【9章】半歩進む
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俺は学校を出た後、名字のアパートを目指した。
どの面下げて会えばいいのかとも思ったが、そんな小さなプライドをかなぐり捨ててでも今すぐに名字に会いたかった。
「留守・・・か」
インターフォンに応答はなかった。
人がいる気配もない。
家の前で待つこともできるが、自分は神野の件でメディアに顔出しをしている。
そのとばっちりが名字に向く可能性を考えたら、ここに留まることは良くない。
俺はアパートを出て自宅へと一旦戻ることにした。
1時間後にもう一度訪ねよう。
こんな非合理の極み、俺らしくないな。
俺はベッドサイドに置いているアイマスクを手に取った。
名字から貰った物。
ベッドに腰かけ、それを装着すると目元にじんわりと熱がこもる。
思えばあの日が一番俺達のターニングポイントになった気がする。
敵が現れて、合流までに時間が掛かった時心底焦りを感じた。
彼女の存在を確かめたくて、俺のとは違う小さく頼りない手を握ったとき思ったではないか。
必ずこの手を守ろうと。
それだというのに、俺は一体何をしているのだ。
アイマスクの充電が切れて目元から熱が徐々に引いていった。
俺は取り外すと元の位置にそれを置いた。
そういえば洗濯物を干しっぱなしだったと思い、ベランダに出た。
それらを全部中へ入れている途中、公園から出てくる人影に気付いた。
スーツを来た女性。
ヒーローの性なのか、こんな時間に一人で公園にいるなんて危ないなぐらいに思った。
しかし目を凝らすとそれが何となく名字に似ている気がして。
ちらりと時計を見ると、もう一度名字の家を訪ねようとしていた時刻になっていた。
人違いならそのまま名字の家に行こうと思い、家を出た。
足のコンパスの違いからあっという間にスーツの女性の後ろ姿を捉えた。
後ろ姿でも分かる。
間違いない、名字だ。
どうしてあんな時間にあの公園にいたのか。
いや、それよりも言わなければならないことが沢山ある。
そんな逸った気持ちが出てしまった。
駆け足で近づき、名字の腕を後ろから掴んだ。
「久しぶりだな」
そう声を掛けると掴んだ腕を伝って名字の身体が小刻みに震えているのを感じた。
まさか人違いだったのか。
そう思って一瞬焦ったが、振り向いた顔を見ると間違いなく名字だった。
しかしその目は恐怖一色で。
おかしい。
「どうしたんだ?」
そう声を掛けようとするより先に彼女は口を開いた。
「荼毘・・・」
俺は驚いて後ろを振り向くが、あのつぎはぎ男はいない。
どういうことだと思って名字と目線を合わせるが、まるで彼女の瞳に俺は映っていなかった。
名字は混乱した様子で俺の手を振り払おうとした。
「いやっ、止めて」
しかし、名字の力は女性という点を差し引いても弱かった。
「いやっ、いや!お願いっ・・・連れていかないで」
膝から崩れ落ちた名字の身体を支えた。
幼子のように首を振って拒否している。
「助けてっ・・・相澤先生・・・」
消え入りそうな小さな声で俺に助けを求めた。
「名字、大丈夫だ。俺だ」
しゃがみこむ小さな身体を抱き締めた。
頭を抱えて自身の胸に寄り添わせると、少しずつ震えが治まっていくのを感じた。
「相澤先生・・・?」
もぞもぞと動いて、見上げる名字と視線が絡まる。
「あれ、荼毘は・・・?助けに来てくれたんですか?」
「荼毘はいない。初めから俺しかいない」
「そっか・・・また私・・・」
肩を落とす名字に聞きたいことは山のようにあるが、今はまず場所を変えなければ。
「部屋、上がってもいいか?」
頷く名字を支えながらアパートの階段を上った。
どの面下げて会えばいいのかとも思ったが、そんな小さなプライドをかなぐり捨ててでも今すぐに名字に会いたかった。
「留守・・・か」
インターフォンに応答はなかった。
人がいる気配もない。
家の前で待つこともできるが、自分は神野の件でメディアに顔出しをしている。
そのとばっちりが名字に向く可能性を考えたら、ここに留まることは良くない。
俺はアパートを出て自宅へと一旦戻ることにした。
1時間後にもう一度訪ねよう。
こんな非合理の極み、俺らしくないな。
俺はベッドサイドに置いているアイマスクを手に取った。
名字から貰った物。
ベッドに腰かけ、それを装着すると目元にじんわりと熱がこもる。
思えばあの日が一番俺達のターニングポイントになった気がする。
敵が現れて、合流までに時間が掛かった時心底焦りを感じた。
彼女の存在を確かめたくて、俺のとは違う小さく頼りない手を握ったとき思ったではないか。
必ずこの手を守ろうと。
それだというのに、俺は一体何をしているのだ。
アイマスクの充電が切れて目元から熱が徐々に引いていった。
俺は取り外すと元の位置にそれを置いた。
そういえば洗濯物を干しっぱなしだったと思い、ベランダに出た。
それらを全部中へ入れている途中、公園から出てくる人影に気付いた。
スーツを来た女性。
ヒーローの性なのか、こんな時間に一人で公園にいるなんて危ないなぐらいに思った。
しかし目を凝らすとそれが何となく名字に似ている気がして。
ちらりと時計を見ると、もう一度名字の家を訪ねようとしていた時刻になっていた。
人違いならそのまま名字の家に行こうと思い、家を出た。
足のコンパスの違いからあっという間にスーツの女性の後ろ姿を捉えた。
後ろ姿でも分かる。
間違いない、名字だ。
どうしてあんな時間にあの公園にいたのか。
いや、それよりも言わなければならないことが沢山ある。
そんな逸った気持ちが出てしまった。
駆け足で近づき、名字の腕を後ろから掴んだ。
「久しぶりだな」
そう声を掛けると掴んだ腕を伝って名字の身体が小刻みに震えているのを感じた。
まさか人違いだったのか。
そう思って一瞬焦ったが、振り向いた顔を見ると間違いなく名字だった。
しかしその目は恐怖一色で。
おかしい。
「どうしたんだ?」
そう声を掛けようとするより先に彼女は口を開いた。
「荼毘・・・」
俺は驚いて後ろを振り向くが、あのつぎはぎ男はいない。
どういうことだと思って名字と目線を合わせるが、まるで彼女の瞳に俺は映っていなかった。
名字は混乱した様子で俺の手を振り払おうとした。
「いやっ、止めて」
しかし、名字の力は女性という点を差し引いても弱かった。
「いやっ、いや!お願いっ・・・連れていかないで」
膝から崩れ落ちた名字の身体を支えた。
幼子のように首を振って拒否している。
「助けてっ・・・相澤先生・・・」
消え入りそうな小さな声で俺に助けを求めた。
「名字、大丈夫だ。俺だ」
しゃがみこむ小さな身体を抱き締めた。
頭を抱えて自身の胸に寄り添わせると、少しずつ震えが治まっていくのを感じた。
「相澤先生・・・?」
もぞもぞと動いて、見上げる名字と視線が絡まる。
「あれ、荼毘は・・・?助けに来てくれたんですか?」
「荼毘はいない。初めから俺しかいない」
「そっか・・・また私・・・」
肩を落とす名字に聞きたいことは山のようにあるが、今はまず場所を変えなければ。
「部屋、上がってもいいか?」
頷く名字を支えながらアパートの階段を上った。