【9章】半歩進む
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
まだ伝える気はなかったのだが、俺の腕の中でうつらうつらしている名字を見ているとつい自分の感情を口走ってしまった。
完全に寝入っていたわけでは無かったようで、俺の気持ちを正面から受け止めてくれた。
子どもではない俺達はお互いの気持ちに何となく気付いていて。
言葉にすることは確認作業にすぎなかった。
しかし、分かっていても嬉しいものだし、何より"幸せ"だと感じた。
恥ずかしそうに照れ笑いする顔も。
嬉しそうにはにかむ顔も。
同じ表情でも想いを伝え合う前と今では違って見えた。
しかし俺達の関係を一歩進めるには状況が良くない。
恋愛に現を抜かしている場合ではないが、この手を離さないと決めた。
だからもう少しだけ時間が欲しい。
俺はまた名字の優しさに甘んじた。
しかし、あの時とは違う。
あの時は逃げたが今度は向き合うと決めた。
だから今は一歩ではなく半歩だけ進もう。
*********
「ところで・・・」
「ふにっ!」
相澤先生は私の頬をつまんで左右に引っ張った。
「い、痛いです!」
「痛くしてるんだよ」
先ほどの甘い雰囲気はどこへ・・・。
相澤先生は眉間に皺を寄せていた。
「色々棚上げした上で言わせてもらうが、荼毘のことを誰にも相談していないことに俺は怒っている」
「すみません・・・」
結局バレてしまった。
確かにこんなことなら病院の段階で初めから話しておけば良かった。
「名前は色々気を遣い過ぎだ」
「へ・・・!?」
私は目を丸くした。
「今・・・名前・・・」
「まだ付き合ってなくても名前ぐらいいいだろ。嫌か?」
私は首がもげるのではないかと思うほど横に振った。
「嬉しいです!じゃあ、私も呼んでいいですか?」
「ああ」
「消太さん!えへへ・・・」
何歳になってもこういうのは照れくさい。
まるで高校生の青春時代のようなやり取りに消太さんも少し照れているようだった。
「名前は"相澤先生"には色々気を遣って相談してくれなさそうだしな」
「うっ・・・」
「"消太さん"になら言えそうか?」
私はこくりと頷いた。
これからは大事になる前に何でも相談しよう。
”恋人"という肩書は今はないけれど。
"2人きりのときは名前を呼ぶ"という約束は、私達がお互いを特別に想っている実感をもたらせてくれた。
完全に寝入っていたわけでは無かったようで、俺の気持ちを正面から受け止めてくれた。
子どもではない俺達はお互いの気持ちに何となく気付いていて。
言葉にすることは確認作業にすぎなかった。
しかし、分かっていても嬉しいものだし、何より"幸せ"だと感じた。
恥ずかしそうに照れ笑いする顔も。
嬉しそうにはにかむ顔も。
同じ表情でも想いを伝え合う前と今では違って見えた。
しかし俺達の関係を一歩進めるには状況が良くない。
恋愛に現を抜かしている場合ではないが、この手を離さないと決めた。
だからもう少しだけ時間が欲しい。
俺はまた名字の優しさに甘んじた。
しかし、あの時とは違う。
あの時は逃げたが今度は向き合うと決めた。
だから今は一歩ではなく半歩だけ進もう。
*********
「ところで・・・」
「ふにっ!」
相澤先生は私の頬をつまんで左右に引っ張った。
「い、痛いです!」
「痛くしてるんだよ」
先ほどの甘い雰囲気はどこへ・・・。
相澤先生は眉間に皺を寄せていた。
「色々棚上げした上で言わせてもらうが、荼毘のことを誰にも相談していないことに俺は怒っている」
「すみません・・・」
結局バレてしまった。
確かにこんなことなら病院の段階で初めから話しておけば良かった。
「名前は色々気を遣い過ぎだ」
「へ・・・!?」
私は目を丸くした。
「今・・・名前・・・」
「まだ付き合ってなくても名前ぐらいいいだろ。嫌か?」
私は首がもげるのではないかと思うほど横に振った。
「嬉しいです!じゃあ、私も呼んでいいですか?」
「ああ」
「消太さん!えへへ・・・」
何歳になってもこういうのは照れくさい。
まるで高校生の青春時代のようなやり取りに消太さんも少し照れているようだった。
「名前は"相澤先生"には色々気を遣って相談してくれなさそうだしな」
「うっ・・・」
「"消太さん"になら言えそうか?」
私はこくりと頷いた。
これからは大事になる前に何でも相談しよう。
”恋人"という肩書は今はないけれど。
"2人きりのときは名前を呼ぶ"という約束は、私達がお互いを特別に想っている実感をもたらせてくれた。