「君が悟の言っていた窓か？」
「えっと…窓…？」

窓って窓…？
私は壁際の窓に視線を向けた。

「どうなってるんだ。何も知らないじゃないか」
「たはー。教えるの忘れてた。っていうか教えたら名前ちゃんらしさが無くなるっていうか」

非常に体格が良く、黒いサングラスがお似合いのこちらの方が学長さんらしく驚いた。
私の知っている歴代校長は大体おじいちゃんだ。

そして、面接に気合いを入れて臨んだのだが、さっきから学長さんの言っていることが理解できない。もっと勉強するべきだった。
五条さんがコネで入れてくれるものだと甘えていた。

専門用語が分からなくて、半泣きになりながら、チラリと五条さんに視線を送った。

「今は何の仕事をしているんだ？」
「あ、えっと…今は…」

簡潔に現職の仕事を説明すると、フーッと夜蛾学長は息を吐いた。

「悟のワガママに付き合わせてしまってすまないな」

サングラスでよくわからないが、多分困っているのだろう。
あ、これ、落ちるやつだ。

「いえ…五条さんには助けてもらってばかりで…」

呪霊と会わなくて済む場所で仕事をしたいと思っていたけど、よく考えたらとんでもなく失礼な話だよね。
ここで働いてる人達は呪霊と向き合って仕事してるのに。
コーヒー嫌いなのにコーヒーメーカーで働きたい…みたいな。ちょっと違うか。

受かる気がしない面接が終盤を迎え、次で最後の質問だろうという雰囲気になった。

「(帰りにアイス食べよ…)」

この業界の勉強をしなかった私が悪い。
本当に入りたいなら、もっと頑張るべきだった。
少し早いが脳内で反省会を繰り広げていると学長が口を開いた。

「君さえよければ、事務員として雇おうと思うが…」
「……え！？」

どこでどうなってそうなった！？
私が頭にはてなマークを浮かべていると学長は五条さんを指差した。

「君を雇えば、今日の休みを返上して働くとそこのバカが言っているんだ。そして、今日は猫の手を借りたいほど忙しい」

学長と五条さんの関係性って…？
五条さんそんなに権力あるの？

ますます分からなくなって、首を傾げていたが、❝猫の手を借りたい❞ほど忙しいなら早くこの面接を終わらせる必要がある。

「わ、私はぜひともこちらで働かせて頂きたいです！」

呪霊と会わなくて済むって本当ですか？と最後に質問したいが、失礼すぎて聞けなかった。

「呪術の勉強もやる所存です！」
「名前ちゃんの仕事は僕達を癒すことだからそんなに頑張らなくていいんだよ〜」
「私としてはそこに居るバカの手綱を握って貰えるとありがたい」
「五条さんの手綱！？私、振り落とされちゃいます」


何はともあれ、私は無事に高専の事務員に転職することに成功したのであった。