狼さんと一緒/荒北
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荒北くんに放課後クレープを食べにいくお誘いを受けた。
いつぞやの調理実習で作ったクッキーのお礼という名目で。
気にしなくていいのに、荒北くんは律儀だなー。
荒北くんと出かけるのは初めてではないが、ワクワクした気持ちが抑えきれず放課後が待ち遠しかった。
*****
いつもより長く感じた授業が全て終了した。
「名前チャン、行こうぜ」
荒北くんが鞄を持ち立ち上がった。
「うん」
「新開達に見つかるとうぜェからとっとと出るか」
確かに新開くんや東堂くんと出くわしたら十中八九彼らもついてくるだろう。私は構わないが、荒北くんが嫌がった。
2人並んで早々と校舎を後にした。
所変わり、公園の横にワゴン車で出店しているクレープ屋さん。
前々から行きたいと思っていたところだ。
立て看板の前に立ち、何を頼むか悩んだ。
「俺はクリームブリュレクレープにする」
荒北くんは即決した。
大体彼は何に関しても判断が早い。
きっとレースでも役に立っているんだろうなぁと思った。
片や私は優柔不断の何物でもない。
「うーん。これも美味しそうだけどこっちも捨てがたいなぁ・・・。あ、ごめんね。待たせちゃって」
「時間あるしゆっくり決めればイイヨ」
私達の他に待っているお客さんもいない。
「うーん・・・よし。私はイチゴバナナクレープ!」
私はいつも悩んだ結果、王道を選択してしまう。
変わり種に挑戦する勇気がないのだ。
「これとこれで」
荒北くんは私の分も一緒に注文してくれた。
「お金・・・」
私が自分の分を取り出そうすると制された。
「クッキーのお礼だからネ」
「ありがとう」
荒北くんは2人分のクレープを受け取ると公園へ入っていきベンチに腰かけた。
私のその隣に座った。
「ん」
渡されたイチゴバナナの方を受け取った。
「ありがとう。いただきます」
私は念願のクレープを口に運んだ。
「おいしーい」
イチゴとクリームの甘さが口の中に広がった。
「よかったネ」
私の反応に満足した荒北くんも自分のクレープを齧った。
「あ、見て。クレープデートしてるよ。私達も食べよう」
公園にいた大学生ぐらいのカップルが腕を組んでクレープ屋さんに向かっていった。
そうか、傍から見たらデートに見えるんだ。
っていうか、これは実際にデートなのかな。
荒北くんをチラリと見ると顔が少し赤かった。
「私と一緒にクレープ食べるの恥ずかしい?ごめんね」
年頃の男子高校生なのだから女子と一緒にクレープを食べているところを見られるのが嫌だったのかもしれない。
そう思って聞いた。
すると荒北くんはボソリと「ちげェよ」と答えた。
「やっぱデートに見えるんだなって思っただけ」
「あ、私も思ったよ!」
同意すると荒北くんは少し驚いた様子だった。
「じゃあ、一層のこともうちょっとデートっぽいことしてみようよ!はい!」
私は荒北くんに自分の食べかけのクレープを差し出した。
「デートだったらお互いの一口交換したりするかなって」
こういうシーンを恋愛映画で見たことがあることを思い出したので実践してみた。
「え・・・」
荒北くんは固まってしまった。
「ごめん、嫌だった?」
私は差し出したクレープを引っ込めた。
荒北くんは首を振ると私に自分が持っていた方を差し出した。
「はい」
私は荒北くんが差し出したクレープを受け取り、代わりに自分のやつを渡した。
「え、何これ!すごく美味しい」
一口食べて私は驚きの声を上げた。
荒北くんのクリームブリュレクレープは上のカラメル砂糖が芳ばしく色づいており、それを割ったら中からブリュレが出てきた。
カスタードの甘味がなんとも言えないほどに美味しい。
こっちにすればよかったなぁ・・・。
もちろん、イチゴバナナの方も美味しいのだが。
「はい、ありがとう」
私は荒北くんのクレープを返そうとした。
「名前チャン、そっち食べなよ。俺こっち食べるから」
荒北くんはそのままイチゴバナナクレープを食べ続けた。
「え?」
「そっちの方が好きって顔に書いてる」
「え、うそ!?」
私は自分の顔に手を当てた。
「名前チャン、思ったこと顔に出すぎ」
荒北くんは歯を見せて笑った。
私は恥ずかしくて俯いた。
「いいの・・・?」
きっと荒北くんもこっちの方が良かったはずなのに。
「俺は名前チャンが喜んでくれる方がイイ」
「ありがとう!」
私はお礼を言ってそのままクリームブリュレを食べ続けた。
******
ここ最近合宿やらで忙しくてなかなかあの時の礼ができていなかったがやっとできた。
俺は名前チャンがここのクレープを食べたがっているという情報を入手していた。
いつも王道を選ぶことを知っていた俺は、あえてちょっと趣向が違うのにしておいた。
名前チャンが違う味も楽しめたらと思っての選択だった。
2つ分の料金を払い、商品を受け取った俺らはベンチに腰かけた。
「あ、見て。クレープデートしてるよ。私達も食べよう」
途中大学生ぐらいのカップルに茶々を入れられ、わずかばかりに苛ついた。
でもカップルに間違われることは嫌ではなかった。
慣れているという側面もあるが。
そしてクレープにテンションが上がっている名前チャンはいつもなら言わないような「デートごっこ」をしようと提案した。
「デートだったらお互いの一口交換したりするかなって」
そう言って彼女は自分のクレープを俺に差し出した。
俺の目に映る名前チャンの瞳がキラキラしていて眩しい。
あれ、こういうのどっかで見たことある。
あれだ。
今流行りの「デートなう」ってやつだ。
SNS中毒の奴らがこぞってアップしているやつ。
つーか女優とかモデルが自分のデートなう写真をネットに載せているのを見るとそのあざとさに若干苛つく。
でも目の前にいる彼女を見て、少しだけあの写真の影響を理解した。
固まっていた俺に交換を嫌がっていると勘違いした名前チャンはクレープを引っ込めた。
俺は訂正して自分のを渡した。
それを食べた瞬間の名前チャンの反応は今日一番だった。
よっぽど気に入ったらしく、表情が蕩けている。
「名前チャン、そっち食べなよ。俺こっち食べるから」
クレープを返そうとするその手を制した。
「いいの・・・?」
遠慮がちに聞く名前チャンに俺は頷いた。
もともとお礼だし、ぶっちゃけ俺はクレープにそこまで興味はない。
名前チャンが喜んでくれるなら何でもよかった。
「ありがとう!」
嬉しそうに笑って続きを食べる彼女に俺も笑った。
もしかしたら名前チャン自身より名前チャンの好みを知っているかもしれない。
そんな自信がついた放課後デートだった。
いつぞやの調理実習で作ったクッキーのお礼という名目で。
気にしなくていいのに、荒北くんは律儀だなー。
荒北くんと出かけるのは初めてではないが、ワクワクした気持ちが抑えきれず放課後が待ち遠しかった。
*****
いつもより長く感じた授業が全て終了した。
「名前チャン、行こうぜ」
荒北くんが鞄を持ち立ち上がった。
「うん」
「新開達に見つかるとうぜェからとっとと出るか」
確かに新開くんや東堂くんと出くわしたら十中八九彼らもついてくるだろう。私は構わないが、荒北くんが嫌がった。
2人並んで早々と校舎を後にした。
所変わり、公園の横にワゴン車で出店しているクレープ屋さん。
前々から行きたいと思っていたところだ。
立て看板の前に立ち、何を頼むか悩んだ。
「俺はクリームブリュレクレープにする」
荒北くんは即決した。
大体彼は何に関しても判断が早い。
きっとレースでも役に立っているんだろうなぁと思った。
片や私は優柔不断の何物でもない。
「うーん。これも美味しそうだけどこっちも捨てがたいなぁ・・・。あ、ごめんね。待たせちゃって」
「時間あるしゆっくり決めればイイヨ」
私達の他に待っているお客さんもいない。
「うーん・・・よし。私はイチゴバナナクレープ!」
私はいつも悩んだ結果、王道を選択してしまう。
変わり種に挑戦する勇気がないのだ。
「これとこれで」
荒北くんは私の分も一緒に注文してくれた。
「お金・・・」
私が自分の分を取り出そうすると制された。
「クッキーのお礼だからネ」
「ありがとう」
荒北くんは2人分のクレープを受け取ると公園へ入っていきベンチに腰かけた。
私のその隣に座った。
「ん」
渡されたイチゴバナナの方を受け取った。
「ありがとう。いただきます」
私は念願のクレープを口に運んだ。
「おいしーい」
イチゴとクリームの甘さが口の中に広がった。
「よかったネ」
私の反応に満足した荒北くんも自分のクレープを齧った。
「あ、見て。クレープデートしてるよ。私達も食べよう」
公園にいた大学生ぐらいのカップルが腕を組んでクレープ屋さんに向かっていった。
そうか、傍から見たらデートに見えるんだ。
っていうか、これは実際にデートなのかな。
荒北くんをチラリと見ると顔が少し赤かった。
「私と一緒にクレープ食べるの恥ずかしい?ごめんね」
年頃の男子高校生なのだから女子と一緒にクレープを食べているところを見られるのが嫌だったのかもしれない。
そう思って聞いた。
すると荒北くんはボソリと「ちげェよ」と答えた。
「やっぱデートに見えるんだなって思っただけ」
「あ、私も思ったよ!」
同意すると荒北くんは少し驚いた様子だった。
「じゃあ、一層のこともうちょっとデートっぽいことしてみようよ!はい!」
私は荒北くんに自分の食べかけのクレープを差し出した。
「デートだったらお互いの一口交換したりするかなって」
こういうシーンを恋愛映画で見たことがあることを思い出したので実践してみた。
「え・・・」
荒北くんは固まってしまった。
「ごめん、嫌だった?」
私は差し出したクレープを引っ込めた。
荒北くんは首を振ると私に自分が持っていた方を差し出した。
「はい」
私は荒北くんが差し出したクレープを受け取り、代わりに自分のやつを渡した。
「え、何これ!すごく美味しい」
一口食べて私は驚きの声を上げた。
荒北くんのクリームブリュレクレープは上のカラメル砂糖が芳ばしく色づいており、それを割ったら中からブリュレが出てきた。
カスタードの甘味がなんとも言えないほどに美味しい。
こっちにすればよかったなぁ・・・。
もちろん、イチゴバナナの方も美味しいのだが。
「はい、ありがとう」
私は荒北くんのクレープを返そうとした。
「名前チャン、そっち食べなよ。俺こっち食べるから」
荒北くんはそのままイチゴバナナクレープを食べ続けた。
「え?」
「そっちの方が好きって顔に書いてる」
「え、うそ!?」
私は自分の顔に手を当てた。
「名前チャン、思ったこと顔に出すぎ」
荒北くんは歯を見せて笑った。
私は恥ずかしくて俯いた。
「いいの・・・?」
きっと荒北くんもこっちの方が良かったはずなのに。
「俺は名前チャンが喜んでくれる方がイイ」
「ありがとう!」
私はお礼を言ってそのままクリームブリュレを食べ続けた。
******
ここ最近合宿やらで忙しくてなかなかあの時の礼ができていなかったがやっとできた。
俺は名前チャンがここのクレープを食べたがっているという情報を入手していた。
いつも王道を選ぶことを知っていた俺は、あえてちょっと趣向が違うのにしておいた。
名前チャンが違う味も楽しめたらと思っての選択だった。
2つ分の料金を払い、商品を受け取った俺らはベンチに腰かけた。
「あ、見て。クレープデートしてるよ。私達も食べよう」
途中大学生ぐらいのカップルに茶々を入れられ、わずかばかりに苛ついた。
でもカップルに間違われることは嫌ではなかった。
慣れているという側面もあるが。
そしてクレープにテンションが上がっている名前チャンはいつもなら言わないような「デートごっこ」をしようと提案した。
「デートだったらお互いの一口交換したりするかなって」
そう言って彼女は自分のクレープを俺に差し出した。
俺の目に映る名前チャンの瞳がキラキラしていて眩しい。
あれ、こういうのどっかで見たことある。
あれだ。
今流行りの「デートなう」ってやつだ。
SNS中毒の奴らがこぞってアップしているやつ。
つーか女優とかモデルが自分のデートなう写真をネットに載せているのを見るとそのあざとさに若干苛つく。
でも目の前にいる彼女を見て、少しだけあの写真の影響を理解した。
固まっていた俺に交換を嫌がっていると勘違いした名前チャンはクレープを引っ込めた。
俺は訂正して自分のを渡した。
それを食べた瞬間の名前チャンの反応は今日一番だった。
よっぽど気に入ったらしく、表情が蕩けている。
「名前チャン、そっち食べなよ。俺こっち食べるから」
クレープを返そうとするその手を制した。
「いいの・・・?」
遠慮がちに聞く名前チャンに俺は頷いた。
もともとお礼だし、ぶっちゃけ俺はクレープにそこまで興味はない。
名前チャンが喜んでくれるなら何でもよかった。
「ありがとう!」
嬉しそうに笑って続きを食べる彼女に俺も笑った。
もしかしたら名前チャン自身より名前チャンの好みを知っているかもしれない。
そんな自信がついた放課後デートだった。
