【三章】想い、想われ
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私と五条さんは伊地知さんの業務負担を減らすべく朝から動き回っていた。
「は?なぜ貴方が…?」
高専所有の車の前で待っているのは七海さん。
車のキーを指でくるくる回しながら、五条さんは解錠した。
「今日の僕は補助監督だから!七海を現地まで送りまーす」
「暇ですか…」
「いやいや、このためにほぼ徹夜して業務前倒しで終わらせたから」
「ええっ。大丈夫なんですか!?」
徹夜明けの人が運転して大丈夫なの!?
呪霊にびびって事故を起こすのが怖くて、運転できない自分が憎い。
「っていうか私要りますか…?」
間違いなく私の存在は不要…。
でも五条さんは「もちろん」と言って、後部座席に乗ろうとする私を助手席に押し込めた。
「さ、出発しんこーう!」
げんなりしている七海さんを後部座席に乗せて、車は走り出した。
そして七海さんの送迎を終えたあと、五条さんが帳を下ろした。
「帳下ろすなんて久しぶりだから手元狂いそう」
「ええっ」
いつもは伊地知がやってくれるからさぁ、と呑気に言っているがほんと五条さんって何でもできちゃうんだなぁ…。
伊地知さんから大した引き継ぎもしてないのに。
「何?」
「いえ…。五条さんって何でもできるんだなぁって…」
「そりゃあ、グレートティーチャー五条ですから」
「五条さんは一緒に祓いに行かないんですか?」
「今日の僕は補助監督だし。それに名前ちゃん一人置いていけないでしょ」
まあ、七海さんが手助け必要とは思えないし、五条さん来たら嫌がりそう…。
「あ、でも七海への嫌がらせでついていくのもアリだなぁ〜」
「ここで一緒にお留守番しましょう!」
私は五条さんの腕を引っ張ってその場に留まらせた。
何件か送迎をこなして、高専に戻ってきたときには日が沈みかけていた。
五条さんが送迎車で待ってるものだから、呪術師の方はみんな目を丸くしていた。
「もうこんな時間ですか…。全く事務作業してない…」
外勤と内勤を同時にこなしてる伊地知さん、本当に尊敬する。
「名前ちゃんは、一旦上がって」
「え?」
「えー、もう忘れちゃったの?おにぎり!おにぎり!」
「あっ。でも、買い物行けてないからまたふりかけおにぎりですよ?」
「十分!」
たかがおにぎりにウキウキしている五条さんが可愛く見えた。
そして同時にプレッシャーも感じる。
「(確か五条さんってお坊ちゃんなんだよね…?)」
舌が肥えてる人を満足させるおにぎりなんて、私握れるのだろうか…。
とりあえずおにぎりを作るために、一旦寮へ戻ることにした。
そして、何のおしゃれ感もないタッパーにおにぎりを詰めて戻ってきた。
「あ、おかえりー!」
タッパがある五条さんが事務室の椅子に座ると窮屈に見える。
「そんな期待の眼差しで見ないでください…」
たかがおにぎりにそんなに期待されると困る。
五条さんは嬉しそうにラップに包まれたそれを一つ取って口に運んだ。
「頑張ったあとに食べるおにぎりは格別だね!ほら、名前ちゃんも」
「私、今日何もしてないです」
思い返せば、ただ五条さんの横について回っていただけだ。唯一したことといえば、助手席の五条さんが飲むドリンクの蓋を開けたことぐらい。
「でも今からはパソコン作業だから、名前ちゃんにも仕事やってもらうよ?」
「もちろんです!」
伊地知さんの仕事を極力減らしたい。
「明日、伊地知さんが喜ぶ顔が見たいです」
「……やっぱやめようかな」
「なんでっ!?」
「冗談だよ。名前ちゃんはこれをここに入力していって」
渡された資料を確認し、五条さんに言われた通りに打ち込んでいく。
「で、それできたら次は明日の送迎ルートを確認しないとだから、グー◯ルマップで最短距離調べて印刷しといて」
「はい!」
五条さんは片手におにぎりを持ったまま、もう片方でマウスを動かしている。
「ほんと、美味いね。このおにぎり」
「伊地知さんといい……過剰な褒めはよくないです!」
「初めて食べたよ」
「おにぎりを!?」
「こういう、気持ちが籠もったやつね」
「確かに……五条さんのこと考えながら作りました」
「それ、どういう意味…?」
え、どういうって…。
パソコンに向いていた身体をこちらへ向けた五条さんは私の手を握り、椅子ごと私を五条さんの方へ向けた。
「あ…の…」
カチ…コチ…と時計の針の音がやけに大きく聞こえる。
ただ、お疲れ様ですの気持ちを籠めて作ったのだが、もしかして❝五条さんのこと考えながら❞というワードで誤解を生んでしまった!?
気付いたが、訂正しづらい雰囲気…。
オロオロと視線を彷徨わせていると、五条さんが前屈みになって、私の方へ近づいてきた。
「あっ、えっと…五条さんのこと考えてっていうのは…」
後ろへのけ反り、距離を取ろうとするが、椅子の背もたれが軋んだだけだった。
「えっ、あの…」
そのまま無言でゆっくり前に倒れてきた五条さんは、私の膝上に顔をくっつけてしまった。
「えっ、ちょっ…」
焦って、肩を掴んで押し返そうとしたとき、膝に規則的な吐息が掛かった。
「ん?」
良く見ると、背中も規則的に上下している。
「五条さん…?」
声をかけてみるか反応がない。
「寝てる…」
そっか。
徹夜したって言ってたもんね。
伊地知さんの業務負担を減らしたいのは私の勝手なのに。
「ありがとうございます」
いい夢見れますように。
私はこのあと必死に五条さんをソファに移動させて、残りの業務に取りかかった。
「は?なぜ貴方が…?」
高専所有の車の前で待っているのは七海さん。
車のキーを指でくるくる回しながら、五条さんは解錠した。
「今日の僕は補助監督だから!七海を現地まで送りまーす」
「暇ですか…」
「いやいや、このためにほぼ徹夜して業務前倒しで終わらせたから」
「ええっ。大丈夫なんですか!?」
徹夜明けの人が運転して大丈夫なの!?
呪霊にびびって事故を起こすのが怖くて、運転できない自分が憎い。
「っていうか私要りますか…?」
間違いなく私の存在は不要…。
でも五条さんは「もちろん」と言って、後部座席に乗ろうとする私を助手席に押し込めた。
「さ、出発しんこーう!」
げんなりしている七海さんを後部座席に乗せて、車は走り出した。
そして七海さんの送迎を終えたあと、五条さんが帳を下ろした。
「帳下ろすなんて久しぶりだから手元狂いそう」
「ええっ」
いつもは伊地知がやってくれるからさぁ、と呑気に言っているがほんと五条さんって何でもできちゃうんだなぁ…。
伊地知さんから大した引き継ぎもしてないのに。
「何?」
「いえ…。五条さんって何でもできるんだなぁって…」
「そりゃあ、グレートティーチャー五条ですから」
「五条さんは一緒に祓いに行かないんですか?」
「今日の僕は補助監督だし。それに名前ちゃん一人置いていけないでしょ」
まあ、七海さんが手助け必要とは思えないし、五条さん来たら嫌がりそう…。
「あ、でも七海への嫌がらせでついていくのもアリだなぁ〜」
「ここで一緒にお留守番しましょう!」
私は五条さんの腕を引っ張ってその場に留まらせた。
何件か送迎をこなして、高専に戻ってきたときには日が沈みかけていた。
五条さんが送迎車で待ってるものだから、呪術師の方はみんな目を丸くしていた。
「もうこんな時間ですか…。全く事務作業してない…」
外勤と内勤を同時にこなしてる伊地知さん、本当に尊敬する。
「名前ちゃんは、一旦上がって」
「え?」
「えー、もう忘れちゃったの?おにぎり!おにぎり!」
「あっ。でも、買い物行けてないからまたふりかけおにぎりですよ?」
「十分!」
たかがおにぎりにウキウキしている五条さんが可愛く見えた。
そして同時にプレッシャーも感じる。
「(確か五条さんってお坊ちゃんなんだよね…?)」
舌が肥えてる人を満足させるおにぎりなんて、私握れるのだろうか…。
とりあえずおにぎりを作るために、一旦寮へ戻ることにした。
そして、何のおしゃれ感もないタッパーにおにぎりを詰めて戻ってきた。
「あ、おかえりー!」
タッパがある五条さんが事務室の椅子に座ると窮屈に見える。
「そんな期待の眼差しで見ないでください…」
たかがおにぎりにそんなに期待されると困る。
五条さんは嬉しそうにラップに包まれたそれを一つ取って口に運んだ。
「頑張ったあとに食べるおにぎりは格別だね!ほら、名前ちゃんも」
「私、今日何もしてないです」
思い返せば、ただ五条さんの横について回っていただけだ。唯一したことといえば、助手席の五条さんが飲むドリンクの蓋を開けたことぐらい。
「でも今からはパソコン作業だから、名前ちゃんにも仕事やってもらうよ?」
「もちろんです!」
伊地知さんの仕事を極力減らしたい。
「明日、伊地知さんが喜ぶ顔が見たいです」
「……やっぱやめようかな」
「なんでっ!?」
「冗談だよ。名前ちゃんはこれをここに入力していって」
渡された資料を確認し、五条さんに言われた通りに打ち込んでいく。
「で、それできたら次は明日の送迎ルートを確認しないとだから、グー◯ルマップで最短距離調べて印刷しといて」
「はい!」
五条さんは片手におにぎりを持ったまま、もう片方でマウスを動かしている。
「ほんと、美味いね。このおにぎり」
「伊地知さんといい……過剰な褒めはよくないです!」
「初めて食べたよ」
「おにぎりを!?」
「こういう、気持ちが籠もったやつね」
「確かに……五条さんのこと考えながら作りました」
「それ、どういう意味…?」
え、どういうって…。
パソコンに向いていた身体をこちらへ向けた五条さんは私の手を握り、椅子ごと私を五条さんの方へ向けた。
「あ…の…」
カチ…コチ…と時計の針の音がやけに大きく聞こえる。
ただ、お疲れ様ですの気持ちを籠めて作ったのだが、もしかして❝五条さんのこと考えながら❞というワードで誤解を生んでしまった!?
気付いたが、訂正しづらい雰囲気…。
オロオロと視線を彷徨わせていると、五条さんが前屈みになって、私の方へ近づいてきた。
「あっ、えっと…五条さんのこと考えてっていうのは…」
後ろへのけ反り、距離を取ろうとするが、椅子の背もたれが軋んだだけだった。
「えっ、あの…」
そのまま無言でゆっくり前に倒れてきた五条さんは、私の膝上に顔をくっつけてしまった。
「えっ、ちょっ…」
焦って、肩を掴んで押し返そうとしたとき、膝に規則的な吐息が掛かった。
「ん?」
良く見ると、背中も規則的に上下している。
「五条さん…?」
声をかけてみるか反応がない。
「寝てる…」
そっか。
徹夜したって言ってたもんね。
伊地知さんの業務負担を減らしたいのは私の勝手なのに。
「ありがとうございます」
いい夢見れますように。
私はこのあと必死に五条さんをソファに移動させて、残りの業務に取りかかった。
