クモ男さんと一緒/巻島
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「そーいえば今度のレース、名字は巻島の応援行くのか?」
部室で片付けをしていると田所くんにそう聞かれたが何の話をしているのか分からず私は首を傾げた。
「応援?」
私は巻島くんに視線を向けた。
「今度のヒルクライムに巻島出るぞ」
「そうなの?知らなかった!」
何で教えてくれなかったの、と非難の視線を巻島くんに向けたが目を逸らされた。
「応援行きたい」
巻島くんに向かって聞こえるように声を発した。
「来なくていいっショ」
「え・・・」
まさかの拒否。
遠慮しているのかとも思ったが、そうではなく来てほしくないという態度だ。
「私に見られるの嫌・・・?」
悲しいがそれ以外に理由が見当たらない。
「そうじゃないっショ」
あーとかうーとか唸っている巻島くん。
「ちょっとした事情があってな」
含みを持たせる言動に私はますます疑問符を浮かべた。
「私に見られることが嫌なわけじゃないの?」
「違うっショ」
田所くんは私と巻島くんの会話をニヤニヤしながら聞いていた。
「かてーこと言うなよ、巻島」
「とにかくダメなものはダメっショ」
そのとき巻島くんの携帯が震えたが、彼はそれに出ることなくポケットに閉まった。
******
「よーし!準備おっけー」
私は巻島くんの意見を無視してレース会場へと乗り込んだ。
個人レースのため部活ジャージは着ないらしい。
私は巻島くんを探した。
髪が目立つからすぐに見つけられるはずだ。
案の定、私の視界に彼の姿が映った。
「巻島くーん」
「巻ちゃーーーーん!!!」
ん?
私は巻島くんに手を振りながら近づこうとしたが、横から颯爽と男の子が駆け抜けていった。
巻島くんは男の子の姿を捉えると明らかに嫌そうな顔をした。
男の子は巻島くんの前まで行くと、彼の肩に手を掛けた。
「いやーはるばるここまで来たのは巻ちゃんと勝負する他ならない!楽しみで仕方がないぞ」
巻島くんの友達のようだ。
私は自分が上げた行き場のない手を下ろして、またあとで声を掛けようと思った。
踵を返そうとしたとき、彼の友人の肩越しに巻島くんと目が合った。
まさか来ていると思っていなかったのかひどく驚いた様子で、かつ目線で何かを訴えている。
「え・・・何?」
顎でその場を去るように指示を出している。
私がここに居たらまずいのだろうか・・・。
とりあえずこの場を離れた方がよさそうなので、立ち去ろうとしたとき巻島くんの友達が振り返った。
「さっきからどうした、巻ちゃん。後ろに何かあるのか?」
「東堂!」
私は彼の友人、もとい東堂くんと呼ばれた男の子と目が合った。
とりあえず挨拶をした方がいいと思い、ペコリと頭を下げた。
「最悪だ・・・」
巻島くんは額に手をあて項垂れた。
「え、まさかまさか!巻ちゃんの彼女か!?」
まるで台風のように今度は私の目の前に東堂くんは移動した。
「俺は箱根学園3年の東堂尽八だ!よろしく頼む」
「私は巻島くんと同じクラスの名字名前です。よろしくね」
東堂くんは目を輝かせて私の手を取った。
「2人はいつから付き合っている?」
「付き合ってないっショ」
巻島くんが東堂くんの手を私から離した。
「そうなのか!俺は山も登れるうえにトークも切れる。そして持ち前のこの美しい顔!けれど名字ちゃんは俺に惚れてはならない。何せ巻ちゃんがいるのだからな!」
「えっと・・・」
日本語なのに何を言っているのかよく分からなかった。
「相手にしない方がいいっショ。真面目に答えるだけ損だし疲れる」
本当にこの2人は友達なのかな。
巻島くんの塩対応っぷりに私は驚いた。
「なっ。冷たいぞ、巻ちゃん!はるばる神奈川から来たというのに」
男の子同士の友情はきっと女同士ではありえないような形でも成り立つのだろう。
男の子ってなんかいいなと思った会話だった。
「ほら、さっさとスタートに行くっショ。名前、わざわざ来てくれてありがとう」
「それ俺にも言ってくれ、巻ちゃん!」
「お前は走るために来たんだろ」
お互い愛車を押しながらスタート位置に移動した。
「2人とも頑張ってね」
私はエールを送ると山頂のゴールへと移動するバスに乗り込んだ。
*******
自転車レースは通常のスポーツと違ってずっと自分の目で見て応援し続けることができない。
目の前を過ぎるのは一瞬で、本当は最初から最後まで並走して応援したいけどそんなこと不可能だ。
私はゴール前で巻島くんが1番に登って来ることを祈った。
「トップ来るぞ!!」
ギャラリーの誰かが叫んだ。
胸の前で握りしめた拳に力が入る。
「巻島くん!」
彼の大きく左右に揺れるダンシングと同時に揺れる緑の髪が視界に入った。
巻島くんが優勝だ、そう思ったが真横にはもう1人いた。
「東堂くん・・・」
さっきのお喋りな彼とは180°印象が違う。
その目は真剣で両者一歩も譲らず、ゴールだけを見据えていた。
私は羨ましかった。
2人から血肉を争ってでも勝ちたい、絶対に負けない、そんな強い感情が伝わってきた。
1つのことに夢中になれる彼らが羨ましい。
彼らの姿を捉えてからゴールに滑り込むまでの時間は一瞬だった。
私には同着にしか見えなかった。
しかし彼らにはその勝敗が分かっていた。
巻島くんが腕を上げ、東堂くんが下を向いた。
そしてゴールから少し離れた場所へ移動する途中、巻島くんと東堂くんがお互いを称えるように手を叩いた。
*******
「お疲れ様、2人とも」
表彰式が終わり、私はタイミングを見計らって声を掛けた。
「おお!名前ちゃん。残念ながら今回は負けたが、次回は俺が勝つ!」
巻島くんにびしっと指をさした東堂くん。
「望むところっショ」
「2人はライバルなんだね」
すごくいい関係性だなぁと思いながら2人を見ていると巻島くんは少し照れ臭そうな表情を浮かべた。
「でも、巻ちゃんと一緒にいると大変だろう」
東堂くんの見送りをするために3人肩を並べて帰っている途中、東堂くんからそう尋ねられた。
「大変?どうして?」
「だって電話も3日に1回ぐらいしか取ってくれないだろう?」
「え?ちゃんと毎回出てくれるよ?」
私の返答を聞いた東堂くんは巻島くんをキッと睨んだ。
「どういうことだ、巻きちゃん!俺からの電話は全然出てくれないのに」
「お前は掛けすぎなんだよ。大した用もないのに・・・」
私は堪えきれずにクスクス笑ってしまった。
「名前?」
「だって2人の会話、恋人の痴話げんかみたい」
「勘弁してくれっショ・・・」
巻島くんを挟んで歩いているので、東堂くんは彼の前から身を乗り出して私に言った。
「本妻の地位は渡さんぞ、名前ちゃん!」
「誰が本妻だ、誰が」
巻島くんは東堂くんの首根っこを掴んで元の位置に戻した。
「お、あれが迎えの車だ!じゃあな、2人とも!また大会で会おう」
東堂くんが去っていくその背中に向かって私は手を振った。
「さ、俺らも帰るか」
時期的にまだ日は落ちない。
巻島くんと帰宅する途中、私はふと思い出した。
「そういえば、どうして私今日来てほしくなかったの?」
「あー・・・」
巻島くんは言うかどうか悩んでいる様子。
「東堂に会わせたくなかった」
「え?東堂くん?」
私は思わず彼が去っていった方向を振り返った。
「ま、杞憂だったみたいだからいいっショ」
巻島くんの本意が分からず、私は首を傾げたが曖昧に誤魔化されてしまった。
なんにせよ、巻島くんとそのライバルの真剣勝負に立ち会うことができたのだからとてもいい日だった。
*******
東堂に名前を会わせたくなかった。
だからこの大会に参加することを俺は隠していたのに田所っちに余計な一言で結局会っちまった。
あいつは口も態度も軽いが、女子の扱いは俺よりうんと上手い。
それに自己主張の強ささえ見せなければ、美形であることも確かだ。
実際にファンクラブが存在するほどにモテる。
自転車ではいいライバル関係で、実力も拮抗している。常にどちらが勝つか分からない。
けれど自転車を降りて恋愛フィールドになれば確実に向こうが圧倒的に強い。
俺は名前が東堂を好きになってしまう可能性を考えて2人の遭遇を避けた。
けれどその心配は無用だったらしい。
いつも通りの彼女に安心した。
なんとか誤魔化して俺の真意は隠せた。
そして今日勝てたのは間違いなく彼女のおかげだった。
名前の前で絶対に東堂には負けられない。
そんな気持ちが今日の勝利へと繋がっていた。
俺は彼女に連絡した。
「今日はありがとう。また応援来てほしいっショ」
部室で片付けをしていると田所くんにそう聞かれたが何の話をしているのか分からず私は首を傾げた。
「応援?」
私は巻島くんに視線を向けた。
「今度のヒルクライムに巻島出るぞ」
「そうなの?知らなかった!」
何で教えてくれなかったの、と非難の視線を巻島くんに向けたが目を逸らされた。
「応援行きたい」
巻島くんに向かって聞こえるように声を発した。
「来なくていいっショ」
「え・・・」
まさかの拒否。
遠慮しているのかとも思ったが、そうではなく来てほしくないという態度だ。
「私に見られるの嫌・・・?」
悲しいがそれ以外に理由が見当たらない。
「そうじゃないっショ」
あーとかうーとか唸っている巻島くん。
「ちょっとした事情があってな」
含みを持たせる言動に私はますます疑問符を浮かべた。
「私に見られることが嫌なわけじゃないの?」
「違うっショ」
田所くんは私と巻島くんの会話をニヤニヤしながら聞いていた。
「かてーこと言うなよ、巻島」
「とにかくダメなものはダメっショ」
そのとき巻島くんの携帯が震えたが、彼はそれに出ることなくポケットに閉まった。
******
「よーし!準備おっけー」
私は巻島くんの意見を無視してレース会場へと乗り込んだ。
個人レースのため部活ジャージは着ないらしい。
私は巻島くんを探した。
髪が目立つからすぐに見つけられるはずだ。
案の定、私の視界に彼の姿が映った。
「巻島くーん」
「巻ちゃーーーーん!!!」
ん?
私は巻島くんに手を振りながら近づこうとしたが、横から颯爽と男の子が駆け抜けていった。
巻島くんは男の子の姿を捉えると明らかに嫌そうな顔をした。
男の子は巻島くんの前まで行くと、彼の肩に手を掛けた。
「いやーはるばるここまで来たのは巻ちゃんと勝負する他ならない!楽しみで仕方がないぞ」
巻島くんの友達のようだ。
私は自分が上げた行き場のない手を下ろして、またあとで声を掛けようと思った。
踵を返そうとしたとき、彼の友人の肩越しに巻島くんと目が合った。
まさか来ていると思っていなかったのかひどく驚いた様子で、かつ目線で何かを訴えている。
「え・・・何?」
顎でその場を去るように指示を出している。
私がここに居たらまずいのだろうか・・・。
とりあえずこの場を離れた方がよさそうなので、立ち去ろうとしたとき巻島くんの友達が振り返った。
「さっきからどうした、巻ちゃん。後ろに何かあるのか?」
「東堂!」
私は彼の友人、もとい東堂くんと呼ばれた男の子と目が合った。
とりあえず挨拶をした方がいいと思い、ペコリと頭を下げた。
「最悪だ・・・」
巻島くんは額に手をあて項垂れた。
「え、まさかまさか!巻ちゃんの彼女か!?」
まるで台風のように今度は私の目の前に東堂くんは移動した。
「俺は箱根学園3年の東堂尽八だ!よろしく頼む」
「私は巻島くんと同じクラスの名字名前です。よろしくね」
東堂くんは目を輝かせて私の手を取った。
「2人はいつから付き合っている?」
「付き合ってないっショ」
巻島くんが東堂くんの手を私から離した。
「そうなのか!俺は山も登れるうえにトークも切れる。そして持ち前のこの美しい顔!けれど名字ちゃんは俺に惚れてはならない。何せ巻ちゃんがいるのだからな!」
「えっと・・・」
日本語なのに何を言っているのかよく分からなかった。
「相手にしない方がいいっショ。真面目に答えるだけ損だし疲れる」
本当にこの2人は友達なのかな。
巻島くんの塩対応っぷりに私は驚いた。
「なっ。冷たいぞ、巻ちゃん!はるばる神奈川から来たというのに」
男の子同士の友情はきっと女同士ではありえないような形でも成り立つのだろう。
男の子ってなんかいいなと思った会話だった。
「ほら、さっさとスタートに行くっショ。名前、わざわざ来てくれてありがとう」
「それ俺にも言ってくれ、巻ちゃん!」
「お前は走るために来たんだろ」
お互い愛車を押しながらスタート位置に移動した。
「2人とも頑張ってね」
私はエールを送ると山頂のゴールへと移動するバスに乗り込んだ。
*******
自転車レースは通常のスポーツと違ってずっと自分の目で見て応援し続けることができない。
目の前を過ぎるのは一瞬で、本当は最初から最後まで並走して応援したいけどそんなこと不可能だ。
私はゴール前で巻島くんが1番に登って来ることを祈った。
「トップ来るぞ!!」
ギャラリーの誰かが叫んだ。
胸の前で握りしめた拳に力が入る。
「巻島くん!」
彼の大きく左右に揺れるダンシングと同時に揺れる緑の髪が視界に入った。
巻島くんが優勝だ、そう思ったが真横にはもう1人いた。
「東堂くん・・・」
さっきのお喋りな彼とは180°印象が違う。
その目は真剣で両者一歩も譲らず、ゴールだけを見据えていた。
私は羨ましかった。
2人から血肉を争ってでも勝ちたい、絶対に負けない、そんな強い感情が伝わってきた。
1つのことに夢中になれる彼らが羨ましい。
彼らの姿を捉えてからゴールに滑り込むまでの時間は一瞬だった。
私には同着にしか見えなかった。
しかし彼らにはその勝敗が分かっていた。
巻島くんが腕を上げ、東堂くんが下を向いた。
そしてゴールから少し離れた場所へ移動する途中、巻島くんと東堂くんがお互いを称えるように手を叩いた。
*******
「お疲れ様、2人とも」
表彰式が終わり、私はタイミングを見計らって声を掛けた。
「おお!名前ちゃん。残念ながら今回は負けたが、次回は俺が勝つ!」
巻島くんにびしっと指をさした東堂くん。
「望むところっショ」
「2人はライバルなんだね」
すごくいい関係性だなぁと思いながら2人を見ていると巻島くんは少し照れ臭そうな表情を浮かべた。
「でも、巻ちゃんと一緒にいると大変だろう」
東堂くんの見送りをするために3人肩を並べて帰っている途中、東堂くんからそう尋ねられた。
「大変?どうして?」
「だって電話も3日に1回ぐらいしか取ってくれないだろう?」
「え?ちゃんと毎回出てくれるよ?」
私の返答を聞いた東堂くんは巻島くんをキッと睨んだ。
「どういうことだ、巻きちゃん!俺からの電話は全然出てくれないのに」
「お前は掛けすぎなんだよ。大した用もないのに・・・」
私は堪えきれずにクスクス笑ってしまった。
「名前?」
「だって2人の会話、恋人の痴話げんかみたい」
「勘弁してくれっショ・・・」
巻島くんを挟んで歩いているので、東堂くんは彼の前から身を乗り出して私に言った。
「本妻の地位は渡さんぞ、名前ちゃん!」
「誰が本妻だ、誰が」
巻島くんは東堂くんの首根っこを掴んで元の位置に戻した。
「お、あれが迎えの車だ!じゃあな、2人とも!また大会で会おう」
東堂くんが去っていくその背中に向かって私は手を振った。
「さ、俺らも帰るか」
時期的にまだ日は落ちない。
巻島くんと帰宅する途中、私はふと思い出した。
「そういえば、どうして私今日来てほしくなかったの?」
「あー・・・」
巻島くんは言うかどうか悩んでいる様子。
「東堂に会わせたくなかった」
「え?東堂くん?」
私は思わず彼が去っていった方向を振り返った。
「ま、杞憂だったみたいだからいいっショ」
巻島くんの本意が分からず、私は首を傾げたが曖昧に誤魔化されてしまった。
なんにせよ、巻島くんとそのライバルの真剣勝負に立ち会うことができたのだからとてもいい日だった。
*******
東堂に名前を会わせたくなかった。
だからこの大会に参加することを俺は隠していたのに田所っちに余計な一言で結局会っちまった。
あいつは口も態度も軽いが、女子の扱いは俺よりうんと上手い。
それに自己主張の強ささえ見せなければ、美形であることも確かだ。
実際にファンクラブが存在するほどにモテる。
自転車ではいいライバル関係で、実力も拮抗している。常にどちらが勝つか分からない。
けれど自転車を降りて恋愛フィールドになれば確実に向こうが圧倒的に強い。
俺は名前が東堂を好きになってしまう可能性を考えて2人の遭遇を避けた。
けれどその心配は無用だったらしい。
いつも通りの彼女に安心した。
なんとか誤魔化して俺の真意は隠せた。
そして今日勝てたのは間違いなく彼女のおかげだった。
名前の前で絶対に東堂には負けられない。
そんな気持ちが今日の勝利へと繋がっていた。
俺は彼女に連絡した。
「今日はありがとう。また応援来てほしいっショ」
