【二章】あの子の秘密
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(七海視点)
彼が連れてきた女性は、一般人といっても過言ではなかった。
「おはようございます」
呪術師が報告書を仕上げるためのパソコンに向かっていると、横から珈琲を淹れたカップが置かれた。
「おはようございます。いいんですよ、珈琲ぐらい自分で淹れますから」
「いえいえ。これが私のお仕事ですから」
にこにこと愛想のいい笑顔を浮かべる彼女は、ここの職場には居ないタイプだった。
「それに、このお茶汲みのお仕事がみなさんとのコミュニケーションのきっかけになるので」
だから私の仕事を取らないでくれと言われたらそれ以上何も言えなかった。
五条さんのことだから、何か裏があってこの女性を引き入れたのではないかとしばらく観察していたのだが、本当に何もなさそうだった。
「あ、五条さん!おはようございます」
顔を上げた彼女の先には五条さんが立っていた。
「おはよ〜」
「五条さんの珈琲淹れますね」
「砂糖たっぷりでお願い」
「はーい」
パタパタと給湯室に駆けていく背中を見送ると、五条さんは私の隣に立った。
「どう?僕のおすすめ窓っ子ちゃんは」
「魔女っ子みたいな言い方しないでください」
それに名前さんの話を聞いたところ、やはり窓として活動していたわけではなく、ただ単に知り合いに苦手な虫(呪霊)退治をお願いしてるだけの関係だった。
「貴方、そんなに暇じゃないでしょう」
「別に任務に支障ないんだからよくない?」
それに低級とはいえ呪霊を祓ってるんだから、とのたまうが、私用でさくっと祓ってるもんだからこの分だと彼女経由で祓った呪霊の報告書は提出されておらず、存在自体無かったことになっているのだろう。
まぁ……確かに虫のように湧いて出る呪霊達の報告書が毎度必要かと言われたら、書きながら「もうこの程度の呪霊書かなくてよくないか?」と思う時はある。
だが、それを決めるのは私ではないため、上からの指示に従うしかない。
それは脱サラした私には嫌ほど身についていた。
「お待たせしました」
名前さんはお盆に珈琲を乗せて、五条さんの分を傍に置いた。
数分前に置かれた私の珈琲を思い出し、口をつけると程よく冷めていて飲みやすい。
「あ、七海さんはお砂糖いりましたか?聞くの忘れてました」
「いえ、ブラックで大丈夫です」
「イメージ通りです!」
「そうですか」
「はい。七海さんが珈琲片手に新聞読んでたら、ここがパリなのではと一瞬錯覚してしまいます」
「初めて言われました」
「ねーねー、僕は?僕は?」
子どもみたいに名前さんを覗き込む五条さんを邪険にすることなく、彼女はにこにこと人の良い笑顔を浮かべた。
「五条さんはイメージとは違って、甘党なのがギャップあって素敵です!」
イメージ通りの七海さんとギャップがある五条さん、どっちも格好いいです。
❝格好いい❞なんて、普段聞き慣れないので動揺してしまった。
顔には出さなかったが、僅かに揺れた珈琲が私の心中を表していた。
「ほーんと、名前ちゃんは人誑しですね〜」
ぷにぷにと彼女の頬を突く五条さん。
「え、そうですか?誑してますか?私」
本当のこと言っただけなんですけど…と少し困惑気味なのが逆にお世辞ではないとよく分かる。
「大人になったら、素直に言葉にできないことの方が多くなるからね」
真面目にそう言ったかと思うと、五条さんはギューッと後ろから名前さんを抱き締めた。
「目の前でセクハラやめてください」
「知らないの?ハグってストレス軽減させる効果あるんだよ」
私が五条さんを引き剥がすと、名前さんは慌てて私の腕を掴んだ。
「私なら全然大丈夫です。フリーハグ、大歓迎です」
「フリーハグってそういう意味でしたっけ」
「なんでもいいんです。みなさんのストレス解消できるなら」
さあ、七海さんもどうぞ!と両手を広げる彼女に「遠慮します」と首を振った。
私に断られ空いてしまった腕の中にすかさず、五条さんが収まって(正確には収まったのは彼女の方)フリーハグをしていた。
………私もいつか、素直にフリーハグできる日が来るのだろうか。
ゆらゆら揺れている珈琲を眺めながらそんなことを思った。
彼が連れてきた女性は、一般人といっても過言ではなかった。
「おはようございます」
呪術師が報告書を仕上げるためのパソコンに向かっていると、横から珈琲を淹れたカップが置かれた。
「おはようございます。いいんですよ、珈琲ぐらい自分で淹れますから」
「いえいえ。これが私のお仕事ですから」
にこにこと愛想のいい笑顔を浮かべる彼女は、ここの職場には居ないタイプだった。
「それに、このお茶汲みのお仕事がみなさんとのコミュニケーションのきっかけになるので」
だから私の仕事を取らないでくれと言われたらそれ以上何も言えなかった。
五条さんのことだから、何か裏があってこの女性を引き入れたのではないかとしばらく観察していたのだが、本当に何もなさそうだった。
「あ、五条さん!おはようございます」
顔を上げた彼女の先には五条さんが立っていた。
「おはよ〜」
「五条さんの珈琲淹れますね」
「砂糖たっぷりでお願い」
「はーい」
パタパタと給湯室に駆けていく背中を見送ると、五条さんは私の隣に立った。
「どう?僕のおすすめ窓っ子ちゃんは」
「魔女っ子みたいな言い方しないでください」
それに名前さんの話を聞いたところ、やはり窓として活動していたわけではなく、ただ単に知り合いに苦手な虫(呪霊)退治をお願いしてるだけの関係だった。
「貴方、そんなに暇じゃないでしょう」
「別に任務に支障ないんだからよくない?」
それに低級とはいえ呪霊を祓ってるんだから、とのたまうが、私用でさくっと祓ってるもんだからこの分だと彼女経由で祓った呪霊の報告書は提出されておらず、存在自体無かったことになっているのだろう。
まぁ……確かに虫のように湧いて出る呪霊達の報告書が毎度必要かと言われたら、書きながら「もうこの程度の呪霊書かなくてよくないか?」と思う時はある。
だが、それを決めるのは私ではないため、上からの指示に従うしかない。
それは脱サラした私には嫌ほど身についていた。
「お待たせしました」
名前さんはお盆に珈琲を乗せて、五条さんの分を傍に置いた。
数分前に置かれた私の珈琲を思い出し、口をつけると程よく冷めていて飲みやすい。
「あ、七海さんはお砂糖いりましたか?聞くの忘れてました」
「いえ、ブラックで大丈夫です」
「イメージ通りです!」
「そうですか」
「はい。七海さんが珈琲片手に新聞読んでたら、ここがパリなのではと一瞬錯覚してしまいます」
「初めて言われました」
「ねーねー、僕は?僕は?」
子どもみたいに名前さんを覗き込む五条さんを邪険にすることなく、彼女はにこにこと人の良い笑顔を浮かべた。
「五条さんはイメージとは違って、甘党なのがギャップあって素敵です!」
イメージ通りの七海さんとギャップがある五条さん、どっちも格好いいです。
❝格好いい❞なんて、普段聞き慣れないので動揺してしまった。
顔には出さなかったが、僅かに揺れた珈琲が私の心中を表していた。
「ほーんと、名前ちゃんは人誑しですね〜」
ぷにぷにと彼女の頬を突く五条さん。
「え、そうですか?誑してますか?私」
本当のこと言っただけなんですけど…と少し困惑気味なのが逆にお世辞ではないとよく分かる。
「大人になったら、素直に言葉にできないことの方が多くなるからね」
真面目にそう言ったかと思うと、五条さんはギューッと後ろから名前さんを抱き締めた。
「目の前でセクハラやめてください」
「知らないの?ハグってストレス軽減させる効果あるんだよ」
私が五条さんを引き剥がすと、名前さんは慌てて私の腕を掴んだ。
「私なら全然大丈夫です。フリーハグ、大歓迎です」
「フリーハグってそういう意味でしたっけ」
「なんでもいいんです。みなさんのストレス解消できるなら」
さあ、七海さんもどうぞ!と両手を広げる彼女に「遠慮します」と首を振った。
私に断られ空いてしまった腕の中にすかさず、五条さんが収まって(正確には収まったのは彼女の方)フリーハグをしていた。
………私もいつか、素直にフリーハグできる日が来るのだろうか。
ゆらゆら揺れている珈琲を眺めながらそんなことを思った。
