クモ男さんと一緒/巻島
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自転車部一行に昼食を混ぜてもらったあの日から、巻島くんとの距離はぐっと近づく・・・どころかなぜか遠ざかってしまった。
「ねぇ、巻島くん。このお菓子美味しいよ。食べる?」
休み時間、私は持ってきたチョコを差し出した。
「あ・・・ああ。ありがとう。でも最近節制してるから遠慮しとくっショ」
「そっかぁ・・・」
視線が泳ぐ巻島くん。
私は行き場を失ったチョコの箱を手元に戻した。
この間までは普通に食べていたのに。
彼は細身でどう見ても節制が必要には見えない。
断る理由だということは明らかだった。
そこそこ仲良くなったと自分で思っていたのだが、そう感じていたのは自分だけだったのだろうか。
せっかくできた男友達だったのにな。
私はこれ以上自分が傷つかないために彼に話しかけるのを止めることにした。
******
名前と昼食を共にしたあの日、金城と田所に部活で散々からかわれた。
金城はからかうというより微笑ましいといった感じで、むしろ大口を開けてからかう田所よりも厄介だと思った。
とはいっても全国制覇にかける想いは熱く、部活に支障をきたしてはならない。
俺は自分の気持ちに蓋をすることを決めた。
けれど「気持ちに蓋をする」という決意自体が意識として成り立っているのでなかなかうまくいかない。
そう感じたのは、最近のタイムを見てのことだった。
気持ちに蓋をすると決めて以降、彼女と話すのを極力避けた。
必要最低限のことだけ話そう。
そうしていくうちに彼女が時折悲しそうな表情を浮かべていることに気づいた。
俺は話し下手だが、勘が悪いわけではない。
❝男の子でこんなに仲良くなれたのは巻島くんが初めてだよ!❞
この間の彼女の言葉が脳裏を掠める。
あんなに自分と仲良くなれて喜んでいたのだから今の状況に傷つかないはずがない。
授業中、目の前にある彼女の背中に謝った。
******
「最近、調子が悪いな」
とうとう金城にもタイムの落ち込みについて指摘された。
「悪いな。必ずすぐに戻すっショ」
俺は愛車を点検しながら金城に返事を返した。
「そうか・・・」
俺らの先輩が卒業し、1年が入ってきて新しい部に生まれ変わろうとしているこの大事な時期にくすぶっているわけにはいかない。
金城は心配した様子で俺の方を見ていたが、俺は気づかない振りをして背中を向けたまま整備を続けた。
あれから数日経っても俺の調子は戻らなかった。
ペダルを回しているときも、なぜか名前の顔がちらついた。
その日の部活を終えて帰路につこうとしたとき、渡り廊下で彼女を見つけた。
名前は部活に所属していないのでもうとっくに帰宅しているはずの時間だった。
しかもその隣には俺がよく知る人物と一緒に歩いていた。
「金城・・・?」
なんであの2人が?
なんとなく気になり、彼らの後をつけた。
「まるでストーカーだな・・・」
金城は用事があるから田所と俺に先に帰るように言っていた。
その用事が彼女だというのだろうか。
「まさか・・・な」
2人の後をつけている時、どこへ向かっているか途中で気づいた。
「部室?」
案の定、先ほど閉めたばかりの部室を再び金城が開けた。
扉を開けて名前を中へ通した。
部室の中には名前と金城が2人きり。
いやいやいやいや。
何考えてるんっショ!!
金城に限ってそんなこと・・・。
しかし冷静になると金城はモテる。
この間のお昼をきっかけに2人の仲が急接近することもありえなくはない。
俺の額から一筋の汗が伝った。
「それはないっショ、金城・・・」
こっちは必死でインハイに向けて気持ちを整理しているのに。
そう思うと沸々と怒りが湧いてきた。
気が付けば部室の前まで来てドアノブに手がかかっていた。
それを回して体重を前に掛け勢いよく扉を開けた。
「何してるっショ!?」
中へ入ると名前と金城が向かい合わせに座り、彼女は書類を書いていた。
「巻島くん!」
名前は目を丸くした。
「巻島。帰ったんじゃなかったのか」
2人はどうみても恋人達の甘い雰囲気・・・ではなく、むしろテーブルを挟んで座っているので距離がある。
「え・・・?名前こそ何してるっショ・・・?」
彼女が書いている紙を覗き込んだ。
「入部届?」
「金城くんがね、マネージャーにならないかって誘ってくれたの。3年だから少しだけだけど、役に立てるならやってみたいなって・・・」
金城に視線を移すと口元を上げた。
俺は金城を引っ張って部室の外に連れ出した。
「あれはどういうことっショ!?」
「お前は最近調子が悪い。原因はあの子だろう?しばらく様子を見ていたが、離れることで気持ちに整理をつけられないなら一層のこと傍に置けばいいのではないか」
金城には全てお見通しだった。
俺はその場に座り込んだ。
「はぁ・・・俺は部のためを思って・・・」
「部のためを思うならあの子を傍に置いておけ。きっとお前はさらに強くなる」
金城が部室に戻ったので俺もあとに続いた。
名前は不安そうな表情を浮かべていた。
「やっぱり巻島くんは反対かな・・・?」
しゅんと肩を落とす名前に胸が痛んだ。
「いいのか?受験勉強する時間短くなるぞ」
名前は首を振った。
「実はね、今日峰ヶ山を登ってる巻島くん見たの」
確かに今日は峰ヶ山を走っていた。
どこに彼女がいたのだろうか。
「金城くんに教えてもらったポイントに先回りしたの。頂上目指している巻島くん、すごくかっこよかった」
俺の走り方は独特で、左右に大きく揺れるため驚かれることはあってもかっこいいと言われたのは初めてだった。
「他のみんなもすごかった。これまでにないぐらい熱い気持ちになったの。金城くんが誘ってくれたせっかくの機会だから、私も力になりたい。だめかな?」
名前が握りしめた入部届は皺になっていた。
彼女の想いは俺の中にストンと落ちた。
「全然だめじゃないっショ。これからよろしく」
ここ最近名前の悲しそうな顔ばかりを見ていたため、最高の笑顔を浮かべた彼女に俺の気持ちも温かくなった。
金城の言う通り、彼女がマネージャーになり傍で笑うようになった途端、タイムは元に戻った。
それどころかすこぶる調子がいい。
俺にとって名前は特別な存在だと認めざるをえなくなった。
「ねぇ、巻島くん。このお菓子美味しいよ。食べる?」
休み時間、私は持ってきたチョコを差し出した。
「あ・・・ああ。ありがとう。でも最近節制してるから遠慮しとくっショ」
「そっかぁ・・・」
視線が泳ぐ巻島くん。
私は行き場を失ったチョコの箱を手元に戻した。
この間までは普通に食べていたのに。
彼は細身でどう見ても節制が必要には見えない。
断る理由だということは明らかだった。
そこそこ仲良くなったと自分で思っていたのだが、そう感じていたのは自分だけだったのだろうか。
せっかくできた男友達だったのにな。
私はこれ以上自分が傷つかないために彼に話しかけるのを止めることにした。
******
名前と昼食を共にしたあの日、金城と田所に部活で散々からかわれた。
金城はからかうというより微笑ましいといった感じで、むしろ大口を開けてからかう田所よりも厄介だと思った。
とはいっても全国制覇にかける想いは熱く、部活に支障をきたしてはならない。
俺は自分の気持ちに蓋をすることを決めた。
けれど「気持ちに蓋をする」という決意自体が意識として成り立っているのでなかなかうまくいかない。
そう感じたのは、最近のタイムを見てのことだった。
気持ちに蓋をすると決めて以降、彼女と話すのを極力避けた。
必要最低限のことだけ話そう。
そうしていくうちに彼女が時折悲しそうな表情を浮かべていることに気づいた。
俺は話し下手だが、勘が悪いわけではない。
❝男の子でこんなに仲良くなれたのは巻島くんが初めてだよ!❞
この間の彼女の言葉が脳裏を掠める。
あんなに自分と仲良くなれて喜んでいたのだから今の状況に傷つかないはずがない。
授業中、目の前にある彼女の背中に謝った。
******
「最近、調子が悪いな」
とうとう金城にもタイムの落ち込みについて指摘された。
「悪いな。必ずすぐに戻すっショ」
俺は愛車を点検しながら金城に返事を返した。
「そうか・・・」
俺らの先輩が卒業し、1年が入ってきて新しい部に生まれ変わろうとしているこの大事な時期にくすぶっているわけにはいかない。
金城は心配した様子で俺の方を見ていたが、俺は気づかない振りをして背中を向けたまま整備を続けた。
あれから数日経っても俺の調子は戻らなかった。
ペダルを回しているときも、なぜか名前の顔がちらついた。
その日の部活を終えて帰路につこうとしたとき、渡り廊下で彼女を見つけた。
名前は部活に所属していないのでもうとっくに帰宅しているはずの時間だった。
しかもその隣には俺がよく知る人物と一緒に歩いていた。
「金城・・・?」
なんであの2人が?
なんとなく気になり、彼らの後をつけた。
「まるでストーカーだな・・・」
金城は用事があるから田所と俺に先に帰るように言っていた。
その用事が彼女だというのだろうか。
「まさか・・・な」
2人の後をつけている時、どこへ向かっているか途中で気づいた。
「部室?」
案の定、先ほど閉めたばかりの部室を再び金城が開けた。
扉を開けて名前を中へ通した。
部室の中には名前と金城が2人きり。
いやいやいやいや。
何考えてるんっショ!!
金城に限ってそんなこと・・・。
しかし冷静になると金城はモテる。
この間のお昼をきっかけに2人の仲が急接近することもありえなくはない。
俺の額から一筋の汗が伝った。
「それはないっショ、金城・・・」
こっちは必死でインハイに向けて気持ちを整理しているのに。
そう思うと沸々と怒りが湧いてきた。
気が付けば部室の前まで来てドアノブに手がかかっていた。
それを回して体重を前に掛け勢いよく扉を開けた。
「何してるっショ!?」
中へ入ると名前と金城が向かい合わせに座り、彼女は書類を書いていた。
「巻島くん!」
名前は目を丸くした。
「巻島。帰ったんじゃなかったのか」
2人はどうみても恋人達の甘い雰囲気・・・ではなく、むしろテーブルを挟んで座っているので距離がある。
「え・・・?名前こそ何してるっショ・・・?」
彼女が書いている紙を覗き込んだ。
「入部届?」
「金城くんがね、マネージャーにならないかって誘ってくれたの。3年だから少しだけだけど、役に立てるならやってみたいなって・・・」
金城に視線を移すと口元を上げた。
俺は金城を引っ張って部室の外に連れ出した。
「あれはどういうことっショ!?」
「お前は最近調子が悪い。原因はあの子だろう?しばらく様子を見ていたが、離れることで気持ちに整理をつけられないなら一層のこと傍に置けばいいのではないか」
金城には全てお見通しだった。
俺はその場に座り込んだ。
「はぁ・・・俺は部のためを思って・・・」
「部のためを思うならあの子を傍に置いておけ。きっとお前はさらに強くなる」
金城が部室に戻ったので俺もあとに続いた。
名前は不安そうな表情を浮かべていた。
「やっぱり巻島くんは反対かな・・・?」
しゅんと肩を落とす名前に胸が痛んだ。
「いいのか?受験勉強する時間短くなるぞ」
名前は首を振った。
「実はね、今日峰ヶ山を登ってる巻島くん見たの」
確かに今日は峰ヶ山を走っていた。
どこに彼女がいたのだろうか。
「金城くんに教えてもらったポイントに先回りしたの。頂上目指している巻島くん、すごくかっこよかった」
俺の走り方は独特で、左右に大きく揺れるため驚かれることはあってもかっこいいと言われたのは初めてだった。
「他のみんなもすごかった。これまでにないぐらい熱い気持ちになったの。金城くんが誘ってくれたせっかくの機会だから、私も力になりたい。だめかな?」
名前が握りしめた入部届は皺になっていた。
彼女の想いは俺の中にストンと落ちた。
「全然だめじゃないっショ。これからよろしく」
ここ最近名前の悲しそうな顔ばかりを見ていたため、最高の笑顔を浮かべた彼女に俺の気持ちも温かくなった。
金城の言う通り、彼女がマネージャーになり傍で笑うようになった途端、タイムは元に戻った。
それどころかすこぶる調子がいい。
俺にとって名前は特別な存在だと認めざるをえなくなった。
