狼さんと一緒/荒北
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この状況は一体…。
私は目の前で起こっている状況を受け入れられず、とりあえず今日の朝からの出来事を頭の中で回想することにした。
えーっと、今日は朝からみそ汁を飲み、白ご飯と昨日の夕食のお魚をつついて学校へ向かった。
普段通りに授業をこなし、放課後になり荒北くんとバイバイした後それこそ普段通りに帰路に着いたはず…
いや…違う。
普段通りに帰っていない。
途中で昨日テレビで見たコンビニスイーツが食べたくなり、普段寄らないコンビニへ寄った。
そうだ、ここが間違いだった。
コンビニの前で少し柄が悪そうな人が3人たむろっていた。
あ、うちの制服だ。
そう思って一瞬チラ見したのがいけなかった。
そのうちの一人とがっつり目が合ってしまった。
そういえば1年生の荒北くんとの出会いも場所は教室だけどこんな感じだったな、なんて呑気な自分をこの後で恨んだ。
相手は荒北くんじゃない。
「あれ、名字さんじゃん」
座り込んでた1人が立ち上がって近づいてきた。
知り合いだっけ?と頭をひねるが記憶にない。
「誰?知り合い?」
別の一人が私を上から下までジロジロ見ている。
「ほら、荒北といつも一緒にいる…」
「あー!荒北の彼女!」
違うけど、訂正できる雰囲気ではない。
あっという間に気づいたら囲まれていた。
そして回想は終わり、現在に至る。
私はコンビニの人に助けを求めようと視線を向けるが品出しをしているようで全くこちらの様子に気づいていない。
とりあえず逃げよう。
そう思って私は隙をついて走り出した。
「あ、待て!」
え、追いかけてくる!!
逃げたら諦めてくれるかと思いきや、追いかけられた。
こんな時に限って人通りが少ないところのコンビニを選んでしまったことを後悔した。
しかもよく考えずに走ってしまったため、気づいたら行き止まりの路地へ入ってしまっていた。
「逃げんなよー」
私の足なんかでは撒けるわけもなく、追いつかれてしまった。
「あの、なんで追いかけてくるんでしょうか…」
仮に荒北くんの彼女だと誤解されていても追いかけられる理由がわからない。
私は息絶え絶えに聞いた。
「あいつには1年の時の借りがあるからなー」
荒北くんが荒れていた頃になんらかのトラブルがあったらしい。
この人達は私に何をする気だろう・・・
自分を守るように肩にかけていた通学鞄を前に抱える。
背中は壁で行き止まり。
何とか躱して彼らの背後に見える数メートル先の大通りまで出なければ。
オロオロしながら彼らの位置と大通りまでの距離を目測で測っていた時、一瞬だけ大通りを何かが過ぎ去った気がした。
「荒北くん!」
一瞬だったが、ロードバイクに乗った彼が視界を過ぎ去った気がした。
あまりに速くて確信は持てなかったが。
私の声で3人が振り返った。
しかしその時には誰もいなかった。
「おいおい、誰もいねーじゃん」
「逃げるためにウソついただろ」
「荒北くんはきませーん」
やっぱりあれは荒北くんだったと思う。
でも一瞬だったから私の声はきっと聞こえていない。
じりじりと追い詰められていく私はもう逃げ場がない。
心の中で荒北くんの名前を何回も呼んだ。
「名前チャン?」
あれ、祈りすぎたからか幻聴が聞こえる。
怖くて瞑っていた目を開くと彼らの肩越しにずっと心の中で叫んだ荒北くんの姿を捉えた。
「荒北くん・・・?」
「何やってンの、お前ら」
怒ってる。
荒北くんは普段口は悪いが本気で怒ることはない。
けれど今は視線だけで人を殺せそうなぐらい怒っている。
身にまとっているオーラから狼が見えた気がした。
こちらへ近づいてくる荒北くん。
しかし相手は3人。
それに自転車部が問題を起こすなど言語道断だ。
私の頭の中に浮かんだワードは「インハイ出場停止」。
それだけは駄目だと思って止めようと口を開きかけたその時、荒北くんの前に影ができた。
「どうしたんすか。荒北さん」
荒北くんの後ろから大きな人が出てきた。
「銅橋」
荒北くんは彼のことをそう呼んだ。
見るからにガタイのいい男の子の登場に3人は顔を引き攣らせた。
「荒北、お前野獣とかなんだとか言われてるけど、すっかり飼いならされてんじゃん!」
馬鹿にしたような挑発的発言に荒北くんのこめかみには青筋が入っている。
「はっ。殴ってみろよ。お前らチャリ部は暴力ご法度だろ?」
わざと一歩前へ出て荒北くんとの距離を詰める。
私はハラハラしながらその様子を見守った。
「その必要はない」
また別の声が聞こえた。
この声は知っている。
「福富くん!」
銅橋くんの後ろから福富くんが出てきた。
さらに新開くん、東堂くんと自転車部の面々が姿を現す。
「どう見たってこれはか弱い女子高生が襲われそうになっているところを通りかかった俺たちが助けてるシーンだよね」
そう言いながら新開くんがいつものポーズを3人に向けた。
状況が完全に逆転し、さすがに分が悪くなった彼らは逃げるようにして去っていった。
去り際、その内の1人の腕を荒北くんは捕まえて何かを言っていた。
完全に脅威が去り、私は自転車部のみんなに頭を下げた。
「助けてくださって、ありがとうございました」
「ワッハッハ!名字ちゃんに何もなくてなによりだ!それよりも先ほどの荒北はすごかったぞ!名字ちゃんの匂いを嗅ぎ取ったらしい。さすが野獣だな!いや、もはや変態だな!」
「うるセー、東堂!」
東堂くんに一喝すると荒北くんは福富くんに話しかけた。
「ちょっと抜けて名前チャン駅まで送ってくる」
「え、いいよいいよ!1人で大丈夫だよ」
私が遠慮していると新開くんが私の肩に手を置いた。
「きっと名前ちゃんが電車に乗るのを見届けないと荒北は心配して練習にならなさそうだから、あいつのためにも送られてよ」
結局押し切られる形で荒北くんに駅まで送ってもらうことになった。
「ごめんね、練習抜けさせちゃって」
「全然。もともと東堂と違って俺は練習たまにサボるし」
ここで会話が途切れ、しばらく私達は無言のまま歩いた。
荒北くん機嫌悪い・・・・?
というか落ち込んでる・・・?
勇気を出して話しかけた。
「荒北くん怒ってる?」
やっぱり迷惑かけちゃったからかな、そう思いシュンとすると荒北くんは慌てて両手を振った。
「ちげェよ。名前チャンにじゃなくて過去の俺に怒ってる」
「過去の荒北くん?」
「今日絡まれたの俺のせいだろ」
荒北くんは自分のせいで私が絡まれていたことに気づいていた。
「それは違うよ!これは運が悪かっただけ!」
そうは言ってもまだ気にししているのは明らかだ。
「ほんとはさ、名前チャンと一緒にいるの控えた方がいいかもって思ったケド・・・」
「え・・・」
荒北くんと一緒にいられなくなる・・・?
私は不安になって目頭が熱くなってきた気がする。
ちらりと私を見た荒北くんは困ったような表情を浮かべた。
「そーやって捨てられた子犬みたいな顔されるとぜってームリ」
荒北くんは駅の改札ではなく、その近くのコンビニへ入っていった。
私は荒北くんの後を追う。
「どれ買うつもりだったの?」
そういえばコンビニスイーツを買う予定をしていたことをすっかり忘れていた。
「あ、これ!」
私は当初の目的を思い出して、見つけたプリンを手に取った。
荒北くんはそれを私の手から取るとレジへ向かった。
「ハイ」
「え!?あ・・・ありがとう]
「とりあえず今日のお詫びネ」
だからあれは荒北くんのせいじゃないのに。
むしろ助けてもらったお礼しないといけないのは私の方だ。
「あとは真っすぐ寄り道しないで帰りなサイ」
荒北くんの助言通り、この後は電車に乗って真っすぐ家へ帰った。
こうして大変な放課後だったが荒北くんのおかげで無事に当初の目的を果たせたのであった。
*******************
名前チャンを無事に駅まで送り届け、俺はこの1時間に起こった出来事を思い出していた。
俺は先頭集団で東堂たちとチャリを回していた。
いつもと同じコース。
けれどいつも足を止めたことなんてない、ただの日常の風景に違和感を感じた。
俺の鼻が疼いた。
なんだ?
一瞬何か聞こえた気がするが気のせいか。
そのままスピードを落とすことなく数十メートル進んだ。
けれどふと脳内に名前チャンの顔が浮かんだ。
さすがに部活中に名前チャンのことを考えることなどない。
なのになぜ…。
帰り際、名前チャンが嬉しそうな顔をしていたのでどうしたのか尋ねたらコンビニスイーツを買って帰ると言っていったのを思い出した。
取り留めのない至って普通の会話。
けれどなぜか俺の本能が叫んだ。
来た道を戻れ、と。
俺は集団の最後尾まで下がり勢いよくUターンした。
「どうした、荒北!」
東堂が後ろを振り返った。
「抜ける。あとで追いつく」
気のせいだったらそれでいい。
そう思い道を戻った。
違和感を感じたところまで戻ると路地があった。
こんなところに路地があるなんて気にしたこと今までになかった。
しかしなぜそこに違和感を感じたのか一瞬でその理由が分かった。
「名前チャン?」
そこには名前チャンの姿が。
しかも明らかに絡まれている。
全身の気が逆立つのをはっきりと感じた。
「荒北くん・・・?」
びくびくしていた名前チャンの顔に安堵が見えた。
「何やってンの、お前ら」
一言で言えば俺の今の感情は「殺意が芽生えた」だ。
ここで殴ったらインハイ出られねーとかそんなことも頭に過ったが一瞬で消えた。
一歩進むと名前チャンの焦った表情が視界に入った。
「どうしたんすか。荒北さん」
銅橋が騒ぎに気づいたらしく俺の後ろから姿を現した。
こいつのおかげで俺の頭は少し冷静になった。
「荒北、お前野獣とかなんだとか言われてるけど、すっかり飼いならされてんじゃん!」
こいつらよく見たら1年の時にちょっと揉めた奴らだな。
それから福チャンや東堂達も乱入したことで事態は一気に収束した。
奴らの去り際、挑発してきた奴の腕を捕んだ。
「俺のことを飼えるのは名前チャンだけなんだヨ」
お前らには牙を剥くってこと覚えてろヨ
私は目の前で起こっている状況を受け入れられず、とりあえず今日の朝からの出来事を頭の中で回想することにした。
えーっと、今日は朝からみそ汁を飲み、白ご飯と昨日の夕食のお魚をつついて学校へ向かった。
普段通りに授業をこなし、放課後になり荒北くんとバイバイした後それこそ普段通りに帰路に着いたはず…
いや…違う。
普段通りに帰っていない。
途中で昨日テレビで見たコンビニスイーツが食べたくなり、普段寄らないコンビニへ寄った。
そうだ、ここが間違いだった。
コンビニの前で少し柄が悪そうな人が3人たむろっていた。
あ、うちの制服だ。
そう思って一瞬チラ見したのがいけなかった。
そのうちの一人とがっつり目が合ってしまった。
そういえば1年生の荒北くんとの出会いも場所は教室だけどこんな感じだったな、なんて呑気な自分をこの後で恨んだ。
相手は荒北くんじゃない。
「あれ、名字さんじゃん」
座り込んでた1人が立ち上がって近づいてきた。
知り合いだっけ?と頭をひねるが記憶にない。
「誰?知り合い?」
別の一人が私を上から下までジロジロ見ている。
「ほら、荒北といつも一緒にいる…」
「あー!荒北の彼女!」
違うけど、訂正できる雰囲気ではない。
あっという間に気づいたら囲まれていた。
そして回想は終わり、現在に至る。
私はコンビニの人に助けを求めようと視線を向けるが品出しをしているようで全くこちらの様子に気づいていない。
とりあえず逃げよう。
そう思って私は隙をついて走り出した。
「あ、待て!」
え、追いかけてくる!!
逃げたら諦めてくれるかと思いきや、追いかけられた。
こんな時に限って人通りが少ないところのコンビニを選んでしまったことを後悔した。
しかもよく考えずに走ってしまったため、気づいたら行き止まりの路地へ入ってしまっていた。
「逃げんなよー」
私の足なんかでは撒けるわけもなく、追いつかれてしまった。
「あの、なんで追いかけてくるんでしょうか…」
仮に荒北くんの彼女だと誤解されていても追いかけられる理由がわからない。
私は息絶え絶えに聞いた。
「あいつには1年の時の借りがあるからなー」
荒北くんが荒れていた頃になんらかのトラブルがあったらしい。
この人達は私に何をする気だろう・・・
自分を守るように肩にかけていた通学鞄を前に抱える。
背中は壁で行き止まり。
何とか躱して彼らの背後に見える数メートル先の大通りまで出なければ。
オロオロしながら彼らの位置と大通りまでの距離を目測で測っていた時、一瞬だけ大通りを何かが過ぎ去った気がした。
「荒北くん!」
一瞬だったが、ロードバイクに乗った彼が視界を過ぎ去った気がした。
あまりに速くて確信は持てなかったが。
私の声で3人が振り返った。
しかしその時には誰もいなかった。
「おいおい、誰もいねーじゃん」
「逃げるためにウソついただろ」
「荒北くんはきませーん」
やっぱりあれは荒北くんだったと思う。
でも一瞬だったから私の声はきっと聞こえていない。
じりじりと追い詰められていく私はもう逃げ場がない。
心の中で荒北くんの名前を何回も呼んだ。
「名前チャン?」
あれ、祈りすぎたからか幻聴が聞こえる。
怖くて瞑っていた目を開くと彼らの肩越しにずっと心の中で叫んだ荒北くんの姿を捉えた。
「荒北くん・・・?」
「何やってンの、お前ら」
怒ってる。
荒北くんは普段口は悪いが本気で怒ることはない。
けれど今は視線だけで人を殺せそうなぐらい怒っている。
身にまとっているオーラから狼が見えた気がした。
こちらへ近づいてくる荒北くん。
しかし相手は3人。
それに自転車部が問題を起こすなど言語道断だ。
私の頭の中に浮かんだワードは「インハイ出場停止」。
それだけは駄目だと思って止めようと口を開きかけたその時、荒北くんの前に影ができた。
「どうしたんすか。荒北さん」
荒北くんの後ろから大きな人が出てきた。
「銅橋」
荒北くんは彼のことをそう呼んだ。
見るからにガタイのいい男の子の登場に3人は顔を引き攣らせた。
「荒北、お前野獣とかなんだとか言われてるけど、すっかり飼いならされてんじゃん!」
馬鹿にしたような挑発的発言に荒北くんのこめかみには青筋が入っている。
「はっ。殴ってみろよ。お前らチャリ部は暴力ご法度だろ?」
わざと一歩前へ出て荒北くんとの距離を詰める。
私はハラハラしながらその様子を見守った。
「その必要はない」
また別の声が聞こえた。
この声は知っている。
「福富くん!」
銅橋くんの後ろから福富くんが出てきた。
さらに新開くん、東堂くんと自転車部の面々が姿を現す。
「どう見たってこれはか弱い女子高生が襲われそうになっているところを通りかかった俺たちが助けてるシーンだよね」
そう言いながら新開くんがいつものポーズを3人に向けた。
状況が完全に逆転し、さすがに分が悪くなった彼らは逃げるようにして去っていった。
去り際、その内の1人の腕を荒北くんは捕まえて何かを言っていた。
完全に脅威が去り、私は自転車部のみんなに頭を下げた。
「助けてくださって、ありがとうございました」
「ワッハッハ!名字ちゃんに何もなくてなによりだ!それよりも先ほどの荒北はすごかったぞ!名字ちゃんの匂いを嗅ぎ取ったらしい。さすが野獣だな!いや、もはや変態だな!」
「うるセー、東堂!」
東堂くんに一喝すると荒北くんは福富くんに話しかけた。
「ちょっと抜けて名前チャン駅まで送ってくる」
「え、いいよいいよ!1人で大丈夫だよ」
私が遠慮していると新開くんが私の肩に手を置いた。
「きっと名前ちゃんが電車に乗るのを見届けないと荒北は心配して練習にならなさそうだから、あいつのためにも送られてよ」
結局押し切られる形で荒北くんに駅まで送ってもらうことになった。
「ごめんね、練習抜けさせちゃって」
「全然。もともと東堂と違って俺は練習たまにサボるし」
ここで会話が途切れ、しばらく私達は無言のまま歩いた。
荒北くん機嫌悪い・・・・?
というか落ち込んでる・・・?
勇気を出して話しかけた。
「荒北くん怒ってる?」
やっぱり迷惑かけちゃったからかな、そう思いシュンとすると荒北くんは慌てて両手を振った。
「ちげェよ。名前チャンにじゃなくて過去の俺に怒ってる」
「過去の荒北くん?」
「今日絡まれたの俺のせいだろ」
荒北くんは自分のせいで私が絡まれていたことに気づいていた。
「それは違うよ!これは運が悪かっただけ!」
そうは言ってもまだ気にししているのは明らかだ。
「ほんとはさ、名前チャンと一緒にいるの控えた方がいいかもって思ったケド・・・」
「え・・・」
荒北くんと一緒にいられなくなる・・・?
私は不安になって目頭が熱くなってきた気がする。
ちらりと私を見た荒北くんは困ったような表情を浮かべた。
「そーやって捨てられた子犬みたいな顔されるとぜってームリ」
荒北くんは駅の改札ではなく、その近くのコンビニへ入っていった。
私は荒北くんの後を追う。
「どれ買うつもりだったの?」
そういえばコンビニスイーツを買う予定をしていたことをすっかり忘れていた。
「あ、これ!」
私は当初の目的を思い出して、見つけたプリンを手に取った。
荒北くんはそれを私の手から取るとレジへ向かった。
「ハイ」
「え!?あ・・・ありがとう]
「とりあえず今日のお詫びネ」
だからあれは荒北くんのせいじゃないのに。
むしろ助けてもらったお礼しないといけないのは私の方だ。
「あとは真っすぐ寄り道しないで帰りなサイ」
荒北くんの助言通り、この後は電車に乗って真っすぐ家へ帰った。
こうして大変な放課後だったが荒北くんのおかげで無事に当初の目的を果たせたのであった。
*******************
名前チャンを無事に駅まで送り届け、俺はこの1時間に起こった出来事を思い出していた。
俺は先頭集団で東堂たちとチャリを回していた。
いつもと同じコース。
けれどいつも足を止めたことなんてない、ただの日常の風景に違和感を感じた。
俺の鼻が疼いた。
なんだ?
一瞬何か聞こえた気がするが気のせいか。
そのままスピードを落とすことなく数十メートル進んだ。
けれどふと脳内に名前チャンの顔が浮かんだ。
さすがに部活中に名前チャンのことを考えることなどない。
なのになぜ…。
帰り際、名前チャンが嬉しそうな顔をしていたのでどうしたのか尋ねたらコンビニスイーツを買って帰ると言っていったのを思い出した。
取り留めのない至って普通の会話。
けれどなぜか俺の本能が叫んだ。
来た道を戻れ、と。
俺は集団の最後尾まで下がり勢いよくUターンした。
「どうした、荒北!」
東堂が後ろを振り返った。
「抜ける。あとで追いつく」
気のせいだったらそれでいい。
そう思い道を戻った。
違和感を感じたところまで戻ると路地があった。
こんなところに路地があるなんて気にしたこと今までになかった。
しかしなぜそこに違和感を感じたのか一瞬でその理由が分かった。
「名前チャン?」
そこには名前チャンの姿が。
しかも明らかに絡まれている。
全身の気が逆立つのをはっきりと感じた。
「荒北くん・・・?」
びくびくしていた名前チャンの顔に安堵が見えた。
「何やってンの、お前ら」
一言で言えば俺の今の感情は「殺意が芽生えた」だ。
ここで殴ったらインハイ出られねーとかそんなことも頭に過ったが一瞬で消えた。
一歩進むと名前チャンの焦った表情が視界に入った。
「どうしたんすか。荒北さん」
銅橋が騒ぎに気づいたらしく俺の後ろから姿を現した。
こいつのおかげで俺の頭は少し冷静になった。
「荒北、お前野獣とかなんだとか言われてるけど、すっかり飼いならされてんじゃん!」
こいつらよく見たら1年の時にちょっと揉めた奴らだな。
それから福チャンや東堂達も乱入したことで事態は一気に収束した。
奴らの去り際、挑発してきた奴の腕を捕んだ。
「俺のことを飼えるのは名前チャンだけなんだヨ」
お前らには牙を剥くってこと覚えてろヨ
