【二章】あの子の秘密
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(七海視点)
今回の呪霊は事前調査通り、二級呪霊で間違いなかった。
名前さんに無事に見学させてあげられた。
内心安堵のため息を吐き、帰ろうと踵を返したところ、彼女の背中に低級呪霊が憑いているのが見えた。
大したことなかったのだが、名前さんが呪霊嫌いという情報が脳内を駆け巡り、思わず声を上げてしまった。
驚いた名前さんは引き寄せた私の胸にそのまま身体を寄せ……いや、めり込ませた。
「やだやだやだやだ、何か憑いてる!」
「もう祓いましたから大丈夫です」
「うええっ…」
声を掛けたのがマズかった。
しれっと本人が気づかぬ内に祓ってやればよかった。
思わず「うっ…」と声が漏れそうなほど、ぎゅうぎゅうと私の背中に手を回し抱きついてくる。
「本当に…もう憑いてないですか?」
ぐずぐずと鼻を啜りながら、見上げてくる名前さんは不安そうな表情をしていた。
「ええ、間違いなく祓いました……っ!?」
「えっ!?なに、なに、なに!?」
私が驚いたことに名前さんが気づいてしまい、再び顔を胸に埋められた。
「(なんでまた…!?)」
名前さんの足元に、先程払った低級呪霊が再び姿を現した。
蹴り飛ばして祓うと、その行動に驚いた名前さんが「やっぱりまだ何か居るんですね!?」と己の服をギュッと掴んだ。
どこから湧いてるんだ、この呪霊……と辺りを見回すと名前さんの背後からポコンと新しい低級呪霊が姿を現した。
「は……?」
「えっ…!?なに、なんですか?何が起こってますか?!特級!?特級呪霊!?」
完全にパニック状態の名前さんを何とかしなければ…。
「ひいっ…!」
足元に移動した低級呪霊に気づいた名前さんが背伸びをしてその存在から少しでも逃れようとしている。
呪霊を祓っても再び名前さんの周囲から湧き出てくる。
いたちごっこな状態に、どうしたものかと頭を悩ませていると私を締め付けていた名前さんの拘束が外れた。
「あーあ。やっぱこうなっちゃったか」
べしょべしょと泣いている名前さんを横抱きにしているのは五条悟、その人だった。
「よしよし、怖かったね」
「ご、五条さぁあん」
「とりあえず落ち着こう。ほら、僕が来たからもう大丈夫!深呼吸して〜、スーハー」
名前さんは五条さんに言われたとおり、ゆっくり息を吸って吐いた。
まるで私では役不足のような言い方にカチンと来たが、実際五条さんが現れて名前さんは幾分か落ち着きを取り戻した。
「そうそう、上手い上手い。……七海」
五条さんの視線は先程名前さんが生み出した低級呪霊に向けられた。
私はサッとそれらを一掃した。
「もう居ないよ。大丈夫。周り見てごらん」
落ち着き払った五条さんの声が名前さんの心拍数を下げた。
ぎゅうっと握りしめていた手が徐々に弛緩し、恐る恐る目を開け視線だけで周囲の状況を確認した彼女は、完全に力を抜いて五条さんに抱えられている身体を起こした。
「すみません……。ご迷惑お掛けしました」
ジェットコースターのように情緒が乱高下している名前さんを見るのは初めてだ。
「……五条さんが名前さんを高専に入れたのはこれがあったからですか?」
「これ?」
そうか…。
自覚がないのか。
首を傾げる名前さんに、五条さんは「うーん」と逡巡した後、「聞きたい?」と名前さんに問いかけた。
当然彼女は首を縦に振る。
「名前ちゃんって呪霊製造マシーンなのよ」
「えっ……」
「ほら。名前ちゃんって元々小心者……いや、ちょっと繊細なところあるし」
「もう本音聞こえちゃいました」
「でも、名前ちゃんが生み出す呪霊の成分って恐怖のみなの。憎悪とか怨恨とかそういう感情が混じってないから低級呪霊しか出てこないんだよね」
「なるほど…」
「でもいくらクソ雑魚呪霊でも、育つときは育つし、量産されたらあっという間に名前ちゃん食べられちゃうよ」
つまり、五条さんは名前さんの身を案じて高専に囲ったということか。
だがしかし、腑に落ちない。
「貴方、そんなに他人を気に掛ける人でしたか?」
「ん?」
呪霊を引き寄せやすい人、生み出しやすい人、そういう体質の非呪術師が居ることは当たり前で、冷たいがそういった人々を一々保護するわけにはいかない。
「だってほら、目の前で困ってたら助けてあげたくなるでしょ?」
「五条さんはお優しいんですね…」
申し訳なさそうに眉を下げる名前さんの頭に手を置いた五条さんの目はひどく優しげで。
ああ、❝名前さん❞だから助けたのだと、いつもの気まぐれで起こした行動では無いのだと、このとき気づいたのだった。
今回の呪霊は事前調査通り、二級呪霊で間違いなかった。
名前さんに無事に見学させてあげられた。
内心安堵のため息を吐き、帰ろうと踵を返したところ、彼女の背中に低級呪霊が憑いているのが見えた。
大したことなかったのだが、名前さんが呪霊嫌いという情報が脳内を駆け巡り、思わず声を上げてしまった。
驚いた名前さんは引き寄せた私の胸にそのまま身体を寄せ……いや、めり込ませた。
「やだやだやだやだ、何か憑いてる!」
「もう祓いましたから大丈夫です」
「うええっ…」
声を掛けたのがマズかった。
しれっと本人が気づかぬ内に祓ってやればよかった。
思わず「うっ…」と声が漏れそうなほど、ぎゅうぎゅうと私の背中に手を回し抱きついてくる。
「本当に…もう憑いてないですか?」
ぐずぐずと鼻を啜りながら、見上げてくる名前さんは不安そうな表情をしていた。
「ええ、間違いなく祓いました……っ!?」
「えっ!?なに、なに、なに!?」
私が驚いたことに名前さんが気づいてしまい、再び顔を胸に埋められた。
「(なんでまた…!?)」
名前さんの足元に、先程払った低級呪霊が再び姿を現した。
蹴り飛ばして祓うと、その行動に驚いた名前さんが「やっぱりまだ何か居るんですね!?」と己の服をギュッと掴んだ。
どこから湧いてるんだ、この呪霊……と辺りを見回すと名前さんの背後からポコンと新しい低級呪霊が姿を現した。
「は……?」
「えっ…!?なに、なんですか?何が起こってますか?!特級!?特級呪霊!?」
完全にパニック状態の名前さんを何とかしなければ…。
「ひいっ…!」
足元に移動した低級呪霊に気づいた名前さんが背伸びをしてその存在から少しでも逃れようとしている。
呪霊を祓っても再び名前さんの周囲から湧き出てくる。
いたちごっこな状態に、どうしたものかと頭を悩ませていると私を締め付けていた名前さんの拘束が外れた。
「あーあ。やっぱこうなっちゃったか」
べしょべしょと泣いている名前さんを横抱きにしているのは五条悟、その人だった。
「よしよし、怖かったね」
「ご、五条さぁあん」
「とりあえず落ち着こう。ほら、僕が来たからもう大丈夫!深呼吸して〜、スーハー」
名前さんは五条さんに言われたとおり、ゆっくり息を吸って吐いた。
まるで私では役不足のような言い方にカチンと来たが、実際五条さんが現れて名前さんは幾分か落ち着きを取り戻した。
「そうそう、上手い上手い。……七海」
五条さんの視線は先程名前さんが生み出した低級呪霊に向けられた。
私はサッとそれらを一掃した。
「もう居ないよ。大丈夫。周り見てごらん」
落ち着き払った五条さんの声が名前さんの心拍数を下げた。
ぎゅうっと握りしめていた手が徐々に弛緩し、恐る恐る目を開け視線だけで周囲の状況を確認した彼女は、完全に力を抜いて五条さんに抱えられている身体を起こした。
「すみません……。ご迷惑お掛けしました」
ジェットコースターのように情緒が乱高下している名前さんを見るのは初めてだ。
「……五条さんが名前さんを高専に入れたのはこれがあったからですか?」
「これ?」
そうか…。
自覚がないのか。
首を傾げる名前さんに、五条さんは「うーん」と逡巡した後、「聞きたい?」と名前さんに問いかけた。
当然彼女は首を縦に振る。
「名前ちゃんって呪霊製造マシーンなのよ」
「えっ……」
「ほら。名前ちゃんって元々小心者……いや、ちょっと繊細なところあるし」
「もう本音聞こえちゃいました」
「でも、名前ちゃんが生み出す呪霊の成分って恐怖のみなの。憎悪とか怨恨とかそういう感情が混じってないから低級呪霊しか出てこないんだよね」
「なるほど…」
「でもいくらクソ雑魚呪霊でも、育つときは育つし、量産されたらあっという間に名前ちゃん食べられちゃうよ」
つまり、五条さんは名前さんの身を案じて高専に囲ったということか。
だがしかし、腑に落ちない。
「貴方、そんなに他人を気に掛ける人でしたか?」
「ん?」
呪霊を引き寄せやすい人、生み出しやすい人、そういう体質の非呪術師が居ることは当たり前で、冷たいがそういった人々を一々保護するわけにはいかない。
「だってほら、目の前で困ってたら助けてあげたくなるでしょ?」
「五条さんはお優しいんですね…」
申し訳なさそうに眉を下げる名前さんの頭に手を置いた五条さんの目はひどく優しげで。
ああ、❝名前さん❞だから助けたのだと、いつもの気まぐれで起こした行動では無いのだと、このとき気づいたのだった。
