【3章】助けてヒーロー
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名字の考えてることはわからん。
トイレはあれだけ拒んでたのに、いくら臭いが気になるからといって風呂に対するハードルはないのか。
「だが、服をどうするんだ」
腕同士が引っ付いているのだから脱げないだろう。
「私の服、切ってほしいです」
名字はさも妙案だと言わんばかりに続けた。
「この服はもう捨てるので、右半身の部分にハサミで切り込みを入れてもらえれば後は自分で脱げます!」
「いや、さすがにそれは…」
「大丈夫です。相澤先生の手先の器用さを信じます」
俺は刺す心配をしてるんじゃない。
なんとかしてこの風呂案を廃止できないかと思考を巡らせた。
「逆に着るものはどうするんだ」
「実はですね」
名字は自分の鞄を左手で漁った。
「じゃじゃん!!今日来てきた私服、右サイドにジッパーついているやつなんです」
名字が取り出したそれは、右サイドにジッパーがついているノースリーブだった。
「朝の私を褒めたいです」
余程風呂に入りたいらしい。
今まで接した名字の中で一番テンションが高いのではないだろうか。
「ほんとこれにしてよかった~」
今日は汗掻くってわかってたんで下着も全部新しいやつ持ってきてるんです、と普段の名字なら言わないであろう情報まで語ってくれた。
「あ、でも肝心の裁断バサミってありますか…?」
実はある。
しかしここで「ない」と言えばこの話は終わるだろう。
せめてタオルで身体を拭くぐらいに落としどころをつけられるのではないか。
そう思ったが不安そうな表情を浮かべる名字を見て、「あるから取りに行くぞ」と俺は無意識に口走っていた。
************
「では、お願いします」
裁断バサミを用意し、脱衣所へ移動した。
俺の選択肢は無心になって名字の肌を傷つけないようにハサミを動かすだけだ。
「あ、あの」
一絶ち目を入れようとしたとき、名字が呼び止めた。
「どうした」
やっぱり止めるか?
少し期待した俺が馬鹿だった。
「ワガママばっかり言って申し訳ないんですけど……できるだけ見ないで欲しいです」
なぜそれを言った…。
俺はずっと考えないようにしていたというのに。
言葉にされることによって逆に意識してしまうだろ。
俺は項垂れた。
「す、すみません。ワガママばっかり…やっぱり少しぐらいなら見てもいい…かな?」
「あほか」
俺の反応にわたわたした名字がさらに血迷った発言をし出した。
「見ないようにするし、切り込み入れたら後は目を瞑ってるから入ってこい」
「すみません、ありがとうございます。さっと入ります」
「ゆっくりで構わん」
少しずつ服に切り込みを入れていき、後は目を瞑った。
「終わったぞ」
「ありがとうございます。ではお風呂お借りします」
目を瞑ると視覚が閉ざされ聴覚が敏感になるわけで。
衣擦れの音がやけに耳に響いた。
俺は明日の授業を考えることに専念した。
お互い可能な限り最大限腕を伸ばすものの、その距離はたかが知れていて。
シャワー音や名字の気持ち良さそうな鼻歌が聞こえる。
しかも繋がっているから俺の腕にもお湯がかかる。
まるで一緒に風呂に入っている感覚が芽生えた。
俺はトイレの時同様に音楽を持ってくるべきだったと後悔した。
「なんなんだ、この状況は」
我が生徒ではあるが、元凶となった峰田を次に会ったとき再び縛り上げることを誓った。
トイレはあれだけ拒んでたのに、いくら臭いが気になるからといって風呂に対するハードルはないのか。
「だが、服をどうするんだ」
腕同士が引っ付いているのだから脱げないだろう。
「私の服、切ってほしいです」
名字はさも妙案だと言わんばかりに続けた。
「この服はもう捨てるので、右半身の部分にハサミで切り込みを入れてもらえれば後は自分で脱げます!」
「いや、さすがにそれは…」
「大丈夫です。相澤先生の手先の器用さを信じます」
俺は刺す心配をしてるんじゃない。
なんとかしてこの風呂案を廃止できないかと思考を巡らせた。
「逆に着るものはどうするんだ」
「実はですね」
名字は自分の鞄を左手で漁った。
「じゃじゃん!!今日来てきた私服、右サイドにジッパーついているやつなんです」
名字が取り出したそれは、右サイドにジッパーがついているノースリーブだった。
「朝の私を褒めたいです」
余程風呂に入りたいらしい。
今まで接した名字の中で一番テンションが高いのではないだろうか。
「ほんとこれにしてよかった~」
今日は汗掻くってわかってたんで下着も全部新しいやつ持ってきてるんです、と普段の名字なら言わないであろう情報まで語ってくれた。
「あ、でも肝心の裁断バサミってありますか…?」
実はある。
しかしここで「ない」と言えばこの話は終わるだろう。
せめてタオルで身体を拭くぐらいに落としどころをつけられるのではないか。
そう思ったが不安そうな表情を浮かべる名字を見て、「あるから取りに行くぞ」と俺は無意識に口走っていた。
************
「では、お願いします」
裁断バサミを用意し、脱衣所へ移動した。
俺の選択肢は無心になって名字の肌を傷つけないようにハサミを動かすだけだ。
「あ、あの」
一絶ち目を入れようとしたとき、名字が呼び止めた。
「どうした」
やっぱり止めるか?
少し期待した俺が馬鹿だった。
「ワガママばっかり言って申し訳ないんですけど……できるだけ見ないで欲しいです」
なぜそれを言った…。
俺はずっと考えないようにしていたというのに。
言葉にされることによって逆に意識してしまうだろ。
俺は項垂れた。
「す、すみません。ワガママばっかり…やっぱり少しぐらいなら見てもいい…かな?」
「あほか」
俺の反応にわたわたした名字がさらに血迷った発言をし出した。
「見ないようにするし、切り込み入れたら後は目を瞑ってるから入ってこい」
「すみません、ありがとうございます。さっと入ります」
「ゆっくりで構わん」
少しずつ服に切り込みを入れていき、後は目を瞑った。
「終わったぞ」
「ありがとうございます。ではお風呂お借りします」
目を瞑ると視覚が閉ざされ聴覚が敏感になるわけで。
衣擦れの音がやけに耳に響いた。
俺は明日の授業を考えることに専念した。
お互い可能な限り最大限腕を伸ばすものの、その距離はたかが知れていて。
シャワー音や名字の気持ち良さそうな鼻歌が聞こえる。
しかも繋がっているから俺の腕にもお湯がかかる。
まるで一緒に風呂に入っている感覚が芽生えた。
俺はトイレの時同様に音楽を持ってくるべきだったと後悔した。
「なんなんだ、この状況は」
我が生徒ではあるが、元凶となった峰田を次に会ったとき再び縛り上げることを誓った。
