【2章】彼女の事情
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「相澤先生?」
「あ、ああ」
書類の山を元に戻した後も、先ほどの履歴書のことが気になり考え込んでしまった。
戻ってきた名字に声を掛けられ、やっとそちらに意識が向いた。
「ギプス外しますね」
「すまんな」
ゆっくりと丁寧にギプスを外していく。
「何か考え事ですか?」
「いや・・・」
微妙な沈黙が流れた。
「何で雄英を受けようと思ったんだ?」
名字のことを少しでも理解できるのではないかと思っての問いかけだった。
しかし口から出た後に、もしかしたらまた傷つけてしまったのではと思った。
「ん~・・・私、無個性なので就職結構苦戦してしまって。手あたり次第受けてたんですよね。でもまさか雄英で雇って頂けるとは思ってませんでした」
「そうか」
聞いたのは自分だが元々口数が多い方ではないので気の利いた返しなど思い浮かばなかった。
マイクなら何て答えたのだろうか。
「むしろ私が聞きたいんですけど、何で採用されたか相澤先生ご存じですか?」
『だって、彼女君の好みじゃないか!』
食えない校長の言葉を思い出した。
小首を傾げて尋ねる名字に内心俺はドキリとした。
校長の思うツボになっているところが気に食わないが、名字のことをもっと知りたいと思うほどには彼女のことが気になっている自分がいる。
だがまさか俺の好みだからというそれだけで採用されたわけではあるまいし、それをそのまま名字に伝えるわけにもいかない。
「さあな。また機会があれば聞いておく」
「ありがとうございます。機会があったらでいいので!・・・よし、できた」
綺麗に解かれた包帯を名字はまとめた。
「新しい包帯持っているので上がってこられたらそれ巻きますね」
「至れり尽くせりだな。ありがとう」
「どうぞ、お風呂場に案内します」
*********
私は相澤先生をお風呂場へ案内し、一通り物の説明だけして脱衣所の扉を閉めた。
リビングへは戻らず、寝室兼自室へ入った。
ドアを閉めて溜息を吐いた。
「今日何も粗相してないよね・・・?」
大丈夫、大丈夫・・・。
私は心の中で繰り返し唱えた。
ノートを机から取りだし今日一日の行動を振り返った。
そして相澤先生に教えてもらったことをノートにまとめていく。
「鍵の管理の仕方と貸し出しルール・・・。相澤先生が出席する会議の資料と・・・」
30分かけて一通り書き起こした。
相澤先生、早風呂そうだからもうそろそろ出てくるかもしれない。
私はノートを閉じた。
「失敗は許されないんだから。頑張れ、名前」
ぐっと拳を握りしめた。
*********
人の家とはいえ、やはり風呂に入ると疲れが取れる。
だがまさか知り合って2日の女性の風呂を借りることになるとは思ってもみなかった。
ギプスは確かに自分でつけ外しが難しいので助かった。
ミッドナイトさんの言う通りいい嫁になりそうだ。
ふと脳内にエプロンを付けた彼女が「おかえりなさい」と出迎える姿を想像してしまい、頭を横に振った。
「会って2日目だぞ。どうかしてる」
きっとまだ怪我の調子が良くないだけだ。
もうすぐギプスを外せるというのにそんな言い訳をした。
元々風呂は短い。
俺は手早く済ませると(といっても怪我の具合があるのでいつもより倍はかかった)脱衣所を出た。
用意されていたバスタオルを借るとふんわり名字の匂いがして、妙な気恥ずかしさを感じ、思うように動かない腕でガシガシ頭の水滴を拭った。
「名字・・・上がったぞ」
リビングに戻ると彼女の姿はなかった。
いまだに2人共起きる気配はない。
戻ってくる途中のトイレに電気はついていなかった。
そういえばもう一室部屋があったことを思い出し、そこへ向かう。
ノックしようと手を上げたとき、中から呟きが聞こえた。
「失敗は許されないんだから。頑張れ、私」
履歴書の束を見てしまった俺はその呟きの意味が分かった。
試用期間で切られてしまわないか、名字は不安なのだろう。
病院でのあの狼狽ぶりも合点がいく。
そう思うと俺はあのとき大変な失言をしてしまったのだと今更ながらに悔いた。
「あ、相澤先生」
俺が立ち止まっている間に名字が部屋から出てきた。
「やっぱり早風呂ですね。もうそろそろかなって思ってたんです」
「ありがとう。今度礼をする」
「私が無理矢理入れたんですから気にしないでください。さ、ギプスしましょう」
前を行く名字の背中を俺はじっと見つめた。
「あ、ああ」
書類の山を元に戻した後も、先ほどの履歴書のことが気になり考え込んでしまった。
戻ってきた名字に声を掛けられ、やっとそちらに意識が向いた。
「ギプス外しますね」
「すまんな」
ゆっくりと丁寧にギプスを外していく。
「何か考え事ですか?」
「いや・・・」
微妙な沈黙が流れた。
「何で雄英を受けようと思ったんだ?」
名字のことを少しでも理解できるのではないかと思っての問いかけだった。
しかし口から出た後に、もしかしたらまた傷つけてしまったのではと思った。
「ん~・・・私、無個性なので就職結構苦戦してしまって。手あたり次第受けてたんですよね。でもまさか雄英で雇って頂けるとは思ってませんでした」
「そうか」
聞いたのは自分だが元々口数が多い方ではないので気の利いた返しなど思い浮かばなかった。
マイクなら何て答えたのだろうか。
「むしろ私が聞きたいんですけど、何で採用されたか相澤先生ご存じですか?」
『だって、彼女君の好みじゃないか!』
食えない校長の言葉を思い出した。
小首を傾げて尋ねる名字に内心俺はドキリとした。
校長の思うツボになっているところが気に食わないが、名字のことをもっと知りたいと思うほどには彼女のことが気になっている自分がいる。
だがまさか俺の好みだからというそれだけで採用されたわけではあるまいし、それをそのまま名字に伝えるわけにもいかない。
「さあな。また機会があれば聞いておく」
「ありがとうございます。機会があったらでいいので!・・・よし、できた」
綺麗に解かれた包帯を名字はまとめた。
「新しい包帯持っているので上がってこられたらそれ巻きますね」
「至れり尽くせりだな。ありがとう」
「どうぞ、お風呂場に案内します」
*********
私は相澤先生をお風呂場へ案内し、一通り物の説明だけして脱衣所の扉を閉めた。
リビングへは戻らず、寝室兼自室へ入った。
ドアを閉めて溜息を吐いた。
「今日何も粗相してないよね・・・?」
大丈夫、大丈夫・・・。
私は心の中で繰り返し唱えた。
ノートを机から取りだし今日一日の行動を振り返った。
そして相澤先生に教えてもらったことをノートにまとめていく。
「鍵の管理の仕方と貸し出しルール・・・。相澤先生が出席する会議の資料と・・・」
30分かけて一通り書き起こした。
相澤先生、早風呂そうだからもうそろそろ出てくるかもしれない。
私はノートを閉じた。
「失敗は許されないんだから。頑張れ、名前」
ぐっと拳を握りしめた。
*********
人の家とはいえ、やはり風呂に入ると疲れが取れる。
だがまさか知り合って2日の女性の風呂を借りることになるとは思ってもみなかった。
ギプスは確かに自分でつけ外しが難しいので助かった。
ミッドナイトさんの言う通りいい嫁になりそうだ。
ふと脳内にエプロンを付けた彼女が「おかえりなさい」と出迎える姿を想像してしまい、頭を横に振った。
「会って2日目だぞ。どうかしてる」
きっとまだ怪我の調子が良くないだけだ。
もうすぐギプスを外せるというのにそんな言い訳をした。
元々風呂は短い。
俺は手早く済ませると(といっても怪我の具合があるのでいつもより倍はかかった)脱衣所を出た。
用意されていたバスタオルを借るとふんわり名字の匂いがして、妙な気恥ずかしさを感じ、思うように動かない腕でガシガシ頭の水滴を拭った。
「名字・・・上がったぞ」
リビングに戻ると彼女の姿はなかった。
いまだに2人共起きる気配はない。
戻ってくる途中のトイレに電気はついていなかった。
そういえばもう一室部屋があったことを思い出し、そこへ向かう。
ノックしようと手を上げたとき、中から呟きが聞こえた。
「失敗は許されないんだから。頑張れ、私」
履歴書の束を見てしまった俺はその呟きの意味が分かった。
試用期間で切られてしまわないか、名字は不安なのだろう。
病院でのあの狼狽ぶりも合点がいく。
そう思うと俺はあのとき大変な失言をしてしまったのだと今更ながらに悔いた。
「あ、相澤先生」
俺が立ち止まっている間に名字が部屋から出てきた。
「やっぱり早風呂ですね。もうそろそろかなって思ってたんです」
「ありがとう。今度礼をする」
「私が無理矢理入れたんですから気にしないでください。さ、ギプスしましょう」
前を行く名字の背中を俺はじっと見つめた。
