【3章】放っておけない
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「行くぞ」
「え、この赤ん坊どうするんですか?」
「戻せないんだから仕方ねぇだろ」
手首に巻かれた縄をナイフで切ってやった。
名前は軽くなった手首を擦りながら、泣き続ける赤ん坊を気の毒そうに見つめた。
「・・・」
「元はと言えば名前を襲った男だろ」
「そう・・・なんですけど」
理解できない。
赤ん坊とはいえ、なぜ自分を襲った男を心配するのか。
この場に居ても仕方がない。
俺は名前の背中を押し、部屋を出た。
「あの・・・助けてくれてありがとうございます。こんなことに巻き込んでごめんなさい」
名前は申し訳なさそうな顔をしていた。
文句の一つでも言ってやろうと思っていたのに。
小さくて弱い女に強く文句を言う姿を想像すると、自分がみみっちい奴に思えてならない。
それよりも、無事な姿を確認した瞬間、それまで渦巻いていた怒りがまるで空気が無くなった風船のように萎んだ。
「いや・・・そもそもケムリを売ったことは関係ない」
「え?」
「あいつらはお前のこと治療魔法だと思って攫っただろう」
「あ・・・」
ケムリの売買を行っていた店のラベルには"時間逆行"と書かれていた。
「名前の本当の魔法は、時間を戻す。そうだな?」
「・・・はい。ケムリをかけた部分の身体の時間を戻すことで治療してました」
店以外で情報を得たとすると・・・。
俺は名前と初めて会ったあの日を思い出した。
「・・・気にするな」
「え?」
「無事だったんだからそれでいい」
「・・・ありがとうございます」
俺のせいかもしれない、そう考えると謝るべきは俺の方なのだが、前に怒っている手前素直に口にできなかった。
そして名前自身もあの日が原因かもしれないと気づいてなお、俺のことは責めなかった。
「よかった」
名前は安堵した表情を見せた。
「心さんに嫌われちゃったらどうしようかと思ってたから」
「二度と、売るなよ」
「はい」
あのケムリもすでに回収して隠滅した。
俺ができることは、名前が危険な目に遭わないよう守ってやるしかない。
「でもどうやってここがわかったんですか?」
店では大した情報が得られなかったので、能井と藤田とその他ファミリー達で泥臭く街を駆け回った・・・なんて言いたくなかった。
虱潰しにその辺でたむろってる奴らから目撃情報を引っ張り出した。
能井との合流も待たぬまま、車を走らせここに辿り着いたのであった。
「よかったな、目撃者がいて」
「そっか、見てくれてた人がいたんだ・・・」
なんで通報してくれないんだと怒らないあたり、こいつは仏なのか?と疑問が湧くとともに、「放っておけない」と今までの自分ではおおよそ持ち合わせたことのない感情が渦巻いた。
「あと・・・私の魔法なんですけど、やっぱり煙さんに申告しないといけないですよね」
俺が能井と合流しなかったのはこのためでもある。
店で名前の能力が時間操作系だと分かった瞬間、真っ先に浮かんだのは煙さんの顔だった。
名前は以前、時間全体を巻き戻すのは無理だと言っていた。
だが、彼女は魔法のコントロールが上手い。
煙さんが名前をパートナーにすることは容易に想像できる。
だがそれも前に彼女に言った通り、対等なパートナーになるか分からない。
もしかしたら、監禁して空間の時間操作ができるように訓練させるかもしれない…。
「心さん?」
「いや…話すタイミングは俺が決める。まだ言うな」
いつから俺はこんな優しい男になったんだ?
名前は不思議そうに頷いた。
俺はまるで自分が自分ではないような歯がゆさを感じながら、足を進めた。
「え、この赤ん坊どうするんですか?」
「戻せないんだから仕方ねぇだろ」
手首に巻かれた縄をナイフで切ってやった。
名前は軽くなった手首を擦りながら、泣き続ける赤ん坊を気の毒そうに見つめた。
「・・・」
「元はと言えば名前を襲った男だろ」
「そう・・・なんですけど」
理解できない。
赤ん坊とはいえ、なぜ自分を襲った男を心配するのか。
この場に居ても仕方がない。
俺は名前の背中を押し、部屋を出た。
「あの・・・助けてくれてありがとうございます。こんなことに巻き込んでごめんなさい」
名前は申し訳なさそうな顔をしていた。
文句の一つでも言ってやろうと思っていたのに。
小さくて弱い女に強く文句を言う姿を想像すると、自分がみみっちい奴に思えてならない。
それよりも、無事な姿を確認した瞬間、それまで渦巻いていた怒りがまるで空気が無くなった風船のように萎んだ。
「いや・・・そもそもケムリを売ったことは関係ない」
「え?」
「あいつらはお前のこと治療魔法だと思って攫っただろう」
「あ・・・」
ケムリの売買を行っていた店のラベルには"時間逆行"と書かれていた。
「名前の本当の魔法は、時間を戻す。そうだな?」
「・・・はい。ケムリをかけた部分の身体の時間を戻すことで治療してました」
店以外で情報を得たとすると・・・。
俺は名前と初めて会ったあの日を思い出した。
「・・・気にするな」
「え?」
「無事だったんだからそれでいい」
「・・・ありがとうございます」
俺のせいかもしれない、そう考えると謝るべきは俺の方なのだが、前に怒っている手前素直に口にできなかった。
そして名前自身もあの日が原因かもしれないと気づいてなお、俺のことは責めなかった。
「よかった」
名前は安堵した表情を見せた。
「心さんに嫌われちゃったらどうしようかと思ってたから」
「二度と、売るなよ」
「はい」
あのケムリもすでに回収して隠滅した。
俺ができることは、名前が危険な目に遭わないよう守ってやるしかない。
「でもどうやってここがわかったんですか?」
店では大した情報が得られなかったので、能井と藤田とその他ファミリー達で泥臭く街を駆け回った・・・なんて言いたくなかった。
虱潰しにその辺でたむろってる奴らから目撃情報を引っ張り出した。
能井との合流も待たぬまま、車を走らせここに辿り着いたのであった。
「よかったな、目撃者がいて」
「そっか、見てくれてた人がいたんだ・・・」
なんで通報してくれないんだと怒らないあたり、こいつは仏なのか?と疑問が湧くとともに、「放っておけない」と今までの自分ではおおよそ持ち合わせたことのない感情が渦巻いた。
「あと・・・私の魔法なんですけど、やっぱり煙さんに申告しないといけないですよね」
俺が能井と合流しなかったのはこのためでもある。
店で名前の能力が時間操作系だと分かった瞬間、真っ先に浮かんだのは煙さんの顔だった。
名前は以前、時間全体を巻き戻すのは無理だと言っていた。
だが、彼女は魔法のコントロールが上手い。
煙さんが名前をパートナーにすることは容易に想像できる。
だがそれも前に彼女に言った通り、対等なパートナーになるか分からない。
もしかしたら、監禁して空間の時間操作ができるように訓練させるかもしれない…。
「心さん?」
「いや…話すタイミングは俺が決める。まだ言うな」
いつから俺はこんな優しい男になったんだ?
名前は不思議そうに頷いた。
俺はまるで自分が自分ではないような歯がゆさを感じながら、足を進めた。
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