【3章】助けてヒーロー
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運動着のまま職員室に戻ると私は無駄だと分かっていながら、もぎもぎを外そうと腕を引っ張り続けた。
「ぐぬぬぬ」
「無駄なことはやめろ」
「相澤先生の個性で何とかならないんですか?」
「個性発動前にしか効かん。すでについた後だから無理だ」
せめてどちらかは服についていれば、脱げば解決したのに私の右腕と相澤先生の左腕両方共地肌にぴったり張り付いていた。
「このまま半日・・・」
「峰田はああ言っていたが、本人もよく分かっていないから、もしかしたらすぐに取れる可能性もある」
「それって・・・」
私は頭を抱えた。
考えたくはないが、その逆も有り得る。
とてもじゃないがその可能性を口にするのは憚られた。
「名字、帰り支度をしろ」
相澤先生はパソコンの電源を落としていた。
「もう帰るんですか?」
定時ぴったりに相澤先生が帰るなんて珍しい。
「この状況をマイク達に見られたくない。今のうちに帰るぞ」
確かに私達がくっついているのを見たらからかわれるのは必至だ。
相澤先生が嫌がるのも分かる。
私もからかわれるのはごめんだ。
たまたま職員室には人がほとんどいなかったので、私達は盗人のようにコソコソ裏口から出た。
私達は横に並んで歩いた。
不幸中の幸いなのはお互いの家が近いことだ。
「とりあえずうちに来ますか?」
この前とは違い、事前に片付けは出来ないものの人を上げられないぐらい散らかってはいないはず。
「いや、俺の家に来い」
「え!?相澤先生のお宅ですか?」
「なんだ」
「だって、相澤先生人を上げるの嫌いだって言ってたので・・・」
「構わん。人による」
それって私はいいってこと?
単純に嬉しかった。
相澤先生のお家気になる・・・。
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔します」
*********
とんでもないことになった。
演習のとき、峰田の姿は捉えており名字を助けようとしていたのも気付いていた。
しかしこちらも名字を助けることを優先したため、最終的に1つだけ避けきることができなかった。失態だ。
ヒーローネットワークで外せそうな個性を持っているヒーローがいないか探したが、都合よくそんな個性の者は見つからなかった。
自分一人なら夕飯も適当に済ませるが、名字もいるのでそういうわけにはいかない。
冷蔵庫にまともな食糧はないので道中名字が飲み会の材料を揃えたスーパーで弁当や総菜を買った。
女だからデザートもあった方がいいか?
適当に甘い物も買っておいた。
「お邪魔します」
名字は靴を揃えようと屈んだが、それに俺も引っ張られそうになった。
「靴はそのままでいい」
「あっ、すみません」
名字は気付いて動きを止めた。
「立派なお家ですね」
「そうか?」
「さすがヒーローです」
ここまであえて考えないようにしていたが、名字が今日泊まる可能性も拭えない。
一通り家の説明をした。
終わったらとりあえず飲み物を出してリビングに腰を下ろした。
向かい合わせだと距離ができるので隣に座った。
「・・・」
「・・・」
時計の針がコツコツ鳴る音が妙に大きく聞こえた。
「あ~・・・なんだ。演習お疲れ様」
「あ、ありがとうございます。貴重な体験でしたし学べることも多かったです」
再び静寂が訪れた。
「・・・」
「・・・・大丈夫か?」
「・・・へへ。緊張してしまって」
「そうか。別に取って食うつもりはないから安心しろ」
この空気を変えたくて言った冗談だった。
手持無沙汰を解消したくて目の前のお茶を飲んだ。
しかし名字は俺の言葉に反応することはなかった。
おかしい。
気遣いの鬼のような彼女が何も反応しないなんて考えにくかった。
「おい」
「・・・あ、はい」
声を掛けて反応はあったものの、どこか虚ろな目をしていた。
「あれ、さっき何か言ってましたっけ?」
名字の様子が明らかにおかしい。
そこで俺は気付いた。
目の前のお茶に名字は一度も口を付けていないことに。
「名字、最後に水分を取ったのはいつだ?」
「・・・」
「演習終わってから飲んだか?」
「・・・」
確か、最後の組の演習が始まる前に飲んでいるのは見た。
腕がくっついてからは一度も飲んでいなかったはず。
「名字、飲め」
俺は目の前のコップを名字に近づけた。
名字はふるふると首を横に振った。
「脱水症状を起こしかけている。早く飲め」
名字はそれでも固く口を閉ざして飲もうとしない。
「だって・・・水分取ったらトイレに行きたくなるかもしれないじゃないですか」
名字の主張は理解できるし、俺もそれには頭を悩ませていた。
「大丈夫だ、その問題の対処法は考えてある。だからとにかく今は水分を取るんだ」
「対処法?」
「後で説明するから早く飲め」
本当は対処法なんて思いついていない。
名字に水分を取らせるための嘘だった。
しかし名字は俺の言葉を信じたようでコップに手を掛けるとゆっくり口に運んだ。
ずっと欲しかったであろう、それ。
一度飲み出すとコクコクと息つく間もなく飲み干した。
「もう一杯飲むか?」
俺の問いかけに名字は頷いたのでコップに並々注いだ。
それを再びあっという間に飲み干した。
名字の顔色はだいぶましになった。
「生き返りました・・・」
「ここで倒れられたら俺が困る」
「えへへ、すみません」
名字は少し俯いて恥ずかしそうに笑った。
「で、どういう対処法を思いつかれたんですか?」
名字はキラキラした瞳で俺を見上げた。
「ぐぬぬぬ」
「無駄なことはやめろ」
「相澤先生の個性で何とかならないんですか?」
「個性発動前にしか効かん。すでについた後だから無理だ」
せめてどちらかは服についていれば、脱げば解決したのに私の右腕と相澤先生の左腕両方共地肌にぴったり張り付いていた。
「このまま半日・・・」
「峰田はああ言っていたが、本人もよく分かっていないから、もしかしたらすぐに取れる可能性もある」
「それって・・・」
私は頭を抱えた。
考えたくはないが、その逆も有り得る。
とてもじゃないがその可能性を口にするのは憚られた。
「名字、帰り支度をしろ」
相澤先生はパソコンの電源を落としていた。
「もう帰るんですか?」
定時ぴったりに相澤先生が帰るなんて珍しい。
「この状況をマイク達に見られたくない。今のうちに帰るぞ」
確かに私達がくっついているのを見たらからかわれるのは必至だ。
相澤先生が嫌がるのも分かる。
私もからかわれるのはごめんだ。
たまたま職員室には人がほとんどいなかったので、私達は盗人のようにコソコソ裏口から出た。
私達は横に並んで歩いた。
不幸中の幸いなのはお互いの家が近いことだ。
「とりあえずうちに来ますか?」
この前とは違い、事前に片付けは出来ないものの人を上げられないぐらい散らかってはいないはず。
「いや、俺の家に来い」
「え!?相澤先生のお宅ですか?」
「なんだ」
「だって、相澤先生人を上げるの嫌いだって言ってたので・・・」
「構わん。人による」
それって私はいいってこと?
単純に嬉しかった。
相澤先生のお家気になる・・・。
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔します」
*********
とんでもないことになった。
演習のとき、峰田の姿は捉えており名字を助けようとしていたのも気付いていた。
しかしこちらも名字を助けることを優先したため、最終的に1つだけ避けきることができなかった。失態だ。
ヒーローネットワークで外せそうな個性を持っているヒーローがいないか探したが、都合よくそんな個性の者は見つからなかった。
自分一人なら夕飯も適当に済ませるが、名字もいるのでそういうわけにはいかない。
冷蔵庫にまともな食糧はないので道中名字が飲み会の材料を揃えたスーパーで弁当や総菜を買った。
女だからデザートもあった方がいいか?
適当に甘い物も買っておいた。
「お邪魔します」
名字は靴を揃えようと屈んだが、それに俺も引っ張られそうになった。
「靴はそのままでいい」
「あっ、すみません」
名字は気付いて動きを止めた。
「立派なお家ですね」
「そうか?」
「さすがヒーローです」
ここまであえて考えないようにしていたが、名字が今日泊まる可能性も拭えない。
一通り家の説明をした。
終わったらとりあえず飲み物を出してリビングに腰を下ろした。
向かい合わせだと距離ができるので隣に座った。
「・・・」
「・・・」
時計の針がコツコツ鳴る音が妙に大きく聞こえた。
「あ~・・・なんだ。演習お疲れ様」
「あ、ありがとうございます。貴重な体験でしたし学べることも多かったです」
再び静寂が訪れた。
「・・・」
「・・・・大丈夫か?」
「・・・へへ。緊張してしまって」
「そうか。別に取って食うつもりはないから安心しろ」
この空気を変えたくて言った冗談だった。
手持無沙汰を解消したくて目の前のお茶を飲んだ。
しかし名字は俺の言葉に反応することはなかった。
おかしい。
気遣いの鬼のような彼女が何も反応しないなんて考えにくかった。
「おい」
「・・・あ、はい」
声を掛けて反応はあったものの、どこか虚ろな目をしていた。
「あれ、さっき何か言ってましたっけ?」
名字の様子が明らかにおかしい。
そこで俺は気付いた。
目の前のお茶に名字は一度も口を付けていないことに。
「名字、最後に水分を取ったのはいつだ?」
「・・・」
「演習終わってから飲んだか?」
「・・・」
確か、最後の組の演習が始まる前に飲んでいるのは見た。
腕がくっついてからは一度も飲んでいなかったはず。
「名字、飲め」
俺は目の前のコップを名字に近づけた。
名字はふるふると首を横に振った。
「脱水症状を起こしかけている。早く飲め」
名字はそれでも固く口を閉ざして飲もうとしない。
「だって・・・水分取ったらトイレに行きたくなるかもしれないじゃないですか」
名字の主張は理解できるし、俺もそれには頭を悩ませていた。
「大丈夫だ、その問題の対処法は考えてある。だからとにかく今は水分を取るんだ」
「対処法?」
「後で説明するから早く飲め」
本当は対処法なんて思いついていない。
名字に水分を取らせるための嘘だった。
しかし名字は俺の言葉を信じたようでコップに手を掛けるとゆっくり口に運んだ。
ずっと欲しかったであろう、それ。
一度飲み出すとコクコクと息つく間もなく飲み干した。
「もう一杯飲むか?」
俺の問いかけに名字は頷いたのでコップに並々注いだ。
それを再びあっという間に飲み干した。
名字の顔色はだいぶましになった。
「生き返りました・・・」
「ここで倒れられたら俺が困る」
「えへへ、すみません」
名字は少し俯いて恥ずかしそうに笑った。
「で、どういう対処法を思いつかれたんですか?」
名字はキラキラした瞳で俺を見上げた。
