【三章】想い、想われ
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「ささ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
面談室に通されて、私は促されるままソファに腰を下ろした。
ガチャリ、と鍵が閉まる音がして、思わず振り返った。
目隠しをしている五条さんの口元は弧を描いていた。
「ここに茶菓子隠しておいたんだよね〜」
五条さんは普段開けない棚を開けると、高そうな茶菓子を取り出した。
「わっ。デパートにあるやつ…。私なんかに出すの勿体ないですよ」
「名前ちゃんだから出してるんだよ」
珈琲を淹れてくれる間、私は手持ち無沙汰で視線を彷徨わせた。
直に珈琲のいい香りが鼻腔を掠めた。
「はい、どうぞ」
コトリ、と目の前に置かれた珈琲。
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると五条さんはもう一つカップを横に並べて、私の隣に腰を下ろした。
「ん?」
「あ、いえ…」
前じゃなくて横に座るんだ…。
でも五条さんの距離の近さに慣れつつある自分も居た。
しかしアイドル並みにキラキラしている五条さんが隣に来ると緊張してしまう。
そして、最近五条さんが呪術界において、どれほど凄い人なのかようやく分かってきたところだ。
私は珈琲カップに口をつけて、緊張を誤魔化した。
「ねぇ、七海とキスしたって本当?」
思わず「ごふっ…」と珈琲を吹き出しそうになって慌てて手で口元を押さえた。
「な、ななな…」
何で知ってるんですか、と言おうとしても言葉にならない音だけが発せられた。
何でも何も、あの七海さんとの会話を聞かれていた以外答えはないだろう。
七海さんが五条さんに話すと思えないので。
となると…。
「ど、どこから聞いていたんですか…?」
五条さんは「んー…」と逡巡する素振りを見せた。
「全部が聞こえたわけじゃないけど、所々…ね」
その所々が気になるのですが…。
目隠しを上げて、じっと私を見つめる五条さんとは対照的に私は視線を右往左往させた。
「あ、あれは…不可抗力で」
「したんだ」
ぐっと身体を寄せられて、責められているように感じた私は身体を縮こまらせた。
「へ、変な空間に閉じ込められたんです!!」
「変な空間?」
そこから私は言い訳するかのように、あの空間について五条さんに話した。
「❝キスしないと出られない部屋❞……ねぇ」
物凄くシンプルな話なはずなのに、自分で説明してわけわからなくなってしまった。
「信じられないですよね」
誰がこんな話信じるんだろう。
私が聞いたなら「夢でも見たんじゃない?」って言ってしまいそう。
「んー…。今聞いて思ったのは、身体ごと飛んだんじゃなくて、呪霊に攻撃されて二人の意識だけが一つの空間に集約されたって線なんだけど…。ま、それは七海と話すわ。それより……」
ぐっと近づいた五条さんの顔に驚いて、私は身体をソファに肘掛け目一杯に寄せた。
「羨ましすぎるんだけどっ!」
少し拗ねた五条さんは蒼い目で私を捕らえた。
相変わらず吸い込まれそうな程綺麗な瞳に、私は釘付けになった。
「ご、じょうさんも…キスしたいんですか?」
思い返せば馬鹿な質問をしたと思う。
私の問いに五条さんは長い睫毛を瞬かせた。
「だって、悔しいじゃん。名前ちゃんを見つけたのは僕なのに。七海とキスする方が先なんて」
それはまるで、いつか私と五条さんがキスをすることを疑っていないように聞こえた。
脳裏に五条さんとキスする自分が浮かんで、顔に熱が集まった。
「七海とはできるけど、僕とはイヤ?」
「わ、かんない……です」
五条さんとキス…。
想像してしまったが、やはり七海さんと同様、嫌悪感より羞恥心が勝つ。
「じゃあ、試してみる?」
ゆっくり近づく五条さんの端正な顔。
私が逃げられる時間を目一杯残してくれている。
しかし、私自身知りたくなってしまった。
五条さんとキスをしたら自分がどう感じるのか。
想像では答えを出せなかった私は、馬鹿なことに蒼い目と見つめ合いながら迫りくる彼の唇を受け入れてしまった。
「あ、ありがとうございます」
面談室に通されて、私は促されるままソファに腰を下ろした。
ガチャリ、と鍵が閉まる音がして、思わず振り返った。
目隠しをしている五条さんの口元は弧を描いていた。
「ここに茶菓子隠しておいたんだよね〜」
五条さんは普段開けない棚を開けると、高そうな茶菓子を取り出した。
「わっ。デパートにあるやつ…。私なんかに出すの勿体ないですよ」
「名前ちゃんだから出してるんだよ」
珈琲を淹れてくれる間、私は手持ち無沙汰で視線を彷徨わせた。
直に珈琲のいい香りが鼻腔を掠めた。
「はい、どうぞ」
コトリ、と目の前に置かれた珈琲。
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると五条さんはもう一つカップを横に並べて、私の隣に腰を下ろした。
「ん?」
「あ、いえ…」
前じゃなくて横に座るんだ…。
でも五条さんの距離の近さに慣れつつある自分も居た。
しかしアイドル並みにキラキラしている五条さんが隣に来ると緊張してしまう。
そして、最近五条さんが呪術界において、どれほど凄い人なのかようやく分かってきたところだ。
私は珈琲カップに口をつけて、緊張を誤魔化した。
「ねぇ、七海とキスしたって本当?」
思わず「ごふっ…」と珈琲を吹き出しそうになって慌てて手で口元を押さえた。
「な、ななな…」
何で知ってるんですか、と言おうとしても言葉にならない音だけが発せられた。
何でも何も、あの七海さんとの会話を聞かれていた以外答えはないだろう。
七海さんが五条さんに話すと思えないので。
となると…。
「ど、どこから聞いていたんですか…?」
五条さんは「んー…」と逡巡する素振りを見せた。
「全部が聞こえたわけじゃないけど、所々…ね」
その所々が気になるのですが…。
目隠しを上げて、じっと私を見つめる五条さんとは対照的に私は視線を右往左往させた。
「あ、あれは…不可抗力で」
「したんだ」
ぐっと身体を寄せられて、責められているように感じた私は身体を縮こまらせた。
「へ、変な空間に閉じ込められたんです!!」
「変な空間?」
そこから私は言い訳するかのように、あの空間について五条さんに話した。
「❝キスしないと出られない部屋❞……ねぇ」
物凄くシンプルな話なはずなのに、自分で説明してわけわからなくなってしまった。
「信じられないですよね」
誰がこんな話信じるんだろう。
私が聞いたなら「夢でも見たんじゃない?」って言ってしまいそう。
「んー…。今聞いて思ったのは、身体ごと飛んだんじゃなくて、呪霊に攻撃されて二人の意識だけが一つの空間に集約されたって線なんだけど…。ま、それは七海と話すわ。それより……」
ぐっと近づいた五条さんの顔に驚いて、私は身体をソファに肘掛け目一杯に寄せた。
「羨ましすぎるんだけどっ!」
少し拗ねた五条さんは蒼い目で私を捕らえた。
相変わらず吸い込まれそうな程綺麗な瞳に、私は釘付けになった。
「ご、じょうさんも…キスしたいんですか?」
思い返せば馬鹿な質問をしたと思う。
私の問いに五条さんは長い睫毛を瞬かせた。
「だって、悔しいじゃん。名前ちゃんを見つけたのは僕なのに。七海とキスする方が先なんて」
それはまるで、いつか私と五条さんがキスをすることを疑っていないように聞こえた。
脳裏に五条さんとキスする自分が浮かんで、顔に熱が集まった。
「七海とはできるけど、僕とはイヤ?」
「わ、かんない……です」
五条さんとキス…。
想像してしまったが、やはり七海さんと同様、嫌悪感より羞恥心が勝つ。
「じゃあ、試してみる?」
ゆっくり近づく五条さんの端正な顔。
私が逃げられる時間を目一杯残してくれている。
しかし、私自身知りたくなってしまった。
五条さんとキスをしたら自分がどう感じるのか。
想像では答えを出せなかった私は、馬鹿なことに蒼い目と見つめ合いながら迫りくる彼の唇を受け入れてしまった。
