【4章】それはまるで磁石のように
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「ごちそうさまでした」
行きと同じく助手席に乗った私は、行きよりも乗り心地が良いように感じた。
途中気まずくなる時間もあったが、トータル的に距離は縮まった気がした。
男女としてではなく、人として。
「……道、混んでんな」
いつの間にか車同士の距離が詰まり、渋滞ができていた。
ゆっくり進んでいた車は完全に止まってしまった。
「あらら…」
助手席側から何か見えないかと外に視線をやると、日が落ちて暗くなった街灯の下に人だかりができていた。
「あ、大道芸やってますね」
「あ?」
渋滞とは関係ないが、広場でどうやら催しをやっているらしい。
日はもう落ちているのに。
しかし街灯が明るいのでよく見える。
「わっ。ジャグリングしてる…」
「どこだ」
何段にも積み上げられた台座の上で、群衆から飛び抜けたピエロが芸を披露していた。
心さんの吐息が耳元にかかり、びくりと身体が震えた。
振り返ったらきっと当たってしまう。
身体は地蔵のようにカチコチに固まった。
運転席から助手席に身を乗り出した心さんにもしっかり見えたようだ。
「上手いもんだな」
「ですね」
渋滞が起きているのはこの催しのせいかもしれない。
いつもであれば煩わしい渋滞も、心さんと一緒にいられる時間が増えるご褒美のように感じた。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇
見事に渋滞にはまり、いつ抜け出せるのか舌打ちが出そうになったその時。
窓に映った名前の表情が綻んだ。
どうやら大道芸が見えるらしい。
この渋滞はそのせいか。
進みそうもない車の列。
助手席側に身を乗り出して名前の目線の先を追った。
こんな渋滞になるほど面白いか、と疑問には思うが非日常な風景は人を惹きつけるらしい。
人だかりは皆、一様に笑顔だった。
そして、真横にいる彼女も。
「(近っ……)」
広々と助手席に座っていた名前だが、大柄な俺が身を乗り出せばその空間に余裕はない。
ふわりと、香水とはまた違う彼女自身の匂いが鼻腔を掠めた。
途端に込み上げてくるなんともいえない落ち着かない感情。
乗り出していた身を戻し、運転席に身体を沈めた。
狙っていたかのように、それまで動かなかった渋滞が僅かに進み始めた。
「う、動き始めましたね」
少し上擦った声色が気になって、視線を助手席に向けると名前の頬は気のせいか赤らんでいた。
「(なんで…)」
いや、心当たりはあるだろうが。
俺が彼女との距離を意識したように、彼女もまた同じ感情をもったというのか。
むずむず擽ったいような、初めての感覚が己の内側に湧き上がり、その感情に目を背けるために完全に解消した渋滞を理由にアクセルを強めに踏み込んだ。
行きと同じく助手席に乗った私は、行きよりも乗り心地が良いように感じた。
途中気まずくなる時間もあったが、トータル的に距離は縮まった気がした。
男女としてではなく、人として。
「……道、混んでんな」
いつの間にか車同士の距離が詰まり、渋滞ができていた。
ゆっくり進んでいた車は完全に止まってしまった。
「あらら…」
助手席側から何か見えないかと外に視線をやると、日が落ちて暗くなった街灯の下に人だかりができていた。
「あ、大道芸やってますね」
「あ?」
渋滞とは関係ないが、広場でどうやら催しをやっているらしい。
日はもう落ちているのに。
しかし街灯が明るいのでよく見える。
「わっ。ジャグリングしてる…」
「どこだ」
何段にも積み上げられた台座の上で、群衆から飛び抜けたピエロが芸を披露していた。
心さんの吐息が耳元にかかり、びくりと身体が震えた。
振り返ったらきっと当たってしまう。
身体は地蔵のようにカチコチに固まった。
運転席から助手席に身を乗り出した心さんにもしっかり見えたようだ。
「上手いもんだな」
「ですね」
渋滞が起きているのはこの催しのせいかもしれない。
いつもであれば煩わしい渋滞も、心さんと一緒にいられる時間が増えるご褒美のように感じた。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇
見事に渋滞にはまり、いつ抜け出せるのか舌打ちが出そうになったその時。
窓に映った名前の表情が綻んだ。
どうやら大道芸が見えるらしい。
この渋滞はそのせいか。
進みそうもない車の列。
助手席側に身を乗り出して名前の目線の先を追った。
こんな渋滞になるほど面白いか、と疑問には思うが非日常な風景は人を惹きつけるらしい。
人だかりは皆、一様に笑顔だった。
そして、真横にいる彼女も。
「(近っ……)」
広々と助手席に座っていた名前だが、大柄な俺が身を乗り出せばその空間に余裕はない。
ふわりと、香水とはまた違う彼女自身の匂いが鼻腔を掠めた。
途端に込み上げてくるなんともいえない落ち着かない感情。
乗り出していた身を戻し、運転席に身体を沈めた。
狙っていたかのように、それまで動かなかった渋滞が僅かに進み始めた。
「う、動き始めましたね」
少し上擦った声色が気になって、視線を助手席に向けると名前の頬は気のせいか赤らんでいた。
「(なんで…)」
いや、心当たりはあるだろうが。
俺が彼女との距離を意識したように、彼女もまた同じ感情をもったというのか。
むずむず擽ったいような、初めての感覚が己の内側に湧き上がり、その感情に目を背けるために完全に解消した渋滞を理由にアクセルを強めに踏み込んだ。
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