狼さんと一緒/荒北
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「名前さん、こんにちは」
天気がいいので少し散歩しようと自宅から出てふらふらしていた土曜日の朝。
聞き慣れないけれど聞いたことのある声に呼ばれて振り返ると、自転車に乗ったニコニコ笑顔の少年がそこにいた。
「あ・・・確か真波くん!」
合宿の時に挨拶をした記憶を辿った。
名前を思い出せたことに一安心。
「偶然ですね。何しているんですか?」
「散歩。真波くん部活は?」
「遅刻です」
ペロっと舌を出して全然遅刻していることに対して反省していなさそうだし、反省する気もなさそうだ。
「今から部活行こうと思ってたんですけど・・・せっかく名前さんに会えたんで予定変更!」
「え、だって部活遅刻してるんだよね!?急いだ方がいいよ」
「そんな気分じゃなくなりました」
悪びれもせずどこまでもマイペースな真波くん。
そういえば荒北くんは真波くんのことを「不思議チャン」と表現していた。
確かに何を考えているのかよく分からない。
悪い人ではなさそうだけれど。
「お散歩なら僕オススメのスポットを紹介しますよ!ちょっとハードですけど、いかがですか?」
ちょっとハードな散歩ってどんなんだろう。
「さ、行きましょ!」
私が考えあぐねていると真波くんは返事を聞かないまま歩き出した。
10分ほど歩くと山のふもとについた。
真波くんはそのまま山の中へ続く道へと歩みを進めた。
「え、山を登るの!?」
「頂上までは行かないですよ。途中まで。山が僕達を呼んでいますよ」
絶対呼んでない、気のせいだよ真波くん。
けれど私は先に進む真波くんの背中をつい追いかけてしまった。
というよりやはり彼が部活をサボっていることを黙認していいのだろうか。
私は迷った末、真波くんに気づかれないよう念のため荒北くんに連絡を入れた。
**********
今日も今日とて部活に精を出している俺。
いつも通りのメニューをこなし、休憩に入った。
携帯をいじっていると名前チャンからの通知が入った。
通知をタップしてトーク画面に飛ぶと目が点になった。
「荒北、どうした?」
画面を見て固まったままの俺を不審に思った東堂が話しかけてきた。
「真波がいる・・・」
「真波?そういえばあいつまたサボリか・・・」
東堂はあたりをキョロキョロ見回して真波の姿を探した。
「ちげェよ!ここに!真波がいる!!」
俺は東堂に携帯の画面を向けた。
「なっ・・・」
名前チャンからのメッセージには画像が添付してあった。
それは真波の後姿だ。
さらには「今、真波くんと一緒にいます」と言葉が添えられていた。
どうしてこの2人が一緒に?
接点などなかったはず・・・。
けれど思い返せば合宿で面識はあった。
まさかそこから仲良くなったのか?
俺の邪推に気づいた東堂が慌てて俺の肩を掴んだ。
「よく考えてみろ、荒北。名前チャンがこれをわざわざ送ってきたということは真波が一方的に連れ回している可能性が高い。そこで困って荒北に連絡したんじゃないのか?」
東堂の言うことには一理あった。
もしデートしているというのであれば、わざわざ俺に報告するのはおかしい。
しかもこの画像よく見てみると山を登っているようだ。
「どこの山だ・・・これ」
きっと学校の近くだろう。
しかし思い当たる場所が数か所あった。
俺は返事を返した。
「今どこにいンの?」
数分後、名前チャンから位置情報が画像で送られてきた。
すぐに俺はジャージを羽織った。
「福チャン。ちょい真波を連れ戻してくる」
俺はビアンキに跨って名前チャンの元へと向かった。
**********
「気持ちいいですね~」
「そうだね」
真波くんが連れてきてくれた場所は山の中腹で、私みたいな鈍足でもなんとか辿り着くことができた。
しかし真波くんは涼しい顔をしているが私は普段の運動量を遥かに超えているため背中に汗が伝うのを感じた。
ベンチがあったのでそこへ腰を下ろした。
開けた視界には街並が広がっている。
夜になったら綺麗なんだろうな、と思った。
「一緒にいるところを荒北さんに見られたら怒られそうだなぁ」
真波くんは腕を頭の上で組みながらへらっと笑った。
私はどきっと心臓が跳ねた。
もし真波くんが事故にあっているのではと部活内で騒動になっていたらまずいと思って荒北くんには先ほど連絡してしまったからだ。
きっと、あれで真波くんは無事だということは理解してもらえたはずだ。
あとは翌日部活でこってり絞られないかの心配はあるが、そこはサボった真波くんが悪い。
私はうんうんと頷いて自分を正当化した。
「お前ら、何やってンの」
私は背後からいつも一緒にいる彼の声が聞こえて驚いて振り向いた。
「えっ・・・荒北くん!?」
どうしてここに・・・。
荒北くんは肩で息をしている。
「わー、噂をすればなんとやらですね」
「堂々とサボってんじゃねェよ!」
スパーンと真波くんの頭を景気良く叩いた荒北くんは傍にあった自販機で飲み物を買って呼吸を整えている。
「い、痛いですよ」
「お前が悪ィんだろうが!名前チャン連れ回しやがって!」
「あ、荒北くん・・・落ち着いて」
私は2人の間に身を滑り込ませた。
「ここがバレちゃうなんて・・・名前さんに関する勘はピカイチですね」
「うっせェ」
勘などではなく位置情報という現代文明を使用した結果だということは真波くんには伝えないでおこう。
「えっと・・・荒北くんは真波くんを連れ戻しにきたんだよね?」
「ま、そんな感じ」
「じゃあ、2人とも先に自転車で学校まで戻って!私はゆっくり歩いて来た道戻るから」
荒北くんは部活を抜けてきている。
私に合わせて下山していたら部活が終わってしまうかもしれない。
そう思って提案した。
「置いていけるわけねェ」
「大丈夫だよ、子どもじゃないし。早くしないと部活終わっちゃうでしょ?」
「つーか、真波。お前のせいでこうなってンだからお前の自転車名前チャンに貸してお前が歩いて帰れよ・・・・・てェ!真波いねェ!」
私と荒北くんがやりとりをしている間に真波くんは忽然と姿を消していた。
「え、どこ行っちゃったの?」
私はキョロキョロ辺りを見回した。
「あ、あそこ!」
ものすごいスピードで山を下っている真波くんの背中が見えた。
「先に行ってますねー、荒北さん!!」
遥か遠くから真波くんの声が聞こえた。
「あんにゃろ・・・」
荒北くんのこめかみがピクピクを動いている。
そして自転車に跨ってハンドルを握った。
追いかけるようだ。
「ばいばい、荒北くん。部活頑張ってね」
私が別れの声かけをすると荒北くんはハッと我に返り跨っていた自転車を降りた。
「わりィ。一瞬怒りで名前チャンの存在忘れた」
「いいよいいよ。真波くん追いかけて」
「いや、いい」
プシューっと怒りのボルテージは下降したらしく、いつもの荒北くんに戻った。
結局、荒北くんは自転車を押して私と歩いて下山してくれた。
「何でこうなったの」
荒北くんの質問にこれまでの経緯を説明した。
「なんなんだよ、あの不思議チャンは」
私の説明を聞いた荒北くんはため息をついた。
「手のかかる後輩がいて大変だね」
「ほんとにな」
「でも、荒北くんって優しい先輩だね」
「ンなことねェよ」
「優しいよ。だってわざわざこんなところまで後輩を迎えに来て」
私がそういうと荒北くんは黙りこんだ。
「荒北くん?」
黙り込んだまま自転車をゆっくり押す荒北くんを私は見つめた。
「真波を迎えに来たわけじゃねェ。・・・名前チャンが心配だったから」
あいつがサボるのはいつものことだしな、と付け加えた荒北くん。
「心配してくれてありがとう」
私がお礼を言うと荒北くんから「どういたしまして」と返ってきた。
「くしゅん!」
突如出てきたくしゃみ。
私はぶるっと身体を震わせた。
「寒ィの?」
「登ってきたときに掻いた汗が引いちゃって」
苦笑すると荒北くんは自分の上着を脱いで私の肩にかけてくれた。
「部活してたから汗くさいかもだケド・・・」
「ありがとう!全然くさくないよ。むしろ柔軟剤のいい香りする」
私はくんくんと袖口に鼻をつけると荒北くんに「ヤメレ」と小突かれた。
他愛もない話をしながら私達はゆっくり散歩しながら山を下りた。
天気がいいので少し散歩しようと自宅から出てふらふらしていた土曜日の朝。
聞き慣れないけれど聞いたことのある声に呼ばれて振り返ると、自転車に乗ったニコニコ笑顔の少年がそこにいた。
「あ・・・確か真波くん!」
合宿の時に挨拶をした記憶を辿った。
名前を思い出せたことに一安心。
「偶然ですね。何しているんですか?」
「散歩。真波くん部活は?」
「遅刻です」
ペロっと舌を出して全然遅刻していることに対して反省していなさそうだし、反省する気もなさそうだ。
「今から部活行こうと思ってたんですけど・・・せっかく名前さんに会えたんで予定変更!」
「え、だって部活遅刻してるんだよね!?急いだ方がいいよ」
「そんな気分じゃなくなりました」
悪びれもせずどこまでもマイペースな真波くん。
そういえば荒北くんは真波くんのことを「不思議チャン」と表現していた。
確かに何を考えているのかよく分からない。
悪い人ではなさそうだけれど。
「お散歩なら僕オススメのスポットを紹介しますよ!ちょっとハードですけど、いかがですか?」
ちょっとハードな散歩ってどんなんだろう。
「さ、行きましょ!」
私が考えあぐねていると真波くんは返事を聞かないまま歩き出した。
10分ほど歩くと山のふもとについた。
真波くんはそのまま山の中へ続く道へと歩みを進めた。
「え、山を登るの!?」
「頂上までは行かないですよ。途中まで。山が僕達を呼んでいますよ」
絶対呼んでない、気のせいだよ真波くん。
けれど私は先に進む真波くんの背中をつい追いかけてしまった。
というよりやはり彼が部活をサボっていることを黙認していいのだろうか。
私は迷った末、真波くんに気づかれないよう念のため荒北くんに連絡を入れた。
**********
今日も今日とて部活に精を出している俺。
いつも通りのメニューをこなし、休憩に入った。
携帯をいじっていると名前チャンからの通知が入った。
通知をタップしてトーク画面に飛ぶと目が点になった。
「荒北、どうした?」
画面を見て固まったままの俺を不審に思った東堂が話しかけてきた。
「真波がいる・・・」
「真波?そういえばあいつまたサボリか・・・」
東堂はあたりをキョロキョロ見回して真波の姿を探した。
「ちげェよ!ここに!真波がいる!!」
俺は東堂に携帯の画面を向けた。
「なっ・・・」
名前チャンからのメッセージには画像が添付してあった。
それは真波の後姿だ。
さらには「今、真波くんと一緒にいます」と言葉が添えられていた。
どうしてこの2人が一緒に?
接点などなかったはず・・・。
けれど思い返せば合宿で面識はあった。
まさかそこから仲良くなったのか?
俺の邪推に気づいた東堂が慌てて俺の肩を掴んだ。
「よく考えてみろ、荒北。名前チャンがこれをわざわざ送ってきたということは真波が一方的に連れ回している可能性が高い。そこで困って荒北に連絡したんじゃないのか?」
東堂の言うことには一理あった。
もしデートしているというのであれば、わざわざ俺に報告するのはおかしい。
しかもこの画像よく見てみると山を登っているようだ。
「どこの山だ・・・これ」
きっと学校の近くだろう。
しかし思い当たる場所が数か所あった。
俺は返事を返した。
「今どこにいンの?」
数分後、名前チャンから位置情報が画像で送られてきた。
すぐに俺はジャージを羽織った。
「福チャン。ちょい真波を連れ戻してくる」
俺はビアンキに跨って名前チャンの元へと向かった。
**********
「気持ちいいですね~」
「そうだね」
真波くんが連れてきてくれた場所は山の中腹で、私みたいな鈍足でもなんとか辿り着くことができた。
しかし真波くんは涼しい顔をしているが私は普段の運動量を遥かに超えているため背中に汗が伝うのを感じた。
ベンチがあったのでそこへ腰を下ろした。
開けた視界には街並が広がっている。
夜になったら綺麗なんだろうな、と思った。
「一緒にいるところを荒北さんに見られたら怒られそうだなぁ」
真波くんは腕を頭の上で組みながらへらっと笑った。
私はどきっと心臓が跳ねた。
もし真波くんが事故にあっているのではと部活内で騒動になっていたらまずいと思って荒北くんには先ほど連絡してしまったからだ。
きっと、あれで真波くんは無事だということは理解してもらえたはずだ。
あとは翌日部活でこってり絞られないかの心配はあるが、そこはサボった真波くんが悪い。
私はうんうんと頷いて自分を正当化した。
「お前ら、何やってンの」
私は背後からいつも一緒にいる彼の声が聞こえて驚いて振り向いた。
「えっ・・・荒北くん!?」
どうしてここに・・・。
荒北くんは肩で息をしている。
「わー、噂をすればなんとやらですね」
「堂々とサボってんじゃねェよ!」
スパーンと真波くんの頭を景気良く叩いた荒北くんは傍にあった自販機で飲み物を買って呼吸を整えている。
「い、痛いですよ」
「お前が悪ィんだろうが!名前チャン連れ回しやがって!」
「あ、荒北くん・・・落ち着いて」
私は2人の間に身を滑り込ませた。
「ここがバレちゃうなんて・・・名前さんに関する勘はピカイチですね」
「うっせェ」
勘などではなく位置情報という現代文明を使用した結果だということは真波くんには伝えないでおこう。
「えっと・・・荒北くんは真波くんを連れ戻しにきたんだよね?」
「ま、そんな感じ」
「じゃあ、2人とも先に自転車で学校まで戻って!私はゆっくり歩いて来た道戻るから」
荒北くんは部活を抜けてきている。
私に合わせて下山していたら部活が終わってしまうかもしれない。
そう思って提案した。
「置いていけるわけねェ」
「大丈夫だよ、子どもじゃないし。早くしないと部活終わっちゃうでしょ?」
「つーか、真波。お前のせいでこうなってンだからお前の自転車名前チャンに貸してお前が歩いて帰れよ・・・・・てェ!真波いねェ!」
私と荒北くんがやりとりをしている間に真波くんは忽然と姿を消していた。
「え、どこ行っちゃったの?」
私はキョロキョロ辺りを見回した。
「あ、あそこ!」
ものすごいスピードで山を下っている真波くんの背中が見えた。
「先に行ってますねー、荒北さん!!」
遥か遠くから真波くんの声が聞こえた。
「あんにゃろ・・・」
荒北くんのこめかみがピクピクを動いている。
そして自転車に跨ってハンドルを握った。
追いかけるようだ。
「ばいばい、荒北くん。部活頑張ってね」
私が別れの声かけをすると荒北くんはハッと我に返り跨っていた自転車を降りた。
「わりィ。一瞬怒りで名前チャンの存在忘れた」
「いいよいいよ。真波くん追いかけて」
「いや、いい」
プシューっと怒りのボルテージは下降したらしく、いつもの荒北くんに戻った。
結局、荒北くんは自転車を押して私と歩いて下山してくれた。
「何でこうなったの」
荒北くんの質問にこれまでの経緯を説明した。
「なんなんだよ、あの不思議チャンは」
私の説明を聞いた荒北くんはため息をついた。
「手のかかる後輩がいて大変だね」
「ほんとにな」
「でも、荒北くんって優しい先輩だね」
「ンなことねェよ」
「優しいよ。だってわざわざこんなところまで後輩を迎えに来て」
私がそういうと荒北くんは黙りこんだ。
「荒北くん?」
黙り込んだまま自転車をゆっくり押す荒北くんを私は見つめた。
「真波を迎えに来たわけじゃねェ。・・・名前チャンが心配だったから」
あいつがサボるのはいつものことだしな、と付け加えた荒北くん。
「心配してくれてありがとう」
私がお礼を言うと荒北くんから「どういたしまして」と返ってきた。
「くしゅん!」
突如出てきたくしゃみ。
私はぶるっと身体を震わせた。
「寒ィの?」
「登ってきたときに掻いた汗が引いちゃって」
苦笑すると荒北くんは自分の上着を脱いで私の肩にかけてくれた。
「部活してたから汗くさいかもだケド・・・」
「ありがとう!全然くさくないよ。むしろ柔軟剤のいい香りする」
私はくんくんと袖口に鼻をつけると荒北くんに「ヤメレ」と小突かれた。
他愛もない話をしながら私達はゆっくり散歩しながら山を下りた。
