【二章】あの子の秘密
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「意外と行動力あるんですね」
「いえ…。ここに来る前の私ならこんな心境にならなかったと思います」
毎日、呪霊に遭遇せず、ただ平穏に暮らせればいい。
キャリアップなんて考えたことなかったし、給料は少なくても自分一人の面倒見られるだけ貰えたらそれでよかった。
同世代の友人はハイブランドや美容に目覚めている友人も多いが、興味はあれどそのために多額の投資をする気持ちにもなれない。
物欲がそこまでないというのもあるし、呪霊と遭遇したくないという欲が天を突き抜けているので、他に目が向かなかったというのもある。
そんな私が、今から呪霊を見に行こうとしているのだから人生何があるか分かったもんじゃない。
けれど、理解が無いからこそ恐怖心が生まれるのかもと思った。
理解したり、慣れたりすれば少しは変わるかもしれない。
あと、今までは遭遇しても私はどうすることもできなかった。
でも今は周りに祓える人達がいる。
それが私の行動を大胆にさせてる理由でもあった。
他力本願といえば胸が痛くなるが。
「勉強熱心なんですね」
「ここで働く以上はやっぱり必要だと思うので。皆さんのためにできることを増やしたいから」
五条さんには止められてるけど、最近はコソコソ独学で呪術の勉強も始めた。
できれば「呪術について~入門編~」みたいな本が欲しいのだが、普通の書店では売ってないので、掃除のフリして書庫でそれっぽい本を手当たり次第読んでいる。
ただ、前提条件の知識が必要なものが多く、ちんぷんかんぷんなのだが。
「そう……ですか」
「五条さんには内緒にしていてください。怒られちゃうから」
五条さんはどうして私が呪術の勉強するの嫌がるんだろう。
「着きました」
補助監督さんが車を止めた。
今回は森の中らしい。
車から降りると、森の割に空気がどんよりしている気がする。
「私から離れないでください」
事前に聞いている話では、二級相当の呪霊で、本来七海さんが出るほどのものではないのだが、人手不足から駆り出された案件らしい。
だからこそ見学が許されたのだろう。
七海さんの後ろにぴったり張り付いて移動した。
「呪霊が…というより熊が出そうですね」
そして七海さんと逸れたら遭難コースに入ってしまう。
「わっ。ごめんなさい!」
「…っ!」
絶対見失わないようにと近づきすぎたせいで七海さんの踵を踏んでしまった。
お互いよろけて、体幹が良い七海さんは踏ん張れたが、私は膝をついてしまった。
「大丈夫ですか?」
「本当にごめんなさい…」
無理言ってるのだから迷惑掛けてはいけないのに、何をしているんだ。
目の前に差し出された手を遠慮がちに掴んで立たせてもらった。
「居ました」
森の中に突然現れた池。
その上に人ではない何かが立っている。
何が、と聞かなくても分かる。
あれが二級呪霊…。
七海さんにとっては大したことのない呪霊でも、私は全身の血液が泡立つほどの恐怖を感じた。
夏油さんにはもっと等級の高い呪霊に会わせてもらっているのに。
それでもやはり、呪術師の支配下にある呪霊と野生の呪霊は私にとって全然違った。
何とも形容しがたい、もはや固体なのか液体なのかすら分からない、おどろおどろしい姿の呪霊が、七海さんを見るや敵と認識し、襲いかかってきた。
七海さんの広い背中は安心、信頼を私に与えてくれた。
けれど、呪霊を祓うために飛び出してしまった七海さん見て、思わず「行かないで」と声を上げてしまいそうになった。
すんでのところで邪魔しちゃいけない、と伸ばしかけた手をギュッと結んで自分の身体にひっつけた。
時間にして一分も無かったかもしれない。
けれど、私には物凄く長い時間のように感じた。
気を抜いたら倒れてしまいそう。
迷惑かけちゃダメ。
しっかり足を地面に縫い付け、七海さんのお仕事に目を向けた。
断末魔を上げた呪霊が消え去り、払い終えた七海さんがクルリとこちらを向いた。
「名前さんっ!」
七海さんの焦った声が私の耳に届く。
「え?」
私が首を後ろに向けたのと、強い力で七海さんに身体を引き寄せられたのは同時だった。
視界の端に「ケヒッ」と以前五条さんが❝クソ雑魚❞と称していた呪霊が入った。
「やっ…!」
私の背中にくっついていた呪霊は、一瞬の内に消え去った。
「いえ…。ここに来る前の私ならこんな心境にならなかったと思います」
毎日、呪霊に遭遇せず、ただ平穏に暮らせればいい。
キャリアップなんて考えたことなかったし、給料は少なくても自分一人の面倒見られるだけ貰えたらそれでよかった。
同世代の友人はハイブランドや美容に目覚めている友人も多いが、興味はあれどそのために多額の投資をする気持ちにもなれない。
物欲がそこまでないというのもあるし、呪霊と遭遇したくないという欲が天を突き抜けているので、他に目が向かなかったというのもある。
そんな私が、今から呪霊を見に行こうとしているのだから人生何があるか分かったもんじゃない。
けれど、理解が無いからこそ恐怖心が生まれるのかもと思った。
理解したり、慣れたりすれば少しは変わるかもしれない。
あと、今までは遭遇しても私はどうすることもできなかった。
でも今は周りに祓える人達がいる。
それが私の行動を大胆にさせてる理由でもあった。
他力本願といえば胸が痛くなるが。
「勉強熱心なんですね」
「ここで働く以上はやっぱり必要だと思うので。皆さんのためにできることを増やしたいから」
五条さんには止められてるけど、最近はコソコソ独学で呪術の勉強も始めた。
できれば「呪術について~入門編~」みたいな本が欲しいのだが、普通の書店では売ってないので、掃除のフリして書庫でそれっぽい本を手当たり次第読んでいる。
ただ、前提条件の知識が必要なものが多く、ちんぷんかんぷんなのだが。
「そう……ですか」
「五条さんには内緒にしていてください。怒られちゃうから」
五条さんはどうして私が呪術の勉強するの嫌がるんだろう。
「着きました」
補助監督さんが車を止めた。
今回は森の中らしい。
車から降りると、森の割に空気がどんよりしている気がする。
「私から離れないでください」
事前に聞いている話では、二級相当の呪霊で、本来七海さんが出るほどのものではないのだが、人手不足から駆り出された案件らしい。
だからこそ見学が許されたのだろう。
七海さんの後ろにぴったり張り付いて移動した。
「呪霊が…というより熊が出そうですね」
そして七海さんと逸れたら遭難コースに入ってしまう。
「わっ。ごめんなさい!」
「…っ!」
絶対見失わないようにと近づきすぎたせいで七海さんの踵を踏んでしまった。
お互いよろけて、体幹が良い七海さんは踏ん張れたが、私は膝をついてしまった。
「大丈夫ですか?」
「本当にごめんなさい…」
無理言ってるのだから迷惑掛けてはいけないのに、何をしているんだ。
目の前に差し出された手を遠慮がちに掴んで立たせてもらった。
「居ました」
森の中に突然現れた池。
その上に人ではない何かが立っている。
何が、と聞かなくても分かる。
あれが二級呪霊…。
七海さんにとっては大したことのない呪霊でも、私は全身の血液が泡立つほどの恐怖を感じた。
夏油さんにはもっと等級の高い呪霊に会わせてもらっているのに。
それでもやはり、呪術師の支配下にある呪霊と野生の呪霊は私にとって全然違った。
何とも形容しがたい、もはや固体なのか液体なのかすら分からない、おどろおどろしい姿の呪霊が、七海さんを見るや敵と認識し、襲いかかってきた。
七海さんの広い背中は安心、信頼を私に与えてくれた。
けれど、呪霊を祓うために飛び出してしまった七海さん見て、思わず「行かないで」と声を上げてしまいそうになった。
すんでのところで邪魔しちゃいけない、と伸ばしかけた手をギュッと結んで自分の身体にひっつけた。
時間にして一分も無かったかもしれない。
けれど、私には物凄く長い時間のように感じた。
気を抜いたら倒れてしまいそう。
迷惑かけちゃダメ。
しっかり足を地面に縫い付け、七海さんのお仕事に目を向けた。
断末魔を上げた呪霊が消え去り、払い終えた七海さんがクルリとこちらを向いた。
「名前さんっ!」
七海さんの焦った声が私の耳に届く。
「え?」
私が首を後ろに向けたのと、強い力で七海さんに身体を引き寄せられたのは同時だった。
視界の端に「ケヒッ」と以前五条さんが❝クソ雑魚❞と称していた呪霊が入った。
「やっ…!」
私の背中にくっついていた呪霊は、一瞬の内に消え去った。
