狼さんと一緒/荒北
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今度学年のイベントで球技大会が行われる。
体育祭とは別物だ。
うちのクラスは雰囲気的に、本人の希望より勝ちにいくための采配を組むようだ。
「あと野球1人足りないから・・・経験者の荒北くん出てくれないかな?」
実行委員の桐生くんが荒北くんを指名した。
「ア?まァいいケド・・・」
最後野球にいい思い出がない荒北くんは嫌がるかと思ったが、経験がある球技の方がやりやすいのだろう。
運動部や経験者を先に采配しているため、特に何の経験もない私は残り物しかない。
「じゃあ・・・名字さんはドッジボールでいい?」
「うん」
私の番が回ってきて、一番人数が多く特に経験値のいらないやつになった。
これなら練習しなくてもとりあえず当たらないように逃げていればいい。
受け取って投げるのは男の子に任せよう。
大人数で迷惑をかけることがない種目になったので安心した。
「名前チャン、ドッジすんの?」
荒北くんの方を見ると心配そうな目をしていた。
「うん。これなら特に技術もいらないし・・・」
荒北くんは少し考えると手を挙げた。
「なー、俺ドッジ掛け持ちしたいんだケド」
桐生くんがプリントに目を通す。
「えーっと・・・ごめん。野球とドッジは時間が被ってるから掛け持ちはできないみたい」
「ハァ!?じゃァ俺野球やめてドッジにする」
荒北くんの一言で教室がざわついた。
「そ・・・それは困るよ。野球足りてないし、野球はなるべく現役と経験者で固めたいか・・・・ら・・・」
桐生くんは荒北くんから放たれる無言の圧に耐え切れず言葉が尻すぼみになっている。
「あ、荒北くん。みんな困っちゃうから荒北くんは野球に出た方がいいよ」
みんなから何とかして荒北を野球に出させろという意思が背中にひしひしと伝わってくる。
私は荒北くんの様子を伺った。
「どうしていきなりドッジに・・・?」
荒北くんはキッと桐生くんを睨んだ。
「このドッジ、男女混合なんだろ?男子が全力で投げたボールが女子に当たったらあぶねーじゃン。ドッジに名前挙がってる男子モヤシばっかじゃねェか。盾にもなんねェ」
確かにドッジボールは負け戦が前提になっており、運動が苦手で他の球技に参加できそうにない私のような面子が男女共に揃っていた。
でもモヤシって・・・。
ドッジに参加する予定の男の子はビクビクしていて、一方女子は荒北くんの一言に少し色めきだっていた。
「つーかそもそも小学生でもねェのに男女混合っておかしいンじゃねェの」
「そんなこと僕に言われても・・・」
教室の雰囲気は女子が荒北くんに加勢気味だ。
「確かに掛け持ちもOKなんだし、体育会系の男子をドッジに入れた方がいいかもね」
友達の一言で、ドッジの時間フリーの体育会系男子が何人か掛け持つことになった。
「荒北は時間が被ってるからダメね」
「なっ!」
「あんたじゃない男子がしっかり名前を守ってくれるわよ」
球技大会当日。
私はさした練習もせず、友達と一緒にグラウンドに出た。
今からドッジボールと野球の試合がそれぞれ始まる。
天気は良好。
「名前チャン」
グローブを嵌めた荒北くんが近づいてきた。
「気をつけろヨ」
「うん。当たらないように逃げ回るね。荒北くんも頑張って」
一言二言会話を交わすと荒北くんは野球のメンバーに元へ戻っていった。
「でも、今回の一件で女子からの荒北評価はグッと上がったわね」
教室での発言を思い出す。
「荒北くんはいつも優しいよ?」
「まぁ、あの発言も名前だけが心配だったんだろうけど」
「そんなことないよ!」
理解されにくいけど荒北くんは優しい。
私が熱弁する横で友達ははいはい、と聞き流していた。
私たちも集合がかかりコートへと入る。
「えっ・・・」
私はコートへ入って驚いた。
なぜなら相手チームはほとんど男子だった。
「あちゃー。一回戦で理系クラスと当たったか」
友達の一言で納得した。
理系の特進クラスはほぼ男子生徒のクラスだった。
そこと当たったのだ。
かたやこちらは若干女子の方が多いぐらいだ。
ハンデでこちらの男子は2回当たるまでセーフということになった。
ホイッスルが鳴りゲームが始まる。
やはり男子のボールは速く、女子の塊から狙われるので私は1人でせっせと逃げた。
ハンデはあるもののあれよあれよという間に人数が減ってくる。
「きゃっ」
私の傍にいた女の子が当たった。
はずみで落ちたボールを私は拾った。
「近藤くん。はい」
まさか自分で投げても当たるはずがないので我がチームの要、アメフト部の近藤くんに手渡した。
「まじで名字、最後まで当たるんじゃねーぞ。荒北が怖いから」
近藤くんはボールを受け取るときにそう言った。
「う、うん」
荒北くんが怖いというのはわからないけど、とりあえずチームのために当たらないようにしないと。
近藤くんが投げたボールは一直線に敵陣のサッカー部の子に当たった。
「まずい」
近藤くんがつぶやいた。
相手クラスには要が2人おり、先ほど当たったサッカー部の子とバスケ部の子。
片方が外野に出たことで、中と外にそれぞれバラけてしまった。
そこからの攻防はすさまじいもので、バスケ部が外野のサッカー部にパスすると剛速球で近藤くんを狙った。
それを身をひるがえして近藤くんが避けると続いてバスケ部がそれを受け取りまた近藤くんへ剛速球をお見舞いする。
「ひいっ」
さっきボールを渡したときに傍にそのまま居てしまったため、私はその攻防に巻き込まれてしまった。
「名前、何やってんの!こっち!」
一連の攻防から女子は近藤くんを助けようとすることもなくコートの端で固まっていた。
友達の傍に行こうと思い、慌ててその場から離れようとした、その時。
黒い影が視界の端に入った。
「危ない!」
友達が叫んだのと私の頭部に衝撃は走ったのは同時だった。
痛いと感じたのはだいぶ遅れてだった。
ボールを見ずに駆け出そうとしたため、左側頭部に直撃した。
私は痛いのやら、びっくりしたのやら、恥ずかしいのやらでその場に蹲った。
「名前、大丈夫!?」
「う・・・うん」
内野にいたバスケ部の子が顔面蒼白になっている。
「ご・・・ごめん」
「大丈夫、気にしないで。こういうこともるよ。でも顔面セーフは無しにしてほしい・・・。一旦外に出たい」
私は努めて明るく、バスケ部の男の子に返事をした。
とりあえず私は友達に連れられて保健室へ向かった。
「安静にしてなさいよ」
保健室の先生が頭をぶつけているから念のため、ということで親に連絡を取りに行った。
「私、荒北呼んでくるから」
「え、いいよいいよ!試合中でしょ?」
「私らどうせ負けだし。野球の方は勝つかもだけど、二回戦まで時間あるでしょ」
友達は保健室を出て行った。
5分も経たない内に廊下からバタバタと足音が聞こえてくる。
保健室の扉が勢いよく開いた。
「名前チャン!!!」
息を切らせた荒北くんが飛び込んできた。
「大丈夫かヨ!?」
荒北くんは私が横になっていたベッドに近寄って私の頭をくまなくチェックした。
上半身を起こそうとすると荒北くんに制された。
「寝ててイイから」
「大丈夫だよ、たいしたことないし」
荒北くんは舌打ちをした。
「だからイヤだったんだヨ。・・・ったく、近藤のやつ」
「近藤くん?」
「イヤ・・・何でもねェ」
目を泳がす荒北くんに私は首を傾げた。
「ドッジボールだからしょうがないよ」
私がそういうと荒北くんは手を私の頭に乗せた。
「痛かっただろ?」
荒北くんの手のぬくもりが温かくて、今まで我慢していた痛みが急に表に出てきた気がした。
思い返せばソフトボールではない、なかなか固いボールが頭に当たったのだ。
しかも投げたのはエース的存在の子。
痛くないわけがない。
目頭がじんわり滲む。
「・・・痛かったぁ」
ボロボロ涙が零れる。
高校生にもなってドッジに当たって泣くなんてありえない、と思ったけれど荒北くんは馬鹿にすることなく私の頭を撫ぜ続けた。
「我慢すンな」
私はみんなの前では強がっていた心が一気に緩み、まるで子どものようにわんわん泣いた。
戻ってきた保健室の先生は荒北くんが泣かしたと勘違いして誤解を解くのが大変だった。
結局、野球は3回戦でスポーツ科と当たり、敗退。
荒北くんは近藤くんにしばらく冷たかった。
そしてバスケ部の子は荒北くんと顔を合わせないように避けてしばらく生活していたとかなんとか。
こうして無事球技大会は幕を閉じました。
体育祭とは別物だ。
うちのクラスは雰囲気的に、本人の希望より勝ちにいくための采配を組むようだ。
「あと野球1人足りないから・・・経験者の荒北くん出てくれないかな?」
実行委員の桐生くんが荒北くんを指名した。
「ア?まァいいケド・・・」
最後野球にいい思い出がない荒北くんは嫌がるかと思ったが、経験がある球技の方がやりやすいのだろう。
運動部や経験者を先に采配しているため、特に何の経験もない私は残り物しかない。
「じゃあ・・・名字さんはドッジボールでいい?」
「うん」
私の番が回ってきて、一番人数が多く特に経験値のいらないやつになった。
これなら練習しなくてもとりあえず当たらないように逃げていればいい。
受け取って投げるのは男の子に任せよう。
大人数で迷惑をかけることがない種目になったので安心した。
「名前チャン、ドッジすんの?」
荒北くんの方を見ると心配そうな目をしていた。
「うん。これなら特に技術もいらないし・・・」
荒北くんは少し考えると手を挙げた。
「なー、俺ドッジ掛け持ちしたいんだケド」
桐生くんがプリントに目を通す。
「えーっと・・・ごめん。野球とドッジは時間が被ってるから掛け持ちはできないみたい」
「ハァ!?じゃァ俺野球やめてドッジにする」
荒北くんの一言で教室がざわついた。
「そ・・・それは困るよ。野球足りてないし、野球はなるべく現役と経験者で固めたいか・・・・ら・・・」
桐生くんは荒北くんから放たれる無言の圧に耐え切れず言葉が尻すぼみになっている。
「あ、荒北くん。みんな困っちゃうから荒北くんは野球に出た方がいいよ」
みんなから何とかして荒北を野球に出させろという意思が背中にひしひしと伝わってくる。
私は荒北くんの様子を伺った。
「どうしていきなりドッジに・・・?」
荒北くんはキッと桐生くんを睨んだ。
「このドッジ、男女混合なんだろ?男子が全力で投げたボールが女子に当たったらあぶねーじゃン。ドッジに名前挙がってる男子モヤシばっかじゃねェか。盾にもなんねェ」
確かにドッジボールは負け戦が前提になっており、運動が苦手で他の球技に参加できそうにない私のような面子が男女共に揃っていた。
でもモヤシって・・・。
ドッジに参加する予定の男の子はビクビクしていて、一方女子は荒北くんの一言に少し色めきだっていた。
「つーかそもそも小学生でもねェのに男女混合っておかしいンじゃねェの」
「そんなこと僕に言われても・・・」
教室の雰囲気は女子が荒北くんに加勢気味だ。
「確かに掛け持ちもOKなんだし、体育会系の男子をドッジに入れた方がいいかもね」
友達の一言で、ドッジの時間フリーの体育会系男子が何人か掛け持つことになった。
「荒北は時間が被ってるからダメね」
「なっ!」
「あんたじゃない男子がしっかり名前を守ってくれるわよ」
球技大会当日。
私はさした練習もせず、友達と一緒にグラウンドに出た。
今からドッジボールと野球の試合がそれぞれ始まる。
天気は良好。
「名前チャン」
グローブを嵌めた荒北くんが近づいてきた。
「気をつけろヨ」
「うん。当たらないように逃げ回るね。荒北くんも頑張って」
一言二言会話を交わすと荒北くんは野球のメンバーに元へ戻っていった。
「でも、今回の一件で女子からの荒北評価はグッと上がったわね」
教室での発言を思い出す。
「荒北くんはいつも優しいよ?」
「まぁ、あの発言も名前だけが心配だったんだろうけど」
「そんなことないよ!」
理解されにくいけど荒北くんは優しい。
私が熱弁する横で友達ははいはい、と聞き流していた。
私たちも集合がかかりコートへと入る。
「えっ・・・」
私はコートへ入って驚いた。
なぜなら相手チームはほとんど男子だった。
「あちゃー。一回戦で理系クラスと当たったか」
友達の一言で納得した。
理系の特進クラスはほぼ男子生徒のクラスだった。
そこと当たったのだ。
かたやこちらは若干女子の方が多いぐらいだ。
ハンデでこちらの男子は2回当たるまでセーフということになった。
ホイッスルが鳴りゲームが始まる。
やはり男子のボールは速く、女子の塊から狙われるので私は1人でせっせと逃げた。
ハンデはあるもののあれよあれよという間に人数が減ってくる。
「きゃっ」
私の傍にいた女の子が当たった。
はずみで落ちたボールを私は拾った。
「近藤くん。はい」
まさか自分で投げても当たるはずがないので我がチームの要、アメフト部の近藤くんに手渡した。
「まじで名字、最後まで当たるんじゃねーぞ。荒北が怖いから」
近藤くんはボールを受け取るときにそう言った。
「う、うん」
荒北くんが怖いというのはわからないけど、とりあえずチームのために当たらないようにしないと。
近藤くんが投げたボールは一直線に敵陣のサッカー部の子に当たった。
「まずい」
近藤くんがつぶやいた。
相手クラスには要が2人おり、先ほど当たったサッカー部の子とバスケ部の子。
片方が外野に出たことで、中と外にそれぞれバラけてしまった。
そこからの攻防はすさまじいもので、バスケ部が外野のサッカー部にパスすると剛速球で近藤くんを狙った。
それを身をひるがえして近藤くんが避けると続いてバスケ部がそれを受け取りまた近藤くんへ剛速球をお見舞いする。
「ひいっ」
さっきボールを渡したときに傍にそのまま居てしまったため、私はその攻防に巻き込まれてしまった。
「名前、何やってんの!こっち!」
一連の攻防から女子は近藤くんを助けようとすることもなくコートの端で固まっていた。
友達の傍に行こうと思い、慌ててその場から離れようとした、その時。
黒い影が視界の端に入った。
「危ない!」
友達が叫んだのと私の頭部に衝撃は走ったのは同時だった。
痛いと感じたのはだいぶ遅れてだった。
ボールを見ずに駆け出そうとしたため、左側頭部に直撃した。
私は痛いのやら、びっくりしたのやら、恥ずかしいのやらでその場に蹲った。
「名前、大丈夫!?」
「う・・・うん」
内野にいたバスケ部の子が顔面蒼白になっている。
「ご・・・ごめん」
「大丈夫、気にしないで。こういうこともるよ。でも顔面セーフは無しにしてほしい・・・。一旦外に出たい」
私は努めて明るく、バスケ部の男の子に返事をした。
とりあえず私は友達に連れられて保健室へ向かった。
「安静にしてなさいよ」
保健室の先生が頭をぶつけているから念のため、ということで親に連絡を取りに行った。
「私、荒北呼んでくるから」
「え、いいよいいよ!試合中でしょ?」
「私らどうせ負けだし。野球の方は勝つかもだけど、二回戦まで時間あるでしょ」
友達は保健室を出て行った。
5分も経たない内に廊下からバタバタと足音が聞こえてくる。
保健室の扉が勢いよく開いた。
「名前チャン!!!」
息を切らせた荒北くんが飛び込んできた。
「大丈夫かヨ!?」
荒北くんは私が横になっていたベッドに近寄って私の頭をくまなくチェックした。
上半身を起こそうとすると荒北くんに制された。
「寝ててイイから」
「大丈夫だよ、たいしたことないし」
荒北くんは舌打ちをした。
「だからイヤだったんだヨ。・・・ったく、近藤のやつ」
「近藤くん?」
「イヤ・・・何でもねェ」
目を泳がす荒北くんに私は首を傾げた。
「ドッジボールだからしょうがないよ」
私がそういうと荒北くんは手を私の頭に乗せた。
「痛かっただろ?」
荒北くんの手のぬくもりが温かくて、今まで我慢していた痛みが急に表に出てきた気がした。
思い返せばソフトボールではない、なかなか固いボールが頭に当たったのだ。
しかも投げたのはエース的存在の子。
痛くないわけがない。
目頭がじんわり滲む。
「・・・痛かったぁ」
ボロボロ涙が零れる。
高校生にもなってドッジに当たって泣くなんてありえない、と思ったけれど荒北くんは馬鹿にすることなく私の頭を撫ぜ続けた。
「我慢すンな」
私はみんなの前では強がっていた心が一気に緩み、まるで子どものようにわんわん泣いた。
戻ってきた保健室の先生は荒北くんが泣かしたと勘違いして誤解を解くのが大変だった。
結局、野球は3回戦でスポーツ科と当たり、敗退。
荒北くんは近藤くんにしばらく冷たかった。
そしてバスケ部の子は荒北くんと顔を合わせないように避けてしばらく生活していたとかなんとか。
こうして無事球技大会は幕を閉じました。
