【番外編②】クリスマス
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※付き合う前。
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12月に入り、師が走ると書く通り消太さんはとても忙しそうだ。
しかし世間は25日に近づくにつれ、賑やかさを増していく。
社会人になってからは学生ほど浮かれなくなり、平日なら気づけば25日が過ぎていたなんてこともよくある。
しかし今年は日曜日。
仕事も休みだ。
誰かと過ごすなら……頭に浮かぶ顔は無精髭の彼だった。
だが最初に言った通り彼は忙しい。
世間が浮き足立つに比例して犯罪も起こりやすいのだ。
一緒に過ごしたいけど…誘うのは憚られる。
付き合っていたら、さらっと「25日空いてる?」なんて聞けるのだが、まだそのような間柄ではない。
いや、付き合っていても私の性格的に結局聞けないかもしれない。
所有者不在のデスクに目をやり小さく溜め息を吐いた。
「あれ?相澤くんは?」
「ミッドナイト先生。相澤先生は緊急要請を受けて応援に行ってます」
「引っ張りだこねぇ」
「ですね」
強個性の消太さんは、他の先生達と比べても駆り出される件数が多いと思う。
「あっ、ねぇねぇ」
「何ですか?あのっ、ミッドナイト先生…お胸が…」
後ろから私の両肩に手を置き、ぐっと前のめりになったことで後頭部に柔らかい感触が。
ミッドナイト先生は気にする素振りもなく、顔を真横に近づけてニコッと笑った。
「25日空いてる?」
******************
「なんでわざわざクリスマスにお前の顔を見なきゃならないんだ」
「シヴィー!!!」
放課後に受けた応援要請をこなして寮に戻ったところをマイクに捕まった。
「なー!やろうぜぇ。クリパ!!!」
「三十路のおっさんが“クリパ”しても楽しくないだろ」
マイクはサングラス越しに俺を見た後、ニヤッと口角を上げた。
……嫌な予感がする。
「ふーん。じゃあ、参加者はミッドナイトさんと名前ちゃんだけね。両手に花ってのも悪くねーな!!!」
名前の名前が出てきて、部屋に戻ろうとしていた足はピタリと止まった。
分かりやすい俺が面白いのか、ケタケタ笑いながらマイクは俺の肩に腕を回した。
「もう一回聞くけどぉ……消太は不参加でオッケー?」
******************
私は鏡の前で自分の姿を最終チェックした。
「あれを着るよりマシ……!!」
うんうんと頷き、でも誰にも見られたくないので顔だけ廊下に出して左右に首を振り、人がいないことを確認してからダッシュした。
「ここだよね?」
ミッドナイトさんに指定された、寮内のフリールームをノックした。
「はいはーい」
中からミッドナイトさんが出てきた。
「全員揃ったわね」
「ごめんなさい!私が最後だったんですね」
「いいのよ。時間前だから。やーん、可愛い」
「恥ずかしいです…」
「ほらほら、入って」
背中を押されて中へ入る。
サンタコスをしたマイクさんといつもと何も変わらない消太さんが紙コップと紙皿を並べていた。
「おー!名前ちゃんはトナカイかぁ!」
「はい…これなら着れるかなって」
私は少しでも顔を隠せたらと思い、トナカイの耳がついたフードを引っ張った。
「私がサンタコス用意するって言ったのに!名前ちゃんが自分で用意するって聞かないから」
「何か嫌な予感がしたので…」
私の予感は当たっていて、ミッドナイト先生は18禁ヒーローの名に恥じないミニスカサンタを披露している。
とてもじゃないが私は着れない。
だから私はこれなら着てもいいかな、と思えるトナカイの着ぐるみを急いでネット注文した。
今後寝間着としても使えそうなやつ…。
「相澤先生は何も着ないんですか?」
「むしろ何で名前まで着てるんだ」
「だってクリスマス感を出す衣装でって言われたので…」
「相変わらず律儀だな…。いちいち真に受けなくていいぞ」
「いやいや!ショータこそ真に受けようぜ!」
マイク先生が被っていたサンタの帽子を消太さんの頭に乗せた。
「要請あったらすぐに行かないといけないだろ」
そりゃそうだ、と私は納得する。
「もー!堅いこと言わずに楽しみましょ」
ミッドナイト先生がクラッカーを配る。
「はい!じゃあ、いくわよ。メリークリスマス!!!!」
4人が合図と共にクラッカーの糸を引いた。
**********************
マイク先生とミッドナイト先生は上機嫌で酒を煽って、ほぼできあがってる。
私は紙コップに注いだジュースをちびちびと飲んでいた。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
目の前の2人が話し込んでいるので、必然的に私と消太さんがペアになる。
「あれ、お酒飲んじゃっていいんですか?」
消太さんはビールを缶のまま飲んでいた。
「まぁね」
「要請大丈夫なんですか?」
「……今日空けるためにずっと要請に対応してきたからな。本当は今日は緊急以外要請不可にしてる」
「そうだったんですか!」
消太さんもクリスマスパーティー楽しみにしてたんだなぁ…。
意外すぎて可愛い。
そう思い、チラリとマイク先生に被せられたサンタ帽子に視線を向けた。
「なんか勘違いしてるね」
「え?」
「今日、名前と過ごそうと思って空けておいたんだけど」
「え!?」
「でもマイク達に先を越された」
まさか消太さんが私のためにクリスマスを空けてくれてたなんて。
「2人で過ごしたいと思ってたんだけど…名前は違った?」
「私も…そう思ってたんですけど、付き合ってないし、消太さんお忙しそうだったから…」
悪いなぁと思って、そう呟くとペチンとおでこを弾かれた。
全然痛くないけど、とりあえず抑える。
「まぁ、もっと早く誘うべきだった」
「私も言えばよかったです」
「じゃあ来年は…」
2人で過ごそう。
消太さんはそう言って、テーブルの下で私の小指を自身のそれで絡めとった。
約束、と力を込めるとするりとまたほどける。
少し残念に思ったが、目の前の2人にバレたらからかわれること必至だ。
「トナカイも可愛いけど、どうせならサンタ見たかったな」
消太さんがまじまじと私のトナカイ姿を見下ろした。
「嫌ですよ。あんな短いスカート履けません」
「チアはやったのに?」
「あれは不可抗力です」
ちなみにトナカイもネットで調べたらミニスカ版もあった。
絶対嫌だから着ぐるみにしたけど。
「消太さんもコスプレしてくれるなら考えます」
ふふんと鼻を鳴らした。
**********************
いい感じに飲み食いし、プレゼント交換も終わった。
私が用意した、ちょっとお高いボールペンは消太さんに当たって、私はミッドナイト先生の個性を使用した安眠できるお香が当たった。
「もうそろそろ、片付けるかぁ」
マイク先生の声でお開きになった。
フリールームの鍵を閉め、あとは各々部屋に戻るだけ。
「相澤くん、ちょっと」
ミッドナイト先生は消太さんに紙袋を渡した。
「じゃあ、私はお風呂に入って寝るわ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ~」
マイク先生も仕事の電話が入り、その場から離れた。
足取りはしっかりしてるけど大丈夫なのかな…?
私は消太さんが持ってる紙袋を横目で見た。
ミッドナイト先生、何渡したんだろう…?
「これか?」
紙袋を持ち上げる消太さん。
「クリスマスプレゼントだそうだ」
「え?個別に?」
さっきみんなで交換したのに。
しかも何で消太さん?
消太さんも不思議に思ったのか、首を傾げている。
「開けるか」
「え、私に見せていいんですか?」
「見たらダメなものは渡さないだろ…」
消太さんはガサッと中身を取り出した。
「これは…」
ふわふわした真っ赤な生地広げると、ミニスカサンタの衣装が出てきた。
「…」
「…」
2人の間にしばし流れる沈黙。
「………着ないですよ?」
ミッドナイト先生、余計なことを!
私はジト目をサンタ衣装に向けた。
「…これ、やるよ」
消太さんはどこから出したのか、小さな紙袋を取り出して私に渡した。
「え、何ですか?」
「開けてみて」
ショップバックを開くと中から長方形の箱が。
「(まさか…)」
私の予想通り、ネックレスが顔を見せた。
「可愛い…」
一粒の宝石が上品に輝いていた。
「で、でも!こんな高いもの貰えないです」
「貰ってくれないと俺の立場が無いのだが…」
「うぐっ…」
だって、(まだ)付き合ってないのに。
「っていうか、私何も用意してない…」
「これ貰ったぞ」
「そのボールペンはたまたま消太さんに当たっただけじゃないですか!」
私も用意するべきだった。
付き合ってないのに厚かましいかな、渡したら消太さんに気を遣わせちゃうかなと思ってやめてしまった。
「あの!ちょっと遅れちゃいますが、私もプレゼント渡したいです!!」
「じゃあ、俺の希望聞いてくれるか?」
「はい!もちろんです」
何あげたらいいか迷ってしまうから、希望があるならその方がありがたい。
顔を上げた先には、悪い顔をした消太さんが。
「あの…(嫌な予感が…)」
「クリスマスは今日だから、今日じゃなきゃ意味がないな」
「えっと…もう遅いのでお店しまっちゃってます」
「すぐに用意できるものだ」
グッと元々持っていた紙袋を私に押し付けた。
「まさか…」
その紙袋は元々ミッドナイト先生が持っていたもの。
中にはミニスカサンタコスチューム。
「せっかく貰ったクリスマスプレゼントを有効活用しないとな?」
「いやいやいやいや!!!!無理です無理です」
首をぶんぶん横に振った。
「……俺はクリスマスプレゼント用意したけど」
「うっ…」
それを持ち出すのはズルい。
ぐぬぬ…とサンタコスを持つ手に力が入った。
「まぁ、どうしても嫌なら無理強いはしない」
うぅ…。
「消太さんは本当にこんなの着てる私を見たいんですか?」
「見たい」
は、恥ずかしいけど、消太さんがこう言ってるわけだし、プレゼント用意してない上に要望を断るのは気が引ける。
「似合ってなくても笑わないでくださいね」
「笑わないよ」
こうして、あれだけ回避したかったミニスカサンタを披露する羽目になったのだった。
********************
おまけ
「ど、どうですか?」
「ん、似合ってる」
「うそだぁ。目が泳いでますよ」
「気のせいだ(ミッドナイトさんグッジョブ)」
「……ネックレス、ありがとうございます」
「(なでなで)」
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12月に入り、師が走ると書く通り消太さんはとても忙しそうだ。
しかし世間は25日に近づくにつれ、賑やかさを増していく。
社会人になってからは学生ほど浮かれなくなり、平日なら気づけば25日が過ぎていたなんてこともよくある。
しかし今年は日曜日。
仕事も休みだ。
誰かと過ごすなら……頭に浮かぶ顔は無精髭の彼だった。
だが最初に言った通り彼は忙しい。
世間が浮き足立つに比例して犯罪も起こりやすいのだ。
一緒に過ごしたいけど…誘うのは憚られる。
付き合っていたら、さらっと「25日空いてる?」なんて聞けるのだが、まだそのような間柄ではない。
いや、付き合っていても私の性格的に結局聞けないかもしれない。
所有者不在のデスクに目をやり小さく溜め息を吐いた。
「あれ?相澤くんは?」
「ミッドナイト先生。相澤先生は緊急要請を受けて応援に行ってます」
「引っ張りだこねぇ」
「ですね」
強個性の消太さんは、他の先生達と比べても駆り出される件数が多いと思う。
「あっ、ねぇねぇ」
「何ですか?あのっ、ミッドナイト先生…お胸が…」
後ろから私の両肩に手を置き、ぐっと前のめりになったことで後頭部に柔らかい感触が。
ミッドナイト先生は気にする素振りもなく、顔を真横に近づけてニコッと笑った。
「25日空いてる?」
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「なんでわざわざクリスマスにお前の顔を見なきゃならないんだ」
「シヴィー!!!」
放課後に受けた応援要請をこなして寮に戻ったところをマイクに捕まった。
「なー!やろうぜぇ。クリパ!!!」
「三十路のおっさんが“クリパ”しても楽しくないだろ」
マイクはサングラス越しに俺を見た後、ニヤッと口角を上げた。
……嫌な予感がする。
「ふーん。じゃあ、参加者はミッドナイトさんと名前ちゃんだけね。両手に花ってのも悪くねーな!!!」
名前の名前が出てきて、部屋に戻ろうとしていた足はピタリと止まった。
分かりやすい俺が面白いのか、ケタケタ笑いながらマイクは俺の肩に腕を回した。
「もう一回聞くけどぉ……消太は不参加でオッケー?」
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私は鏡の前で自分の姿を最終チェックした。
「あれを着るよりマシ……!!」
うんうんと頷き、でも誰にも見られたくないので顔だけ廊下に出して左右に首を振り、人がいないことを確認してからダッシュした。
「ここだよね?」
ミッドナイトさんに指定された、寮内のフリールームをノックした。
「はいはーい」
中からミッドナイトさんが出てきた。
「全員揃ったわね」
「ごめんなさい!私が最後だったんですね」
「いいのよ。時間前だから。やーん、可愛い」
「恥ずかしいです…」
「ほらほら、入って」
背中を押されて中へ入る。
サンタコスをしたマイクさんといつもと何も変わらない消太さんが紙コップと紙皿を並べていた。
「おー!名前ちゃんはトナカイかぁ!」
「はい…これなら着れるかなって」
私は少しでも顔を隠せたらと思い、トナカイの耳がついたフードを引っ張った。
「私がサンタコス用意するって言ったのに!名前ちゃんが自分で用意するって聞かないから」
「何か嫌な予感がしたので…」
私の予感は当たっていて、ミッドナイト先生は18禁ヒーローの名に恥じないミニスカサンタを披露している。
とてもじゃないが私は着れない。
だから私はこれなら着てもいいかな、と思えるトナカイの着ぐるみを急いでネット注文した。
今後寝間着としても使えそうなやつ…。
「相澤先生は何も着ないんですか?」
「むしろ何で名前まで着てるんだ」
「だってクリスマス感を出す衣装でって言われたので…」
「相変わらず律儀だな…。いちいち真に受けなくていいぞ」
「いやいや!ショータこそ真に受けようぜ!」
マイク先生が被っていたサンタの帽子を消太さんの頭に乗せた。
「要請あったらすぐに行かないといけないだろ」
そりゃそうだ、と私は納得する。
「もー!堅いこと言わずに楽しみましょ」
ミッドナイト先生がクラッカーを配る。
「はい!じゃあ、いくわよ。メリークリスマス!!!!」
4人が合図と共にクラッカーの糸を引いた。
**********************
マイク先生とミッドナイト先生は上機嫌で酒を煽って、ほぼできあがってる。
私は紙コップに注いだジュースをちびちびと飲んでいた。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
目の前の2人が話し込んでいるので、必然的に私と消太さんがペアになる。
「あれ、お酒飲んじゃっていいんですか?」
消太さんはビールを缶のまま飲んでいた。
「まぁね」
「要請大丈夫なんですか?」
「……今日空けるためにずっと要請に対応してきたからな。本当は今日は緊急以外要請不可にしてる」
「そうだったんですか!」
消太さんもクリスマスパーティー楽しみにしてたんだなぁ…。
意外すぎて可愛い。
そう思い、チラリとマイク先生に被せられたサンタ帽子に視線を向けた。
「なんか勘違いしてるね」
「え?」
「今日、名前と過ごそうと思って空けておいたんだけど」
「え!?」
「でもマイク達に先を越された」
まさか消太さんが私のためにクリスマスを空けてくれてたなんて。
「2人で過ごしたいと思ってたんだけど…名前は違った?」
「私も…そう思ってたんですけど、付き合ってないし、消太さんお忙しそうだったから…」
悪いなぁと思って、そう呟くとペチンとおでこを弾かれた。
全然痛くないけど、とりあえず抑える。
「まぁ、もっと早く誘うべきだった」
「私も言えばよかったです」
「じゃあ来年は…」
2人で過ごそう。
消太さんはそう言って、テーブルの下で私の小指を自身のそれで絡めとった。
約束、と力を込めるとするりとまたほどける。
少し残念に思ったが、目の前の2人にバレたらからかわれること必至だ。
「トナカイも可愛いけど、どうせならサンタ見たかったな」
消太さんがまじまじと私のトナカイ姿を見下ろした。
「嫌ですよ。あんな短いスカート履けません」
「チアはやったのに?」
「あれは不可抗力です」
ちなみにトナカイもネットで調べたらミニスカ版もあった。
絶対嫌だから着ぐるみにしたけど。
「消太さんもコスプレしてくれるなら考えます」
ふふんと鼻を鳴らした。
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いい感じに飲み食いし、プレゼント交換も終わった。
私が用意した、ちょっとお高いボールペンは消太さんに当たって、私はミッドナイト先生の個性を使用した安眠できるお香が当たった。
「もうそろそろ、片付けるかぁ」
マイク先生の声でお開きになった。
フリールームの鍵を閉め、あとは各々部屋に戻るだけ。
「相澤くん、ちょっと」
ミッドナイト先生は消太さんに紙袋を渡した。
「じゃあ、私はお風呂に入って寝るわ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ~」
マイク先生も仕事の電話が入り、その場から離れた。
足取りはしっかりしてるけど大丈夫なのかな…?
私は消太さんが持ってる紙袋を横目で見た。
ミッドナイト先生、何渡したんだろう…?
「これか?」
紙袋を持ち上げる消太さん。
「クリスマスプレゼントだそうだ」
「え?個別に?」
さっきみんなで交換したのに。
しかも何で消太さん?
消太さんも不思議に思ったのか、首を傾げている。
「開けるか」
「え、私に見せていいんですか?」
「見たらダメなものは渡さないだろ…」
消太さんはガサッと中身を取り出した。
「これは…」
ふわふわした真っ赤な生地広げると、ミニスカサンタの衣装が出てきた。
「…」
「…」
2人の間にしばし流れる沈黙。
「………着ないですよ?」
ミッドナイト先生、余計なことを!
私はジト目をサンタ衣装に向けた。
「…これ、やるよ」
消太さんはどこから出したのか、小さな紙袋を取り出して私に渡した。
「え、何ですか?」
「開けてみて」
ショップバックを開くと中から長方形の箱が。
「(まさか…)」
私の予想通り、ネックレスが顔を見せた。
「可愛い…」
一粒の宝石が上品に輝いていた。
「で、でも!こんな高いもの貰えないです」
「貰ってくれないと俺の立場が無いのだが…」
「うぐっ…」
だって、(まだ)付き合ってないのに。
「っていうか、私何も用意してない…」
「これ貰ったぞ」
「そのボールペンはたまたま消太さんに当たっただけじゃないですか!」
私も用意するべきだった。
付き合ってないのに厚かましいかな、渡したら消太さんに気を遣わせちゃうかなと思ってやめてしまった。
「あの!ちょっと遅れちゃいますが、私もプレゼント渡したいです!!」
「じゃあ、俺の希望聞いてくれるか?」
「はい!もちろんです」
何あげたらいいか迷ってしまうから、希望があるならその方がありがたい。
顔を上げた先には、悪い顔をした消太さんが。
「あの…(嫌な予感が…)」
「クリスマスは今日だから、今日じゃなきゃ意味がないな」
「えっと…もう遅いのでお店しまっちゃってます」
「すぐに用意できるものだ」
グッと元々持っていた紙袋を私に押し付けた。
「まさか…」
その紙袋は元々ミッドナイト先生が持っていたもの。
中にはミニスカサンタコスチューム。
「せっかく貰ったクリスマスプレゼントを有効活用しないとな?」
「いやいやいやいや!!!!無理です無理です」
首をぶんぶん横に振った。
「……俺はクリスマスプレゼント用意したけど」
「うっ…」
それを持ち出すのはズルい。
ぐぬぬ…とサンタコスを持つ手に力が入った。
「まぁ、どうしても嫌なら無理強いはしない」
うぅ…。
「消太さんは本当にこんなの着てる私を見たいんですか?」
「見たい」
は、恥ずかしいけど、消太さんがこう言ってるわけだし、プレゼント用意してない上に要望を断るのは気が引ける。
「似合ってなくても笑わないでくださいね」
「笑わないよ」
こうして、あれだけ回避したかったミニスカサンタを披露する羽目になったのだった。
********************
おまけ
「ど、どうですか?」
「ん、似合ってる」
「うそだぁ。目が泳いでますよ」
「気のせいだ(ミッドナイトさんグッジョブ)」
「……ネックレス、ありがとうございます」
「(なでなで)」
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