狼さんと一緒/荒北
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「はぁ…」
私は鞄を肩にかけてあてもなく歩いた。
いつもならまっすぐ帰宅するけれどこの日はそんな気分にない。
亀よりも遅い速度で俯きながら歩いている私は異様だと思う。
幸い周りには誰も居ない。
トボトボ歩いていたが、万年帰宅部のせいもありすぐに疲れてしまった。公園の中にある自販機に目が向いた。
喉渇いたなぁ。
私は公園へ入った。
あまり人通りのない公園だからか、規模は小さい。
子どもの元気な声も聞こえない。
私は硬貨を入れて何を買うか迷った。
「あ…」
彼がよく飲んでいるそれ。
私は荒北くんの顔を思い浮かべた。
「美味しいのかな…」
炭酸は苦手なので普段飲まない。
けれどこれを買ったら彼を傍に感じられる気がしてボタンを押した。
出てきたペットボトルはよく冷えていた。
私はベンチに腰をおろして蓋を捻った。
プシュッと炭酸特有の音が弾けた。
「うっ…美味しくない」
独特の味と刺激が喉を潤すどころか攻撃されているようだ。
「この美味しさが分からないから私じゃダメなのかな…」
つんと鼻の奥が痛む。
もう自分の気持ちを認めざるを得なかった。
荒北くんのことが好き。
でも気づいた時にはもう遅くて。
引っ込み思案な女の子にあるあるな展開だ。
今まできっとチャンスは沢山あったのに私は見ないふりしてそれを逃してしまったのだ。
私は膝の上のベプシをぎゅっと握りしめた。
「ねェ、なにしてンの?」
人っ子一人いなかったこの場所で頭の上から人の声が降ってきたことに驚き、そしてその喋り方が荒北くんに似ていたので私は勢いよく顔を上げた
「やっぱり!確かお前…」
見知らぬ男子生徒と目があった。
荒北くんじゃない…。
でも制服はうちのやつだ。
彼は何も喋らない私におかまいなしでベンチの隣に腰掛けてきた。
「やっぱり…って?」
私は先程この男の子から出た発言を拾ってしまった。
「いや、あんた有名じゃん!荒北の教育係」
「教育係…」
今まで何度も言われたけれど気にしたことなどなかった。
でも今は違う。
そんなものに私はなりたいんじゃない。
「でも荒北って確か最近……」
彼のいわんとしていることはよくわかった。
そして私の心の傷に塩を塗られた。
「う~…」
私はとうとう涙が堪え切れなくなった。
「え、泣いてンの!?」
私は横に首を振ったが涙は誤魔化せなかった。
「あー、もしかして荒北のこと好きだった感じ?」
いくら同じ学校といっても初対面なのに。
私は俯いて彼の問いに答えなかった。
自分を守るように鞄を膝の上に置き抱え込んだ。
コツンと手に何かが当たった。
それはピンク色の防犯ブザー。
以前トラブルがあったときに荒北くんがくれたものだ。
荒北くんと関係のあるものを見るたびに彼の顔が脳裏をよぎる。
私はそれをぎゅっと握りしめた。
ビーーーーー!!!!
握りしめ方が悪かったのか、間違えてブザーのスイッチを押してしまった。
「あ…」
「うわっ!!びびった」
私はオタオタと音を消す場所を探した。
けれど見つからない。
「名前さん!?」
どうしようと焦っていたとき、目の前にロードバイクが止まった。
「真波くん…」
普段の飄々とした雰囲気とは違い、鋭い目線で隣の男子生徒を睨みつけている。
「名前さんから離れてください」
「あ、えっと…なんか悪ぃ。じゃあ!」
名前も知らない彼はそそくさとその場を去った。
「真波くん…ありがとう。ごめん…この止め方わかる?」
真波くんが防犯ブザーを手に取るとけたたましい音は鳴り止み、公園に静寂が戻った。
「助かった…ありがとう」
「ほんとですよ。自転車乗ってたらいきなり防犯ブザーの音が聞こえて公園覗いたら名前さんが男に迫られてたから」
私は防犯ブザーを止めてくれたお礼を言ったのだが、どうやら彼は勘違いをしているらしい。
けれど確かに困ってはいたからそういう意味でも有り難かった。
私は訂正はせずに曖昧に笑って誤魔化した。
「真波くんはまたサボリ?」
「自主練でーす」
「ほんとかなぁ?」
私はクスッと笑った。
「あ、笑った」
腕を頭の後ろで組んだ真波くんがベンチに座る私を見下ろしている。
「ずーっと悲しそうな顔してたから」
私は心配してもらうような人間じゃない。
だってね、ロードバイクが視界に入ったとき荒北くんが来てくれたって思ったんだ。
いつも困ってるときに助けてくれる荒北くん。
心の何処かでまだ期待してた。
だから真波くんだってわかった時、ちょっとだけ…ほんのちょっとだけがっかりしたんだ。
こんな最低な私、好きになってもらえるはずがない。
荒北くんは3年間で変わった。
振り返れば、当初「彼のためにいる私」が今は「私のためにいる彼」になっているのだ。
みんなともうまくやっていけるし、好きな子だってできたんだ。
彼の傍にいることを諦めよう。
私は弱いから、悲しいことがあったとき逃げる選択しかできない。
荒北くんに貰った防犯ブザーを見えないように中へ閉まった。
私は鞄を肩にかけてあてもなく歩いた。
いつもならまっすぐ帰宅するけれどこの日はそんな気分にない。
亀よりも遅い速度で俯きながら歩いている私は異様だと思う。
幸い周りには誰も居ない。
トボトボ歩いていたが、万年帰宅部のせいもありすぐに疲れてしまった。公園の中にある自販機に目が向いた。
喉渇いたなぁ。
私は公園へ入った。
あまり人通りのない公園だからか、規模は小さい。
子どもの元気な声も聞こえない。
私は硬貨を入れて何を買うか迷った。
「あ…」
彼がよく飲んでいるそれ。
私は荒北くんの顔を思い浮かべた。
「美味しいのかな…」
炭酸は苦手なので普段飲まない。
けれどこれを買ったら彼を傍に感じられる気がしてボタンを押した。
出てきたペットボトルはよく冷えていた。
私はベンチに腰をおろして蓋を捻った。
プシュッと炭酸特有の音が弾けた。
「うっ…美味しくない」
独特の味と刺激が喉を潤すどころか攻撃されているようだ。
「この美味しさが分からないから私じゃダメなのかな…」
つんと鼻の奥が痛む。
もう自分の気持ちを認めざるを得なかった。
荒北くんのことが好き。
でも気づいた時にはもう遅くて。
引っ込み思案な女の子にあるあるな展開だ。
今まできっとチャンスは沢山あったのに私は見ないふりしてそれを逃してしまったのだ。
私は膝の上のベプシをぎゅっと握りしめた。
「ねェ、なにしてンの?」
人っ子一人いなかったこの場所で頭の上から人の声が降ってきたことに驚き、そしてその喋り方が荒北くんに似ていたので私は勢いよく顔を上げた
「やっぱり!確かお前…」
見知らぬ男子生徒と目があった。
荒北くんじゃない…。
でも制服はうちのやつだ。
彼は何も喋らない私におかまいなしでベンチの隣に腰掛けてきた。
「やっぱり…って?」
私は先程この男の子から出た発言を拾ってしまった。
「いや、あんた有名じゃん!荒北の教育係」
「教育係…」
今まで何度も言われたけれど気にしたことなどなかった。
でも今は違う。
そんなものに私はなりたいんじゃない。
「でも荒北って確か最近……」
彼のいわんとしていることはよくわかった。
そして私の心の傷に塩を塗られた。
「う~…」
私はとうとう涙が堪え切れなくなった。
「え、泣いてンの!?」
私は横に首を振ったが涙は誤魔化せなかった。
「あー、もしかして荒北のこと好きだった感じ?」
いくら同じ学校といっても初対面なのに。
私は俯いて彼の問いに答えなかった。
自分を守るように鞄を膝の上に置き抱え込んだ。
コツンと手に何かが当たった。
それはピンク色の防犯ブザー。
以前トラブルがあったときに荒北くんがくれたものだ。
荒北くんと関係のあるものを見るたびに彼の顔が脳裏をよぎる。
私はそれをぎゅっと握りしめた。
ビーーーーー!!!!
握りしめ方が悪かったのか、間違えてブザーのスイッチを押してしまった。
「あ…」
「うわっ!!びびった」
私はオタオタと音を消す場所を探した。
けれど見つからない。
「名前さん!?」
どうしようと焦っていたとき、目の前にロードバイクが止まった。
「真波くん…」
普段の飄々とした雰囲気とは違い、鋭い目線で隣の男子生徒を睨みつけている。
「名前さんから離れてください」
「あ、えっと…なんか悪ぃ。じゃあ!」
名前も知らない彼はそそくさとその場を去った。
「真波くん…ありがとう。ごめん…この止め方わかる?」
真波くんが防犯ブザーを手に取るとけたたましい音は鳴り止み、公園に静寂が戻った。
「助かった…ありがとう」
「ほんとですよ。自転車乗ってたらいきなり防犯ブザーの音が聞こえて公園覗いたら名前さんが男に迫られてたから」
私は防犯ブザーを止めてくれたお礼を言ったのだが、どうやら彼は勘違いをしているらしい。
けれど確かに困ってはいたからそういう意味でも有り難かった。
私は訂正はせずに曖昧に笑って誤魔化した。
「真波くんはまたサボリ?」
「自主練でーす」
「ほんとかなぁ?」
私はクスッと笑った。
「あ、笑った」
腕を頭の後ろで組んだ真波くんがベンチに座る私を見下ろしている。
「ずーっと悲しそうな顔してたから」
私は心配してもらうような人間じゃない。
だってね、ロードバイクが視界に入ったとき荒北くんが来てくれたって思ったんだ。
いつも困ってるときに助けてくれる荒北くん。
心の何処かでまだ期待してた。
だから真波くんだってわかった時、ちょっとだけ…ほんのちょっとだけがっかりしたんだ。
こんな最低な私、好きになってもらえるはずがない。
荒北くんは3年間で変わった。
振り返れば、当初「彼のためにいる私」が今は「私のためにいる彼」になっているのだ。
みんなともうまくやっていけるし、好きな子だってできたんだ。
彼の傍にいることを諦めよう。
私は弱いから、悲しいことがあったとき逃げる選択しかできない。
荒北くんに貰った防犯ブザーを見えないように中へ閉まった。
