【16章】何ももたない君だから
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は消太さんの問いかけに小さく頷いた。
「・・・ちょっと行きたいところがあるんだが、ついてきてくれるか」
行きたいところ?
私が疑問を呈する前に「準備が出来たら呼んでくれ」と部屋を出て行ってしまった。
訳が分からないが、罪悪感に押しつぶされている私は言われるがままに出かける準備をした。
また消太さんと一緒に出掛けられる日が来るなんて思わなかった。
恋心を消せていない私は、性懲りもなく姿見の前でファッションショーを繰り返した。
待たせているので手早く決めてバッグを持った。
「あ・・・」
ベッドサイドに置いている髪飾り。
私は手に取ると髪を軽く結ってつけた。
「お待たせしました」
消太さんが出て行って30分も経ってしまった。
ノックすると消太さんもよそ行きの格好で出てきた。
「行こうか」
外で待ち合わせしなくて良かったのだろうか。
誰かに見られるのでは。
そう思ったが、消太さんは意に介していないようだった。
幸い、校門を出るまで知り合いには誰にも会わなかった。
学校から離れてもう誰に会う心配もない距離まで来たとき、手に温もりを感じた。
「えっ・・・」
驚いて消太さんを見上げると、手に力が籠った。
まるで絶対離さないと言われているようだ。
消太さんは私を許してくれるのだろうか。
自分に自信がなくて、弱くて脆い私をまだ好きでいてくれているのだろうか。
繋がれた右手は、そんな私の疑問に答えてくれているように感じた。
***************
「昼飯は食べたのか?」
「まだです」
「俺もだ。どこか適当に入るか」
消太さんらしい即決力で、お昼時だが待たずに入れそうな洋食屋さんに入った。
奥の席に案内され、腰を下ろした。
「何頼む?」
「う~ん・・・。オムライスが看板メニューでしたよね。それにしようかな」
「じゃあ俺はAセットにでもするか」
手早く私の分も注文を済ませてくれる。
料理を待つまでの間、手持無沙汰な私は膝の上で両手を弄った。
いつもどんな会話してたっけ。
久しぶりなのだから積もる話もあるはずなのに、毎日一緒にいたあの頃の方が話題に尽きなかったように思う。
「それ、つけてくれたんだな」
消太さんの視線は髪飾りに向けられていた。
「はい、とても上品で気に入ってます」
「良かった」
その一言には安堵の意が感じられた。
私がずっとつけてなかったから、心配してくれていたのだろうか。
「とても似合ってる」
「ありがとうございます」
絡まる消太さんの視線が恥ずかしくて、私はふいと斜め後ろに視線を外すと、ちょうど料理が運ばれてきた。
湯気が立ったオムライスに私の心もほくほくする。
スプーンを入れると中からバターライスが顔を出した。
それを周りのデミグラスソースに絡めて食べる。
「うまいか」
「はい!とっても美味しいです」
私はテーブルの端に寄せられていた取りわけ用の小皿を取るとスプーンで盛り付けた。
「消太さんも食べてみて下さい」
「ありがとう。ほら、お返しだ」
消太さんは私にAセットのハンバーグをお裾分けしてくれた。
「・・・!どうした?」
「へ?」
消太さんが驚いた表情で尋ねたが、私は何を言われているのか分からず首を傾げた。
そっと消太さんの腕が伸びてきて人差し指が私の頬をなぞった。
そこで初めて私は涙が流れていることに気付いた。
「あれ?」
私はハンカチを取り出して涙を拭った。
私の行動を心配そうに見守る消太さんに向かって手を振った。
「違うんです。これは悲しいからじゃなくて」
涙はすぐに止まった。
「嬉しくて泣いてしまいました。また消太さんとご飯が食べられる日が来るなんて思わなかったから」
「・・・ちょっと行きたいところがあるんだが、ついてきてくれるか」
行きたいところ?
私が疑問を呈する前に「準備が出来たら呼んでくれ」と部屋を出て行ってしまった。
訳が分からないが、罪悪感に押しつぶされている私は言われるがままに出かける準備をした。
また消太さんと一緒に出掛けられる日が来るなんて思わなかった。
恋心を消せていない私は、性懲りもなく姿見の前でファッションショーを繰り返した。
待たせているので手早く決めてバッグを持った。
「あ・・・」
ベッドサイドに置いている髪飾り。
私は手に取ると髪を軽く結ってつけた。
「お待たせしました」
消太さんが出て行って30分も経ってしまった。
ノックすると消太さんもよそ行きの格好で出てきた。
「行こうか」
外で待ち合わせしなくて良かったのだろうか。
誰かに見られるのでは。
そう思ったが、消太さんは意に介していないようだった。
幸い、校門を出るまで知り合いには誰にも会わなかった。
学校から離れてもう誰に会う心配もない距離まで来たとき、手に温もりを感じた。
「えっ・・・」
驚いて消太さんを見上げると、手に力が籠った。
まるで絶対離さないと言われているようだ。
消太さんは私を許してくれるのだろうか。
自分に自信がなくて、弱くて脆い私をまだ好きでいてくれているのだろうか。
繋がれた右手は、そんな私の疑問に答えてくれているように感じた。
***************
「昼飯は食べたのか?」
「まだです」
「俺もだ。どこか適当に入るか」
消太さんらしい即決力で、お昼時だが待たずに入れそうな洋食屋さんに入った。
奥の席に案内され、腰を下ろした。
「何頼む?」
「う~ん・・・。オムライスが看板メニューでしたよね。それにしようかな」
「じゃあ俺はAセットにでもするか」
手早く私の分も注文を済ませてくれる。
料理を待つまでの間、手持無沙汰な私は膝の上で両手を弄った。
いつもどんな会話してたっけ。
久しぶりなのだから積もる話もあるはずなのに、毎日一緒にいたあの頃の方が話題に尽きなかったように思う。
「それ、つけてくれたんだな」
消太さんの視線は髪飾りに向けられていた。
「はい、とても上品で気に入ってます」
「良かった」
その一言には安堵の意が感じられた。
私がずっとつけてなかったから、心配してくれていたのだろうか。
「とても似合ってる」
「ありがとうございます」
絡まる消太さんの視線が恥ずかしくて、私はふいと斜め後ろに視線を外すと、ちょうど料理が運ばれてきた。
湯気が立ったオムライスに私の心もほくほくする。
スプーンを入れると中からバターライスが顔を出した。
それを周りのデミグラスソースに絡めて食べる。
「うまいか」
「はい!とっても美味しいです」
私はテーブルの端に寄せられていた取りわけ用の小皿を取るとスプーンで盛り付けた。
「消太さんも食べてみて下さい」
「ありがとう。ほら、お返しだ」
消太さんは私にAセットのハンバーグをお裾分けしてくれた。
「・・・!どうした?」
「へ?」
消太さんが驚いた表情で尋ねたが、私は何を言われているのか分からず首を傾げた。
そっと消太さんの腕が伸びてきて人差し指が私の頬をなぞった。
そこで初めて私は涙が流れていることに気付いた。
「あれ?」
私はハンカチを取り出して涙を拭った。
私の行動を心配そうに見守る消太さんに向かって手を振った。
「違うんです。これは悲しいからじゃなくて」
涙はすぐに止まった。
「嬉しくて泣いてしまいました。また消太さんとご飯が食べられる日が来るなんて思わなかったから」