クモ男さんと一緒/巻島
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私が入部を決めた自転車競技部は思ったより少人数で馴染みやすかった。
素人でしかも3年生が部活に入るなんて前代未聞だろう。
1年で入ってきた寒咲幹ちゃんは生粋の自転車オタクでこの子がいるなら私がマネージャーやらなくてもいいのでは・・・と思った。
その考えを金城くんにそのまま伝えると、「巻島のためにいてやってくれ」と返されたので真意はよくわからないが素直に頷いた。
「でもやっぱり納得できない・・・」
「どこが分からないっショ?」
私が英語の宿題を後ろを向いて巻島くんと一緒に解いていたときに呟いた一言を問題がわからないと彼は解釈したらしい。
「あ、宿題じゃなくてね・・・。なんで私を金城くんはマネージャーに誘ってくれたんだろうって。万年帰宅部でスポーツのいろはも知らないのに。幹ちゃんっていう完璧なマネージャーがいるなら私必要なのなかって」
「金城には言ったのか?」
「うん。そしたら巻島くんのためにいてくれって言われた」
金城くんに言われたありのままの言葉を伝えると、巻島くんは教科書で顔を覆った。
「私って巻島くんの力になれる?」
巻島くんは視線を泳がせながらそっぽを向いて答えた。
「十分なってるっショ。名前が入部してから俺のタイムは右肩上がりだ」
その答えを聞いて私は自分の存在意義を少し感じることができた。
「他のみんなのためにも頑張るね」
当たり前の返事を返したはずなのに、巻島くんは一瞬困ったような顔をしていた気がした。
******
インハイ優勝を目標に掲げているこの部に休む暇はない。
放課後、巻島くんと一緒に部室へ向かった。
「巻島さん、名字さん、お疲れ様です」
小野田くんが私達を見てぺこりと頭を下げた。
すでに他の部員は部室に集まっており、各々準備をしている。
「いつも思いますけど、巻島さんと名字さんって『ニコイチ』ゆーやつですね!」
鳴子くんの関西独特のイントネーションにももう慣れてきた。
「その表現はもう古いんじゃないのか。最近女子の間でも聞かないぞ」
今泉くんは鳴子くんとは対照的にクールだ。
対照的な1年トリオを私は微笑ましい気持ちで見ていた。
「でもそんなに私達一緒にいるかなぁ?」
ニコイチと呼ばれるほど私達は仲いいのだろうか。
「休憩中よく一緒にいはるじゃないですか!」
鳴子くんの言葉で思い返せば休憩しているときよく一緒にいる気がした。
だめだ。
もっと後輩とコミュニケーション取らないと。
私は自分の行動を反省した。
「くだらねぇこと言ってないでさっさと準備するっショ」
巻島くんの言葉で話は区切りがつき、部活が始まった。
******
部活が終わり、部室に戻ろうとしたとき先に着替えていた1年トリオの会話が聞こえてきた。
「そういえば、なんで名字さんこの時期にマネージャーになったんやろ?」
鳴子くんの声はよく通るので聞こうとしなくても聞こえてくる。
しかも自分の話題であることに気づき入れなくなってしまった。
どうしようかと思っていると中の会話はどんどん進んでいく。
「金城さんが誘ったんだろ?」
「でも部活自体経験したことない人やで?巻島さんの彼女かと思ったけど、違うみたいやし・・・」
「まぁ、実際役に立つかと聞かれたらまだ微妙だけど。寒咲も人手がいた方がいいだろ」
「僕は名字さんがいてくれたら場が和やかになるからいいと思うけど・・・」
小野田くんの言葉に涙が出そうになった。
でもやっぱり私の存在に疑問を鳴子くんと今泉くんは持っているんだよね。
悲しいけど当たり前の疑問だ。
「入らないのか?」
私がその場で立ち尽くしていると後ろから巻島くんの長い腕が伸びてきた。
巻島くんは躊躇なく部室に入った。
3人は後ろにいる私の姿を見てまずいという表情を浮かべていた。
「みんな、お疲れ様!」
私は聞こえていなかったふりをした。
「鞄だけ取って先に出るね」
皆が着替えやすいようにという配慮とその場からすぐに離れたいという気持ちがあったので私は自分のロッカーに手をかけた。
「あれ?」
ロッカーを開けても自分の鞄がなかった。
「そこ俺のロッカー」
先ほどの動揺がおさえられず、間違えて巻島くんのロッカーを開けてしまった。
「ご、ごめん!」
私は慌てて巻島くんに謝った。
「気にすることないっショ」
人様のロッカーを開けるなんてなんてことを。
巻島くんが自分の鞄を出したとき、バサリと何かが落ちた。
「何か落ちたよ」
「だだだだ、だめっショ!!!」
「え?」
巻島くんが声を上げたときにはもう遅く、私はすでにその本を拾って巻島くんに渡そうとしていた。
そのとき目に飛び込んできたのはダイナマイトボディを曝け出す女性の水着姿。
私は手に本をもったまま固まった。
あれ・・・こういう本って何ていうんだっけ・・・。
エロ本?
違う・・・グラビアだ!!
女の私でも驚くほどに胸が大きい。
なのにお腹は引き締まっていてお尻がまたボンと出ている。
巻島くん、こういう人がタイプなのかな。
やっぱり男の子は大きい方が好きだよね。
私は自分の幼児体系を思い出した。
「お疲れ様です~」
一瞬で凍ったこの場の空気に似つかわしくない可憐な声が部室に響いた。
「寒咲!」
今泉くんが口に人差し指を当てて黙るようにジェスチャーしていた。
「どうしたの?」
私は本を手に持ったまま、寒咲さんを見た。
そういえば幹ちゃんも胸大きいしスタイルいいなぁ。
私って巻島くんのためにいてくれって金城くんに言われたよね?
でも巻島くんはスタイルよくて胸が大きい子が好きなわけで・・・。
目の前にいる寒咲幹ちゃんの方が私より当てはまっている。
あれ、私いよいよ必要なくない?
マネージャーとしても未熟で、巻島くんのためにもなってないってことに気づいたら私は何のためにここにいたらいいんだろう。
「はい、これ」
私が本を差し出すと力が入っていない手でそれを巻島くんは受け取った。
「あ、名前・・・これは・・・」
「お疲れ様でした」
巻島くんは何か言いかけていたが、これ以上ここにいるのが辛くて私は鞄を肩に掛けると部室を後にした。
******
翌日、巻島くんはいつも以上に喋りかけてきた。
「名前!昨日のドラマは・・・」
「名前!この授業の宿題は・・・」
「名前!この新作のお菓子は・・・」
私はその度に笑顔で答えたつもりだったが、会話はすぐに途切れてしまう。
「巻島くん」
放課後、今日初めて私から巻島くんに話しかけた。
「何っショ!?」
なぜか嬉しそうに食い気味に私の言葉の続きを促した。
「今日部活休ませてほしいの。体調があまりよくなくて・・・ごめんね」
自分の有用性について疑問を持つ今、部活に行くことができなかった。
巻島くんの顔を見ることも返事を聞くこともせずそのまま教室を出た。
******
部活を休んで1日考えて、やっぱり退部しようと決意した。
素人が中途半端にやるべきではなかった。
私はもうそろそろ朝練が終わる頃だろうと思い、部室近くで金城くんが出てくるのを待った。
皆にも謝った方がいいよね。
金城くんに話した後、みんなにも謝ろう。
「あー!!!おった!!!」
私がそんなことを考えながら壁にもたれ掛かっていたら大声が聞こえてたのでそちらを振り向いた。
すると赤い頭がどんどん近づいてくる。
「名字さん!!!」
「な、鳴子くん・・・?」
私の前まで勢いよく突進してきたかと思えば、ガバッと地面につくのではないかと思うほど頭を下げた。
「はよ部活戻ってきてください!!!」
「え?え?」
私は意味が分からず狼狽えた。
「巻島さんが使いモンにならないんです!」
鳴子くんは必死の形相で私に詰め寄った。
「ワイに山で抜かれそうになるとかありえへん!」
確か鳴子くんは平坦に強いスプリンターで、山が苦手と聞いた。
巻島くんはクライマーでその逆だったはず。
その巻島くんが鳴子くんに山で抜かれそうになるって・・・。
「どうしたの?」
鳴子くんの声は人一倍大きいため、他の部員達にも私の存在がバレてわらわらと人が集まりその場に全員が集合してしまった。
巻島くん本人もいる。
「みんな・・・いきなり休んじゃってごめんなさい。よく考えたんだけど・・・私部活辞めようかなって思って・・・」
勢いでそのまま思っていたことを告げると巻島くんは苦しそうな顔をしていた。
その表情に私も悲しくなった。
「ダダダダダメです!」
私の言葉を聞いて真っ先に反応したのは小野田くんだった。
「名字さんがいないと巻島さんダメになっちゃうんです!僕、ずっと巻島さんに憧れてて・・・ずっとその背中を追いかけているんですけど昨日はいつもの巻島さんと全然違った。それに僕自身も名字さんにいてほしいです」
小野田くんも鳴子くんと同じことを言っている。
私に巻島くんのコンディションを左右するそんな力があると思えないけど。
「俺も同意です。昨日の巻島さんは見ていられませんでした。貴方はこの部に必要な存在です」
「なんや、スカシ。珍しく意見合ったな」
「うるさい」
これは何の夢だろうか。
「ということで、戻ってきてください!!」
1年トリオが横並びになって私に頭を下げた。
「やっぱ、あれですか。グラビア雑誌持ってるなんてキモい、一緒に歩きたくない、私の傍に近寄らないで、って感じですか?」
鳴子くんが心配そうに、けれど面白がって裏声で女子の声を真似て表現した。
「名前!」
今まで黙っていた巻島くんが私の前まで来た。
「悪かったっショ!」
巻島くんまで私に頭を下げた。
「え、え、なんで巻島くんが謝るの?」
「あの本を持っていたことには弁明の余地はないッっショ。キモいって思われても仕方ないと思う。でも・・・やっぱり名前がいないと俺は調子が上がらないって再確認した。だから許してもらえるならまた部活に戻ってきてほしいっショ」
「ちょっちょっと待って」
私は話の流れがおかしいことに気づいてストップを掛けた。
巻島くんも顔を上げて私の様子がおかしいことに気づく。
「あれ?なんで私が謝られてるんだろ・・・」
私がみんなの役に立てなくて部活を辞めるのを謝るって流れだったはずなのに。
混乱している私に助け船を出してくれたのは2年生の手嶋くんだった。
「名字さんは、一昨日巻島さんがグラビア本を持っていることに嫌悪感を受けて部活に来なかったんじゃないんですか?」
手嶋くんの言葉に私は驚いた。
「え!違うよ!」
私は今までの自分の気持ちを説明した。
全く役に立てない上に巻島くんのグラビア本を見て自信を完全に失ってしまったことをこの際だから洗いざらい全て話した。
「なーんや!そんなことやったんすか!」
鳴子くんはゲラゲラ笑った。
「巻島さんあの後名字さんに嫌われたと思ってあの本燃やしてましたよ」
「え!?燃やした!?」
私は驚いて巻島くんを見るとハハハと乾いた声で笑っていた。
「じゃあ、何の問題もないじゃないっすか!勘違いってことで名字さん今日から部活戻ってくるでしょ?」
鳴子くんはニカッと笑った。
「みんな・・・いいの?私全然役に立ててないのに]
私がみんなを見渡すと全員が頷いてくれた。
「じゅーぶん役に立ってますよ!」
鳴子くんが私の肩に手を回した。
すると巻島くんがその腕を私の肩から外した。
「名前は俺専用マネージャーっショ」
素人でしかも3年生が部活に入るなんて前代未聞だろう。
1年で入ってきた寒咲幹ちゃんは生粋の自転車オタクでこの子がいるなら私がマネージャーやらなくてもいいのでは・・・と思った。
その考えを金城くんにそのまま伝えると、「巻島のためにいてやってくれ」と返されたので真意はよくわからないが素直に頷いた。
「でもやっぱり納得できない・・・」
「どこが分からないっショ?」
私が英語の宿題を後ろを向いて巻島くんと一緒に解いていたときに呟いた一言を問題がわからないと彼は解釈したらしい。
「あ、宿題じゃなくてね・・・。なんで私を金城くんはマネージャーに誘ってくれたんだろうって。万年帰宅部でスポーツのいろはも知らないのに。幹ちゃんっていう完璧なマネージャーがいるなら私必要なのなかって」
「金城には言ったのか?」
「うん。そしたら巻島くんのためにいてくれって言われた」
金城くんに言われたありのままの言葉を伝えると、巻島くんは教科書で顔を覆った。
「私って巻島くんの力になれる?」
巻島くんは視線を泳がせながらそっぽを向いて答えた。
「十分なってるっショ。名前が入部してから俺のタイムは右肩上がりだ」
その答えを聞いて私は自分の存在意義を少し感じることができた。
「他のみんなのためにも頑張るね」
当たり前の返事を返したはずなのに、巻島くんは一瞬困ったような顔をしていた気がした。
******
インハイ優勝を目標に掲げているこの部に休む暇はない。
放課後、巻島くんと一緒に部室へ向かった。
「巻島さん、名字さん、お疲れ様です」
小野田くんが私達を見てぺこりと頭を下げた。
すでに他の部員は部室に集まっており、各々準備をしている。
「いつも思いますけど、巻島さんと名字さんって『ニコイチ』ゆーやつですね!」
鳴子くんの関西独特のイントネーションにももう慣れてきた。
「その表現はもう古いんじゃないのか。最近女子の間でも聞かないぞ」
今泉くんは鳴子くんとは対照的にクールだ。
対照的な1年トリオを私は微笑ましい気持ちで見ていた。
「でもそんなに私達一緒にいるかなぁ?」
ニコイチと呼ばれるほど私達は仲いいのだろうか。
「休憩中よく一緒にいはるじゃないですか!」
鳴子くんの言葉で思い返せば休憩しているときよく一緒にいる気がした。
だめだ。
もっと後輩とコミュニケーション取らないと。
私は自分の行動を反省した。
「くだらねぇこと言ってないでさっさと準備するっショ」
巻島くんの言葉で話は区切りがつき、部活が始まった。
******
部活が終わり、部室に戻ろうとしたとき先に着替えていた1年トリオの会話が聞こえてきた。
「そういえば、なんで名字さんこの時期にマネージャーになったんやろ?」
鳴子くんの声はよく通るので聞こうとしなくても聞こえてくる。
しかも自分の話題であることに気づき入れなくなってしまった。
どうしようかと思っていると中の会話はどんどん進んでいく。
「金城さんが誘ったんだろ?」
「でも部活自体経験したことない人やで?巻島さんの彼女かと思ったけど、違うみたいやし・・・」
「まぁ、実際役に立つかと聞かれたらまだ微妙だけど。寒咲も人手がいた方がいいだろ」
「僕は名字さんがいてくれたら場が和やかになるからいいと思うけど・・・」
小野田くんの言葉に涙が出そうになった。
でもやっぱり私の存在に疑問を鳴子くんと今泉くんは持っているんだよね。
悲しいけど当たり前の疑問だ。
「入らないのか?」
私がその場で立ち尽くしていると後ろから巻島くんの長い腕が伸びてきた。
巻島くんは躊躇なく部室に入った。
3人は後ろにいる私の姿を見てまずいという表情を浮かべていた。
「みんな、お疲れ様!」
私は聞こえていなかったふりをした。
「鞄だけ取って先に出るね」
皆が着替えやすいようにという配慮とその場からすぐに離れたいという気持ちがあったので私は自分のロッカーに手をかけた。
「あれ?」
ロッカーを開けても自分の鞄がなかった。
「そこ俺のロッカー」
先ほどの動揺がおさえられず、間違えて巻島くんのロッカーを開けてしまった。
「ご、ごめん!」
私は慌てて巻島くんに謝った。
「気にすることないっショ」
人様のロッカーを開けるなんてなんてことを。
巻島くんが自分の鞄を出したとき、バサリと何かが落ちた。
「何か落ちたよ」
「だだだだ、だめっショ!!!」
「え?」
巻島くんが声を上げたときにはもう遅く、私はすでにその本を拾って巻島くんに渡そうとしていた。
そのとき目に飛び込んできたのはダイナマイトボディを曝け出す女性の水着姿。
私は手に本をもったまま固まった。
あれ・・・こういう本って何ていうんだっけ・・・。
エロ本?
違う・・・グラビアだ!!
女の私でも驚くほどに胸が大きい。
なのにお腹は引き締まっていてお尻がまたボンと出ている。
巻島くん、こういう人がタイプなのかな。
やっぱり男の子は大きい方が好きだよね。
私は自分の幼児体系を思い出した。
「お疲れ様です~」
一瞬で凍ったこの場の空気に似つかわしくない可憐な声が部室に響いた。
「寒咲!」
今泉くんが口に人差し指を当てて黙るようにジェスチャーしていた。
「どうしたの?」
私は本を手に持ったまま、寒咲さんを見た。
そういえば幹ちゃんも胸大きいしスタイルいいなぁ。
私って巻島くんのためにいてくれって金城くんに言われたよね?
でも巻島くんはスタイルよくて胸が大きい子が好きなわけで・・・。
目の前にいる寒咲幹ちゃんの方が私より当てはまっている。
あれ、私いよいよ必要なくない?
マネージャーとしても未熟で、巻島くんのためにもなってないってことに気づいたら私は何のためにここにいたらいいんだろう。
「はい、これ」
私が本を差し出すと力が入っていない手でそれを巻島くんは受け取った。
「あ、名前・・・これは・・・」
「お疲れ様でした」
巻島くんは何か言いかけていたが、これ以上ここにいるのが辛くて私は鞄を肩に掛けると部室を後にした。
******
翌日、巻島くんはいつも以上に喋りかけてきた。
「名前!昨日のドラマは・・・」
「名前!この授業の宿題は・・・」
「名前!この新作のお菓子は・・・」
私はその度に笑顔で答えたつもりだったが、会話はすぐに途切れてしまう。
「巻島くん」
放課後、今日初めて私から巻島くんに話しかけた。
「何っショ!?」
なぜか嬉しそうに食い気味に私の言葉の続きを促した。
「今日部活休ませてほしいの。体調があまりよくなくて・・・ごめんね」
自分の有用性について疑問を持つ今、部活に行くことができなかった。
巻島くんの顔を見ることも返事を聞くこともせずそのまま教室を出た。
******
部活を休んで1日考えて、やっぱり退部しようと決意した。
素人が中途半端にやるべきではなかった。
私はもうそろそろ朝練が終わる頃だろうと思い、部室近くで金城くんが出てくるのを待った。
皆にも謝った方がいいよね。
金城くんに話した後、みんなにも謝ろう。
「あー!!!おった!!!」
私がそんなことを考えながら壁にもたれ掛かっていたら大声が聞こえてたのでそちらを振り向いた。
すると赤い頭がどんどん近づいてくる。
「名字さん!!!」
「な、鳴子くん・・・?」
私の前まで勢いよく突進してきたかと思えば、ガバッと地面につくのではないかと思うほど頭を下げた。
「はよ部活戻ってきてください!!!」
「え?え?」
私は意味が分からず狼狽えた。
「巻島さんが使いモンにならないんです!」
鳴子くんは必死の形相で私に詰め寄った。
「ワイに山で抜かれそうになるとかありえへん!」
確か鳴子くんは平坦に強いスプリンターで、山が苦手と聞いた。
巻島くんはクライマーでその逆だったはず。
その巻島くんが鳴子くんに山で抜かれそうになるって・・・。
「どうしたの?」
鳴子くんの声は人一倍大きいため、他の部員達にも私の存在がバレてわらわらと人が集まりその場に全員が集合してしまった。
巻島くん本人もいる。
「みんな・・・いきなり休んじゃってごめんなさい。よく考えたんだけど・・・私部活辞めようかなって思って・・・」
勢いでそのまま思っていたことを告げると巻島くんは苦しそうな顔をしていた。
その表情に私も悲しくなった。
「ダダダダダメです!」
私の言葉を聞いて真っ先に反応したのは小野田くんだった。
「名字さんがいないと巻島さんダメになっちゃうんです!僕、ずっと巻島さんに憧れてて・・・ずっとその背中を追いかけているんですけど昨日はいつもの巻島さんと全然違った。それに僕自身も名字さんにいてほしいです」
小野田くんも鳴子くんと同じことを言っている。
私に巻島くんのコンディションを左右するそんな力があると思えないけど。
「俺も同意です。昨日の巻島さんは見ていられませんでした。貴方はこの部に必要な存在です」
「なんや、スカシ。珍しく意見合ったな」
「うるさい」
これは何の夢だろうか。
「ということで、戻ってきてください!!」
1年トリオが横並びになって私に頭を下げた。
「やっぱ、あれですか。グラビア雑誌持ってるなんてキモい、一緒に歩きたくない、私の傍に近寄らないで、って感じですか?」
鳴子くんが心配そうに、けれど面白がって裏声で女子の声を真似て表現した。
「名前!」
今まで黙っていた巻島くんが私の前まで来た。
「悪かったっショ!」
巻島くんまで私に頭を下げた。
「え、え、なんで巻島くんが謝るの?」
「あの本を持っていたことには弁明の余地はないッっショ。キモいって思われても仕方ないと思う。でも・・・やっぱり名前がいないと俺は調子が上がらないって再確認した。だから許してもらえるならまた部活に戻ってきてほしいっショ」
「ちょっちょっと待って」
私は話の流れがおかしいことに気づいてストップを掛けた。
巻島くんも顔を上げて私の様子がおかしいことに気づく。
「あれ?なんで私が謝られてるんだろ・・・」
私がみんなの役に立てなくて部活を辞めるのを謝るって流れだったはずなのに。
混乱している私に助け船を出してくれたのは2年生の手嶋くんだった。
「名字さんは、一昨日巻島さんがグラビア本を持っていることに嫌悪感を受けて部活に来なかったんじゃないんですか?」
手嶋くんの言葉に私は驚いた。
「え!違うよ!」
私は今までの自分の気持ちを説明した。
全く役に立てない上に巻島くんのグラビア本を見て自信を完全に失ってしまったことをこの際だから洗いざらい全て話した。
「なーんや!そんなことやったんすか!」
鳴子くんはゲラゲラ笑った。
「巻島さんあの後名字さんに嫌われたと思ってあの本燃やしてましたよ」
「え!?燃やした!?」
私は驚いて巻島くんを見るとハハハと乾いた声で笑っていた。
「じゃあ、何の問題もないじゃないっすか!勘違いってことで名字さん今日から部活戻ってくるでしょ?」
鳴子くんはニカッと笑った。
「みんな・・・いいの?私全然役に立ててないのに]
私がみんなを見渡すと全員が頷いてくれた。
「じゅーぶん役に立ってますよ!」
鳴子くんが私の肩に手を回した。
すると巻島くんがその腕を私の肩から外した。
「名前は俺専用マネージャーっショ」
