役にも立たないクズ魔法。そもそも俺、ケムリ自体そんなに出せないんだ。心さんや能井さんみたいなフィジカルもないし・・・。それでもここに居場所がある。そんなすごい魔法持ってる名前ちゃんなら作れるよ、居場所」
確かに藤田さんをはじめ、みんないい人そうだし・・・。
先ほどば場違いだと思ったが、今度はあの席が自分の居場所のように見えた。
「煙さんは・・・私が入るのはいいのでしょうか」
「治癒魔法だろ。何人居ても困るもんじゃない。藤田が言った通り、ここで働けばいい」
こうして私は煙ファミリーの一員となったのであった。
目的の部屋に案内されると、そこには犬を抱えた男性がすでに座っていた。
「ちょっと色々あってな。名前はオレの隣来いよ」
喋り方こそ男性っぽいが、こういう気が利くところは面倒見のいい姉御で女性味を感じた。
私は言われた通り能井さんの隣に腰を下ろした。
「こんばんは。すみません。私まで頂いてしまって・・・」
「
「よろしくお願いします。私は名前です」
煙、ということはこの人がファミリーのボス・・・。
私は重力に逆らっている赤い髪の毛が気になってしまった。
「(どうやってセットしてるんだろう・・・)」
全員席について間もなく食事が運ばれてきた。
ファミリーの中にポツンと入り込んでいる私。
場違い感半端ない。
「わ、このきのこ美味しい」
「分かるか、この良さが」
「はい。色々な種類が入っていていいですね」
「そうだろう」
煙さんはうんうんと頷いた。
きのこ好きなのかな?
こう、もっとステーキとかそういうの好きそうに見えるので、意外だし可愛らしいと思ってしまった。
「きのこにはもう飽きたぜ」
隣の能井さんはぶすりと文句を垂れた。
「そう言うな。だから普段の食事は別だろう」
私はきのこスープを飲みながら首を傾げた。
「この二人は従兄妹だ」
左側に座った心さんが耳打ちして教えてくれた。
「あ、だから・・・」
能井さんの煙さんに対する態度がファミリーのボスに向けるものにしては雑だと感じたが、そういうことなのか。
・・・全然似てないな。
まあ従兄妹はそんなに似ないか。
「ところで・・・」
煙さんはきのこのパイ包みにナイフを差し込みながら、私に目線をやった。
「うちに入りたいらしいな。魔法は治癒だったか・・・」
「ごほっ・・・」
私は思わず咽てしまった。
「えっ・・・?」
入りたいなんて全然思ってないんだけど、え、どういうこと・・・?
能井さんが言ってた"特別"ってまさか・・・。
私がオロオロしていると、斜め向かいに座っていた藤田さんが慌てて口を挟んだ。
「すみません!まだ彼女には話してなくて・・・」
「どういうことだ、藤田」
「正確には彼女をファミリーに推薦したいんです」
「ほう、偉くなったじゃねぇか、藤田」
「そ、そういうつもりじゃなくてっ」
からかう心さんに、藤田さんは慌てて反論し、私の方を見た。
「彼女の魔法は希少です。治癒系で、魔法の使用も問題なく行えています。能井さんは前線に出るから、肝心な時に行動不能状態になっていることも多いので、後方支援員に治癒系のファミリーがもう一人いてもいいんじゃないかなぁって・・・」
「藤田さん・・・」
私はカラトリーを置いて席を立った。
「ごちそうさまでした」
早歩きで出口の方に向かった。
「待って!」
「ひどい。私の魔法は話さない、悪用しないって約束したのに」
「聞いて!これは名前ちゃんのためでもあるんだ」
「私のため?」
ファミリーのためでしょ?
せっかく藤田さんと仲良くなれたと思ったのに。
彼は私に打算で近づいていたのだと思い、悲しくなった。
「離して・・・。家に帰りたい」
捕まれた手首を引っ張って剥がそうとした。
「せっかくお友達ができたと思ったのに・・・」
堪えきれなかった涙がポロポロと頬を伝った。
「名前ちゃん・・・」
藤田さんが表情を歪ませた。
もう一度「帰りたい」と告げ、空いている手を扉に掛けた、その時。
藤田さんと私の上に黒い影が落ちた。
「藤田の言っていることは本当だ」
心さんが私達を見下ろしていた。
「アンタが住んでいるあの辺は十字目のアジトだった」
「十字目・・・?」
「魔法が使えない魔法使いだ。あいつらは組織的に上級魔法使いを何人も殺してる」
「それって・・・」
「俺らは十字目のボスを探してる。あそこに下っ端のやつらが溜まってた」
結局下っ端すぎて収穫なしだったがな、と。
つまり、あの時黒い袋に入れられてた人が十字目・・・。
「アンタは俺を助けてる。あの場に居た奴らは全員殺したが、もっと別の場所から見られていたら・・・」
私は言われていることを理解した。
つまり、十字目の人にあの場を見られていたら煙ファミリーの一員だと思われてしまっている可能性があって、戻ったら殺される・・・。
「そうでなくてもアンタの魔法は希少だ。今回の件がなくても、あんな治安の悪い場所に住んでいたら拉致されてひどい目に遭ってもなんら不思議じゃない」
どこで、誰が見ているかなんて分からない。
それこそ"他人の魔法が知れる魔法"なんてものを持っている人が居るかもしれない。
今まで無事で居られたことが奇跡のように感じた。
「本当にっ、誓ってっ、悪用するつもりはなくて・・・。ここで働けばお給料だって出るし、部屋も貸してもらえる。あそこに住んで職を探すよりいいと思うんだ」
心さんがワンクッション入れてくれたおかげで、今度は藤田さんの言葉が私の中にスッと入ってきた。
「私に・・・できるかな」
怖がりだし、肝心な時に気絶しちゃいそう。
「俺の魔法ってさ、ケムリを弾丸のように飛ばす魔法なんだ・・・」
ケムリを弾丸のように飛ばす・・・?
「銃・・・みたいな?」
「そんないいもんじゃないよ。何その魔法?って感じでしょ。本当そのまま何の役にも立たないクズ魔法。そもそも俺、ケムリ自体そんなに出せないんだ。心さんや能井さんみたいなフィジカルもないし・・・。それでもここに居場所がある。そんなすごい魔法持ってる名前ちゃんなら作れるよ、居場所」
確かに藤田さんをはじめ、みんないい人そうだし・・・。
先ほどば場違いだと思ったが、今度はあの席が自分の居場所のように見えた。
「煙さんは・・・私が入るのはいいのでしょうか」
「治癒魔法だろ。何人居ても困るもんじゃない。藤田が言った通り、ここで働けばいい」
こうして私は煙ファミリーの一員となったのであった。
