クモ男さんと一緒/巻島
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2年生が終わり、春休みに調べものをするために学校の図書館にわざわざ足を運んだ。
ネットで調べる人が多いこのご時世だが、やはりあれは信用できない。
帰宅部の私は春休み部活もなく暇という理由でもあった。
図書室で私は思いっきり背伸びをして目当ての本を取ろうとした。
急がば回れとはよくいうもので、かれこれ奮闘しているもののあとちょっとというところで届かない。
台を持ってきたほうが早かった。
あきらめて台を探そうとしたその時、後ろから色くて長い手がにゅっと伸びてきた。
「これか?」
驚いて振り向くと、緑色の髪が印象的な男の子が私が取ろうとしていた本を手に持っていた。
長い緑の髪に目を奪われた。
「髪・・・綺麗ですね。山の色みたい」
しまった。
気づいた時にはもう遅く、質問されている答えとは全く関係のない返答をしてしまった。
「・・・ありがとう?」
男の子は一瞬目を見開き照れた様子で人差し指で頬を掻いた。
「ご、ごめんなさい。いきなり変なことを言っちゃって。本はこれです。ありがとうございました」
私は恥ずかしくなり、慌てて彼が持っている本をさらってその場を離れた。
最悪だ。
せっかく取ってくれたのにろくなお礼も言えず、挙句には奪うようにして本を持ってきてしまった。
彼のことは噂程度に知っていた。
玉虫色の髪をした男子生徒がいると。
けれど今まで同じクラスどころか隣のクラスにもなったことがないので知らないままだった。
「名前なんだっけ・・・」
うーん。思い出せない。
私は帰宅途中、名前を思い出すのに必死で緑の彼が私の頭にこびりついて離れなかった。
「っていうか山の色ってなに。他にもっといい例えあったでしょ、私。自然の色とか・・・」
自分のしでかした失態を再び思い出し顔を覆った。
*****
今年こそ全国制覇だ。
そのためには今年の1年にいい奴入れなきゃな。
そんなことを考えながら部活が午前中で終わった今日、春休みの課題を終わらすために図書館へ向かった。
学年が変わる春休みは宿題がないことを期待していたのに裏切られた。
しっかり課題は出されたのだ。
俺は適当な席に腰を下ろし、課題に取り掛かった。
けれど、思うように筆は進まない。
「・・・何してるんショ」
顔を上げるたびに視界に入り込む女子生徒の姿。
一生懸命手を伸ばして本を取ろうとしているのが誰の目で見てもわかる。
けれど届きそうで届かない。
その距離がもどかしい。
全く届かなければ諦めて台を使うのだろうが、取れそうなので彼女も横着してしまっているのだろう。
周囲に他の生徒はおらず、彼女のこの姿を見ているのは自分だけ。
そして彼女自身見られていることに気づいていない。
「・・・!」
見ている内に重大なことに気づいた。
彼女が背伸びをするたびにどんどんスカートの丈が上がっていっている。
そんなことに気づいてしまう俺って…。
何となく罪悪感が芽生えたのと、このままでは課題に集中できないので俺は彼女に近寄って後ろから手を伸ばした。
彼女はまさか後ろに人がいると思っていなかったのかひどく驚いていた。
「これか?」
俺はこの本でよかったか尋ねたのだが、彼女の返事は右斜め上をいくものだった。
「髪・・・綺麗ですね。山の色みたい」
髪?
俺は一瞬何を言われているのか理解できなかった。
自分が求めている答えと違う内容だったこともそうだが、それよりもこの髪を初見で褒められたのは初めてだった。
奇抜な色な上、長髪なので余計に目立つ。
もう慣れたが好奇の目で見られることが多く、教師にも入学当初はよく叱られた。
なのに目の前の彼女は綺麗だと言った。
さらに俺が自転車乗りであることを彼女は知らないはずなのに俺の好きな山のようだと。
「・・・ありがとう?」
何疑問形で答えてんだ、俺。
せっかく褒めてくれているのに笑顔に慣れていない俺はお礼を言うだけで精一杯だった。
「ご、ごめんなさい。いきなり変なことを言っちゃって。本はこれです。ありがとうございました」
彼女自身、自分が的を外した回答をしていることに気づき嵐のように去っていった。
「あ・・・」
図書館を飛び出した彼女の背中を俺はただ眺めることしかできなかった。
*****
あっという間に春休みは終わり3年クラス替え。
もともと大勢でつるむのが好きではない俺はぶっちゃけ誰が同じクラスかより担任が誰かの方が大事だ。
「・・・お、あった」
自分の名前を確認し、ついでに金城と田所っちの分だけ探した。
2人も別のクラスか。
俺は自分の教室に行くと座席表で席を確認して座った。
入口から一番遠い窓際の席。
きっとすぐに席替えあるんだろうけど。
「巻島くん・・・」
俺の前の席に鞄を下ろした奴に名前を呼ばれたので見上げると視線がかち合った。
「あ・・・」
あの時の女子生徒。
俺は胸の高鳴りを感じた。
「この間はごめんなさい!失礼な態度をとってしまって・・・。改めてあの時はありがとうございます」
深々と頭を下げる彼女に俺は焦った。
「そんな謝ることじゃないッショ」
「私、巻島くんのことちょっと知ってた。でも巻島くんは私のこと知らないよね。名字名前です。1年間よろしくね」
彼女が俺を知っていた。
俺は机の下で拳に力を入れた。
*****
3年でも仲のいい友達と同じクラスになり、ひとしきり喜びを分かち合った後、自分たちの教室へ入った。
3年にもなると半分以上は知っている顔だ。
その中にあの時の彼もいた。
緑色の髪はやはり目立ち、一瞬で分かった。
ちなみに名前も知ることができた。
『巻島裕介』くん。
あの日もやもやしすぎて友達に尋ねたら一瞬で解決した。
座席表を確認するとなんと彼の前の席だった。
鞄を置きあの時のお礼と自己紹介をした。
巻島くんは何やら嬉しそう。
私達は先生が来るまでの間、お喋りをしてお互いの話をした。
改めて見るとやっぱり彼の髪は綺麗だ。
私は自分の髪を触った。
「どうした?」
「んー、私の髪は巻島くんと違って何の変哲もない黒髪だからなぁ。巻島くんみたいになりたい」
やっぱり人と違うってかっこいい。
私がそういうと巻島くんは照れて顔を背けた。
そして私の髪を横目で見ながら呟いた。
「その髪、似合ってるし綺麗ッショ」
きっと巻島くんとは仲良くなれる。
そんな気がした。
ネットで調べる人が多いこのご時世だが、やはりあれは信用できない。
帰宅部の私は春休み部活もなく暇という理由でもあった。
図書室で私は思いっきり背伸びをして目当ての本を取ろうとした。
急がば回れとはよくいうもので、かれこれ奮闘しているもののあとちょっとというところで届かない。
台を持ってきたほうが早かった。
あきらめて台を探そうとしたその時、後ろから色くて長い手がにゅっと伸びてきた。
「これか?」
驚いて振り向くと、緑色の髪が印象的な男の子が私が取ろうとしていた本を手に持っていた。
長い緑の髪に目を奪われた。
「髪・・・綺麗ですね。山の色みたい」
しまった。
気づいた時にはもう遅く、質問されている答えとは全く関係のない返答をしてしまった。
「・・・ありがとう?」
男の子は一瞬目を見開き照れた様子で人差し指で頬を掻いた。
「ご、ごめんなさい。いきなり変なことを言っちゃって。本はこれです。ありがとうございました」
私は恥ずかしくなり、慌てて彼が持っている本をさらってその場を離れた。
最悪だ。
せっかく取ってくれたのにろくなお礼も言えず、挙句には奪うようにして本を持ってきてしまった。
彼のことは噂程度に知っていた。
玉虫色の髪をした男子生徒がいると。
けれど今まで同じクラスどころか隣のクラスにもなったことがないので知らないままだった。
「名前なんだっけ・・・」
うーん。思い出せない。
私は帰宅途中、名前を思い出すのに必死で緑の彼が私の頭にこびりついて離れなかった。
「っていうか山の色ってなに。他にもっといい例えあったでしょ、私。自然の色とか・・・」
自分のしでかした失態を再び思い出し顔を覆った。
*****
今年こそ全国制覇だ。
そのためには今年の1年にいい奴入れなきゃな。
そんなことを考えながら部活が午前中で終わった今日、春休みの課題を終わらすために図書館へ向かった。
学年が変わる春休みは宿題がないことを期待していたのに裏切られた。
しっかり課題は出されたのだ。
俺は適当な席に腰を下ろし、課題に取り掛かった。
けれど、思うように筆は進まない。
「・・・何してるんショ」
顔を上げるたびに視界に入り込む女子生徒の姿。
一生懸命手を伸ばして本を取ろうとしているのが誰の目で見てもわかる。
けれど届きそうで届かない。
その距離がもどかしい。
全く届かなければ諦めて台を使うのだろうが、取れそうなので彼女も横着してしまっているのだろう。
周囲に他の生徒はおらず、彼女のこの姿を見ているのは自分だけ。
そして彼女自身見られていることに気づいていない。
「・・・!」
見ている内に重大なことに気づいた。
彼女が背伸びをするたびにどんどんスカートの丈が上がっていっている。
そんなことに気づいてしまう俺って…。
何となく罪悪感が芽生えたのと、このままでは課題に集中できないので俺は彼女に近寄って後ろから手を伸ばした。
彼女はまさか後ろに人がいると思っていなかったのかひどく驚いていた。
「これか?」
俺はこの本でよかったか尋ねたのだが、彼女の返事は右斜め上をいくものだった。
「髪・・・綺麗ですね。山の色みたい」
髪?
俺は一瞬何を言われているのか理解できなかった。
自分が求めている答えと違う内容だったこともそうだが、それよりもこの髪を初見で褒められたのは初めてだった。
奇抜な色な上、長髪なので余計に目立つ。
もう慣れたが好奇の目で見られることが多く、教師にも入学当初はよく叱られた。
なのに目の前の彼女は綺麗だと言った。
さらに俺が自転車乗りであることを彼女は知らないはずなのに俺の好きな山のようだと。
「・・・ありがとう?」
何疑問形で答えてんだ、俺。
せっかく褒めてくれているのに笑顔に慣れていない俺はお礼を言うだけで精一杯だった。
「ご、ごめんなさい。いきなり変なことを言っちゃって。本はこれです。ありがとうございました」
彼女自身、自分が的を外した回答をしていることに気づき嵐のように去っていった。
「あ・・・」
図書館を飛び出した彼女の背中を俺はただ眺めることしかできなかった。
*****
あっという間に春休みは終わり3年クラス替え。
もともと大勢でつるむのが好きではない俺はぶっちゃけ誰が同じクラスかより担任が誰かの方が大事だ。
「・・・お、あった」
自分の名前を確認し、ついでに金城と田所っちの分だけ探した。
2人も別のクラスか。
俺は自分の教室に行くと座席表で席を確認して座った。
入口から一番遠い窓際の席。
きっとすぐに席替えあるんだろうけど。
「巻島くん・・・」
俺の前の席に鞄を下ろした奴に名前を呼ばれたので見上げると視線がかち合った。
「あ・・・」
あの時の女子生徒。
俺は胸の高鳴りを感じた。
「この間はごめんなさい!失礼な態度をとってしまって・・・。改めてあの時はありがとうございます」
深々と頭を下げる彼女に俺は焦った。
「そんな謝ることじゃないッショ」
「私、巻島くんのことちょっと知ってた。でも巻島くんは私のこと知らないよね。名字名前です。1年間よろしくね」
彼女が俺を知っていた。
俺は机の下で拳に力を入れた。
*****
3年でも仲のいい友達と同じクラスになり、ひとしきり喜びを分かち合った後、自分たちの教室へ入った。
3年にもなると半分以上は知っている顔だ。
その中にあの時の彼もいた。
緑色の髪はやはり目立ち、一瞬で分かった。
ちなみに名前も知ることができた。
『巻島裕介』くん。
あの日もやもやしすぎて友達に尋ねたら一瞬で解決した。
座席表を確認するとなんと彼の前の席だった。
鞄を置きあの時のお礼と自己紹介をした。
巻島くんは何やら嬉しそう。
私達は先生が来るまでの間、お喋りをしてお互いの話をした。
改めて見るとやっぱり彼の髪は綺麗だ。
私は自分の髪を触った。
「どうした?」
「んー、私の髪は巻島くんと違って何の変哲もない黒髪だからなぁ。巻島くんみたいになりたい」
やっぱり人と違うってかっこいい。
私がそういうと巻島くんは照れて顔を背けた。
そして私の髪を横目で見ながら呟いた。
「その髪、似合ってるし綺麗ッショ」
きっと巻島くんとは仲良くなれる。
そんな気がした。
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