【8章】決断
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最後に合った荼毘の目が忘れられなくて。
ぼんやりとした不安が私を取り巻いていた。
眠たいはずなのに頭は冴えるばかり。
夜風に当たれば少しは気がまぎれるかもしれない。
そう思って開けた窓。
月が綺麗だな、なんて普段はそんな情緒感じるほど繊細な心は持ち合わせていないのに。
相澤先生に会いたい、その祈りがまさか通じるとは思わなかった。
闇夜に溶け込むコスチューム。
全身真っ黒の彼は窓から入ってくると、私を包み込んでくれた。
捕まってから解放されるまで一度も泣かなかった。
事情聴取も淡々と答えた。
しかし、彼に触れると今まで我慢してきた全てが緩んでしまった。
相澤先生は恐怖で泣いていると思っているだろう。
そうではなく、相澤先生に会えた安心から来るものだった。
夜だから部屋の電気をつけるわけにもいかない。
私はベッドに腰かけ、相澤先生にも隣にどうぞと促した。
「忙しいのに来てくれてありがとうございます」
「もっと早く来たかったんだが・・・」
「いいえ、十分です」
「寝れなかったのか」
「あまり眠れなくて・・・」
「あんなことがあったんだ。気が立っているんだろう」
「そうですね」
私達は小さな声で会話をした。
それがまるで見回りに来る先生に見つからないようにする生徒のようで、なんだか面白かった。
「怪我はないのか」
「はい、無傷です」
「何で名字が攫われたんだろうな」
「どうしてでしょうね・・・いざとなったら人質にするつもりだったのかも」
実は荼毘とのことは言いたくなくて、警察の事情聴取でも言わなかった。
きっともう会うこともない。
だから慰め者にされる可能性があったことは言いたくなかったし、相澤先生には特に知られたくなかった。
何もなかったけれど、汚らわしいことのように思えたからだ。
「相澤先生こそ、お疲れじゃないですか。目の隈がひどいです」
「俺もここ数日はロクに寝られなかったからな」
「そんな・・・!早く帰って寝てください」
「名字は早く帰ってほしいのか?」
「いえ、そういう意味では・・・」
相澤先生はククッと笑うと、私の頬に手を添えた。
「名字が寝たら帰るよ」
相澤先生は来客用の椅子を出すとそこへ座り、私にはベッドへ入るように促した。
「誰かに見守られながら寝るなんて幼少期以来です」
「緊張して余計寝れないか?」
「いえ・・・それが、相澤先生の声を聞いていたら眠気が・・・。せっかくだからもっと起きていたい気持ちもあるんですけど」
「また今度は昼に来るよ」
待ってます、そう言いたかったけれど私の瞼は下がっていき、相澤先生に返事をすることができなかった。
だから私はこの時、相澤先生が苦悩の表情を浮かべていることに気づくこともできなかったのだ。
ぼんやりとした不安が私を取り巻いていた。
眠たいはずなのに頭は冴えるばかり。
夜風に当たれば少しは気がまぎれるかもしれない。
そう思って開けた窓。
月が綺麗だな、なんて普段はそんな情緒感じるほど繊細な心は持ち合わせていないのに。
相澤先生に会いたい、その祈りがまさか通じるとは思わなかった。
闇夜に溶け込むコスチューム。
全身真っ黒の彼は窓から入ってくると、私を包み込んでくれた。
捕まってから解放されるまで一度も泣かなかった。
事情聴取も淡々と答えた。
しかし、彼に触れると今まで我慢してきた全てが緩んでしまった。
相澤先生は恐怖で泣いていると思っているだろう。
そうではなく、相澤先生に会えた安心から来るものだった。
夜だから部屋の電気をつけるわけにもいかない。
私はベッドに腰かけ、相澤先生にも隣にどうぞと促した。
「忙しいのに来てくれてありがとうございます」
「もっと早く来たかったんだが・・・」
「いいえ、十分です」
「寝れなかったのか」
「あまり眠れなくて・・・」
「あんなことがあったんだ。気が立っているんだろう」
「そうですね」
私達は小さな声で会話をした。
それがまるで見回りに来る先生に見つからないようにする生徒のようで、なんだか面白かった。
「怪我はないのか」
「はい、無傷です」
「何で名字が攫われたんだろうな」
「どうしてでしょうね・・・いざとなったら人質にするつもりだったのかも」
実は荼毘とのことは言いたくなくて、警察の事情聴取でも言わなかった。
きっともう会うこともない。
だから慰め者にされる可能性があったことは言いたくなかったし、相澤先生には特に知られたくなかった。
何もなかったけれど、汚らわしいことのように思えたからだ。
「相澤先生こそ、お疲れじゃないですか。目の隈がひどいです」
「俺もここ数日はロクに寝られなかったからな」
「そんな・・・!早く帰って寝てください」
「名字は早く帰ってほしいのか?」
「いえ、そういう意味では・・・」
相澤先生はククッと笑うと、私の頬に手を添えた。
「名字が寝たら帰るよ」
相澤先生は来客用の椅子を出すとそこへ座り、私にはベッドへ入るように促した。
「誰かに見守られながら寝るなんて幼少期以来です」
「緊張して余計寝れないか?」
「いえ・・・それが、相澤先生の声を聞いていたら眠気が・・・。せっかくだからもっと起きていたい気持ちもあるんですけど」
「また今度は昼に来るよ」
待ってます、そう言いたかったけれど私の瞼は下がっていき、相澤先生に返事をすることができなかった。
だから私はこの時、相澤先生が苦悩の表情を浮かべていることに気づくこともできなかったのだ。