狼さんと一緒/荒北
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「名前!今日この後暇?暇でしょ?駅前のカフェ行くよ」
荒北くんが部活に向かう後ろ姿を横目で見ながら帰り支度を整えると友達に誘われた。
「えっと…今日はやめておこうかな」
「はい、問答無用。行くよー」
彼女は私の返事はおかまいなしに腕を引張った。
「ええ…!」
少々驚きながらもされるがままに友達についていった。
-----------------
前から気になっていた新しいカフェ。
来たかったけれど今はそんな気分じゃなかった。
目の前でふんふんと鼻歌を歌いながらメニューを見ている彼女とは対照的に私はどよんとした空気を纏っていた。
「ほら、これ可愛くない?」
「あ、ほんとだね」
友達が指差したメニューに目をやった。
「赤ずきんちゃんパンケーキ」と題されたそれ。
赤ずきんちゃんの隣には可愛らしい狼さんが描かれていた。
とても人を食べる狼とは思えない。
赤ずきんちゃんを横目で見ているその目も狙っているというより見守っているように見えた。
「名前はこれにしなよ」
私の心情を悟ったようで勝手にそのまま店員さんに注文をしていた。
十分後に運ばれてきたパンケーキにナイフを入れ、私は一口頬張った。
「おいしい…」
「ね!来れてよかったー」
パクパクと食べ進めるのだが、どうしても赤ずきんちゃんと狼の間に切れ込みを入れることが出来なかった。
私はカラトリーを置いた。
「あのね…」
「ん?」
周りは私達のように女子同士が多く、それぞれ自分達の会話に華を咲かせている。
「私、荒北くんのこと好き」
誰かに言葉で伝えるのは初めてだった。
そして相談に乗ってもらうなら彼女しかいない。
「うん、知ってる」
友達はパンケーキを頬張ったまま答えた。
「この前言ってくれたのに。手遅れになっちゃった」
脳裏に神崎さんの顔が過った。
「気づいた時にはもう遅くて…。笑っちゃうよね」
「まあねー、私ずっと隣で見てて亀以上の遅さに驚いてたわ」
彼女の言葉は鈍器のように重かった。
次の瞬間、パンケーキの写真を撮った時にテーブルに置いた携帯が音を立てた。
「荒北じゃん」
液晶を上に向けていたため、『荒北くん』の文字がよく見えた。
私達の会話が聞こえていたのではないかと思うほどのタイミング。
「出ないの?」
「うん。いい」
私はそのまま鞄の中へしまった。
しばらくすると振動はおさまった。
どこまで会話したっけ…。
彼女との会話の記憶を辿った。
すると今度は友達の携帯が震えた。
「ま、でも手遅れかどうかはまだわかんないんじゃない?」
「どういうこと?」
私は首を傾げた。
「ちょっと電話出るね」
彼女はそのまま店を出てしまった。
-----------------
数分後に戻ってきた友達は機嫌が良さそうだった。
「どうしたの?」
私が問いかけるとふふんと鼻を鳴らした。
「これからいいことが起きるよ」
曖昧な回答に私は首を傾げた。
気にはなかったが、電話の詳細を聞くのは気が引けるのでそれ以上は追求しなかった。
「で、名前はこれからどうしたいの?」
肘をついた彼女とお皿を挟んで目が合った。
「どうしたい…というよりかは離れるべきだと思ってる」
「告白しないの?」
「うん」
逃げだというのは分かってる。
でも告白して振られて気まずくなるぐらいなら徐々に距離を開けてそれでもおはようぐらいの挨拶ができる関係の方がいい。
私の回答に友達は溜息をついた。
「あんたねぇ…」
私の肩がビクリと震えた。
「ちょっとタンマ」
俯く私の頭上から降ってきた、いつものあの安心できるあの声。
ぶっきらぼうだけど優しいあの声。
「なんで…?」
今は部活の時間じゃないの?
「はやっ!さっき電話切ったばっかじゃん」
「舐めんな。チャリ飛ばしてきた」
途中2.3人轢いたかも。
物騒な発言が聞こえたが、頭に入らなかった。
「じゃ、あとはごゆっくり~。会計は荒北よろしく」
「それで貸し借りナシな」
ぽんぽんと2人の間で交わされる会話を私はただ聞くことしかできなかった。
鞄を持って立ち上がった友達に驚いた。
「えっ?帰るの?」
「ちゃんと話し合いな」
私も立ち上がったが、肩を押されて再び椅子に腰を下ろした。
友達はそのまま店を出て、先程までそこにいた彼女の代わりに荒北くんが座った。
店員さんが新しい水を荒北くんに出し、彼女が食べたお皿を下げた。
同時に荒北くんはメニューを見て注文していた。
クレープ食べた時も思ったけど決めるの早いなぁ。
「急にゴメンネ」
メニューを立てかけて水を一口飲んだあと荒北くんはそう言った。
「ううん」
確かにびっくりした。
でも荒北くんに会えてすごく嬉しい。
ここ数日避けていたからか、久しぶりに感じた。
「名前チャンにどうしても今すぐ確認したいことがあるんだけど」
どうしてそんなに心配そうな、不安そうな顔をしているんだろう。
まるで私と同じ表情をする荒北くんに胸が痛んだ。
荒北くんが部活に向かう後ろ姿を横目で見ながら帰り支度を整えると友達に誘われた。
「えっと…今日はやめておこうかな」
「はい、問答無用。行くよー」
彼女は私の返事はおかまいなしに腕を引張った。
「ええ…!」
少々驚きながらもされるがままに友達についていった。
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前から気になっていた新しいカフェ。
来たかったけれど今はそんな気分じゃなかった。
目の前でふんふんと鼻歌を歌いながらメニューを見ている彼女とは対照的に私はどよんとした空気を纏っていた。
「ほら、これ可愛くない?」
「あ、ほんとだね」
友達が指差したメニューに目をやった。
「赤ずきんちゃんパンケーキ」と題されたそれ。
赤ずきんちゃんの隣には可愛らしい狼さんが描かれていた。
とても人を食べる狼とは思えない。
赤ずきんちゃんを横目で見ているその目も狙っているというより見守っているように見えた。
「名前はこれにしなよ」
私の心情を悟ったようで勝手にそのまま店員さんに注文をしていた。
十分後に運ばれてきたパンケーキにナイフを入れ、私は一口頬張った。
「おいしい…」
「ね!来れてよかったー」
パクパクと食べ進めるのだが、どうしても赤ずきんちゃんと狼の間に切れ込みを入れることが出来なかった。
私はカラトリーを置いた。
「あのね…」
「ん?」
周りは私達のように女子同士が多く、それぞれ自分達の会話に華を咲かせている。
「私、荒北くんのこと好き」
誰かに言葉で伝えるのは初めてだった。
そして相談に乗ってもらうなら彼女しかいない。
「うん、知ってる」
友達はパンケーキを頬張ったまま答えた。
「この前言ってくれたのに。手遅れになっちゃった」
脳裏に神崎さんの顔が過った。
「気づいた時にはもう遅くて…。笑っちゃうよね」
「まあねー、私ずっと隣で見てて亀以上の遅さに驚いてたわ」
彼女の言葉は鈍器のように重かった。
次の瞬間、パンケーキの写真を撮った時にテーブルに置いた携帯が音を立てた。
「荒北じゃん」
液晶を上に向けていたため、『荒北くん』の文字がよく見えた。
私達の会話が聞こえていたのではないかと思うほどのタイミング。
「出ないの?」
「うん。いい」
私はそのまま鞄の中へしまった。
しばらくすると振動はおさまった。
どこまで会話したっけ…。
彼女との会話の記憶を辿った。
すると今度は友達の携帯が震えた。
「ま、でも手遅れかどうかはまだわかんないんじゃない?」
「どういうこと?」
私は首を傾げた。
「ちょっと電話出るね」
彼女はそのまま店を出てしまった。
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数分後に戻ってきた友達は機嫌が良さそうだった。
「どうしたの?」
私が問いかけるとふふんと鼻を鳴らした。
「これからいいことが起きるよ」
曖昧な回答に私は首を傾げた。
気にはなかったが、電話の詳細を聞くのは気が引けるのでそれ以上は追求しなかった。
「で、名前はこれからどうしたいの?」
肘をついた彼女とお皿を挟んで目が合った。
「どうしたい…というよりかは離れるべきだと思ってる」
「告白しないの?」
「うん」
逃げだというのは分かってる。
でも告白して振られて気まずくなるぐらいなら徐々に距離を開けてそれでもおはようぐらいの挨拶ができる関係の方がいい。
私の回答に友達は溜息をついた。
「あんたねぇ…」
私の肩がビクリと震えた。
「ちょっとタンマ」
俯く私の頭上から降ってきた、いつものあの安心できるあの声。
ぶっきらぼうだけど優しいあの声。
「なんで…?」
今は部活の時間じゃないの?
「はやっ!さっき電話切ったばっかじゃん」
「舐めんな。チャリ飛ばしてきた」
途中2.3人轢いたかも。
物騒な発言が聞こえたが、頭に入らなかった。
「じゃ、あとはごゆっくり~。会計は荒北よろしく」
「それで貸し借りナシな」
ぽんぽんと2人の間で交わされる会話を私はただ聞くことしかできなかった。
鞄を持って立ち上がった友達に驚いた。
「えっ?帰るの?」
「ちゃんと話し合いな」
私も立ち上がったが、肩を押されて再び椅子に腰を下ろした。
友達はそのまま店を出て、先程までそこにいた彼女の代わりに荒北くんが座った。
店員さんが新しい水を荒北くんに出し、彼女が食べたお皿を下げた。
同時に荒北くんはメニューを見て注文していた。
クレープ食べた時も思ったけど決めるの早いなぁ。
「急にゴメンネ」
メニューを立てかけて水を一口飲んだあと荒北くんはそう言った。
「ううん」
確かにびっくりした。
でも荒北くんに会えてすごく嬉しい。
ここ数日避けていたからか、久しぶりに感じた。
「名前チャンにどうしても今すぐ確認したいことがあるんだけど」
どうしてそんなに心配そうな、不安そうな顔をしているんだろう。
まるで私と同じ表情をする荒北くんに胸が痛んだ。
