【三章】想い、想われ
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ど、ど、どうしよう。
私は自室でウロウロ忙しなく歩いていた。
「(七海さんとキスしちゃった…)」
よくわからない部屋に閉じ込められて、キスしたら出られたというわけがわからない現象。
狐に抓まれた気分で部屋を出ると、そこは高専内だった。
見知った場所に安堵して、お互い「では…」とまるで何事もなかったかのように解散した。
今でもあれは夢なのではないか、と思っている。
それはそれで七海さんとキスする夢を見るなんて、私の頭どうなってるんだ。
どんな顔して会えばいいのかわからない。
しかし、ずっと自室で引きこもっているわけにも行かず、私はドアを開け廊下の左右を確認した。
「何してんだよ、挙動不審」
呆れた表情の真希ちゃんと目が合った。
「や…えっと…真希ちゃんおはよう」
「はよ」
女子寮なんだから、ここで鉢合わせる可能性はほぼ無いと分かっているのだが。
私のおかしな挙動を真希ちゃんに目撃されてしまった。
「朝飯食ったのか?」
「まだ…」
「早く行こーぜ」
急かされて、私は中途半端な心のまま食堂に向かった。
七海さんは寮に住んでいないので、食堂で鉢合わせることは基本的に無い。
しかし、ふと気を抜いたら昨日の出来事が脳裏に浮かび、喉をご飯が通りづらくなってしまう。
「……体調悪ぃのか?」
真希ちゃんが心配そうな表情を浮かべている。
「う、ううん」
「顔赤いぞ。熱あるんじゃ」
「本当に違うの!これは…そうじゃなくて…」
「そうじゃなくて?………ハハーン」
心配そうな顔から今度はニヤリと口角を上げて意地悪い表情に変化した。
「もしかして、恋煩いか?」
お箸でこちらを指してくる真希ちゃんにふるふると首を横に振った。
「ち、違うよ。恋煩いなんて…そんなものじゃなくて」
「相手、誰だよ?」
「面白そうな話ししてるね」
頬が熱い。
否定している私の顔が赤いことは鏡を見なくてもわかった。
真希ちゃんに揶揄われていると、横から影が落ちた。
「五条さん!」
「何で悟がこんな朝早くから居るんだよ」
「名前ちゃん、昨日どこ行ってたの?」
「え…?」
私は七海さんと居なくなっていた時間のことを聞かれていると瞬時に理解し、慌てて取り繕った。
「えっと…昨日は高専内にずっといましたよ?」
「午後3時ぐらいにさ、名前ちゃん探してたんだけど見つからなかったんだよねー」
「その時間は倉庫に居ました!」
「ふーん、そっか」
「あ、もうそろそろ始業の時間なので失礼します」
私はお盆を返却し、食堂を後にした。
背後で「嘘、下手すぎだろ…」という真希ちゃんの声は聞こえなかった。
「あっ…」
事務室に向かう途中、七海さんとばったり出くわしてしまった。
「お、おはようございます…」
「おはようございます」
視線が定まらず挙句には尻すぼみになる挨拶。
いかにも「昨日のことで動揺してます!」と主張してしまっている。
「「……」」
何か言った方がいいのか、それともこのまま擦れ違った方がいいのか、お互い悩んでしまった結果、微妙な沈黙が二人の間に流れた。
「昨日のことは…お互い忘れましょうか」
「そ、そうですね!!忘れましょう!」
「何とも不思議な現象でしたが」
「まあ、呪霊が世の中に居るぐらいですから。私からすれば呪霊も不思議な存在ですし」
では私はこれで…と頭を下げて、事務室へ足を速めた。
*********************
忘れることにしよう、と約束したにも関わらず、
私はやはり七海さんの顔を見ると挙動不審になってしまい、まともに顔を見ることができないとまま一日を過ごした。
七海さんを避けすぎたせいで五条さんからは「七海と喧嘩した?」と聞かれてしまった。
だがあの❝大人オブ大人❞な七海さんが私と喧嘩なんてするはずないことは五条さんも分かっているので、しつこく避けてる理由を尋ねてきた。
「ほんとに何でもないですっ」
ぶすっと唇を尖らせている五条さんに私も真似して唇を尖らせた。
「五条さん、しつこいです!」
「がーん」
このままだと五条さんの圧に押し切られて喋ってしまいそうなので、倉庫の電球を替えるために事務室を離れた。
「はぁー、どうしよう」
切り替えなきゃと何度も頭の中で唱えるのだが、そう唱えるたびに七海さんとのキスが蘇る。
「ううっ…」
そっと唇に手を当てた。
とうに消えた温もりが、まるで今もここにあるかのように感じてしまう。
頬に集まる熱を、私はパタパタと手で仰いで逃がそうとしたが、まるで意味はなかった。
「名前さん」
誰も居ないと思っていた倉庫に低音ボイスが響いた。
振り返ると、昨日から私の心に居座り続けている七海さんが立っていた。
私は自室でウロウロ忙しなく歩いていた。
「(七海さんとキスしちゃった…)」
よくわからない部屋に閉じ込められて、キスしたら出られたというわけがわからない現象。
狐に抓まれた気分で部屋を出ると、そこは高専内だった。
見知った場所に安堵して、お互い「では…」とまるで何事もなかったかのように解散した。
今でもあれは夢なのではないか、と思っている。
それはそれで七海さんとキスする夢を見るなんて、私の頭どうなってるんだ。
どんな顔して会えばいいのかわからない。
しかし、ずっと自室で引きこもっているわけにも行かず、私はドアを開け廊下の左右を確認した。
「何してんだよ、挙動不審」
呆れた表情の真希ちゃんと目が合った。
「や…えっと…真希ちゃんおはよう」
「はよ」
女子寮なんだから、ここで鉢合わせる可能性はほぼ無いと分かっているのだが。
私のおかしな挙動を真希ちゃんに目撃されてしまった。
「朝飯食ったのか?」
「まだ…」
「早く行こーぜ」
急かされて、私は中途半端な心のまま食堂に向かった。
七海さんは寮に住んでいないので、食堂で鉢合わせることは基本的に無い。
しかし、ふと気を抜いたら昨日の出来事が脳裏に浮かび、喉をご飯が通りづらくなってしまう。
「……体調悪ぃのか?」
真希ちゃんが心配そうな表情を浮かべている。
「う、ううん」
「顔赤いぞ。熱あるんじゃ」
「本当に違うの!これは…そうじゃなくて…」
「そうじゃなくて?………ハハーン」
心配そうな顔から今度はニヤリと口角を上げて意地悪い表情に変化した。
「もしかして、恋煩いか?」
お箸でこちらを指してくる真希ちゃんにふるふると首を横に振った。
「ち、違うよ。恋煩いなんて…そんなものじゃなくて」
「相手、誰だよ?」
「面白そうな話ししてるね」
頬が熱い。
否定している私の顔が赤いことは鏡を見なくてもわかった。
真希ちゃんに揶揄われていると、横から影が落ちた。
「五条さん!」
「何で悟がこんな朝早くから居るんだよ」
「名前ちゃん、昨日どこ行ってたの?」
「え…?」
私は七海さんと居なくなっていた時間のことを聞かれていると瞬時に理解し、慌てて取り繕った。
「えっと…昨日は高専内にずっといましたよ?」
「午後3時ぐらいにさ、名前ちゃん探してたんだけど見つからなかったんだよねー」
「その時間は倉庫に居ました!」
「ふーん、そっか」
「あ、もうそろそろ始業の時間なので失礼します」
私はお盆を返却し、食堂を後にした。
背後で「嘘、下手すぎだろ…」という真希ちゃんの声は聞こえなかった。
「あっ…」
事務室に向かう途中、七海さんとばったり出くわしてしまった。
「お、おはようございます…」
「おはようございます」
視線が定まらず挙句には尻すぼみになる挨拶。
いかにも「昨日のことで動揺してます!」と主張してしまっている。
「「……」」
何か言った方がいいのか、それともこのまま擦れ違った方がいいのか、お互い悩んでしまった結果、微妙な沈黙が二人の間に流れた。
「昨日のことは…お互い忘れましょうか」
「そ、そうですね!!忘れましょう!」
「何とも不思議な現象でしたが」
「まあ、呪霊が世の中に居るぐらいですから。私からすれば呪霊も不思議な存在ですし」
では私はこれで…と頭を下げて、事務室へ足を速めた。
*********************
忘れることにしよう、と約束したにも関わらず、
私はやはり七海さんの顔を見ると挙動不審になってしまい、まともに顔を見ることができないとまま一日を過ごした。
七海さんを避けすぎたせいで五条さんからは「七海と喧嘩した?」と聞かれてしまった。
だがあの❝大人オブ大人❞な七海さんが私と喧嘩なんてするはずないことは五条さんも分かっているので、しつこく避けてる理由を尋ねてきた。
「ほんとに何でもないですっ」
ぶすっと唇を尖らせている五条さんに私も真似して唇を尖らせた。
「五条さん、しつこいです!」
「がーん」
このままだと五条さんの圧に押し切られて喋ってしまいそうなので、倉庫の電球を替えるために事務室を離れた。
「はぁー、どうしよう」
切り替えなきゃと何度も頭の中で唱えるのだが、そう唱えるたびに七海さんとのキスが蘇る。
「ううっ…」
そっと唇に手を当てた。
とうに消えた温もりが、まるで今もここにあるかのように感じてしまう。
頬に集まる熱を、私はパタパタと手で仰いで逃がそうとしたが、まるで意味はなかった。
「名前さん」
誰も居ないと思っていた倉庫に低音ボイスが響いた。
振り返ると、昨日から私の心に居座り続けている七海さんが立っていた。
