狼さんと一緒/荒北
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ある日、調理実習で私達女子はクッキーを作ることになった。
実習の前日、それを誰にあげるかで女子の話題はもちきり。
私は荒北くんにあげようかなーと考えていたらふと周りの女子の会話が耳に入った。
「私、新開君にあげようかな!
「私は絶対東堂君!」
「ねぇねぇ、名前ちゃんはやっぱり荒北くん?」
いきなり話を振られて驚いた。
「え!?う・・・うん。そうしようかなって思ってる」
話しかけられたので傍で話していた女の子の会話に混ぜてもらうことにした。
「絶対荒北くん悲しむよね・・・」
女子の会話の統計を個人的にとったところ、ほとんどの女子が自転車部の新開君と東堂君にあげるという事実が発覚した。
うちのクラスには荒北くんがいるのに。
違うクラスの2人がいっぱいもらって、自分は私のクッキーだけだったらきっと悲しいよね・・・。
私はどうしよう、と頭を悩ませた。
「あ!委員長だったら荒北くんにあげてくれるかも!」
そう思い、私は少しでも荒北くんにクッキーをあげる女子を増やそうと試みた。
「え、いやよ」
瞬殺だった。
迷うそぶりもなかった。
「でもこのままじゃ荒北くんかわいそう・・・」
「大丈夫よ!あいつは名前のクッキーもらえればそれで100人分の価値あるから」
「そんな価値ないよー」
1個は1個だよ、としょぼくれる私の肩に友達は手を置いた。
「じゃあ、うんと美味しくて大きいクッキー作ってあげなよ」
「うん、頑張る」
そうは言ってみたものの、やはり気になる。
「あ!そうだ!」
私は名案が浮かんだ。
友達は何やら難しい顔をしていた。
「あえて聞かないけど、多分客観的に見たらよくないことを思いついている気がするわ」
私はその日の放課後、終礼が終わると同時に教室を飛び出した。
いつもなら荒北くんにばいばいするのだがそれも忘れてしまっていた。
「どうしたんだ・・・名前チャン」
荒北くんは不思議そうな顔で私が出て行くのを見ていた。
そして翌日。
調理自習は無事に終わり女子はみんな甘い匂いのした袋を抱えていた。
授業は6限目だったのでこのまま終礼だ。
今日は自転車部がオフの日なので放課後荒北くんとお喋りする約束をしている。
終礼が終わり、みんな部活に行ったり帰路につく。
教室の人がどんどん減っていく中、私と荒北くんはお互い自分の席に座ったまま向かい合わせになり喋っていた。
「そういえば今日女子調理実習だったネ。何作ったの?」
人一倍鼻の利く荒北くんは教室中を包んでいた甘ったるい匂いに少し辟易しているようだ。
「クッキーだよ!」
私は自分が作ったやつを荒北くんに差し出した。
「はい!私のは荒北くんにあげる」
荒北くんは目を丸くしていた。
「・・・名前チャン、自分で食べないの?」
「みんな男の子にあげるみたいだったから。私はあげるならやっぱり荒北くんかなぁって思って・・・」
いつも仲良くしてくれるお礼だよ、と荒北くんにクッキーを近づけると受け取ってくれた。
少し目が泳いでいて照れているみたいだった。
「ありがと。開けてイイ?」
喜んでくれたみたいでよかった!
「もちろん。食べて食べて」
荒北くんがラッピングの紐を解こうとしたとき、スパーンと教室の扉が横にスライドした。
「ワッハッハ!今日は女子が調理実習だったらしいな!大収穫だ!モテる男は辛いな」
そう言って飛び込んできたのは東堂くん。
新開くんも隣にいた。
2人とも両手にクッキーを沢山抱えていた。
「すごいね・・・何個もらったの?」
「7個だ!」
「俺も」
なんと2人も同数。
うちは女子が20人弱なのでほとんどのクッキーがこの2人に流れている。
「あー!負けちゃったぁ・・・」
いきなり机に突っ伏した私に3人は驚いている。
「どした・・・」
私の顔を覗き込む荒北くん。
「ごめんね」
何に謝まられていのかわからないと言った表情を浮かべている。
私は身体を起こすと鞄から包みを取り出した。
「1個、2個、3個、4個、5個・・・」
荒北くんの机に1つずつ乗せていく。
「何、コレ」
荒北くんは赤色の包みを手に取った。
「みんながね、誰にクッキーあげるか昨日話してて新開くんと東堂くんの名前ばっかり挙がってたから。私の1個じゃ荒北くん悲しいだろうなーって思って5人分家で作ったの」
3人とも驚いている。
「やっぱり5人分作っても結局人間は私1人からだから意味ないかなぁ。しかも5人分じゃ足りなかったし」
俯いて何か考えている荒北くんの顔を覗き込んだ。
「名前ちゃんの優しさに荒北は照れておるのだ!」
「よかったなぁ、荒北」
「東堂、新開だまれ」
荒北くんは包みを1つ開けた。
「ハイ」
私の口元に差し出されたクッキー。
「名前チャンも一緒に食べヨ」
「いいの?」
「いいも何も作った本人じゃン」
「わーい、じゃあ食べる」
差し出されたクッキーをそのまま口でパクリと頂いた。
「アキちゃんみたい」
荒北くんの言葉で新開くんと東堂くんもクッキーを出して私に近づけた。
「こっちにもあるぞ」
「名前チャン犬じゃないからァ!」
私達はそのまま教室でクッキーパーティーを開催した。
一通り騒ぎ、寮に戻った俺は名前チャンが調理実習で作ったクッキーを眺めていた。
結局教室では家で作ってきたと言っていた5人分を開けて、これは持って帰ってきた。
「5人分作るとかやりすぎ…」
よく考えると俺が同情されていたことの方が悲しいが、それはこの際横に置いておこう。
俺のために家でも頑張ってくれたことを素直に喜んでおく。
とりあえず1番メインのクッキーの包み紙を俺は慎重に開けた。
そこには大きなクッキーが1枚。
ハート型のクッキーの中にデコペンで絵とメッセージが入っていた。
『いつもありがとう』
文字は慣れないデコペンで頑張ったとわかるぐらいに少しいびつだった。
そして真ん中には狼の絵が。
「いつもありがとうって、父の日かヨ」
俺はクッキーを眺めながらそういえば名前チャンはクレープ好きだったな、今度奢ってやるかァと心の中で思った。
実習の前日、それを誰にあげるかで女子の話題はもちきり。
私は荒北くんにあげようかなーと考えていたらふと周りの女子の会話が耳に入った。
「私、新開君にあげようかな!
「私は絶対東堂君!」
「ねぇねぇ、名前ちゃんはやっぱり荒北くん?」
いきなり話を振られて驚いた。
「え!?う・・・うん。そうしようかなって思ってる」
話しかけられたので傍で話していた女の子の会話に混ぜてもらうことにした。
「絶対荒北くん悲しむよね・・・」
女子の会話の統計を個人的にとったところ、ほとんどの女子が自転車部の新開君と東堂君にあげるという事実が発覚した。
うちのクラスには荒北くんがいるのに。
違うクラスの2人がいっぱいもらって、自分は私のクッキーだけだったらきっと悲しいよね・・・。
私はどうしよう、と頭を悩ませた。
「あ!委員長だったら荒北くんにあげてくれるかも!」
そう思い、私は少しでも荒北くんにクッキーをあげる女子を増やそうと試みた。
「え、いやよ」
瞬殺だった。
迷うそぶりもなかった。
「でもこのままじゃ荒北くんかわいそう・・・」
「大丈夫よ!あいつは名前のクッキーもらえればそれで100人分の価値あるから」
「そんな価値ないよー」
1個は1個だよ、としょぼくれる私の肩に友達は手を置いた。
「じゃあ、うんと美味しくて大きいクッキー作ってあげなよ」
「うん、頑張る」
そうは言ってみたものの、やはり気になる。
「あ!そうだ!」
私は名案が浮かんだ。
友達は何やら難しい顔をしていた。
「あえて聞かないけど、多分客観的に見たらよくないことを思いついている気がするわ」
私はその日の放課後、終礼が終わると同時に教室を飛び出した。
いつもなら荒北くんにばいばいするのだがそれも忘れてしまっていた。
「どうしたんだ・・・名前チャン」
荒北くんは不思議そうな顔で私が出て行くのを見ていた。
そして翌日。
調理自習は無事に終わり女子はみんな甘い匂いのした袋を抱えていた。
授業は6限目だったのでこのまま終礼だ。
今日は自転車部がオフの日なので放課後荒北くんとお喋りする約束をしている。
終礼が終わり、みんな部活に行ったり帰路につく。
教室の人がどんどん減っていく中、私と荒北くんはお互い自分の席に座ったまま向かい合わせになり喋っていた。
「そういえば今日女子調理実習だったネ。何作ったの?」
人一倍鼻の利く荒北くんは教室中を包んでいた甘ったるい匂いに少し辟易しているようだ。
「クッキーだよ!」
私は自分が作ったやつを荒北くんに差し出した。
「はい!私のは荒北くんにあげる」
荒北くんは目を丸くしていた。
「・・・名前チャン、自分で食べないの?」
「みんな男の子にあげるみたいだったから。私はあげるならやっぱり荒北くんかなぁって思って・・・」
いつも仲良くしてくれるお礼だよ、と荒北くんにクッキーを近づけると受け取ってくれた。
少し目が泳いでいて照れているみたいだった。
「ありがと。開けてイイ?」
喜んでくれたみたいでよかった!
「もちろん。食べて食べて」
荒北くんがラッピングの紐を解こうとしたとき、スパーンと教室の扉が横にスライドした。
「ワッハッハ!今日は女子が調理実習だったらしいな!大収穫だ!モテる男は辛いな」
そう言って飛び込んできたのは東堂くん。
新開くんも隣にいた。
2人とも両手にクッキーを沢山抱えていた。
「すごいね・・・何個もらったの?」
「7個だ!」
「俺も」
なんと2人も同数。
うちは女子が20人弱なのでほとんどのクッキーがこの2人に流れている。
「あー!負けちゃったぁ・・・」
いきなり机に突っ伏した私に3人は驚いている。
「どした・・・」
私の顔を覗き込む荒北くん。
「ごめんね」
何に謝まられていのかわからないと言った表情を浮かべている。
私は身体を起こすと鞄から包みを取り出した。
「1個、2個、3個、4個、5個・・・」
荒北くんの机に1つずつ乗せていく。
「何、コレ」
荒北くんは赤色の包みを手に取った。
「みんながね、誰にクッキーあげるか昨日話してて新開くんと東堂くんの名前ばっかり挙がってたから。私の1個じゃ荒北くん悲しいだろうなーって思って5人分家で作ったの」
3人とも驚いている。
「やっぱり5人分作っても結局人間は私1人からだから意味ないかなぁ。しかも5人分じゃ足りなかったし」
俯いて何か考えている荒北くんの顔を覗き込んだ。
「名前ちゃんの優しさに荒北は照れておるのだ!」
「よかったなぁ、荒北」
「東堂、新開だまれ」
荒北くんは包みを1つ開けた。
「ハイ」
私の口元に差し出されたクッキー。
「名前チャンも一緒に食べヨ」
「いいの?」
「いいも何も作った本人じゃン」
「わーい、じゃあ食べる」
差し出されたクッキーをそのまま口でパクリと頂いた。
「アキちゃんみたい」
荒北くんの言葉で新開くんと東堂くんもクッキーを出して私に近づけた。
「こっちにもあるぞ」
「名前チャン犬じゃないからァ!」
私達はそのまま教室でクッキーパーティーを開催した。
一通り騒ぎ、寮に戻った俺は名前チャンが調理実習で作ったクッキーを眺めていた。
結局教室では家で作ってきたと言っていた5人分を開けて、これは持って帰ってきた。
「5人分作るとかやりすぎ…」
よく考えると俺が同情されていたことの方が悲しいが、それはこの際横に置いておこう。
俺のために家でも頑張ってくれたことを素直に喜んでおく。
とりあえず1番メインのクッキーの包み紙を俺は慎重に開けた。
そこには大きなクッキーが1枚。
ハート型のクッキーの中にデコペンで絵とメッセージが入っていた。
『いつもありがとう』
文字は慣れないデコペンで頑張ったとわかるぐらいに少しいびつだった。
そして真ん中には狼の絵が。
「いつもありがとうって、父の日かヨ」
俺はクッキーを眺めながらそういえば名前チャンはクレープ好きだったな、今度奢ってやるかァと心の中で思った。
