【三章】想い、想われ
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「なるほど・・・よくできてるね、これ」
所要時間が半日ほどかかると書かれていた意味が分かった。
夕日が沈みかけてきた頃、俺達はスカイツリーの下に居た。
「これが最後だね」
名前さんが答えを書き込んで、謎解きは終了。
「せっかくだから登ってみる?」
彼女は首を上に上げた。
「うん、行ってみよ」
この謎解きした人達の集客狙ってるだろ。
集客なんて狙わなくても、勝手に観光客が入るから意味あるのかわからんが。
「どうする?展望デッキまでか、回廊まで行くか」
「うーん…私は展望デッキで充分……あ」
名前さんは一瞬言葉を詰まらせた。
「やっぱり、一番上まで行きたいな」
「そ?別に俺も展望デッキまでで…」
「でも次いつ来れるか分からないし!来れるときに見尽くしておこうかなって」
そう言って名前さんは俺の手を引いた。
「誕生日プレゼント!80回の内の1回目ね」
そうか、俺はもう来れないかもしれないのか。
もしかしたら来年はこの世に居ないかもしれない。
いや、もっと早い可能性もある。
「ありがと」
自分で出すつもりだったが、名前さんからの誕生日プレゼントだと思うと、素直に甘えたくなってしまった。
「わあ〜!夜景じゃないけど、夕日もやっぱり綺麗だね」
せっかくなら夜景の時に名前さんと見たかった。
「夜景も見たいけど、さすがに寮に帰らないとだしねぇ」
「名前さん……」
謎解きで上がったテンションは、綺麗な夕日に吸収されていった。
「なに?」
「ううん、呼んだだけ」
手すりに腕をかけて、そこに顔を埋めた。
「どうしたの!?もしかして高いところダメだった?」
「ううん……」
そうじゃない。
「死にたくねぇ……」
自分の死を受け入れてるつもりだった。
今まで怒涛過ぎる毎日に、ちゃんと考えているつもりでもどこか他人事のように扱っていたのかもしれない。
今日は名前さんと楽しい一日を過ごせて、とても幸せだった。
しかし、同時に未練も生まれてしまったのだ。
「虎杖くん…」
心配そうな声をしている名前さんに大丈夫だと言わなければ。
分かっているのに、夕日のせいかセンチメンタルになっているらしい。
目頭が熱くなった。
「ごめんね、何もできなくて。でも私も……虎杖くんに生きててほしい」
そっと手すりを握っている拳に名前さんの手が重ねられた。
腕にポタポタと温かい雫が落ちた。
「名前さん、泣かないでよ」
「ごめんね。でも悔しい」
名前さんの肩を抱くと、俺の腕の中で音もなく泣いていた。
きっと後ろから見たら俺達は、夕日を前にいい雰囲気になってるカップル。
でも実際は二人して嗚咽を我慢してる、そんなスカイツリーに相応しくない二人組なのだ。
*******************
「もうそろそろ帰らないとね…」
「うん」
結局、完全に日が沈んで夜景まで見れてしまった。
「戻ったら怒られちゃうかも」
「帰りも時間差にする?」
「帰宅遅すぎてバレてる気もする…」
本来なら日が沈むまでに戻って、夜ご飯も寮で食べるはずだった。
もっと早く虎杖くんを寮に帰すべきだったのに。
彼はもしかしたらもう二度と見られないかもしれないと思うと、夜景まで見て帰りたくなったのだ。
でもさすがにもう帰らないと。
「あ、せめて一枚写真撮っておこう」
スマホ禁止を実際にやってみると案外いけた。
夜景を写真に収めようとスマホを取り出してカメラを起動しようとしたら、不在着信が入っていた。
「えっ、怖い…」
「なに?」
「不在着信がえげつないんだけど…」
ほとんど五条さんだった。
そして合間に七海さんと伊地知さんからも掛かっていた。
「え…何かあったのかな」
私は慌てて折り返しの電話をするために、指を画面に滑らせた。
「あ、伊地知さん?お疲れ様です」
鬼電掛けてきてる五条さんに折り返す勇気がなくて、とりあえず伊地知さんに掛けてみた。
『名字さん、今どこですか?ちょっとこっちが大変なことになってて…』
「え!?ごめんなさい、私何か仕事ミスしてましたか!?今はスカイツリーに居ます」
『いえ…そうではなくて。『ちょっと!それ名前ちゃん!?なんで伊地知が一番なんだよっ』』
背後から五条さんの声が聞こえる…。
今まで聞いたことがない声に思わずスマホを耳から離した。
『もしもし?名前ちゃん?』
伊地知さんのスマホから五条さんの声が聞こえた。
『そっち行くから、待ってて』
有無を言わさぬ物言いに、私は「はい…」と返事をするしかなかった。
所要時間が半日ほどかかると書かれていた意味が分かった。
夕日が沈みかけてきた頃、俺達はスカイツリーの下に居た。
「これが最後だね」
名前さんが答えを書き込んで、謎解きは終了。
「せっかくだから登ってみる?」
彼女は首を上に上げた。
「うん、行ってみよ」
この謎解きした人達の集客狙ってるだろ。
集客なんて狙わなくても、勝手に観光客が入るから意味あるのかわからんが。
「どうする?展望デッキまでか、回廊まで行くか」
「うーん…私は展望デッキで充分……あ」
名前さんは一瞬言葉を詰まらせた。
「やっぱり、一番上まで行きたいな」
「そ?別に俺も展望デッキまでで…」
「でも次いつ来れるか分からないし!来れるときに見尽くしておこうかなって」
そう言って名前さんは俺の手を引いた。
「誕生日プレゼント!80回の内の1回目ね」
そうか、俺はもう来れないかもしれないのか。
もしかしたら来年はこの世に居ないかもしれない。
いや、もっと早い可能性もある。
「ありがと」
自分で出すつもりだったが、名前さんからの誕生日プレゼントだと思うと、素直に甘えたくなってしまった。
「わあ〜!夜景じゃないけど、夕日もやっぱり綺麗だね」
せっかくなら夜景の時に名前さんと見たかった。
「夜景も見たいけど、さすがに寮に帰らないとだしねぇ」
「名前さん……」
謎解きで上がったテンションは、綺麗な夕日に吸収されていった。
「なに?」
「ううん、呼んだだけ」
手すりに腕をかけて、そこに顔を埋めた。
「どうしたの!?もしかして高いところダメだった?」
「ううん……」
そうじゃない。
「死にたくねぇ……」
自分の死を受け入れてるつもりだった。
今まで怒涛過ぎる毎日に、ちゃんと考えているつもりでもどこか他人事のように扱っていたのかもしれない。
今日は名前さんと楽しい一日を過ごせて、とても幸せだった。
しかし、同時に未練も生まれてしまったのだ。
「虎杖くん…」
心配そうな声をしている名前さんに大丈夫だと言わなければ。
分かっているのに、夕日のせいかセンチメンタルになっているらしい。
目頭が熱くなった。
「ごめんね、何もできなくて。でも私も……虎杖くんに生きててほしい」
そっと手すりを握っている拳に名前さんの手が重ねられた。
腕にポタポタと温かい雫が落ちた。
「名前さん、泣かないでよ」
「ごめんね。でも悔しい」
名前さんの肩を抱くと、俺の腕の中で音もなく泣いていた。
きっと後ろから見たら俺達は、夕日を前にいい雰囲気になってるカップル。
でも実際は二人して嗚咽を我慢してる、そんなスカイツリーに相応しくない二人組なのだ。
*******************
「もうそろそろ帰らないとね…」
「うん」
結局、完全に日が沈んで夜景まで見れてしまった。
「戻ったら怒られちゃうかも」
「帰りも時間差にする?」
「帰宅遅すぎてバレてる気もする…」
本来なら日が沈むまでに戻って、夜ご飯も寮で食べるはずだった。
もっと早く虎杖くんを寮に帰すべきだったのに。
彼はもしかしたらもう二度と見られないかもしれないと思うと、夜景まで見て帰りたくなったのだ。
でもさすがにもう帰らないと。
「あ、せめて一枚写真撮っておこう」
スマホ禁止を実際にやってみると案外いけた。
夜景を写真に収めようとスマホを取り出してカメラを起動しようとしたら、不在着信が入っていた。
「えっ、怖い…」
「なに?」
「不在着信がえげつないんだけど…」
ほとんど五条さんだった。
そして合間に七海さんと伊地知さんからも掛かっていた。
「え…何かあったのかな」
私は慌てて折り返しの電話をするために、指を画面に滑らせた。
「あ、伊地知さん?お疲れ様です」
鬼電掛けてきてる五条さんに折り返す勇気がなくて、とりあえず伊地知さんに掛けてみた。
『名字さん、今どこですか?ちょっとこっちが大変なことになってて…』
「え!?ごめんなさい、私何か仕事ミスしてましたか!?今はスカイツリーに居ます」
『いえ…そうではなくて。『ちょっと!それ名前ちゃん!?なんで伊地知が一番なんだよっ』』
背後から五条さんの声が聞こえる…。
今まで聞いたことがない声に思わずスマホを耳から離した。
『もしもし?名前ちゃん?』
伊地知さんのスマホから五条さんの声が聞こえた。
『そっち行くから、待ってて』
有無を言わさぬ物言いに、私は「はい…」と返事をするしかなかった。
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