【4章】それはまるで磁石のように
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「名前・・・?」
「先輩?」
「いや・・・今名前の声が聞こえた気がしたんだが・・・」
「えー?」
辺りを見回したが名前の姿はない。
それにもう随分移動しているので、扉の向こうに居る名前の声が聞こえるはずない。
「とうとう幻聴が聞こえるようになるほど好きなんっすか」
「なっ・・・!」
馬鹿なこと言うな、と揶揄う能井を無視して先に進んだ。
*************
「キクラゲ、絶対離れないでね」
「ミャー」
ここで動かずに待っていれば、いつか心さんと能井さんに会えるはず・・・。
私の不安を感じ取っているのか、キクラゲは腕の中で大人しくしていた。
ジャリ、と靴底が擦れる音が聞こえた。
その音はこちらに徐々に近づいている。
私はパッと顔を上げた。
「・・・こんなところで何してんだ?」
・・・こんなに早く仕事が終わるはずないと分かっていた。
顔を上げて目が合った相手は、私の待ち人ではなかった。
決していいとは言えない人相。
いやいや、人を見た目で判断してはいけない。
私は心の中で首を振った。
「人を待ってまして・・・」
絞りだした声は少し震えていた。
男は私の気弱な性格を感じ取ってしまったらしく、ニヤリと下卑た笑みを隠そうともしなかった。
「ここは危ないから。もっと安全な場所で待ってろよ」
「・・・ほんと、大丈夫なのでお気遣いなく・・・」
ここが危ない場所だというのは男の言う通りだと思う。
しかし善意で言っているわけでないことも明らかだ。
「(どうしよう・・・)」
この場所を離れてしまったら心さん達に会えなくなるかもしれない。
しかし・・・。
「な?俺と一緒に・・・」
男に腕を掴まれたら終わる。
私は立ち上がって、走った。
あの場所に戻りやすいように、分かりやすい道を選びながら大通りを目指して。
「おいっ!」
背後から男が迫ってくる音が聞こえ、恐怖に駆られた脚は無我夢中で駆けていた。
「わっ・・・!」
角を曲がった瞬間、ドン!と誰かとぶつかった。
「ごめんなさい!」
弾き飛ばされた衝撃で尻もちをついたが、キクラゲが逃げないようギュッと腕に力を籠めることは忘れなかった。
「あ?なんだ?」
「ひっ・・・」
顔を上げて驚いた。
男だと思っていたその人の顔はトカゲのような見た目をしていた。
いや、魔法使いの世界で生きているので、見た目が人間じゃない人はたまに見かけるが。
とにかく逃げている今は驚いてしまったのだ。
「アンタ、大丈夫か?」
トカゲの男性で見えなかったが、女性も居たらしい。
私はほっと息を吐いた。
「ご、ごめんなさい。ぶつかってしまって」
「俺はいいけどよぉ・・・」
「アンタ、追われてるのか?」
女性が私の後ろに目を向けた。
「ちょうどギョーザ食って腹ごなししたいところだったんだよな」
バキバキと頼りがいのある腕をトカゲ男は鳴らした。
「くそっ…」
貧弱そうな女一人を捕まえようとして、全く関係のないトカゲ男が臨戦態勢に入っている状況に焦ったのか、私を追ってきた男は黒いケムリを吐いた。
「お?魔法使いなのか、お前…」
「ああ、そうだ。お前なんか………!?」
男が魔法使いとわかるや否やトカゲ男は大きく口を開けて、男の顔ごと飲み込んだ。
「おい、中の奴になんて言われた?」
中の奴…?どういう意味だろう…。
「お前は違う?そんじゃ…もういらん」
ぐしゃり、と私を追いかけていた男の身体から嫌な音がして、だらりと全身の力が抜けたのが視界に入った。
心さん達の任務について行ってだいぶ慣れたつもりだったが…。
不思議な質問をしたかと思えば、期待した回答と違ったからなのか、突然男を亡き者にしてしまった衝撃で、私は目眩を起こし、その場で意識を失ってしまった。
「先輩?」
「いや・・・今名前の声が聞こえた気がしたんだが・・・」
「えー?」
辺りを見回したが名前の姿はない。
それにもう随分移動しているので、扉の向こうに居る名前の声が聞こえるはずない。
「とうとう幻聴が聞こえるようになるほど好きなんっすか」
「なっ・・・!」
馬鹿なこと言うな、と揶揄う能井を無視して先に進んだ。
*************
「キクラゲ、絶対離れないでね」
「ミャー」
ここで動かずに待っていれば、いつか心さんと能井さんに会えるはず・・・。
私の不安を感じ取っているのか、キクラゲは腕の中で大人しくしていた。
ジャリ、と靴底が擦れる音が聞こえた。
その音はこちらに徐々に近づいている。
私はパッと顔を上げた。
「・・・こんなところで何してんだ?」
・・・こんなに早く仕事が終わるはずないと分かっていた。
顔を上げて目が合った相手は、私の待ち人ではなかった。
決していいとは言えない人相。
いやいや、人を見た目で判断してはいけない。
私は心の中で首を振った。
「人を待ってまして・・・」
絞りだした声は少し震えていた。
男は私の気弱な性格を感じ取ってしまったらしく、ニヤリと下卑た笑みを隠そうともしなかった。
「ここは危ないから。もっと安全な場所で待ってろよ」
「・・・ほんと、大丈夫なのでお気遣いなく・・・」
ここが危ない場所だというのは男の言う通りだと思う。
しかし善意で言っているわけでないことも明らかだ。
「(どうしよう・・・)」
この場所を離れてしまったら心さん達に会えなくなるかもしれない。
しかし・・・。
「な?俺と一緒に・・・」
男に腕を掴まれたら終わる。
私は立ち上がって、走った。
あの場所に戻りやすいように、分かりやすい道を選びながら大通りを目指して。
「おいっ!」
背後から男が迫ってくる音が聞こえ、恐怖に駆られた脚は無我夢中で駆けていた。
「わっ・・・!」
角を曲がった瞬間、ドン!と誰かとぶつかった。
「ごめんなさい!」
弾き飛ばされた衝撃で尻もちをついたが、キクラゲが逃げないようギュッと腕に力を籠めることは忘れなかった。
「あ?なんだ?」
「ひっ・・・」
顔を上げて驚いた。
男だと思っていたその人の顔はトカゲのような見た目をしていた。
いや、魔法使いの世界で生きているので、見た目が人間じゃない人はたまに見かけるが。
とにかく逃げている今は驚いてしまったのだ。
「アンタ、大丈夫か?」
トカゲの男性で見えなかったが、女性も居たらしい。
私はほっと息を吐いた。
「ご、ごめんなさい。ぶつかってしまって」
「俺はいいけどよぉ・・・」
「アンタ、追われてるのか?」
女性が私の後ろに目を向けた。
「ちょうどギョーザ食って腹ごなししたいところだったんだよな」
バキバキと頼りがいのある腕をトカゲ男は鳴らした。
「くそっ…」
貧弱そうな女一人を捕まえようとして、全く関係のないトカゲ男が臨戦態勢に入っている状況に焦ったのか、私を追ってきた男は黒いケムリを吐いた。
「お?魔法使いなのか、お前…」
「ああ、そうだ。お前なんか………!?」
男が魔法使いとわかるや否やトカゲ男は大きく口を開けて、男の顔ごと飲み込んだ。
「おい、中の奴になんて言われた?」
中の奴…?どういう意味だろう…。
「お前は違う?そんじゃ…もういらん」
ぐしゃり、と私を追いかけていた男の身体から嫌な音がして、だらりと全身の力が抜けたのが視界に入った。
心さん達の任務について行ってだいぶ慣れたつもりだったが…。
不思議な質問をしたかと思えば、期待した回答と違ったからなのか、突然男を亡き者にしてしまった衝撃で、私は目眩を起こし、その場で意識を失ってしまった。
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