【二章】あの子の秘密
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「お疲れサマンサー!」
「お疲れ様です」
「おかえりなさい、五条さん」
「ただいまー」
出張から帰ってきた五条さんに砂糖たっぷりの珈琲を淹れるために席を立った。
給湯室でお湯が再沸騰するのを待っていると、後ろから紙袋が差し出された。
「これ、お土産」
「ありがとうございます!」
開けてみると紅茶のセットだった。
「美味しそうな紅茶ですね。もうパッケージから香り高いです。皆さんが休憩の時に淹れさせてもらいますね」
「違う違う。これは名前ちゃんに。みんなへのお土産はもう伊地知に渡したから」
「えっ。いいんですか?ありがとうございます」
なんか、悪いなぁ…と思いながらも、見られないように紙袋に戻し、戸棚の奥の方に閉まった。
「帰るときにこっそり持って帰ります」
「そうして」
ゴポゴポと給湯器のお湯が沸騰している音が聞こえ、まもなく再沸騰のマークが消灯した。
ドリップ珈琲の袋をセットしておいたカップを給湯器の口元に近づける。
ボタンを押すと、コーヒーの粉目掛けてお湯が注がれる。
途端に沸き立つコーヒーの芳醇な香りに嗅覚が反応した。
少し注いで蒸らしている間、事務室の扉が開けられる音がした。
「こんぶ」
入ってきたのは狗巻くんだった。
結構距離があったが、五条さん越しにパチっと目が合った。
今こそハンドサインを使う時だ!
私は手を重ねて犬の形を作った。
❝おかえりなさい❞
確か、狗巻くんは任務に行っていたはず。
だから補助監督さんに何かあってここに来たのだろう。
そうすると彼もハンドサインをこちらに向けてくれた。
❝ただいま❞
彼の傍に居た人達は不思議そうな顔をしている。
狗巻くんは何か言っているが、おそらくあそこにおにぎり語をマスターしている人は居ない。
「何それ?」
目の前の五条さんが私の手を指差した。
「あ、これは…」
再び目が合った狗巻くんはしーっと指を口元にあてていたので、私は口を噤んだ。
「な、何でもないです。ちょっと手遊びしたくなって…」
「へぇ…?」
適度に蒸らしたコーヒーカップを手に取り、再びお湯を注いだ。
「熱っ…」
跳ねたお湯が手の甲に当たってしまった。
五条さんはすぐにシンクの蛇口を捻って水を出してくれた。
手を取って私の手の甲に水を当ててくれる。
「棘と仲良くなったの?」
目隠しでよく見えないが、狗巻くんを見ているように感じた。
「この間少しお話して、顔を覚えてもらえるぐらいにはなれました」
「ふーん…」
「……もう火傷大丈夫そうです。ありがとうございます」
空いている手で蛇口を閉めて、水に打たれ続けていた手を引っ込めた。
「!?」
無言になった五条さんが真後ろに立ったことで、シンクとの間に挟み込まれた。
「えっと…五条さん?」
どういう状況、これ?
給湯室の外に困惑の視線を送ろうとしたのたが、気づけば給湯室の扉がほぼ閉まっていた。
僅かばかりに開いた隙間から補助監督さん達の声が聞こえてくる。
補助監督さん達の会話が遠いなりに聞こえてくるのは、対照的にこちらが静寂だからだ。
「生徒と仲良くなるな…とは言わないけど。誤解されるようなことはしない方が良いよ」
「多分…今の方がよっぽど誤解されそうです」
「誤解?」
「はい…だってこんな…」
「こんな……何?」
こんな……恋人みたいな雰囲気。
まるで社内恋愛を隠している恋人みたい。
しかし甘酸っぱい雰囲気ではなく、誰かに見られやしないか、誤解されないか、ヒヤヒヤしているだけだ。
「言わなきゃわからないよ」
シンクに置いた手の上に、五条さんの大きな手が重ねられた。
「あ……の」
ドキドキする胸を抑えながら、何を答えればいいのか混乱してしまい、結局言葉にならない文字だけが口から漏れた。
五条さんは飄々としていて、掴みどころがないところがあるので、本気なのかからかっているのかよくわからない。
「ッ……!?」
オロオロと対応に悩んでいると、腰を撫でられ、そのままお尻にさらりと触れた。
私は思わずその手を払い除けてしまった。
パシッ!
乾いた音が鳴った。
「あの……ごめんなさい!」
私は淹れかけのコーヒーもそのままに給湯室を飛び出した。
背後から五条さんの声が聞こえた気がしたが、私は構わずに事務室を出ていった。
「お疲れ様です」
「おかえりなさい、五条さん」
「ただいまー」
出張から帰ってきた五条さんに砂糖たっぷりの珈琲を淹れるために席を立った。
給湯室でお湯が再沸騰するのを待っていると、後ろから紙袋が差し出された。
「これ、お土産」
「ありがとうございます!」
開けてみると紅茶のセットだった。
「美味しそうな紅茶ですね。もうパッケージから香り高いです。皆さんが休憩の時に淹れさせてもらいますね」
「違う違う。これは名前ちゃんに。みんなへのお土産はもう伊地知に渡したから」
「えっ。いいんですか?ありがとうございます」
なんか、悪いなぁ…と思いながらも、見られないように紙袋に戻し、戸棚の奥の方に閉まった。
「帰るときにこっそり持って帰ります」
「そうして」
ゴポゴポと給湯器のお湯が沸騰している音が聞こえ、まもなく再沸騰のマークが消灯した。
ドリップ珈琲の袋をセットしておいたカップを給湯器の口元に近づける。
ボタンを押すと、コーヒーの粉目掛けてお湯が注がれる。
途端に沸き立つコーヒーの芳醇な香りに嗅覚が反応した。
少し注いで蒸らしている間、事務室の扉が開けられる音がした。
「こんぶ」
入ってきたのは狗巻くんだった。
結構距離があったが、五条さん越しにパチっと目が合った。
今こそハンドサインを使う時だ!
私は手を重ねて犬の形を作った。
❝おかえりなさい❞
確か、狗巻くんは任務に行っていたはず。
だから補助監督さんに何かあってここに来たのだろう。
そうすると彼もハンドサインをこちらに向けてくれた。
❝ただいま❞
彼の傍に居た人達は不思議そうな顔をしている。
狗巻くんは何か言っているが、おそらくあそこにおにぎり語をマスターしている人は居ない。
「何それ?」
目の前の五条さんが私の手を指差した。
「あ、これは…」
再び目が合った狗巻くんはしーっと指を口元にあてていたので、私は口を噤んだ。
「な、何でもないです。ちょっと手遊びしたくなって…」
「へぇ…?」
適度に蒸らしたコーヒーカップを手に取り、再びお湯を注いだ。
「熱っ…」
跳ねたお湯が手の甲に当たってしまった。
五条さんはすぐにシンクの蛇口を捻って水を出してくれた。
手を取って私の手の甲に水を当ててくれる。
「棘と仲良くなったの?」
目隠しでよく見えないが、狗巻くんを見ているように感じた。
「この間少しお話して、顔を覚えてもらえるぐらいにはなれました」
「ふーん…」
「……もう火傷大丈夫そうです。ありがとうございます」
空いている手で蛇口を閉めて、水に打たれ続けていた手を引っ込めた。
「!?」
無言になった五条さんが真後ろに立ったことで、シンクとの間に挟み込まれた。
「えっと…五条さん?」
どういう状況、これ?
給湯室の外に困惑の視線を送ろうとしたのたが、気づけば給湯室の扉がほぼ閉まっていた。
僅かばかりに開いた隙間から補助監督さん達の声が聞こえてくる。
補助監督さん達の会話が遠いなりに聞こえてくるのは、対照的にこちらが静寂だからだ。
「生徒と仲良くなるな…とは言わないけど。誤解されるようなことはしない方が良いよ」
「多分…今の方がよっぽど誤解されそうです」
「誤解?」
「はい…だってこんな…」
「こんな……何?」
こんな……恋人みたいな雰囲気。
まるで社内恋愛を隠している恋人みたい。
しかし甘酸っぱい雰囲気ではなく、誰かに見られやしないか、誤解されないか、ヒヤヒヤしているだけだ。
「言わなきゃわからないよ」
シンクに置いた手の上に、五条さんの大きな手が重ねられた。
「あ……の」
ドキドキする胸を抑えながら、何を答えればいいのか混乱してしまい、結局言葉にならない文字だけが口から漏れた。
五条さんは飄々としていて、掴みどころがないところがあるので、本気なのかからかっているのかよくわからない。
「ッ……!?」
オロオロと対応に悩んでいると、腰を撫でられ、そのままお尻にさらりと触れた。
私は思わずその手を払い除けてしまった。
パシッ!
乾いた音が鳴った。
「あの……ごめんなさい!」
私は淹れかけのコーヒーもそのままに給湯室を飛び出した。
背後から五条さんの声が聞こえた気がしたが、私は構わずに事務室を出ていった。
