狼さんと一緒/荒北
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荒北くんと神崎さんのやりとりを見てしまってから私の気持ちは晴れないまま午後の授業を過ごした。
ボーッとしすぎていて先生に当てられたことにも気づかず、恥をかいてしまった。
「名前チャン、なんかあった?」
荒北くんが心配そうな顔をして尋ねた。
そんな彼の顔を見ると神崎さんを思い出した。
「・・・おーい。名前チャン?」
目の前で手をひらひら翳されて意識が戻った。
「あ、ううん!何でもないの。ちょっと疲れてるだけ」
ヘラッと笑って見せた。
「名前チャンが授業に集中できてないなんて珍しい」
「私にだってそういう日あるよ」
「そうか・・・?」
あまり納得していなさそうな荒北くんだったが、始業のチャイムが鳴ったので会話はそこで終わった。
**********
「じゃ、名前チャンまた明日」
「ばいばい。部活頑張ってね」
荒北くんはスポーツバッグを背負って教室を出て行った。
私も帰ろうと思い、鞄を肩に掛けた。
「おーい、荒北はいるか?」
先生が教室の入り口から顔を出した。
「もう部活に行きましたよ」
私は先生に向かって答えた。
「あちゃー。遅かったかぁ」
先生は困ったように首に手を当てた。
「どうかしたんですか・・・?」
私が恐る恐る尋ねると、先生が待ってましたとばかりに目を輝かせた。
「いやー、これを荒北に借りて返そうと思ったんだが」
そう言って私にタオルを渡した。
話を聞くと、以前泥水を通りがかりの車に掛けられ困っていたところたまたま荒北くんが目撃し貸してくれたとのこと。
「あいつもタオルないと困るだろうと思って早めに返そうと思ったんだが今から会議でな」
「分かりました。渡しておきますね」
私は苦笑しながらタオルを受け取った。
「今から追いかけたらまだ間に合うと思うので」
私は荒北くんに追いつくため歩く速度を速めた。
しかし先生との話を聞いている間にだいぶ距離が開いていたらしく、荒北くんに追いつくことなく自転車部の部室に着いてしまった。
「まだ部活始まってないといいけど・・・」
「あれ、名前さん?」
「真波くん!」
私はここに来た経緯を真波くんに話した。
「荒北さん、まだ部室にいると思います」
そう言って部室の扉を真波くんは開けた。
「どうぞ」
真波くんに促されて中へ入った。
「お邪魔します」
遠慮がちに中へ入ると荒北くんがそこにいた。
「名前チャン?」
「先生からタオル預かったの」
私はタオルを荒北くんに渡した。
「わざわざありがとネ」
申し訳なさそうに荒北くんは受け取った。
「ううん。じゃあ私はこれで・・・」
目的も達成したことなので部活の邪魔にならないように部室を出ようとしたとき、ふと荒北くんの目の前のテーブルに視線が移った。
「あ、これは・・・」
私の視線に気づいた荒北くんは目の前の袋を片付けた。
それは見覚えがあるラッピングだった。
さっき神崎さんが渡していたやつ・・・。
「おお!名前ちゃん来てたのか」
東堂くんの陽気な声が部室に響いた。
「東堂くん、こんにちは」
「聞いてやってくれ、荒北にもとうとうモテ期が来たようでな!」
ニヤニヤする東堂くんは荒北くんの肩に腕を回した。
「差し入れを貰ったようなのだが相手が誰か全然教えてくれないんだ」
「誰でもいいだろォが。つーか、ただ腹が減ったから食ってただけだし」
私はこの会話をどんな顔をして聞いていたのか自分ではわからなかった。
本当に荒北くんが言う通り、ただお腹が減っていてそこに差し入れがあったから食べただけかもしてない。
もしかしたら神崎さんからの差し入れを早く食べたいと思って今食べたのかもしれない。
本当の気持ちは彼自身にしかわからない。
私は東堂くんの話に何て返したらいいかわからなくて、「そうなんだ」と貼り付けた笑顔を返すしかなかった。
「2人とも部活頑張ってね。私もう行くね」
踵を返して私は部室を後にした。
**********
「あれは完全に嫉妬していたな」
東堂は出て行った名前ちゃんの後姿を見ながら腕組をしてウンウンと頷いていた。
「はァ!?つーかてめェ、モテ期とか適当なこと言ってんじゃねェよ!差入れ1個もらっただけじゃねェか」
寮に持って帰ればよかったと心底後悔した。
どうしても腹が減ってこのままじゃ部活に集中できねェし、かといって今から何か買いに行く時間もないと思っていた時、神崎にもらったあれを思い出して食ったらこうなった。
食っているところを東堂に見つかり、誰に貰ったのかしつこく聞かれた。
大体、俺自身神崎にこんなもの貰ったことが未だに信じられない。
男子の間で可愛いと名前がよく上がっていることは俺も知っている。
名前チャンを横に置いておいたとしたら、確かに客観的に見ても顔は整っていると思う。
んでもってあれを渡されたとき、嬉しかったか嬉しくなかったかと言われればまァ嬉しかった。
学年一モテる女子から貰えて、男子高校生冥利に尽きるみたいな。
ただそれだけだった。
最初は名前チャンにあれを食ってるところ見られて焦ったし、余計なことを言う東堂に殺意も芽生えたが、東堂が言うようにもし彼女が少しでも嫉妬してくれていたなら嬉しい。
「なんだこれ・・・?」
マフィンを食うことしか頭になかった俺はその下に入っていたメッセージカードに今更ながら気づいた。
二つ折りにされたそれを開くと、メッセージアプリのIDだった。
「まじか」
神崎のID、他の男子に高く売れそうだな・・・とか現実逃避の考えを一瞬巡らせた後穴が開くほどそれを見つめた。
そりゃ、わざわざ呼び出して差入を渡してくるぐらいだから若干そんな気はしていたが、まさか学年一モテる女子からなんて信じられない。
「うわ、相手の女子結構マジなやつじゃん」
新開がいつの間にか背後に立っていてヒュウと口を鳴らした。
「見てんじゃねェよ」
「いかん!いかんぞ!荒北には名前チャンがいるではないか!!」
東堂、お前さっきと言ってることちげェぞ。
「でも2人は付き合ってるわけじゃないんだろ?じゃ、別に連絡しても問題ないじゃないか」
新開の言葉に俺はハッとした。
確かに俺と名前チャンは付き合ってない。
だからといってこれを登録したら何だか名前チャンを裏切ってる気がして・・・。
ってェ!!どんだけ自意識過剰なんだよ、俺!
それって名前チャンが俺を好きな前提になってるじゃねェか!
でも考えた結果、俺はこのメッセージカードに気づかなかったことにして鞄のポケットに突っ込んだ。
ボーッとしすぎていて先生に当てられたことにも気づかず、恥をかいてしまった。
「名前チャン、なんかあった?」
荒北くんが心配そうな顔をして尋ねた。
そんな彼の顔を見ると神崎さんを思い出した。
「・・・おーい。名前チャン?」
目の前で手をひらひら翳されて意識が戻った。
「あ、ううん!何でもないの。ちょっと疲れてるだけ」
ヘラッと笑って見せた。
「名前チャンが授業に集中できてないなんて珍しい」
「私にだってそういう日あるよ」
「そうか・・・?」
あまり納得していなさそうな荒北くんだったが、始業のチャイムが鳴ったので会話はそこで終わった。
**********
「じゃ、名前チャンまた明日」
「ばいばい。部活頑張ってね」
荒北くんはスポーツバッグを背負って教室を出て行った。
私も帰ろうと思い、鞄を肩に掛けた。
「おーい、荒北はいるか?」
先生が教室の入り口から顔を出した。
「もう部活に行きましたよ」
私は先生に向かって答えた。
「あちゃー。遅かったかぁ」
先生は困ったように首に手を当てた。
「どうかしたんですか・・・?」
私が恐る恐る尋ねると、先生が待ってましたとばかりに目を輝かせた。
「いやー、これを荒北に借りて返そうと思ったんだが」
そう言って私にタオルを渡した。
話を聞くと、以前泥水を通りがかりの車に掛けられ困っていたところたまたま荒北くんが目撃し貸してくれたとのこと。
「あいつもタオルないと困るだろうと思って早めに返そうと思ったんだが今から会議でな」
「分かりました。渡しておきますね」
私は苦笑しながらタオルを受け取った。
「今から追いかけたらまだ間に合うと思うので」
私は荒北くんに追いつくため歩く速度を速めた。
しかし先生との話を聞いている間にだいぶ距離が開いていたらしく、荒北くんに追いつくことなく自転車部の部室に着いてしまった。
「まだ部活始まってないといいけど・・・」
「あれ、名前さん?」
「真波くん!」
私はここに来た経緯を真波くんに話した。
「荒北さん、まだ部室にいると思います」
そう言って部室の扉を真波くんは開けた。
「どうぞ」
真波くんに促されて中へ入った。
「お邪魔します」
遠慮がちに中へ入ると荒北くんがそこにいた。
「名前チャン?」
「先生からタオル預かったの」
私はタオルを荒北くんに渡した。
「わざわざありがとネ」
申し訳なさそうに荒北くんは受け取った。
「ううん。じゃあ私はこれで・・・」
目的も達成したことなので部活の邪魔にならないように部室を出ようとしたとき、ふと荒北くんの目の前のテーブルに視線が移った。
「あ、これは・・・」
私の視線に気づいた荒北くんは目の前の袋を片付けた。
それは見覚えがあるラッピングだった。
さっき神崎さんが渡していたやつ・・・。
「おお!名前ちゃん来てたのか」
東堂くんの陽気な声が部室に響いた。
「東堂くん、こんにちは」
「聞いてやってくれ、荒北にもとうとうモテ期が来たようでな!」
ニヤニヤする東堂くんは荒北くんの肩に腕を回した。
「差し入れを貰ったようなのだが相手が誰か全然教えてくれないんだ」
「誰でもいいだろォが。つーか、ただ腹が減ったから食ってただけだし」
私はこの会話をどんな顔をして聞いていたのか自分ではわからなかった。
本当に荒北くんが言う通り、ただお腹が減っていてそこに差し入れがあったから食べただけかもしてない。
もしかしたら神崎さんからの差し入れを早く食べたいと思って今食べたのかもしれない。
本当の気持ちは彼自身にしかわからない。
私は東堂くんの話に何て返したらいいかわからなくて、「そうなんだ」と貼り付けた笑顔を返すしかなかった。
「2人とも部活頑張ってね。私もう行くね」
踵を返して私は部室を後にした。
**********
「あれは完全に嫉妬していたな」
東堂は出て行った名前ちゃんの後姿を見ながら腕組をしてウンウンと頷いていた。
「はァ!?つーかてめェ、モテ期とか適当なこと言ってんじゃねェよ!差入れ1個もらっただけじゃねェか」
寮に持って帰ればよかったと心底後悔した。
どうしても腹が減ってこのままじゃ部活に集中できねェし、かといって今から何か買いに行く時間もないと思っていた時、神崎にもらったあれを思い出して食ったらこうなった。
食っているところを東堂に見つかり、誰に貰ったのかしつこく聞かれた。
大体、俺自身神崎にこんなもの貰ったことが未だに信じられない。
男子の間で可愛いと名前がよく上がっていることは俺も知っている。
名前チャンを横に置いておいたとしたら、確かに客観的に見ても顔は整っていると思う。
んでもってあれを渡されたとき、嬉しかったか嬉しくなかったかと言われればまァ嬉しかった。
学年一モテる女子から貰えて、男子高校生冥利に尽きるみたいな。
ただそれだけだった。
最初は名前チャンにあれを食ってるところ見られて焦ったし、余計なことを言う東堂に殺意も芽生えたが、東堂が言うようにもし彼女が少しでも嫉妬してくれていたなら嬉しい。
「なんだこれ・・・?」
マフィンを食うことしか頭になかった俺はその下に入っていたメッセージカードに今更ながら気づいた。
二つ折りにされたそれを開くと、メッセージアプリのIDだった。
「まじか」
神崎のID、他の男子に高く売れそうだな・・・とか現実逃避の考えを一瞬巡らせた後穴が開くほどそれを見つめた。
そりゃ、わざわざ呼び出して差入を渡してくるぐらいだから若干そんな気はしていたが、まさか学年一モテる女子からなんて信じられない。
「うわ、相手の女子結構マジなやつじゃん」
新開がいつの間にか背後に立っていてヒュウと口を鳴らした。
「見てんじゃねェよ」
「いかん!いかんぞ!荒北には名前チャンがいるではないか!!」
東堂、お前さっきと言ってることちげェぞ。
「でも2人は付き合ってるわけじゃないんだろ?じゃ、別に連絡しても問題ないじゃないか」
新開の言葉に俺はハッとした。
確かに俺と名前チャンは付き合ってない。
だからといってこれを登録したら何だか名前チャンを裏切ってる気がして・・・。
ってェ!!どんだけ自意識過剰なんだよ、俺!
それって名前チャンが俺を好きな前提になってるじゃねェか!
でも考えた結果、俺はこのメッセージカードに気づかなかったことにして鞄のポケットに突っ込んだ。
