【一章】最強の男のお気に入り
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「これは……蛾だね」
「蛾……呪霊じゃなくて?」
「うん。ただの❝おっきい❞蛾」
私は顔から火が出るほど恥ずかしかった。
呪霊だと思って連絡したら、ただの蛾だった。
「ご、ごめんなさい!!!出張代お支払いします!!」
「いい、いい」
出会いは割愛するが、この人と出会って私の人生は一変した。
呪霊(当時は名前さえ分からなかった)が見えている私は道を歩くだけでも恐怖に支配されていた。
ゴキブリ並に気持ち悪い。
それなのに、場所によってはうようよいて、でもどうすればいいのかわからず途方に暮れていたのだが、祓える人の存在を知ってからプライドや遠慮をかなぐり捨てて五条さんを頼らせてもらっている。
「どうしていつも貰ってくれないんですか!?」
「いやー、だってこれが僕の仕事だし?」
「仕事ならなおさらです!怪しい霊感商法じゃなくてちゃんと祓ってくれてるの、私この目で見てますから!」
見えているからこそ、彼がちゃんと祓ってくれているのも分かる。
「ゴキブリ(呪霊)退治してくれて、本当に感謝しているんです!せめてもの気持ちを!!」
あまり外で呪霊、呪霊と連呼するのもいかがかと思うので、私達の間で呪霊討伐のことをゴキブリ退治と呼んでいる。
「じゃあさ、一個お願い聞いてくれる?」
「一個でも、二個でも、三個でも!」
私にできることならなんでも!と勢いよく頷けば、五条さんはニコリと口角を上げた。
「高専の事務員になって」
**********************
「え、えっと…高専って五条さんがお勤めの学校…?ですよね?」
ずっと考えていた提案を切り出した。
彼女はわかりやすく狼狽えている。
「五条さんと同じ職場で働けるのはとっても魅力的なのですが…」
嬉しいこと言ってくれるね。
そして何が名前ちゃんを尻込みさせているかは容易に想像できた。
「やっぱり…その。呪霊がうようよいるところに行くのは怖くて…」
「逆!逆!」
お礼がしたい気持ちと、どうしても呪霊を避けたい気持ちがせめぎ合っているのが見て取れた。
きょとりと僕を見上げる眼に向かって安心できるように声を掛ける。
「高専は高度な結界が張ってあるから、呪霊は簡単に入ってこれない。もし入ってきたらアラートが鳴るようになってるから、むしろ名前ちゃんにとっていいところだと思うけど」
僕の言葉は呪霊が怖い彼女にとって、とても魅惑的だったようだ。
「えっ。結界…?呪霊が入ってこれない…?」
顔に❝そんな魅力的な職場があっていいのか❞と書いている。
「え、でも…私にできるんでしょうか」
祓えないですよ?と心配そうにする彼女にサムズアップを贈った。
「だいじょーぶ!事務室で仕事しながら僕が帰ってきたら『おかえりなさい』って言ってくれたらそれでいいから!」
「え!?そんなことでいいんですか?」
お茶汲みとかそういう感じですか?と首を傾げるので、嫌かと聞けば「お茶淹れてお給料もらえるなんてラッキーじゃないですか!」と時代の流れと逆行する考え方をする彼女に思わず笑いそうになった。
「もちろん、一般的な事務仕事もあるけど…」
「電話は取れます!」
はい!と手を挙げる名前ちゃんに僕はウンウンと頷いた。
「そういう素直なところがいいんだよねぇ」
「嬉しいです!」
「ちなみに寮に住み込み大丈夫?」
「むしろありがたいです!」
呪霊がゴキブリに見える名前ちゃんにとって、呪霊が入ってこれない高専は天国のような場所なのだろう。
「面接ありますか?受かるコツは?」と前のめりに聞いてくるので、僕は随分下の方にある頭を撫でた。
「学長に話は通しておくから。また連絡するね」
そういえば彼女は嬉しそうに笑った。
そう……。
殺伐としたこの世界で、名前ちゃんは僕にとっての癒しなのだ。
「蛾……呪霊じゃなくて?」
「うん。ただの❝おっきい❞蛾」
私は顔から火が出るほど恥ずかしかった。
呪霊だと思って連絡したら、ただの蛾だった。
「ご、ごめんなさい!!!出張代お支払いします!!」
「いい、いい」
出会いは割愛するが、この人と出会って私の人生は一変した。
呪霊(当時は名前さえ分からなかった)が見えている私は道を歩くだけでも恐怖に支配されていた。
ゴキブリ並に気持ち悪い。
それなのに、場所によってはうようよいて、でもどうすればいいのかわからず途方に暮れていたのだが、祓える人の存在を知ってからプライドや遠慮をかなぐり捨てて五条さんを頼らせてもらっている。
「どうしていつも貰ってくれないんですか!?」
「いやー、だってこれが僕の仕事だし?」
「仕事ならなおさらです!怪しい霊感商法じゃなくてちゃんと祓ってくれてるの、私この目で見てますから!」
見えているからこそ、彼がちゃんと祓ってくれているのも分かる。
「ゴキブリ(呪霊)退治してくれて、本当に感謝しているんです!せめてもの気持ちを!!」
あまり外で呪霊、呪霊と連呼するのもいかがかと思うので、私達の間で呪霊討伐のことをゴキブリ退治と呼んでいる。
「じゃあさ、一個お願い聞いてくれる?」
「一個でも、二個でも、三個でも!」
私にできることならなんでも!と勢いよく頷けば、五条さんはニコリと口角を上げた。
「高専の事務員になって」
**********************
「え、えっと…高専って五条さんがお勤めの学校…?ですよね?」
ずっと考えていた提案を切り出した。
彼女はわかりやすく狼狽えている。
「五条さんと同じ職場で働けるのはとっても魅力的なのですが…」
嬉しいこと言ってくれるね。
そして何が名前ちゃんを尻込みさせているかは容易に想像できた。
「やっぱり…その。呪霊がうようよいるところに行くのは怖くて…」
「逆!逆!」
お礼がしたい気持ちと、どうしても呪霊を避けたい気持ちがせめぎ合っているのが見て取れた。
きょとりと僕を見上げる眼に向かって安心できるように声を掛ける。
「高専は高度な結界が張ってあるから、呪霊は簡単に入ってこれない。もし入ってきたらアラートが鳴るようになってるから、むしろ名前ちゃんにとっていいところだと思うけど」
僕の言葉は呪霊が怖い彼女にとって、とても魅惑的だったようだ。
「えっ。結界…?呪霊が入ってこれない…?」
顔に❝そんな魅力的な職場があっていいのか❞と書いている。
「え、でも…私にできるんでしょうか」
祓えないですよ?と心配そうにする彼女にサムズアップを贈った。
「だいじょーぶ!事務室で仕事しながら僕が帰ってきたら『おかえりなさい』って言ってくれたらそれでいいから!」
「え!?そんなことでいいんですか?」
お茶汲みとかそういう感じですか?と首を傾げるので、嫌かと聞けば「お茶淹れてお給料もらえるなんてラッキーじゃないですか!」と時代の流れと逆行する考え方をする彼女に思わず笑いそうになった。
「もちろん、一般的な事務仕事もあるけど…」
「電話は取れます!」
はい!と手を挙げる名前ちゃんに僕はウンウンと頷いた。
「そういう素直なところがいいんだよねぇ」
「嬉しいです!」
「ちなみに寮に住み込み大丈夫?」
「むしろありがたいです!」
呪霊がゴキブリに見える名前ちゃんにとって、呪霊が入ってこれない高専は天国のような場所なのだろう。
「面接ありますか?受かるコツは?」と前のめりに聞いてくるので、僕は随分下の方にある頭を撫でた。
「学長に話は通しておくから。また連絡するね」
そういえば彼女は嬉しそうに笑った。
そう……。
殺伐としたこの世界で、名前ちゃんは僕にとっての癒しなのだ。
