土井先生ともっと近づきたい。

私から行動するのはアリなのだろうか…？
室町時代的にはアウト？

勝手なイメージだが、女性は三歩下がって…みたいな。

現代では普通のことでも、室町時代で女性からデートに誘うのはナシなのだろうか…。

自分が無意識のうちに非常識の地雷を踏んで嫌われてしまわないかと考えると、なかなか行動に移せないでいた。

だが、悩みすぎて胃が痛くなってきた。

「いてて…」
「大丈夫？」

いつの間にか背後に居た土井先生が心配そうに私を覗き込んだ。

「い、いつの間に！？」
「ついさっきだよ。名前さんを見かけたから」

私を見かけたから、傍に来てくれた。
それだけで嬉しかった。


「来週、休みが取れそうなんだ。良かったら一緒に過ごさないか？」


そして、私が今まさに悩んでいたことが解決した瞬間だった。

「嬉しいです！」
「身体がしんどかったら、休んでもいいし…」

看病するよ、と気遣ってくれる土井先生はなんていい男なのだろうか。

「いえ！たった今良くなりました！」

本当に胃痛は吹っ飛んだのだが、土井先生は「それは嘘だろう」と笑った。







どこ行きたいか考えておいて、と言われてその日の夜私は机の上に紙を置き、筆を滑らせた。

「うーん…」

この時代でできることは限られている。

現代だったら映画、カラオケ、カフェなどなど沢山選択肢があるのだが、こちらとなると…。

「町、川、海、山…」

山は無しかな…。
虫が出るし。

野原でピクニックとか？

でも雨が降ったらどうしよう。
それはどの選択肢も同じだった。
これは雨パターンも考えておいた方が良さそう。

土井先生と一緒なら、別にこの部屋で過ごすだけでも…。

と思ったが、やはり忍たまがいる以上やめた方がいいか。恋仲っぽい雰囲気を求めるなら外出するのは絶対条件。

私はわくわくしながら絞り出せるだけのアイデアを紙に書き出していった。