【9章】半歩進む
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私は真鍋さんと会った次の日も面接に出かけた。
定時後の方が先方の都合がいいとのことで18時に予約した。
最近は日没後は家から出ないようにしている。
しかし今日ばかりは仕方がない。
「失礼しました」
私は手慣れた手つきで面接会場の扉を閉めた。
帰り道、薄暗い道路を歩く。
「今日も駄目だったなぁ・・・」
私は足元の小石をコツンと蹴った。
面接官は明らかに私の個性を聞き出そうとしていた。
婉曲的な表現を用いて、グレーゾーンな質問を繰り返してきた。
しかし彼の期待に私は応えられない。
だって"無個性"なのだから。
「早く就職決めなくちゃ・・・」
一方で焦りも生まれる。
相澤先生が無理を言って私の生活を保障してくれているのだ。
やらないというわけにはいかない。
しかしそのプレッシャーがさらに私を追い詰めていく。
荼毘の件といい、複数の要因が作用して私の精神を不安定にさせる。
そしてその結果面接に受からないという悪循環に陥っていた。
昨日真鍋さんに会ったことで、諦めていた雄英への未練が自分の中で湧き上がってきた。
「雄英に戻りたいなぁ」
叶わない願いを口に出すほど虚しいことはない。
面接で「なぜ前職を辞めたのですか?」と聞かれることが一番辛い。
だって辞めたくて辞めるわけではないから。
まさか拉致被害に遭ったなど言えるわけもなく、当たり障りのない回答を答えている。
早く帰らなければ。
そう思うけれど足は思うように動かなくて。
気付けば自分の自宅を通り過ぎ、相澤先生の自宅付近に来てしまった。
「ストーカーじゃん、私」
こんなところにいるのを相澤先生に見つかったらドン引きだ。
でもなんだか離れがたくて、近くの公園に足を踏み入れた。
夕方をとうに過ぎた公園は誰も遊んでいない。
私はブランコに腰かけて身体を揺らした。
薄暗い公園で成人した女性が一人でブランコに乗っているなど、他人から見たら恐怖だ。
私は数回前後に揺られるとブランコを止めてベンチへ移動した。
そこから相澤先生の自宅が見えた。
「相澤先生に会いたいなぁ」
10分だけ。
10分だけここにいさせてほしい。
目を閉じて過去を思い出す。
じんわり心に温もりが宿った。
顔
表情
仕草
声
雰囲気
全部全部好きだった。
「よし、帰ろう!」
少しだけ元気が出た気がする。
私の家からこんなに近いところに相澤先生はいる。
それは何よりも心強かった。
私は腰を上げて公園を出た。
「就活の近況報告した方がいいのかな・・・」
私はスマホを取り出した。
いい報告なんて何もないのだけれど。
報告しろという自分と相澤先生の仕事の邪魔をしてはいけないという自分で葛藤する。
何よりまた相澤先生の声を一度聞いてしまったら、離れたくないという感情が溢れてしまうことが怖かった。
「う~ん・・・」
相澤先生も連絡くれないということは、連絡するなと同義だよね。
私は鞄にスマホを直した。
家まであと数十メートル。
街灯に従って歩く。
鞄から鍵を取り出そうとした、その時。
腕を後ろから強く引かれた。
「久しぶりだな」
私はゆっくりと振り返った。
「荼毘・・・」
私は腕を振り払おうとした。
「いやっ、止めて」
しかし私の力ではびくともしない。
「いや、いや!お願いっ・・・」
連れていかないで
私はその場に膝から崩れ落ちた。
定時後の方が先方の都合がいいとのことで18時に予約した。
最近は日没後は家から出ないようにしている。
しかし今日ばかりは仕方がない。
「失礼しました」
私は手慣れた手つきで面接会場の扉を閉めた。
帰り道、薄暗い道路を歩く。
「今日も駄目だったなぁ・・・」
私は足元の小石をコツンと蹴った。
面接官は明らかに私の個性を聞き出そうとしていた。
婉曲的な表現を用いて、グレーゾーンな質問を繰り返してきた。
しかし彼の期待に私は応えられない。
だって"無個性"なのだから。
「早く就職決めなくちゃ・・・」
一方で焦りも生まれる。
相澤先生が無理を言って私の生活を保障してくれているのだ。
やらないというわけにはいかない。
しかしそのプレッシャーがさらに私を追い詰めていく。
荼毘の件といい、複数の要因が作用して私の精神を不安定にさせる。
そしてその結果面接に受からないという悪循環に陥っていた。
昨日真鍋さんに会ったことで、諦めていた雄英への未練が自分の中で湧き上がってきた。
「雄英に戻りたいなぁ」
叶わない願いを口に出すほど虚しいことはない。
面接で「なぜ前職を辞めたのですか?」と聞かれることが一番辛い。
だって辞めたくて辞めるわけではないから。
まさか拉致被害に遭ったなど言えるわけもなく、当たり障りのない回答を答えている。
早く帰らなければ。
そう思うけれど足は思うように動かなくて。
気付けば自分の自宅を通り過ぎ、相澤先生の自宅付近に来てしまった。
「ストーカーじゃん、私」
こんなところにいるのを相澤先生に見つかったらドン引きだ。
でもなんだか離れがたくて、近くの公園に足を踏み入れた。
夕方をとうに過ぎた公園は誰も遊んでいない。
私はブランコに腰かけて身体を揺らした。
薄暗い公園で成人した女性が一人でブランコに乗っているなど、他人から見たら恐怖だ。
私は数回前後に揺られるとブランコを止めてベンチへ移動した。
そこから相澤先生の自宅が見えた。
「相澤先生に会いたいなぁ」
10分だけ。
10分だけここにいさせてほしい。
目を閉じて過去を思い出す。
じんわり心に温もりが宿った。
顔
表情
仕草
声
雰囲気
全部全部好きだった。
「よし、帰ろう!」
少しだけ元気が出た気がする。
私の家からこんなに近いところに相澤先生はいる。
それは何よりも心強かった。
私は腰を上げて公園を出た。
「就活の近況報告した方がいいのかな・・・」
私はスマホを取り出した。
いい報告なんて何もないのだけれど。
報告しろという自分と相澤先生の仕事の邪魔をしてはいけないという自分で葛藤する。
何よりまた相澤先生の声を一度聞いてしまったら、離れたくないという感情が溢れてしまうことが怖かった。
「う~ん・・・」
相澤先生も連絡くれないということは、連絡するなと同義だよね。
私は鞄にスマホを直した。
家まであと数十メートル。
街灯に従って歩く。
鞄から鍵を取り出そうとした、その時。
腕を後ろから強く引かれた。
「久しぶりだな」
私はゆっくりと振り返った。
「荼毘・・・」
私は腕を振り払おうとした。
「いやっ、止めて」
しかし私の力ではびくともしない。
「いや、いや!お願いっ・・・」
連れていかないで
私はその場に膝から崩れ落ちた。