狼さんと一緒/荒北
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荒北くんは自転車競技部に入っていい方向に変わった。
でもやはり第一印象が強烈だったからか、それとも今でも口調が少し悪いからか、あまり荒北くんをよく思わない先生もいた。
この間ちょっと事件がありまして。
窓ガラスを誰かが割ったのだけれど、その犯人が荒北くんだと疑われたのだ。
結局それは濡れ衣で後に新しい犯人が見つかるのだけれど。
先生に「お前は全く変わっていない」とか好き放題言われてこめかみに怒りが浮かび上がって今にも殴りかかりそうだったけど、部活のためにぐっとこらえていたことも私は気づいていた。
「おー、名字」
廊下で呼び止められたので立ち止まって振り返った。
それは荒北くんのことを散々なじっていた数学の先生だった。
「なんでしょうか」
少し冷たい言い方だったかったかもしれない。
「この間は荒北に悪いことしたからなぁ。これ渡しておいてくれ」
そう言って渡されたのは炭酸飲料だった。
「これを・・・荒北くんにですか」
荒北くんへの頼まれごとはこれが初めてではなかった。
1年の時に荒北くんの教育係に任命された私はよく仲介を頼まれる。
つまるところ、怖くて話しかけれないけど荒北くんに用事がある人がそれを私に押し付けるのだ。
「この間は悪かったって言っておいてくれ」
「ご自身で渡された方がよくないですか?」
気まずいからといって教師がこれってどうなんだ。
私が渋っていると先生は私の手に180円を握らせた。
「これでお前も好きなの買っていいから。じゃあよろしく頼んだぞ」
そういってそそくさと去っていった。
「何あれ。賄賂じゃん」
隣で一部始終を見ていた友達が軽蔑した眼差しを先生の背中に向けながら言った。
「っていうか名前も嫌ならもっとはっきり言わないと!」
「頼まれごとをするのが嫌なわけじゃなくて、今回のは先生自身でやるべきなんじゃないのかなって思ったの。でもとりあえず荒北くんのところに行ってくるね」
私は友達と別れて荒北くんのところへ向かった。
今日は昼休みの始め10分だけミーティングしてそのままチャリ部でご飯を食べようと新開くんが荒北くんに言っているのを聞いた。
もう昼休みは中盤に差し掛かっているのでミーティングは終わっているはず。
部室へ向かう途中私は渡された炭酸飲料に目がいった。
「あ・・・これ荒北くんが好きなやつじゃない」
中身はそっくりだけど彼が好きなのはこちらではない。
どうしようかと考えていると手に握りしめていたお金を思い出した。
「これで買おう」
私は部室近くの自販機で改めて荒北くんが好きなベプシを買った。
炭酸飲料を2本抱えて私は部室をノックした。
「はい」
中から出てきたのは福富くんだった。
「こんにちは。荒北くんいますか?」
「ちょうど今みんなで飯を食べていたところだ。入れ」
荒北くんと仲がいいので部員とは顔なじみだった。
というよりは荒北くんが入部したての頃、問題行動を起こさないように見張っていてほしいと頼まれたのだ。
特に東堂くんに。
そのこともあるからか、私は自由に部室を出入りさせてもらっていた。
「名前チャン!どうしたの?」
荒北くんは焼きそばパンを頬張っていた。
「これ、数学の田中先生から」
私が差し出したベプシを荒北くんは受け取った。
「あー、あいつか。うっぜェ」
「先生がね、この間は悪かったって」
「あいつからもらった物とか飲みたくねェ。福チャンいる?」
荒北くんはベプシを福富くんに渡そうとした。
「ねぇ、名前ちゃんもう1本持ってるのは自分用?」
新開くんは私が持っているもう1本に目を向けた。
「本当はね、こっちを荒北くんにって渡されてそのときに私も好きなの買っていいからって180円もらったの。でもこれ荒北くんが好きなやつじゃないからもらったお金で買いなおしたの」
荒北くんの手が止まった。
「でも私炭酸飲料あまり飲まないから新開くんあげる」
新開くんはもう1つのラベルの方を受け取った。
「じゃあ、荒北の持ってるベプシを買ったのは名前ちゃんなんだね」
「そんなそんな!お金は先生のだし!」
ぶんぶんと手を振る私と新開くんの会話を荒北くんはしっかり聞いていた。
「やっぱ飲む」
そう言って荒北くんはベプシの蓋を捻った。
すると中身が勢いよく噴き出した。
「うわッ!」
荒北くんの反射神経はさすがのもので、服につく前にテーブルに置いた。
けれど少し手にはかかってしまい、テーブルにもこぼれている。
「おお!荒北にいたずらを仕掛けるとはやるではないか、名字ちゃん!」
東堂君はいたずらでわざと振ったと勘違いしている。
「違うよ!わざとじゃない・・・ええ何で」
何でだろうと頭を捻っていると自販機前で起きた出来事を思い出した。
「そういえば、買ったときにそのベプシ落としちゃったような・・・落とさなかったような・・・」
「絶対落としたでしょ!」
鋭く突っ込む荒北くん。
「ごめんなさい・・・」
何をやっているんだ私は。
ベプシを届けるどころか災難を届けてしまった。
シュンと肩を落としている私にうっと荒北くんは言葉を詰まらせた。
「とりあえずこれで手を拭いてもらえる・・・?」
私は花柄のハンカチを差し出した。
「汚れるからいーよ」
荒北くんは自分のタオルで拭った。
「じゃあテーブルを・・・」
ハンカチでテーブルを拭こうとした私の手を荒北くんがガシッと掴んだ。
「余計汚れるだろーが」
荒北くんは部室にあった雑巾でテーブルを拭いた。
「あっ・・・私が」
やるよ、と言いかけたときにはもう終わっていた。
「名前チャンは汚いもの触らなくていーの」
そう言って荒北くんは雑巾を絞るために水道へ向かった。
私もその後をついていく。
「本当にごめんね」
「もう聞いた」
水道で雑巾を洗った後、荒北くんは部室とは違う方向に向かった。
「どこ行くの?」
荒北くんは自販機の前で止まった。
ベプシを買いなおすのだろうか。
そう思っていると、彼はリンゴジュースを買った。
最近出た新商品で私が飲みたいなーって思っていたものだった。
「ハイ」
「え!?」
渡されたリンゴジュースを思わず受け取ってしまった。
「名前チャンがもらったお金ベプシになっちゃったんでしょ?」
私は手の中にあるリンゴジュースを眺めた。
「でも、私ベプシあんなことにしちゃったし」
「飲めるからイーヨ」
「荒北くん、ありがとう」
ニッコリほほ笑む私の頭に荒北くんは手を乗せた。
「おつかいできたごほーび」
でもやはり第一印象が強烈だったからか、それとも今でも口調が少し悪いからか、あまり荒北くんをよく思わない先生もいた。
この間ちょっと事件がありまして。
窓ガラスを誰かが割ったのだけれど、その犯人が荒北くんだと疑われたのだ。
結局それは濡れ衣で後に新しい犯人が見つかるのだけれど。
先生に「お前は全く変わっていない」とか好き放題言われてこめかみに怒りが浮かび上がって今にも殴りかかりそうだったけど、部活のためにぐっとこらえていたことも私は気づいていた。
「おー、名字」
廊下で呼び止められたので立ち止まって振り返った。
それは荒北くんのことを散々なじっていた数学の先生だった。
「なんでしょうか」
少し冷たい言い方だったかったかもしれない。
「この間は荒北に悪いことしたからなぁ。これ渡しておいてくれ」
そう言って渡されたのは炭酸飲料だった。
「これを・・・荒北くんにですか」
荒北くんへの頼まれごとはこれが初めてではなかった。
1年の時に荒北くんの教育係に任命された私はよく仲介を頼まれる。
つまるところ、怖くて話しかけれないけど荒北くんに用事がある人がそれを私に押し付けるのだ。
「この間は悪かったって言っておいてくれ」
「ご自身で渡された方がよくないですか?」
気まずいからといって教師がこれってどうなんだ。
私が渋っていると先生は私の手に180円を握らせた。
「これでお前も好きなの買っていいから。じゃあよろしく頼んだぞ」
そういってそそくさと去っていった。
「何あれ。賄賂じゃん」
隣で一部始終を見ていた友達が軽蔑した眼差しを先生の背中に向けながら言った。
「っていうか名前も嫌ならもっとはっきり言わないと!」
「頼まれごとをするのが嫌なわけじゃなくて、今回のは先生自身でやるべきなんじゃないのかなって思ったの。でもとりあえず荒北くんのところに行ってくるね」
私は友達と別れて荒北くんのところへ向かった。
今日は昼休みの始め10分だけミーティングしてそのままチャリ部でご飯を食べようと新開くんが荒北くんに言っているのを聞いた。
もう昼休みは中盤に差し掛かっているのでミーティングは終わっているはず。
部室へ向かう途中私は渡された炭酸飲料に目がいった。
「あ・・・これ荒北くんが好きなやつじゃない」
中身はそっくりだけど彼が好きなのはこちらではない。
どうしようかと考えていると手に握りしめていたお金を思い出した。
「これで買おう」
私は部室近くの自販機で改めて荒北くんが好きなベプシを買った。
炭酸飲料を2本抱えて私は部室をノックした。
「はい」
中から出てきたのは福富くんだった。
「こんにちは。荒北くんいますか?」
「ちょうど今みんなで飯を食べていたところだ。入れ」
荒北くんと仲がいいので部員とは顔なじみだった。
というよりは荒北くんが入部したての頃、問題行動を起こさないように見張っていてほしいと頼まれたのだ。
特に東堂くんに。
そのこともあるからか、私は自由に部室を出入りさせてもらっていた。
「名前チャン!どうしたの?」
荒北くんは焼きそばパンを頬張っていた。
「これ、数学の田中先生から」
私が差し出したベプシを荒北くんは受け取った。
「あー、あいつか。うっぜェ」
「先生がね、この間は悪かったって」
「あいつからもらった物とか飲みたくねェ。福チャンいる?」
荒北くんはベプシを福富くんに渡そうとした。
「ねぇ、名前ちゃんもう1本持ってるのは自分用?」
新開くんは私が持っているもう1本に目を向けた。
「本当はね、こっちを荒北くんにって渡されてそのときに私も好きなの買っていいからって180円もらったの。でもこれ荒北くんが好きなやつじゃないからもらったお金で買いなおしたの」
荒北くんの手が止まった。
「でも私炭酸飲料あまり飲まないから新開くんあげる」
新開くんはもう1つのラベルの方を受け取った。
「じゃあ、荒北の持ってるベプシを買ったのは名前ちゃんなんだね」
「そんなそんな!お金は先生のだし!」
ぶんぶんと手を振る私と新開くんの会話を荒北くんはしっかり聞いていた。
「やっぱ飲む」
そう言って荒北くんはベプシの蓋を捻った。
すると中身が勢いよく噴き出した。
「うわッ!」
荒北くんの反射神経はさすがのもので、服につく前にテーブルに置いた。
けれど少し手にはかかってしまい、テーブルにもこぼれている。
「おお!荒北にいたずらを仕掛けるとはやるではないか、名字ちゃん!」
東堂君はいたずらでわざと振ったと勘違いしている。
「違うよ!わざとじゃない・・・ええ何で」
何でだろうと頭を捻っていると自販機前で起きた出来事を思い出した。
「そういえば、買ったときにそのベプシ落としちゃったような・・・落とさなかったような・・・」
「絶対落としたでしょ!」
鋭く突っ込む荒北くん。
「ごめんなさい・・・」
何をやっているんだ私は。
ベプシを届けるどころか災難を届けてしまった。
シュンと肩を落としている私にうっと荒北くんは言葉を詰まらせた。
「とりあえずこれで手を拭いてもらえる・・・?」
私は花柄のハンカチを差し出した。
「汚れるからいーよ」
荒北くんは自分のタオルで拭った。
「じゃあテーブルを・・・」
ハンカチでテーブルを拭こうとした私の手を荒北くんがガシッと掴んだ。
「余計汚れるだろーが」
荒北くんは部室にあった雑巾でテーブルを拭いた。
「あっ・・・私が」
やるよ、と言いかけたときにはもう終わっていた。
「名前チャンは汚いもの触らなくていーの」
そう言って荒北くんは雑巾を絞るために水道へ向かった。
私もその後をついていく。
「本当にごめんね」
「もう聞いた」
水道で雑巾を洗った後、荒北くんは部室とは違う方向に向かった。
「どこ行くの?」
荒北くんは自販機の前で止まった。
ベプシを買いなおすのだろうか。
そう思っていると、彼はリンゴジュースを買った。
最近出た新商品で私が飲みたいなーって思っていたものだった。
「ハイ」
「え!?」
渡されたリンゴジュースを思わず受け取ってしまった。
「名前チャンがもらったお金ベプシになっちゃったんでしょ?」
私は手の中にあるリンゴジュースを眺めた。
「でも、私ベプシあんなことにしちゃったし」
「飲めるからイーヨ」
「荒北くん、ありがとう」
ニッコリほほ笑む私の頭に荒北くんは手を乗せた。
「おつかいできたごほーび」
