【3章】フォーリンラブin室町
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勢いで言ってしまった。
名前さんが元気がなかった理由を聞いて、背中を押された。
私でよければ、貴方の家族になりたい。
それほどまでに心惹かれている自分にも驚いた。
誰が言ったのか、恋は落ちるもの……というのは本当らしい。
落とし穴のように簡単に抜け出せず、這い上がろうとしてもどんどん深みに嵌っていく。
考え無しに行動する性は持ち合わせていないと思っていたが。
この時ばかりは考えるより先に言葉にしてしまっていた。
もちろん後悔などしていない。
そして、明日から土井先生のところへ行ってしまう彼女が少しでも自分のことを考えてくれたら…という邪な気持ちもあった。
一方、名前さんは新しい家族が欲しいのではなく、親に会いたいという意味で言っていることにも気づいていた。
だからそれも忘れていないと付け加えて。
嬉しそうに笑ってくれると思った。
けれど、彼女は苦しそうに表情を歪めたのだった。
「ごめんなさい……」
「え?」
何に対して謝っているのだろう。
あ、もしかして私は今振られているのだろうか。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「ちょっ、ちょっと待ってください」
こんなに泣いているところ初めて見た。
悲しそうに表情を歪めることはあっても、私の前で大泣きすることなんてなかった。
紅をあげたときは嬉し泣きしてくれたが、今回はそうじゃない。
そんなに泣くほど、私は恋仲の候補になることすらできないのか。
悔しさが胸を支配して、私まで泣きたくなった。
「あの…。今ここで結論を出してしまうほど、私は貴方の眼中に入っていないのでしょうか?」
名前さんは首を横に振った。
鼻を啜って、無理矢理息を整えた彼女は私の目を見て口を開いた。
「そうじゃなくて……私、利吉さんに言わないといけないことがあるんです」
「言わないといけないこと?」
名前さんは頷いて、顔を上げたら大きく息を吸った。
「私、記憶があるんです」
驚いた。
驚いたが意外ではなかった。
なぜならずっと疑問に思っていたから。
本当に記憶喪失なのか?
南蛮の姫?
どちらもしっくりきておらず、土井先生も同じ感想をもっていたから。
なんならいつ本当のことを話してくれるのだろう、とさえ思っていた。
だから、むしろホッとしたのだ。
ああ、やっと話してくれた、と。
「そうだったんですね」
振られたのではないと分かると、肩の力が抜けた。
「……怒らないんですか?」
きょとり、と名前さんは涙に濡れた目を丸くした。
「ええ。前々から疑問には思ってましたから。むしろ正直に話してくれて安心してます」
惚れた弱みですかね、と言えば名前さんは恥ずかしそうに頬を染めた。
「利吉さんがいくら探してくれても、私の家族には会えないんです。だからもう探して頂かなくても大丈夫です」
「それは……」
もしかして戦災で亡くなってしまったのだろうか。
私の仮定を見透かしたようで、名前さんは慌てて両手を横に振った。
「生きてます。生きてはいると思うのですが……会えないところにいるんです」
名前さんは三つ指をついて、私の前で頭を下げた。
「利吉さんの貴重な時間を奪ってしまってごめんなさい。学園から追い出されるのが怖くて、記憶喪失の振りをしてました」
重力に従って、ポタリと名前さんの涙が落ちた。
名前さんが元気がなかった理由を聞いて、背中を押された。
私でよければ、貴方の家族になりたい。
それほどまでに心惹かれている自分にも驚いた。
誰が言ったのか、恋は落ちるもの……というのは本当らしい。
落とし穴のように簡単に抜け出せず、這い上がろうとしてもどんどん深みに嵌っていく。
考え無しに行動する性は持ち合わせていないと思っていたが。
この時ばかりは考えるより先に言葉にしてしまっていた。
もちろん後悔などしていない。
そして、明日から土井先生のところへ行ってしまう彼女が少しでも自分のことを考えてくれたら…という邪な気持ちもあった。
一方、名前さんは新しい家族が欲しいのではなく、親に会いたいという意味で言っていることにも気づいていた。
だからそれも忘れていないと付け加えて。
嬉しそうに笑ってくれると思った。
けれど、彼女は苦しそうに表情を歪めたのだった。
「ごめんなさい……」
「え?」
何に対して謝っているのだろう。
あ、もしかして私は今振られているのだろうか。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「ちょっ、ちょっと待ってください」
こんなに泣いているところ初めて見た。
悲しそうに表情を歪めることはあっても、私の前で大泣きすることなんてなかった。
紅をあげたときは嬉し泣きしてくれたが、今回はそうじゃない。
そんなに泣くほど、私は恋仲の候補になることすらできないのか。
悔しさが胸を支配して、私まで泣きたくなった。
「あの…。今ここで結論を出してしまうほど、私は貴方の眼中に入っていないのでしょうか?」
名前さんは首を横に振った。
鼻を啜って、無理矢理息を整えた彼女は私の目を見て口を開いた。
「そうじゃなくて……私、利吉さんに言わないといけないことがあるんです」
「言わないといけないこと?」
名前さんは頷いて、顔を上げたら大きく息を吸った。
「私、記憶があるんです」
驚いた。
驚いたが意外ではなかった。
なぜならずっと疑問に思っていたから。
本当に記憶喪失なのか?
南蛮の姫?
どちらもしっくりきておらず、土井先生も同じ感想をもっていたから。
なんならいつ本当のことを話してくれるのだろう、とさえ思っていた。
だから、むしろホッとしたのだ。
ああ、やっと話してくれた、と。
「そうだったんですね」
振られたのではないと分かると、肩の力が抜けた。
「……怒らないんですか?」
きょとり、と名前さんは涙に濡れた目を丸くした。
「ええ。前々から疑問には思ってましたから。むしろ正直に話してくれて安心してます」
惚れた弱みですかね、と言えば名前さんは恥ずかしそうに頬を染めた。
「利吉さんがいくら探してくれても、私の家族には会えないんです。だからもう探して頂かなくても大丈夫です」
「それは……」
もしかして戦災で亡くなってしまったのだろうか。
私の仮定を見透かしたようで、名前さんは慌てて両手を横に振った。
「生きてます。生きてはいると思うのですが……会えないところにいるんです」
名前さんは三つ指をついて、私の前で頭を下げた。
「利吉さんの貴重な時間を奪ってしまってごめんなさい。学園から追い出されるのが怖くて、記憶喪失の振りをしてました」
重力に従って、ポタリと名前さんの涙が落ちた。
