【3章】放っておけない
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事前に忠告を受けていたのに・・・。
私は暗い店内に佇んでいた。
「コレ」
「はいよ。そっちのお嬢ちゃんもか?」
「あ、えっと・・・」
恵比寿さんは慣れた手つきでお金を受け取っていた。
「(そんなに貰えるんだ・・・)」
ちらりと見ただけだが、結構な金額に見えた。
「ハヤクシロ」
まだ覚悟は決まっていなかったのだが、ここまで連れて来てもらって今更「やめておきます」とも言い辛かった。
恵比寿さんとちょっとお話しするタイミングがあったが、何を話していいかわからず、咄嗟に出てきた話題が「ケムリが売れるって知ってましたか?」だ。
すると、「ワタシウッテル」と普通に返事が返って来て驚いた。
まるで服を古着屋に持っていくようなテンションで言われたので、「危なくないですか?」と聞けばフルフルと首を横に振った。
今思い返せば、なぜあの時心さんより恵比寿さんの言うことを信用してしまったのだろう。
それはきっと心の奥底で「楽してお金を稼げる」ことに後ろ髪を引かれていた自分が居たからだろう。
だから恵比寿さんは大丈夫って言ってるし・・・と自分に都合のいい方を信じてしまったのだ。
「とりあえず査定だけでもしてみるかね」
私は自分のケムリを詰めた瓶をおじいさんに渡した。
鑑定機でじっくり見ている間、私は緊張しながら待った。
「これは・・・!・・・こんなもんでどうだ」
おじいさんは私が想定していた三倍以上のお金を出してきた。
「えっ。こんなに・・・。いいんですか」
「ああ。じゃが、他所では売らんように」
それは他にいい商品を取られたくないから言ったのか。
それとも私の身を案じてくれたのか。
「分かりました」
私はギュッと貰ったお金を握りしめた。
*******************
「どうしたんだよ、恵比寿」
「何があった」
藤田が困り顔で恵比寿に問いかけていた。
「心さん。いや・・・なんか恵比寿の機嫌が悪くて・・・」
骸骨のマスクをしているので表情なんて見えないし、正直俺には恵比寿の機嫌なんて分からん。
元々よく分からんやつだから気にしたこともない。
藤田は日に日に恵比寿の保護者として板についていると思う。
「ワタシヨリタカカッタ・・・」
なるほど。
確かに不機嫌そうだ。
恵比寿の声色は不機嫌そのものだった。
「何がだよ」
「名前のケムリ」
「名前ちゃんのケムリ?」
意味が分かっていない藤田に対し、俺は瞬時に恵比寿の言っていることを理解した。
そして二人を残して踵を返した。
*******************
「おい!名前!」
ドンドンと乱暴にドアを叩かれる音にびくりと肩が跳ねた。
「は、はい!」
何かやらかしたのだろうか、と恐る恐る扉を開けると鬼の形相をした心さんが立っていた。
身長差がある心さんに見下ろされると、怒っていなくとも迫力がある。
そして今は怒っているのでその迫力は何倍にも増していた。
「なぜ売った」
その一言で察した。
帰り際に「私がケムリを売ったこと、誰にも言わないでくださいね」と恵比寿さんに頼んだお願いはどうやら聞き入れてもらえなかったらしい。
あの時了承の返事をしっかり聞けなかったので、仕方ないか。
「恵比寿さんが・・・何度も売っているとおっしゃっていたので・・・」
恵比寿さんの名前を出すのは言い訳がましいか。
言葉にした後に思った。
「危険だと、俺が言ったのを忘れたのか」
「ごめんなさい・・・」
心さんに怒られて、やっぱりやめておけばよかったと後悔した。
だが、この時の私は危ないからやめておけばよかったという気持ちよりも「心さんに怒られるからやめておけばよかった」という気持ちの方が強かった。
しかしこれも思い返せば、私は煙ファミリーに入って気が大きくなってしまっていたんだと思う。
ファミリーに入る前は気を付けていたのに。
「何かあっても知らないからな」
心さんはチッと舌打ちをして出て行ってしまった。
私は暗い店内に佇んでいた。
「コレ」
「はいよ。そっちのお嬢ちゃんもか?」
「あ、えっと・・・」
恵比寿さんは慣れた手つきでお金を受け取っていた。
「(そんなに貰えるんだ・・・)」
ちらりと見ただけだが、結構な金額に見えた。
「ハヤクシロ」
まだ覚悟は決まっていなかったのだが、ここまで連れて来てもらって今更「やめておきます」とも言い辛かった。
恵比寿さんとちょっとお話しするタイミングがあったが、何を話していいかわからず、咄嗟に出てきた話題が「ケムリが売れるって知ってましたか?」だ。
すると、「ワタシウッテル」と普通に返事が返って来て驚いた。
まるで服を古着屋に持っていくようなテンションで言われたので、「危なくないですか?」と聞けばフルフルと首を横に振った。
今思い返せば、なぜあの時心さんより恵比寿さんの言うことを信用してしまったのだろう。
それはきっと心の奥底で「楽してお金を稼げる」ことに後ろ髪を引かれていた自分が居たからだろう。
だから恵比寿さんは大丈夫って言ってるし・・・と自分に都合のいい方を信じてしまったのだ。
「とりあえず査定だけでもしてみるかね」
私は自分のケムリを詰めた瓶をおじいさんに渡した。
鑑定機でじっくり見ている間、私は緊張しながら待った。
「これは・・・!・・・こんなもんでどうだ」
おじいさんは私が想定していた三倍以上のお金を出してきた。
「えっ。こんなに・・・。いいんですか」
「ああ。じゃが、他所では売らんように」
それは他にいい商品を取られたくないから言ったのか。
それとも私の身を案じてくれたのか。
「分かりました」
私はギュッと貰ったお金を握りしめた。
*******************
「どうしたんだよ、恵比寿」
「何があった」
藤田が困り顔で恵比寿に問いかけていた。
「心さん。いや・・・なんか恵比寿の機嫌が悪くて・・・」
骸骨のマスクをしているので表情なんて見えないし、正直俺には恵比寿の機嫌なんて分からん。
元々よく分からんやつだから気にしたこともない。
藤田は日に日に恵比寿の保護者として板についていると思う。
「ワタシヨリタカカッタ・・・」
なるほど。
確かに不機嫌そうだ。
恵比寿の声色は不機嫌そのものだった。
「何がだよ」
「名前のケムリ」
「名前ちゃんのケムリ?」
意味が分かっていない藤田に対し、俺は瞬時に恵比寿の言っていることを理解した。
そして二人を残して踵を返した。
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「おい!名前!」
ドンドンと乱暴にドアを叩かれる音にびくりと肩が跳ねた。
「は、はい!」
何かやらかしたのだろうか、と恐る恐る扉を開けると鬼の形相をした心さんが立っていた。
身長差がある心さんに見下ろされると、怒っていなくとも迫力がある。
そして今は怒っているのでその迫力は何倍にも増していた。
「なぜ売った」
その一言で察した。
帰り際に「私がケムリを売ったこと、誰にも言わないでくださいね」と恵比寿さんに頼んだお願いはどうやら聞き入れてもらえなかったらしい。
あの時了承の返事をしっかり聞けなかったので、仕方ないか。
「恵比寿さんが・・・何度も売っているとおっしゃっていたので・・・」
恵比寿さんの名前を出すのは言い訳がましいか。
言葉にした後に思った。
「危険だと、俺が言ったのを忘れたのか」
「ごめんなさい・・・」
心さんに怒られて、やっぱりやめておけばよかったと後悔した。
だが、この時の私は危ないからやめておけばよかったという気持ちよりも「心さんに怒られるからやめておけばよかった」という気持ちの方が強かった。
しかしこれも思い返せば、私は煙ファミリーに入って気が大きくなってしまっていたんだと思う。
ファミリーに入る前は気を付けていたのに。
「何かあっても知らないからな」
心さんはチッと舌打ちをして出て行ってしまった。
