【5章】探索
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業務時間を終え、私は一人学校探検をしていた。
驚く程に広い敷地内はまだまだ知らない場所が沢山ある。
生徒がいるときは何となくうろつきにくいので、こうして放課後を狙っては少しずつ校内を把握していっている。
「今日はちょっと足を伸ばしてみようかな」
明日休みだし遠くの方に行ってみよう、そう思ったのが悪かった。
***************
「やばい・・・」
完全に迷った。
ほんとアホだ。
私は人っ子一人いない寂れた建物を見上げた。
人気が少なくなってきたあたりで引き返せばよかった。
それなのに私は無駄にコンプリートしたい欲に駆られて、つい奥の方まで来てしまった。
明らかに使われていない建物。
つまりこの周辺には人が来ないのだ。
テーマパークみたいに校内地図のパンフレットなどあるはずがない。
時折見かける校内案内図の看板を探すのが一番いいのだが、そもそもその看板がどこにあるのだか。
少なくとも最後に見たのは随分前だ。
そしてこの辺りに設置されているとは考えにくい。
むしろされていても古いものだろう。
「どーしよう・・・」
足が疲れてしまった。
少し体力を回復させよう。
そう思って傍にあった石段に座った。
「相澤先生に電話する・・・?」
私はブンブンと首を振った。
この間夜にトイレ行けず電話した記憶は新しい。
こんな短期間でまた迷惑を掛けるのか。
言っても校内なのだ。
なんとかなるはず。
そんなことを考えていたら携帯が震えた。
「うわっ」
ブブブと振動するそれを思わず落としそうになった。
「あ、相澤先生・・・」
まさか掛けるか迷っていた相手から掛かってくるとは。
迷子になった恥を結局さらけ出す羽目になるのか。
そうは言っても出ないわけにはいかないので、迷った末応答ボタンを押した。
「も、もしもし」
『今どこにいるんだ?』
「へあ!?」
『(へあ・・・?)今度のバーベキューの詳細が回ってきたから、部屋の前通るついでに渡そうと思ったがいなかったみたいだから』
「あ、相澤先生~」
『どうした、情けない声出して』
「どこにいるのか、私も分かりません」
『は?』
「・・・迷子になりました」
*******************
こんな紙切れ一枚別に明日渡しても良かった。
しかし、丁度名前の部屋の前を通るついでだと思いノックしたが反応がない。
もう一度ノックするが辺りはシン・・・と静まり返っている。
念のためドアノブを確認するが、それは回らなかった。
トイレか?
それならまた明日でいい。
踵を返そうとしたその足は一歩踏み出して止まってしまった。
虫の知らせとはよく言ったものだ。
本当に何となくだった。
何となく・・・電話を掛けて所在を確認しようと思った。
『も、もしもし』
電話口に出た彼女の声は上擦っていた。
「名前?今どこにいるんだ」
『へあ!?』
変な事を聞いたわけではないのに、狼狽える名前に疑問符を浮かべる。
「(へあ・・・?)今度のバーベキューの詳細が回ってきたから、部屋の前通るついでに渡そうと思ったがいなかったみたいだから」
『あ、相澤先生~』
ひどく情けない声を出して、電話で姿は見えないが項垂れているのだろう。
もうここまで来れば何か困り事だろうなとは思っていた。
「・・・?どうした、情けない声出して」
『どこにいるのか、私も分かりません』
「は?」
『・・・迷子になりました』
****************
名前から聞き出した場所は、今はもう使われていない校舎があるところだった。
メイン校舎を視界に入れらればそれを目印に帰るから、方向だけ教えてほしいと言われた。
しかし中途半端なことをしてまた迷っては困る。
いくら学校内とはいえ、もうすぐ日も傾く頃だしこちらが迎えに行った方が早い。
その場に留まるように告げ、俺は足早にその場所へ向かった。
「大変申し訳ございませんでした」
出会い頭、ヘッドスライディングする勢いで俺の足元で名前は頭を垂れた。
「いや・・・」
足元から顔を上げた名前はへにゃりと表情を歪ませた。
そんな顔をされたら嫌味の一つも言えない。
言うつもりもないが。
「ほら、そんなところに座ると汚れるぞ」
手を差し出せば、ためらいながら小さな手を乗せてきた。
「わっ」
引っ張り上げると名前は勢いよく胸に飛び込んできた。
・・・力加減間違えた。
「ご、ごめんなさい」
今のはどちらかというと俺に非があったが名前は慌てて謝り、距離を取った。
何となく気まずくて、視線を外せば古びた建物が視界に入った。
「懐かしいな」
「え?」
「この校舎、俺が学生の時はまだ使ってたんだ」
「そうなんですか!」
教員になってから、わざわざ思い出に浸るために足を運ぶなんていうことをするはずもなく。
「ところでどうしてこんなところにいるんだ」
「校内探索をしてまして・・・」
「まぁここは広いからな」
保護者が迷子になるとかもよくある。
「もうしません・・・」
しゅんと肩を落とす名前に「そんなこと言ってないだろ」とコツンと頭を小突いた。
「せっかくだからこの辺案内してやるよ」
「え、いいんですか」
「ああ」
たまにはこうやってゆっくり校内を散歩するのも悪くない。
俺の後ろをパタパタついてくる名前はまるで飼い主についてくる猫に見えた。
驚く程に広い敷地内はまだまだ知らない場所が沢山ある。
生徒がいるときは何となくうろつきにくいので、こうして放課後を狙っては少しずつ校内を把握していっている。
「今日はちょっと足を伸ばしてみようかな」
明日休みだし遠くの方に行ってみよう、そう思ったのが悪かった。
***************
「やばい・・・」
完全に迷った。
ほんとアホだ。
私は人っ子一人いない寂れた建物を見上げた。
人気が少なくなってきたあたりで引き返せばよかった。
それなのに私は無駄にコンプリートしたい欲に駆られて、つい奥の方まで来てしまった。
明らかに使われていない建物。
つまりこの周辺には人が来ないのだ。
テーマパークみたいに校内地図のパンフレットなどあるはずがない。
時折見かける校内案内図の看板を探すのが一番いいのだが、そもそもその看板がどこにあるのだか。
少なくとも最後に見たのは随分前だ。
そしてこの辺りに設置されているとは考えにくい。
むしろされていても古いものだろう。
「どーしよう・・・」
足が疲れてしまった。
少し体力を回復させよう。
そう思って傍にあった石段に座った。
「相澤先生に電話する・・・?」
私はブンブンと首を振った。
この間夜にトイレ行けず電話した記憶は新しい。
こんな短期間でまた迷惑を掛けるのか。
言っても校内なのだ。
なんとかなるはず。
そんなことを考えていたら携帯が震えた。
「うわっ」
ブブブと振動するそれを思わず落としそうになった。
「あ、相澤先生・・・」
まさか掛けるか迷っていた相手から掛かってくるとは。
迷子になった恥を結局さらけ出す羽目になるのか。
そうは言っても出ないわけにはいかないので、迷った末応答ボタンを押した。
「も、もしもし」
『今どこにいるんだ?』
「へあ!?」
『(へあ・・・?)今度のバーベキューの詳細が回ってきたから、部屋の前通るついでに渡そうと思ったがいなかったみたいだから』
「あ、相澤先生~」
『どうした、情けない声出して』
「どこにいるのか、私も分かりません」
『は?』
「・・・迷子になりました」
*******************
こんな紙切れ一枚別に明日渡しても良かった。
しかし、丁度名前の部屋の前を通るついでだと思いノックしたが反応がない。
もう一度ノックするが辺りはシン・・・と静まり返っている。
念のためドアノブを確認するが、それは回らなかった。
トイレか?
それならまた明日でいい。
踵を返そうとしたその足は一歩踏み出して止まってしまった。
虫の知らせとはよく言ったものだ。
本当に何となくだった。
何となく・・・電話を掛けて所在を確認しようと思った。
『も、もしもし』
電話口に出た彼女の声は上擦っていた。
「名前?今どこにいるんだ」
『へあ!?』
変な事を聞いたわけではないのに、狼狽える名前に疑問符を浮かべる。
「(へあ・・・?)今度のバーベキューの詳細が回ってきたから、部屋の前通るついでに渡そうと思ったがいなかったみたいだから」
『あ、相澤先生~』
ひどく情けない声を出して、電話で姿は見えないが項垂れているのだろう。
もうここまで来れば何か困り事だろうなとは思っていた。
「・・・?どうした、情けない声出して」
『どこにいるのか、私も分かりません』
「は?」
『・・・迷子になりました』
****************
名前から聞き出した場所は、今はもう使われていない校舎があるところだった。
メイン校舎を視界に入れらればそれを目印に帰るから、方向だけ教えてほしいと言われた。
しかし中途半端なことをしてまた迷っては困る。
いくら学校内とはいえ、もうすぐ日も傾く頃だしこちらが迎えに行った方が早い。
その場に留まるように告げ、俺は足早にその場所へ向かった。
「大変申し訳ございませんでした」
出会い頭、ヘッドスライディングする勢いで俺の足元で名前は頭を垂れた。
「いや・・・」
足元から顔を上げた名前はへにゃりと表情を歪ませた。
そんな顔をされたら嫌味の一つも言えない。
言うつもりもないが。
「ほら、そんなところに座ると汚れるぞ」
手を差し出せば、ためらいながら小さな手を乗せてきた。
「わっ」
引っ張り上げると名前は勢いよく胸に飛び込んできた。
・・・力加減間違えた。
「ご、ごめんなさい」
今のはどちらかというと俺に非があったが名前は慌てて謝り、距離を取った。
何となく気まずくて、視線を外せば古びた建物が視界に入った。
「懐かしいな」
「え?」
「この校舎、俺が学生の時はまだ使ってたんだ」
「そうなんですか!」
教員になってから、わざわざ思い出に浸るために足を運ぶなんていうことをするはずもなく。
「ところでどうしてこんなところにいるんだ」
「校内探索をしてまして・・・」
「まぁここは広いからな」
保護者が迷子になるとかもよくある。
「もうしません・・・」
しゅんと肩を落とす名前に「そんなこと言ってないだろ」とコツンと頭を小突いた。
「せっかくだからこの辺案内してやるよ」
「え、いいんですか」
「ああ」
たまにはこうやってゆっくり校内を散歩するのも悪くない。
俺の後ろをパタパタついてくる名前はまるで飼い主についてくる猫に見えた。
