【三章】想い、想われ
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ああ、私は新しい扉を開いてしまったのかもしれない。
自分が女性も恋愛対象に入っているとこの歳になって初めて知った。
「いや…でも…」
正確には女性が恋愛対象に入っているのか、硝子さんが特別なのかは自分自身わからない。
「はあ…」
私が吐いた息は宙に消えた。
「悩み事かい?」
数メートル先からベンチに座っている私に向かって歩いてくる夏油さんが見えた。
「いえ、たいしたことじゃないんです」
顔を上げて、夏油さんにそう答えるとびっくりした。夏油さんの顔色が悪かったから。
「夏油さんこそ……大丈夫ですか?」
「うん?」
「顔色があまり良くないです」
「立て続けに任務が入ってたからかな」
さっき戻ってきたところなんだ、と言う夏油さんにそれなら早く寝た方がいいのではと思った。
「報告書を出して帰ろうとしたら君を見かけてね」
夏油さんは、ゆっくり私の隣に腰を下ろした。
「つい、話しかけてしまった」
そういうと、夏油さんはコテンと私の肩に頭を乗せた。
「夏油さん…?」
「少し、肩を貸してもらえるかな」
「はい、もちろんです」
私から見た夏油さんは優しい人だけど、どんな考えをもっているのか読みづらい人だった。
そんな彼は今、身体ではなく心が弱っているように見えた。
「……名前ちゃん?」
ゆっくり夏油さんの頭を撫でたら、彼は閉じていた目を薄っすら開けた。
「守秘義務は守ります」
「ふふ、いつからお医者さんになったのかな」
しかし夏油さんは息を一つ吐くと、私の肩口に顔を当てた。
「………嫌な案件に当たってしまってね」
「嫌な案件…」
「田舎では特によくある話だよ」
泣いて……はいないようだが、涙が出ていないだけのように感じた。
「よくある話だから、傷ついてはいけないわけじゃないと思います」
「だが一々傷ついていられない」
「………心に絆創膏が貼れたらいいのに」
そうしたら、私がペタペタ貼ってあげられる。
「じゃあ名前ちゃんが貼ってくれるかい?」
「え?」
「ほら」
夏油さんは頭を撫でていた私の手を掴んで心臓部分にあてた。
とん、とん、と数回優しく叩いてあげると気持ちよさそうに再度彼はまぶたを閉じた。
「不思議だよ。名前ちゃんと一緒にいると心が凪いでいく」
「私でよければいくらでも一緒に居ます」
「本当に?悟が呼んでも私を優先してくれるかい?」
「それは……」
答えづらい質問に、言葉に詰まっていると夏油さんは小さく笑った。
「その場合は、私のところに居ても、悟が勝手にやって来るだろうな」
「じゃあ夏油さん優先したら、そこに五条さんが来て、みんな一緒に居られますね」
そうしたらきっと悟は拗ねるよ、と夏油さんは苦笑した。
「ところで、名前ちゃんの悩みは?守秘義務は守るよ」
薄っすら開いた目が上目遣いに私を見上げた。
「たいした話じゃないんですけど…私にとっては大事件といいますか……」
「ほう」
肩口から頭を上げて聞く姿勢を取ろうとした夏油さんに、そのままで大丈夫だと慌てた。
「あの……夏油さんは恋人以外とキスすることありますか?」
「これはまた…藪から棒に」
しかし夏油さんはすぐに「あるね」と答えた。
「特にフリーの時は」
「なるほど…?」
「キスなんて清潔感あれば大体できるんじゃないかな?」
アイドルがPVでしてたりするぐらいだし、と彼は平然と言った。
「それは結構暴論な気が・・・」
「あとは自分の潔癖度合いに左右されると思う。恋人としか絶対できない人も、誰とでもできる人も、両方とも人間として不思議ではないと私は思うけどね」
ところで・・・と夏油さんは結局身体を起こして、私を覗き込んだ。
「そんな質問するってことは、しちゃったんだ?」
第一印象から変わらない胡散臭い(失礼)笑顔を浮かべた。
「誰とは言いませんよ!でも・・・その、そういうタイミング?があって・・・」
「じゃあ当てようかな。まずは悟かな・・・あ、ビンゴ?」
「え!?」
「一人は悟で・・・あとはそうだな。硝子だ。悟の相談をして、その流れだね」
「私何も言ってないんですけど!?」
「顔が答えを教えてくれてるよ」
うっ・・・表情筋が素直な自分が恨めしい。
「名前ちゃんは素直で可愛いね」
「最近、自分で自分が分からないです」
「いいじゃない、恋人いないんでしょ?」
「そうなんですけど・・・」
「悟と硝子にどう思っているか聞いてあげようか?」
「いや、いいです!!ただ七海さんが・・・」
「七海?」
「あ・・・」
うっかり口を滑らせてしまった。
引っかかっているのは七海さんの存在だと思う。
告白に近いことを言ってくれた彼への罪悪感があるのだ。
「どうして七海?まさか・・・」
「いや、これは・・・深ーい事情があって、全部話すと日が暮れると言いますか」
「暮れてもいいから聞きたいな」
結局、隠し通せず(というよりどうせ五条さん経由で耳に入る気がした)洗いざらい順を追って夏油さんにも話した。
「・・・ということは発端は悟じゃなくて七海なのか」
私の表情筋より七海さんの普段の行いの善さが上回ったらしい。
信じられない・・・と私が知りうる夏油さんの中で一番驚いていた。
「でもそうなると、私だけ仲間外れみたいで寂しいな」
「え、夏油さんそんなこと言う方でしたか?」
私の中で夏油さんは五条さんより大人なイメージだ。
対五条さんには精神年齢が低下する傾向にはあるけれど。
「・・・ダメ?」
切れ長な眼は妖艶で、一瞬息を飲んでしまった。
「だ、だめですよ!もうこれ以上私の経験人数増やさないです!」
もうこれ以上悩みの種を増やしたくない。
やはり話したのは間違いだったと、腰を上げようとした時、腕を引かれた。
「んっ・・・」
夏油さんは下を向いた私の唇を的確に捉えた。
疲れているのか、少しカサついた唇が触れて、私はすぐに体勢を整えると「失礼します!」と頭を下げてその場を慌ただしく後にした。
「ふふ、嫌われちゃったかな」
きっと私の表情から嫌われない自信があったに違いない。
やはり素直な私の表情筋を再度恨めしく思うのであった。
自分が女性も恋愛対象に入っているとこの歳になって初めて知った。
「いや…でも…」
正確には女性が恋愛対象に入っているのか、硝子さんが特別なのかは自分自身わからない。
「はあ…」
私が吐いた息は宙に消えた。
「悩み事かい?」
数メートル先からベンチに座っている私に向かって歩いてくる夏油さんが見えた。
「いえ、たいしたことじゃないんです」
顔を上げて、夏油さんにそう答えるとびっくりした。夏油さんの顔色が悪かったから。
「夏油さんこそ……大丈夫ですか?」
「うん?」
「顔色があまり良くないです」
「立て続けに任務が入ってたからかな」
さっき戻ってきたところなんだ、と言う夏油さんにそれなら早く寝た方がいいのではと思った。
「報告書を出して帰ろうとしたら君を見かけてね」
夏油さんは、ゆっくり私の隣に腰を下ろした。
「つい、話しかけてしまった」
そういうと、夏油さんはコテンと私の肩に頭を乗せた。
「夏油さん…?」
「少し、肩を貸してもらえるかな」
「はい、もちろんです」
私から見た夏油さんは優しい人だけど、どんな考えをもっているのか読みづらい人だった。
そんな彼は今、身体ではなく心が弱っているように見えた。
「……名前ちゃん?」
ゆっくり夏油さんの頭を撫でたら、彼は閉じていた目を薄っすら開けた。
「守秘義務は守ります」
「ふふ、いつからお医者さんになったのかな」
しかし夏油さんは息を一つ吐くと、私の肩口に顔を当てた。
「………嫌な案件に当たってしまってね」
「嫌な案件…」
「田舎では特によくある話だよ」
泣いて……はいないようだが、涙が出ていないだけのように感じた。
「よくある話だから、傷ついてはいけないわけじゃないと思います」
「だが一々傷ついていられない」
「………心に絆創膏が貼れたらいいのに」
そうしたら、私がペタペタ貼ってあげられる。
「じゃあ名前ちゃんが貼ってくれるかい?」
「え?」
「ほら」
夏油さんは頭を撫でていた私の手を掴んで心臓部分にあてた。
とん、とん、と数回優しく叩いてあげると気持ちよさそうに再度彼はまぶたを閉じた。
「不思議だよ。名前ちゃんと一緒にいると心が凪いでいく」
「私でよければいくらでも一緒に居ます」
「本当に?悟が呼んでも私を優先してくれるかい?」
「それは……」
答えづらい質問に、言葉に詰まっていると夏油さんは小さく笑った。
「その場合は、私のところに居ても、悟が勝手にやって来るだろうな」
「じゃあ夏油さん優先したら、そこに五条さんが来て、みんな一緒に居られますね」
そうしたらきっと悟は拗ねるよ、と夏油さんは苦笑した。
「ところで、名前ちゃんの悩みは?守秘義務は守るよ」
薄っすら開いた目が上目遣いに私を見上げた。
「たいした話じゃないんですけど…私にとっては大事件といいますか……」
「ほう」
肩口から頭を上げて聞く姿勢を取ろうとした夏油さんに、そのままで大丈夫だと慌てた。
「あの……夏油さんは恋人以外とキスすることありますか?」
「これはまた…藪から棒に」
しかし夏油さんはすぐに「あるね」と答えた。
「特にフリーの時は」
「なるほど…?」
「キスなんて清潔感あれば大体できるんじゃないかな?」
アイドルがPVでしてたりするぐらいだし、と彼は平然と言った。
「それは結構暴論な気が・・・」
「あとは自分の潔癖度合いに左右されると思う。恋人としか絶対できない人も、誰とでもできる人も、両方とも人間として不思議ではないと私は思うけどね」
ところで・・・と夏油さんは結局身体を起こして、私を覗き込んだ。
「そんな質問するってことは、しちゃったんだ?」
第一印象から変わらない胡散臭い(失礼)笑顔を浮かべた。
「誰とは言いませんよ!でも・・・その、そういうタイミング?があって・・・」
「じゃあ当てようかな。まずは悟かな・・・あ、ビンゴ?」
「え!?」
「一人は悟で・・・あとはそうだな。硝子だ。悟の相談をして、その流れだね」
「私何も言ってないんですけど!?」
「顔が答えを教えてくれてるよ」
うっ・・・表情筋が素直な自分が恨めしい。
「名前ちゃんは素直で可愛いね」
「最近、自分で自分が分からないです」
「いいじゃない、恋人いないんでしょ?」
「そうなんですけど・・・」
「悟と硝子にどう思っているか聞いてあげようか?」
「いや、いいです!!ただ七海さんが・・・」
「七海?」
「あ・・・」
うっかり口を滑らせてしまった。
引っかかっているのは七海さんの存在だと思う。
告白に近いことを言ってくれた彼への罪悪感があるのだ。
「どうして七海?まさか・・・」
「いや、これは・・・深ーい事情があって、全部話すと日が暮れると言いますか」
「暮れてもいいから聞きたいな」
結局、隠し通せず(というよりどうせ五条さん経由で耳に入る気がした)洗いざらい順を追って夏油さんにも話した。
「・・・ということは発端は悟じゃなくて七海なのか」
私の表情筋より七海さんの普段の行いの善さが上回ったらしい。
信じられない・・・と私が知りうる夏油さんの中で一番驚いていた。
「でもそうなると、私だけ仲間外れみたいで寂しいな」
「え、夏油さんそんなこと言う方でしたか?」
私の中で夏油さんは五条さんより大人なイメージだ。
対五条さんには精神年齢が低下する傾向にはあるけれど。
「・・・ダメ?」
切れ長な眼は妖艶で、一瞬息を飲んでしまった。
「だ、だめですよ!もうこれ以上私の経験人数増やさないです!」
もうこれ以上悩みの種を増やしたくない。
やはり話したのは間違いだったと、腰を上げようとした時、腕を引かれた。
「んっ・・・」
夏油さんは下を向いた私の唇を的確に捉えた。
疲れているのか、少しカサついた唇が触れて、私はすぐに体勢を整えると「失礼します!」と頭を下げてその場を慌ただしく後にした。
「ふふ、嫌われちゃったかな」
きっと私の表情から嫌われない自信があったに違いない。
やはり素直な私の表情筋を再度恨めしく思うのであった。
