【2章】告白
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彼女は俺に交渉を持ちかけてきた。
要は自分には未来が見えるからそれを教える代わりに、ここから出して衣食住を保証してほしいと。
この個性社会、未来が見える個性を持っているヒーローも実際にいる。
だが、彼女が見えるのは雄英高校に関する未来だけだというのだ。
なんともおかしな話だ。
しかし、嘘発見器に引っかからないところから少なくとも彼女は嘘をついている自覚がない。
「あの嘘発見器ってどれぐらいの精度なんですか?」
俺は飯から戻ってきた警官に耳打ちした。
「昔は脳波の動きに照らし合わせて嘘を見抜いていたみたいですが、今は個性社会ですからね。精度は相当なものですよ。アラームが鳴るっていうのも我々専門家じゃなくても分かりやすくていいです」
あれが故障しているとは考えにくかった。
「すみません。お時間取らせてしまって。今日はもう大丈夫です」
警官は俺に切り上げるよう促した。
「お前の話を全て信じるわけにはいかない」
しかし全て嘘だとも思えなかった。
踵を返す俺の背中に彼女の声が届いた。
「あのっ・・・」
振り向くと、彼女は心配そうな表情で俺にこう言った。
「気を付けてください・・・」
困っているのは自分だろうに。
なぜ彼女がそんな事を言うのか疑問に思いながら取調室を後にした。
****************
簡単には上手くいかないか。
私は一人寂しく留置所に戻されて膝を抱えた。
っていうか交渉なんてしたことないし。
どうやれば上手くいくかなんて分からなかった。
頼みの綱の相澤先生もダメだった。
警官が話を切り上げて相澤先生に帰るよう促した時、とっさに脳裏に過ったのはUSJ襲撃事件だった。
交渉に乗ってくれたらこのUSJ襲撃事件の話をしようと思っていた。
しかしよく考えたらこれで良かったのかもしれない。
未来を動かしたらその先がどうなるか分からなくなってしまう。
だから下手に動かせない。
それがセオリーじゃないか。
でも、相澤先生が助かると分かっていてもそれでも心配だった。
だから咄嗟にあんな言葉を掛けてしまった。
"気を付けて"
だからなんだというのだ。
こんな得体のしれない女に言われても気持ち悪いだけだろう。
「はあ・・・」
もう何度目か分からない溜息が静かな留置所に響いた。
*******************
「いやいや、そんなのホラ話に決まってるだろ?」
「だよな・・・」
翌日。
俺は一連の会話をマイクに話した。
「しっかりしろよ!得体の知らない女の話を信じるなんて消太らしくないぜ」
「・・・」
得体のしれない女。
確かにそうだし、自分自身もそう思っているのだが。
なぜかふとした時に彼女の不安気な表情が脳裏を過るのだ。
「だが、俺が今年の1-A担任であることを知っていた。それについてはどう説明する?」
「どっかから情報漏れてんのか・・・」
「少なくとも、彼女自身自分が敵であるとは思っていないし、雄英に危害を加えるつもりはないらしい」
嘘発見器を信じるならば・・・の話だが。
「個性社会になってからは、何が起こっても不思議じゃないからな」
気を付けろよ、マイクがそう言って俺の肩を叩いた。
「ああ」
そう。
個性社会だから昔は起こり得なかったことが起こる可能性はある。
例えば彼女が言う通り異世界からやってきた・・・・・・とか。
「(いやいや。俺は馬鹿か)」
そんなことあるはずない。
真に受けるなんて、どうかしてる。
よほど疲れているのか。
****************
「こんにちは」
あれから時が経ち、なぜか俺は時間があれば名前に会いに来ていた。
乗りかかった船だから最後まで付き合おうと自分に言い訳して。
「はい、お土産」
「えっ。いいんですか!」
差し入れに持ってきたシュークリームを渡すと、その場で開封してもふもふと食べ始めた。
犯罪者ではないので、持ち込み物に特に制限はない。
しかし相変わらずの留置所生活。
「新学期が始まってお忙しいんじゃないですか?」
「まあな」
「・・・まさか何度も会いに来てくれるなんて思ってませんでした」
俺もまさか足繁く通うようになるなんて思ってなかった。
始めは警察に協力するために、通っていた。
しかし、何度も何度も交流する内に名前の人間性が見えてきた。
「私、相澤先生がここに来てくれることだけが今の楽しみなんです」
そう言って笑う名前は初めて会ったときから少し痩せたと思う。
顔色も良くない。
「名前が全部包み隠さず話したら、ここから出られるんじゃないか?」
シュークリームをハムスターのように頬張る名前を、頬杖をつきながら観察する。
「えへへ・・・」
名前は困ったように眉を八の字に曲げた。
要は自分には未来が見えるからそれを教える代わりに、ここから出して衣食住を保証してほしいと。
この個性社会、未来が見える個性を持っているヒーローも実際にいる。
だが、彼女が見えるのは雄英高校に関する未来だけだというのだ。
なんともおかしな話だ。
しかし、嘘発見器に引っかからないところから少なくとも彼女は嘘をついている自覚がない。
「あの嘘発見器ってどれぐらいの精度なんですか?」
俺は飯から戻ってきた警官に耳打ちした。
「昔は脳波の動きに照らし合わせて嘘を見抜いていたみたいですが、今は個性社会ですからね。精度は相当なものですよ。アラームが鳴るっていうのも我々専門家じゃなくても分かりやすくていいです」
あれが故障しているとは考えにくかった。
「すみません。お時間取らせてしまって。今日はもう大丈夫です」
警官は俺に切り上げるよう促した。
「お前の話を全て信じるわけにはいかない」
しかし全て嘘だとも思えなかった。
踵を返す俺の背中に彼女の声が届いた。
「あのっ・・・」
振り向くと、彼女は心配そうな表情で俺にこう言った。
「気を付けてください・・・」
困っているのは自分だろうに。
なぜ彼女がそんな事を言うのか疑問に思いながら取調室を後にした。
****************
簡単には上手くいかないか。
私は一人寂しく留置所に戻されて膝を抱えた。
っていうか交渉なんてしたことないし。
どうやれば上手くいくかなんて分からなかった。
頼みの綱の相澤先生もダメだった。
警官が話を切り上げて相澤先生に帰るよう促した時、とっさに脳裏に過ったのはUSJ襲撃事件だった。
交渉に乗ってくれたらこのUSJ襲撃事件の話をしようと思っていた。
しかしよく考えたらこれで良かったのかもしれない。
未来を動かしたらその先がどうなるか分からなくなってしまう。
だから下手に動かせない。
それがセオリーじゃないか。
でも、相澤先生が助かると分かっていてもそれでも心配だった。
だから咄嗟にあんな言葉を掛けてしまった。
"気を付けて"
だからなんだというのだ。
こんな得体のしれない女に言われても気持ち悪いだけだろう。
「はあ・・・」
もう何度目か分からない溜息が静かな留置所に響いた。
*******************
「いやいや、そんなのホラ話に決まってるだろ?」
「だよな・・・」
翌日。
俺は一連の会話をマイクに話した。
「しっかりしろよ!得体の知らない女の話を信じるなんて消太らしくないぜ」
「・・・」
得体のしれない女。
確かにそうだし、自分自身もそう思っているのだが。
なぜかふとした時に彼女の不安気な表情が脳裏を過るのだ。
「だが、俺が今年の1-A担任であることを知っていた。それについてはどう説明する?」
「どっかから情報漏れてんのか・・・」
「少なくとも、彼女自身自分が敵であるとは思っていないし、雄英に危害を加えるつもりはないらしい」
嘘発見器を信じるならば・・・の話だが。
「個性社会になってからは、何が起こっても不思議じゃないからな」
気を付けろよ、マイクがそう言って俺の肩を叩いた。
「ああ」
そう。
個性社会だから昔は起こり得なかったことが起こる可能性はある。
例えば彼女が言う通り異世界からやってきた・・・・・・とか。
「(いやいや。俺は馬鹿か)」
そんなことあるはずない。
真に受けるなんて、どうかしてる。
よほど疲れているのか。
****************
「こんにちは」
あれから時が経ち、なぜか俺は時間があれば名前に会いに来ていた。
乗りかかった船だから最後まで付き合おうと自分に言い訳して。
「はい、お土産」
「えっ。いいんですか!」
差し入れに持ってきたシュークリームを渡すと、その場で開封してもふもふと食べ始めた。
犯罪者ではないので、持ち込み物に特に制限はない。
しかし相変わらずの留置所生活。
「新学期が始まってお忙しいんじゃないですか?」
「まあな」
「・・・まさか何度も会いに来てくれるなんて思ってませんでした」
俺もまさか足繁く通うようになるなんて思ってなかった。
始めは警察に協力するために、通っていた。
しかし、何度も何度も交流する内に名前の人間性が見えてきた。
「私、相澤先生がここに来てくれることだけが今の楽しみなんです」
そう言って笑う名前は初めて会ったときから少し痩せたと思う。
顔色も良くない。
「名前が全部包み隠さず話したら、ここから出られるんじゃないか?」
シュークリームをハムスターのように頬張る名前を、頬杖をつきながら観察する。
「えへへ・・・」
名前は困ったように眉を八の字に曲げた。