狼さんと一緒/荒北
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この間の田口君事件以降、荒北くんの評価はうなぎ上り。
というより、このクラスで荒北くんを怖がる人はもういない。
徐々に頼れる存在として認知されていっている。
口は悪いけど、根はいい人。
そんなこと言ったら本人は「はァ!?寝言は寝て言え!」とか言いそうだけど。
「名前チャン、何にやにやしてんのォ」
ベプシを飲んでいない方の指で頬をつつかれた。
「ううん。1年の時から荒北くん見てるけど、ほんとこの3年間で変わったなって思って」
もちろんいい方向にね。
そう言うと荒北くんはプイと横を向いた。
「名前チャンのおかげでネ」
「私は何もしてないよ」
とりとめもない話をしていると、向かい合わせになっている私達のところに黒い影が落ちた。
見上げると田口くんが立っていた。
「この間はサンキュ。助かった」
「あー?ほんとにな。お前のゴタゴタに巻き込むんじゃねェよ」
「だから悪かったって!これ詫びの品な」
そう言って田口くんはベプシを机の上に置いていった。
「おー。サンキュ」
そうそう、こういうちょっとしたクラスメイトとのやりとりが増えたと思う。
微笑ましく思っていると今度は「荒北くーん」と女子の声が聞こえた。
「ア?」
続けて呼ばれて少しムスッとした顔をしていたが、ちゃんとその方向へ顔を向けている。
昔は呼ばれても機嫌悪かったらガン無視だったもんね。
ちょいちょいと手招きしている女子の方へ荒北くんはダルそうに向かった。
女子は私に向かってごめんねポーズをしたので胸の前で手を振って気にしていないことを伝えた。
用事があるのは別のクラスの子らしく、うちのクラスの女子が仲介して何やら話している。
荒北くんは眉を顰め至極嫌そうな顔をしていたが、最後の最後で何かを受け取っていた。
その一連の様子をボーッと見ていた私の元に荒北くんが戻ってきた。
「プレゼント?」
可愛らしくラッピングされた包み。
「東堂にだとよ。自分で渡せって言ったんだけどォ・・・」
昔だったら絶対受け取らないし、ましてや荒北くんに頼む人なんていなかった。
「ふふ。荒北くん優しいね」
荒北くんは苦虫を潰したような表情でそれを鞄の中へしまった。
突っ込むんじゃなくてちゃんと潰れないように配慮していたのも見えた。
**********
「名前!あんた今のままでいいの?」
昼休み、ご飯を食べている友人にビシッとお箸を突きつけられた。
「え・・・何が?」
「何がって!あんたぼんやりしていると荒北取られちゃうよ」
「取られるって・・・もともと私のものじゃないし」
なんかこれデジャブな会話。
「この前の時とは状況違うからね!」
以前荒北くんに告白しようとして失敗した彼女を思い出していると、友人も同じ人物を思い浮かべていたらしい。
「っていうか、名前は知らないと思うけど後日あの子が荒北に告白したって知ってた?」
「え、そうなんだ」
「ま、お断りされたみたいだけど」
荒北くん一言もそんなこと言ってなかった。
それもそうか。
いちいち誰に告白されたとか言わないよね。
男子同士では自慢話程度に話すかもしれないけど、荒北くんはそれもしなさそう。
「問題はそこじゃなくて、ここ最近荒北の株は急上昇よ。荒北の教育係ってことで結構名前のことも学年で認知されてるけど、逆に付き合っていないってことでもあんた達有名だからね」
なんだそれは。
付き合っていないことで有名というのもよくわからない。
「うちのクラスで荒北に告ろうなんて馬鹿はいないけど、他のクラスや学年の女子はわかんないわよ」
確かに自転車乗ってる荒北くんかっこいいし、彼の優しさに気づいたらきっと好きになる子いるだろうな。
私は他人事のようにそんなことを考えた。
荒北くんに女の子が告白をする・・・。
「荒北だって健全な男子高校生よ。もし可愛い女の子に告白されたらクラッと来るかもしれないじゃない」
可愛い女の子・・・。
私は学年一可愛いと評判の神崎さんを思い浮かべた。
その彼女が荒北くんに告白して、荒北くんは頭を乱暴に掻きながら「まァ、付き合ってもいいけどォ」と若干染まった頬を隠して返事をする。
「やだな・・・」
ぽつりと呟いた私の言葉を彼女は聞き逃さなかった。
「そうでしょ。嫌でしょ!」
「うーん・・・」
「じゃ、あとは自分で考えてね」
え、ここまで来て最後放置!?
けれど確かに今私の胸の内はモヤッとしている。
その正体について私はすぐに知ることになる。
**********
翌日、私は昼休みも終盤に差し掛かったころフラフラと中庭へ足を運んだ。
天気がいいので午前中になまった身体を解すために日光浴がてら出たのだ。
ふとそこで数十メートル先に見知った後姿を見つけた。
「あ、荒北くんだ!」
おーい、と声を掛けようとしたその手を私はすぐに自分の口元へ持っていって口を塞いだ。
荒北くんに隠れて見えなかったが、彼は1人ではなく女の子と向かい合って立っていたのだ。
そんなレアケースな場面を目撃した。
私以外の女の子と2人でいるところなんてあまり見たことがない。
相手がどんな女の子か気になって、私は野次馬根性丸出しな感じで建物に隠れながらそっと覗き見た。
「(・・・神崎さんっ)」
思わず息をのんだ。
昨日私が思い浮かべたシーンと全く同じなのだ。
相手がどんな子か顔だけ見たら立ち去るつもりだったのに、私はその場から動けなくなってしまった。
2人の会話が耳に入った。
「荒北くん、これ・・・」
昨日と同じでラッピングされた包みを神崎さんは差し出した。
「アー・・・誰に渡してほしいワケ?」
荒北くんが気怠げに聞いた。
昨日といい、今日といい、いっぺんに渡せよ。
そんな彼の心の声が聞こえてきた。
「え!?誰にって・・・荒北くんにだよ?」
「俺ェ!?」
荒北くんは目を瞠った。
「うん・・・貰ってくれないかな?」
「やっ・・・えっと・・・」
相手はあの学年一可愛い神崎さんだ。
「ほんとに俺に?相手間違えてんじゃねェ?」
「合ってるよ!この間のレース見て、かっこいいなって思って・・・」
荒北くんの頬が染まった。
同時に私の胸もキュウと痛む。
受け取らないでほしい。
そんな我儘な感情が私の中で芽生えた。
「・・・ありがとネ」
でも私の邪な考えなど通るはずもなく荒北くんは神崎さんからプレゼントを受け取った。
2人がその場から去った後も私はその場から動けず、予冷が鳴る音を遠くの方で聞いていた。
というより、このクラスで荒北くんを怖がる人はもういない。
徐々に頼れる存在として認知されていっている。
口は悪いけど、根はいい人。
そんなこと言ったら本人は「はァ!?寝言は寝て言え!」とか言いそうだけど。
「名前チャン、何にやにやしてんのォ」
ベプシを飲んでいない方の指で頬をつつかれた。
「ううん。1年の時から荒北くん見てるけど、ほんとこの3年間で変わったなって思って」
もちろんいい方向にね。
そう言うと荒北くんはプイと横を向いた。
「名前チャンのおかげでネ」
「私は何もしてないよ」
とりとめもない話をしていると、向かい合わせになっている私達のところに黒い影が落ちた。
見上げると田口くんが立っていた。
「この間はサンキュ。助かった」
「あー?ほんとにな。お前のゴタゴタに巻き込むんじゃねェよ」
「だから悪かったって!これ詫びの品な」
そう言って田口くんはベプシを机の上に置いていった。
「おー。サンキュ」
そうそう、こういうちょっとしたクラスメイトとのやりとりが増えたと思う。
微笑ましく思っていると今度は「荒北くーん」と女子の声が聞こえた。
「ア?」
続けて呼ばれて少しムスッとした顔をしていたが、ちゃんとその方向へ顔を向けている。
昔は呼ばれても機嫌悪かったらガン無視だったもんね。
ちょいちょいと手招きしている女子の方へ荒北くんはダルそうに向かった。
女子は私に向かってごめんねポーズをしたので胸の前で手を振って気にしていないことを伝えた。
用事があるのは別のクラスの子らしく、うちのクラスの女子が仲介して何やら話している。
荒北くんは眉を顰め至極嫌そうな顔をしていたが、最後の最後で何かを受け取っていた。
その一連の様子をボーッと見ていた私の元に荒北くんが戻ってきた。
「プレゼント?」
可愛らしくラッピングされた包み。
「東堂にだとよ。自分で渡せって言ったんだけどォ・・・」
昔だったら絶対受け取らないし、ましてや荒北くんに頼む人なんていなかった。
「ふふ。荒北くん優しいね」
荒北くんは苦虫を潰したような表情でそれを鞄の中へしまった。
突っ込むんじゃなくてちゃんと潰れないように配慮していたのも見えた。
**********
「名前!あんた今のままでいいの?」
昼休み、ご飯を食べている友人にビシッとお箸を突きつけられた。
「え・・・何が?」
「何がって!あんたぼんやりしていると荒北取られちゃうよ」
「取られるって・・・もともと私のものじゃないし」
なんかこれデジャブな会話。
「この前の時とは状況違うからね!」
以前荒北くんに告白しようとして失敗した彼女を思い出していると、友人も同じ人物を思い浮かべていたらしい。
「っていうか、名前は知らないと思うけど後日あの子が荒北に告白したって知ってた?」
「え、そうなんだ」
「ま、お断りされたみたいだけど」
荒北くん一言もそんなこと言ってなかった。
それもそうか。
いちいち誰に告白されたとか言わないよね。
男子同士では自慢話程度に話すかもしれないけど、荒北くんはそれもしなさそう。
「問題はそこじゃなくて、ここ最近荒北の株は急上昇よ。荒北の教育係ってことで結構名前のことも学年で認知されてるけど、逆に付き合っていないってことでもあんた達有名だからね」
なんだそれは。
付き合っていないことで有名というのもよくわからない。
「うちのクラスで荒北に告ろうなんて馬鹿はいないけど、他のクラスや学年の女子はわかんないわよ」
確かに自転車乗ってる荒北くんかっこいいし、彼の優しさに気づいたらきっと好きになる子いるだろうな。
私は他人事のようにそんなことを考えた。
荒北くんに女の子が告白をする・・・。
「荒北だって健全な男子高校生よ。もし可愛い女の子に告白されたらクラッと来るかもしれないじゃない」
可愛い女の子・・・。
私は学年一可愛いと評判の神崎さんを思い浮かべた。
その彼女が荒北くんに告白して、荒北くんは頭を乱暴に掻きながら「まァ、付き合ってもいいけどォ」と若干染まった頬を隠して返事をする。
「やだな・・・」
ぽつりと呟いた私の言葉を彼女は聞き逃さなかった。
「そうでしょ。嫌でしょ!」
「うーん・・・」
「じゃ、あとは自分で考えてね」
え、ここまで来て最後放置!?
けれど確かに今私の胸の内はモヤッとしている。
その正体について私はすぐに知ることになる。
**********
翌日、私は昼休みも終盤に差し掛かったころフラフラと中庭へ足を運んだ。
天気がいいので午前中になまった身体を解すために日光浴がてら出たのだ。
ふとそこで数十メートル先に見知った後姿を見つけた。
「あ、荒北くんだ!」
おーい、と声を掛けようとしたその手を私はすぐに自分の口元へ持っていって口を塞いだ。
荒北くんに隠れて見えなかったが、彼は1人ではなく女の子と向かい合って立っていたのだ。
そんなレアケースな場面を目撃した。
私以外の女の子と2人でいるところなんてあまり見たことがない。
相手がどんな女の子か気になって、私は野次馬根性丸出しな感じで建物に隠れながらそっと覗き見た。
「(・・・神崎さんっ)」
思わず息をのんだ。
昨日私が思い浮かべたシーンと全く同じなのだ。
相手がどんな子か顔だけ見たら立ち去るつもりだったのに、私はその場から動けなくなってしまった。
2人の会話が耳に入った。
「荒北くん、これ・・・」
昨日と同じでラッピングされた包みを神崎さんは差し出した。
「アー・・・誰に渡してほしいワケ?」
荒北くんが気怠げに聞いた。
昨日といい、今日といい、いっぺんに渡せよ。
そんな彼の心の声が聞こえてきた。
「え!?誰にって・・・荒北くんにだよ?」
「俺ェ!?」
荒北くんは目を瞠った。
「うん・・・貰ってくれないかな?」
「やっ・・・えっと・・・」
相手はあの学年一可愛い神崎さんだ。
「ほんとに俺に?相手間違えてんじゃねェ?」
「合ってるよ!この間のレース見て、かっこいいなって思って・・・」
荒北くんの頬が染まった。
同時に私の胸もキュウと痛む。
受け取らないでほしい。
そんな我儘な感情が私の中で芽生えた。
「・・・ありがとネ」
でも私の邪な考えなど通るはずもなく荒北くんは神崎さんからプレゼントを受け取った。
2人がその場から去った後も私はその場から動けず、予冷が鳴る音を遠くの方で聞いていた。
