【4章】それはまるで磁石のように
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「お待たせしました」
用事を終え、私は後ろに控えていた心さんに声を掛けた。
車で待ってくれていても良かったのに、彼はわざわざ降りてついてきてくれた。
中身が何かは分からない(まあ、私に重要な物は運ばせないだろう)が、無事に渡し終え車に戻った。
「・・・飯でも行くか」
エンジンをかけた心さんがそう言った。
確かに時刻はちょうど夜ご飯時だ。
「能井さんはいいんですか?」
「能井?仕事のとき以外は一緒に飯食わないぞ」
「そうなんですか?」
「当たり前だろ。付き合ってるわけじゃあるまいし」
何気なく出てきたその言葉は、心さんを好きになる権利を貰えた気がした。
「ご飯…行きたいです」
私の小さな返事は心さんに届いたようで、「何食いたい気分だ」と聞いてくれた。
そんな小さな気遣いが、また私の心を虜にさせるのであった。
優柔不断な私では決められず、結局心さんがよく行くラーメン屋さんに連れて行ってもらった。
着いてから「いや…やっぱ違う店にするか」と心さんは車を動かそうとした。
「え?どうしてやめちゃうんですか」
「なんか違うんだよな」
「?」
「あの店は能井とよく行くんだが…名前を連れて行くのは違う気がする」
そう言って5分程車を走らせると、さっきのラーメン屋さんとは門構えから違うお店に到着した。
「イタリアン…ですか?」
「嫌いか?」
「いえ!大好きです」
自惚れかもしれないけど、さっきのラーメン屋さんよりこっちの方が私と来るのにしっくりくると思ってくれたんだよね…。
ラーメンも好きだが、その気持ちが嬉しかった。
さっきは能井さんとよく来る…の言葉に少し落ち込んで、今は嬉しい気持ちで満たされている。
彼の言動に一喜一憂するなんて、それはもう好きと言わざるを得ない。
「(私は…心さんのことが好き…)」
いつか失恋するかもしれないけど。
でも蓋をするより、この気持ちを大事にした方がきっと幸せになれる。
「(好きでいるのはいいよね…)」
車から降りて先に店に入った心さんの広い背中を見つめた。
口数が多くはない心さんとの食事。
料理が運ばれてくるまでの間、何を話そうかと考えていると、やはり思い浮かぶのは能井さんだった。
「お二人はパートナーになって長いんですか?」
「まあ、そこそこだな。ガキの頃からの知り合いだから…」
「へぇ…幼馴染ってことですか?親同士が仲いいとか」
「そんないいもんじゃねぇ。親は死んだ」
ドキリと心臓が跳ねて、嫌な汗が流れた。
「す、すみません。無神経なことを…」
ちょうどそのとき、料理が運ばれてきた。
「うまそうだな」
心さんはピザを取り皿に取ると、私に渡してくれた。
「ほら、食え」
「ありがとうございます…」
心さんが食べ始めたのを確認し、私も一口口に運んだ。
美味しい料理を前に無言で食べ進める私達。
さっき地雷を踏んでしまってから怖くて次の会話に進めない。
心さんにチラリと目線をやると、向こうも視線を上げて目が合ってしまった。
パッと顔を下げ、パスタをくるくるフォークで巻き取る。
「・・・両親はホールで殺された」
「え?」
「もう随分昔のことだから気にすんな。つっても名前のことだから気にするだろうが。ほら!せっかく飯に来てんのに辛気臭ぇ顔すんな。そっちの方が気になるわ」
「は、はい」
ホールで殺された・・・。
ホールってどんなところだろう・・・。
話にしか聞いたことのない場所。
たまにホールでも仕事がある心さんと能井さんが両者を繋ぐ扉を潜っていくのを見送ることがある。
心さんは絶対にホールの仕事に私を連れて行ってはくれない。
私も戦えるようになったら連れて行ってもらえるのかな。
そんな考えが一瞬過ったが、それは私も人を殺すということで。
到底できそうもないので、ホールの景色を見ることはできなさそうだと、このとき諦めたのであった。
用事を終え、私は後ろに控えていた心さんに声を掛けた。
車で待ってくれていても良かったのに、彼はわざわざ降りてついてきてくれた。
中身が何かは分からない(まあ、私に重要な物は運ばせないだろう)が、無事に渡し終え車に戻った。
「・・・飯でも行くか」
エンジンをかけた心さんがそう言った。
確かに時刻はちょうど夜ご飯時だ。
「能井さんはいいんですか?」
「能井?仕事のとき以外は一緒に飯食わないぞ」
「そうなんですか?」
「当たり前だろ。付き合ってるわけじゃあるまいし」
何気なく出てきたその言葉は、心さんを好きになる権利を貰えた気がした。
「ご飯…行きたいです」
私の小さな返事は心さんに届いたようで、「何食いたい気分だ」と聞いてくれた。
そんな小さな気遣いが、また私の心を虜にさせるのであった。
優柔不断な私では決められず、結局心さんがよく行くラーメン屋さんに連れて行ってもらった。
着いてから「いや…やっぱ違う店にするか」と心さんは車を動かそうとした。
「え?どうしてやめちゃうんですか」
「なんか違うんだよな」
「?」
「あの店は能井とよく行くんだが…名前を連れて行くのは違う気がする」
そう言って5分程車を走らせると、さっきのラーメン屋さんとは門構えから違うお店に到着した。
「イタリアン…ですか?」
「嫌いか?」
「いえ!大好きです」
自惚れかもしれないけど、さっきのラーメン屋さんよりこっちの方が私と来るのにしっくりくると思ってくれたんだよね…。
ラーメンも好きだが、その気持ちが嬉しかった。
さっきは能井さんとよく来る…の言葉に少し落ち込んで、今は嬉しい気持ちで満たされている。
彼の言動に一喜一憂するなんて、それはもう好きと言わざるを得ない。
「(私は…心さんのことが好き…)」
いつか失恋するかもしれないけど。
でも蓋をするより、この気持ちを大事にした方がきっと幸せになれる。
「(好きでいるのはいいよね…)」
車から降りて先に店に入った心さんの広い背中を見つめた。
口数が多くはない心さんとの食事。
料理が運ばれてくるまでの間、何を話そうかと考えていると、やはり思い浮かぶのは能井さんだった。
「お二人はパートナーになって長いんですか?」
「まあ、そこそこだな。ガキの頃からの知り合いだから…」
「へぇ…幼馴染ってことですか?親同士が仲いいとか」
「そんないいもんじゃねぇ。親は死んだ」
ドキリと心臓が跳ねて、嫌な汗が流れた。
「す、すみません。無神経なことを…」
ちょうどそのとき、料理が運ばれてきた。
「うまそうだな」
心さんはピザを取り皿に取ると、私に渡してくれた。
「ほら、食え」
「ありがとうございます…」
心さんが食べ始めたのを確認し、私も一口口に運んだ。
美味しい料理を前に無言で食べ進める私達。
さっき地雷を踏んでしまってから怖くて次の会話に進めない。
心さんにチラリと目線をやると、向こうも視線を上げて目が合ってしまった。
パッと顔を下げ、パスタをくるくるフォークで巻き取る。
「・・・両親はホールで殺された」
「え?」
「もう随分昔のことだから気にすんな。つっても名前のことだから気にするだろうが。ほら!せっかく飯に来てんのに辛気臭ぇ顔すんな。そっちの方が気になるわ」
「は、はい」
ホールで殺された・・・。
ホールってどんなところだろう・・・。
話にしか聞いたことのない場所。
たまにホールでも仕事がある心さんと能井さんが両者を繋ぐ扉を潜っていくのを見送ることがある。
心さんは絶対にホールの仕事に私を連れて行ってはくれない。
私も戦えるようになったら連れて行ってもらえるのかな。
そんな考えが一瞬過ったが、それは私も人を殺すということで。
到底できそうもないので、ホールの景色を見ることはできなさそうだと、このとき諦めたのであった。
